さよならジョジョ先生―改稿版―   作:パラレル。

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第弐拾壱話 糸色望と2のへ組その②

赤木杏は望が彼女の帽子を取りに行っているときに頭痛に襲われた。否、ただそれだけではなくビジョンも見えた。彼が帽子を拾い上げた時、ワゴン車に轢かれて死ぬところを。

急にそんなものを見て寒気が彼女を襲い、震えが止まらなくなった。こんなことが気のせいであってほしかった。

怖くなった彼女は望のところに駆け寄ったが、その途中で黒い車がものすごいスピードで交差点を曲がり、望のところに突っ込むのも見た。あれで見たのと同じ車が。

それで杏は望を守ろうと彼を突き飛ばした。何故かこの時だけは思っていた以上に体が動いてくれた。

そして、突進してきた車の方へ杏が向く時には目の前にはその車のバンパーがあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

杏が血まみれになって横たわっている光景を見て、望の時間が止まりかけたが、一歩一歩おぼつかない足を動かして前進し、彼女を抱き上げた。

抱き上げたときに吐血をして意識を取り戻した杏を望は優しく介抱してやった。だが、彼女は既に虫の息で目の焦点も合っていなかった。

望は涙が止まらなかった。こんな彼女に何もしてやれないことに涙した。その時、彼女も涙を流していた。彼女らしくなくぽろぽろと・・・。

 

 

「生きたかった・・・。本当は生きたかった・・・・・。もっとずっと貴方と・・・・・楽しい時間も苦しい時間も一緒に・・・共有したかったのに・・・・・なんで・・・なんでなの・・・?」

「大丈夫ですよ。救急車が来てくれば助かります。気をしっかり持ってください杏さん!」

「もうダメだよ望さん・・・・・。もう無理だよ・・・。体の感覚がなくなってきてあなたの体温しか感じない・・・・・」

「ぐ・・・ぐ・・・は・・・ぐ・・・杏さん・・・・・」

 

 

もっと生きたかったと涙しながら語った杏を望は励ますが、彼女の言う通り、彼女が徐々に冷たくなるのを感じた。

それに望は泣くことしかできなかった。ただ死んでいく彼女を見ることしかできなかった。

その時、杏は残る全てのエネルギーを使い、顔を上げて望に話した。

 

 

「望さん・・・『一つ』だけ・・・あと『一つ』だけ私のわがままを叶えてください・・・“生きた証”を私に・・・」

「“生きた証”??いったいどういう・・・・・」

 

 

か細い声で言った彼女の願いの意味が分からず、問い返そうとするときに彼女の唇が彼の唇を塞いだ。

望にとっても杏にとっても初めてのキス―――。しかし、望は涙がよけい出た。そのキスで彼女の生命が完全に終わったのが曖昧ではなく実感的に伝わったからだ。

 

 

「うお・・・うおおおお・・・うおおおおおおおあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

 

彼女が死んだことにより望は涙を流さずにはいられなかった。叫ばずにはいられなかった。そして、その周りには彼の慟哭のみが強く高らかに響いていた。

赤木杏。愛する男性の胸の中で齢15年の生涯をここで終える―――。

 

 

 

 

「アニキやべーーですぜ。人轢いちゃってますぜ」

「うるせぇなおめぇは。そんなことよりサツが来るぞ」

 

 

彼女を轢いたワゴン車から二人の男が窓から顔を出して各々しゃべっていた。その時、望の感情が爆発した。全てを飲み込むほどのドス黒いものが望を支配した。

それは怒りの感情だ。杏を轢き殺しておいて何の罪悪感も感じない二人に対する怒りだ。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

屍となった杏をそっと地面に置いて、顔の陰を濃くしながら近付く望。だが、すぐにその車は走り出して追いつけない距離まで離されてしまった。

 

 

「アニキ。やべぇすよオレたち殺人の罪まで着ちゃったよ。どうするよ」

「うるせぇなさっきから。そんなもん捕まらなければどうもならねぇよ」

「そ・・・そうっすよね。うははははははははははは」

「そうだぜ。げへへへへへへへへへへへへ」

 

 

子分の男は杏を殺して罪が重くなったことに怯えるが、兄貴分の男は運転しながら警察に捕まらない限り問題ないと一蹴する。子分は彼の言い分が正しいと思って二人して笑い出す。命の重さをまるっきり分かっていないこの二人こそゲス野郎という言葉はふさわしいだろう。

そんなときに子分の男はあることに気付いた。

 

 

「ねぇアニキ。さっきから景色変わってなくない?」

「はぁ??お前何言・・・うッ!?・・・おい・・おい!!!オレの『脚』・・・どうなってんだ!?」

「いや・・・え?脚?アニキの脚がどうしたって言うん・・・でえええええ!!?アニキの脚がちょん切れているゥゥゥゥゥゥゥ!!!ひぃぃぃぃえええぇぇぇ!!!」

 

 

景色が変わらないことに疑問に思っていた子分の男は兄貴分の男に聞いたが、そのことよりもまず自分の脚がいつの間にか切られていたことに気付いた。

子分の男はアクセルを踏んでいるはずの脚が切られていて、そこから大量の出血が出てくるのを見て驚いた。そして、ここに近付く者を感じ取った。そう、糸色望だ。

 

 

「どんな気分ですか?恐怖は・・・痛みは・・・しかし彼女が受けたものはこんなものじゃあ足りませんよ!!」

「き・・・きさまは・・・」

「ああ――気にしないでください。思い出す必要はこれっぽっちもありません。何故ならあなた方二人は地獄の業火に焼かれて死ぬんですからね」

 

 

アニキが座っている右側の方から望は顔を出した。車の窓は開いていたので手元からライターを取り出して火をつけた。この時になって二人は至る所がガソリンでぬれていることに気が付いて、子分の男は望がライターを車内に入れる前に銃を抜くが、銃を握っていた指が引き金を引く前にポキリといやな音を立てて折れた。

 

 

「いぎてぇぇぇぇえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

「・・・??ほぉぉ。なるほどあなたたちには“彼女”が見えないのですか・・・」

 

 

指が折れた苦痛で銃を落として、悶える子分を見て望は不思議に思った。それはさっきから彼の側に“半透明の少女”がいるからだ。しかも死んだ杏に似た。

このことから望は“彼女”が他人には見えないのだと結論づけた後、躊躇せずライターをガソリンが染みついた車内に投げ入れた。

 

 

ゴオオオオオオオオオオオオオ

「ぶがあああああああああ!!!燃えるゥゥゥゥウウウウウウウウ!!!こんちくしょううううううううううううう!!!」

「ぎゃあああああああああああああああああああ!!!熱いよおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

車内が炎に包まれて苦しみだす二人。その頃望は燃える車を後にして隣にいる“彼女”を見つめた。杏に似たその子を見る内に“彼女”は自分の力で生まれた者だと奇妙だが理解した。直感で理解した。

 

 

ボバァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン

 

 

黒いワゴン車はやがて爆発炎上し、全体的に炎が上がった。

望には罪悪感はなかった。平気で杏を殺したのだから当然の報いだと思ったからだ。

そして一人、恋人の亡骸を見てうなだれているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

望はその後杏の葬式へは行かなかった。弔いをしなかった。ただ何もしなかった。何もしたくなかった。

彼女の両親もそれを理解してくれて葬儀を執り行った。無理に彼を連れに来させなかった。

望はただ彼が住んでいる家でうなだれ、悲しみ、後悔して、眠り、そしてうなだれた。今の彼には食べることや飲むことなどの渇望は湧いてこなかった。湧くはずもなかった。

 

 

 

 

それを四日間繰り返して本当に彼女の後を追うことになりそうな時、彼の家の扉が強く開けられた。そして、やって来た男、糸色命は望を見つけると堂々と声をかけた。

 

 

「来い望。お前に来てほしいところがある」

 

 

痩せ細り顔に濃い隈をつくった望は今更何処に行こうって言うんだよと思ったが、渋々立ち上がって命の後をついて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「荒れ果てたな・・・お前は。恋人に先立たれたショックで危うく死ぬ一歩手前だったとは・・・兄として情けないな」

「恋人のいない兄さんに何が分かるというのですか?愛する人を亡くすつらさが・・・」

「はは。確かにそうだな」

 

 

命は望をからかうように話してくるので望は目元を鋭くして苛立ちながら返答した。自分が言い出したことに望がとげとげしい台詞を返してきた後、少し笑って自分の言動に反省した命は変わらず歩いていた。

望はさらに苛立った。一体何処に兄は連れて行こうとしているのかと。

 

 

 

 

「さあ、着いたぞ」

「に・・・兄さん。どういうことですか?これは・・・」

 

 

しばらくして、命は目的地に着いたと望に報告した。そこは都内でも有数の病院だった。

どうしてこんなところに・・・と心の中で望は思うが、その理由を聞こうとするときには命は病院内に入ったので、聞きそがれてしまった。

 

 

流石に命は医者の端くれである。病院の受付をさくさくっと終わらせて、命が行こうとしている病室まで歩いて行った。

その途中で命はさっきまでののほほんとした表情とは打って変わって真剣になって望に問いかかってきた。

 

 

「それでだ望。お前の恋人、赤木杏が臓器ドナーに入っていたことを知っているか?」

「ええ・・・知っていますよ。実に君らしいねって褒めたことがあるし・・・それが?」

「実は臓器ドナーの件で少々・・・否、かなり問題でな」

「どうしたんだよ」

「臓器移植まではうまくいっていたんだが、その後がな・・・」

「だからどうしたんだよ」

「望・・・聞いていいか?彼女は人間なんだよな?」

「・・・ッ!!さっきからなんなんだよ!!いいからさっさと言えよ!!」

 

 

命は本題をもったいぶった調子で話してくれなくて苛立ちを覚えた望にやれやれと思って1つの病室を指す。そこは“日塔奈美”という人の病室だった。

 

 

「百聞一見にしかず・・・話すより実際見た方が分かる。ただ一つ言っておく。これはおそらくお前でなければ解決できない問題だ」

 

 

命の発言により望はつばを飲み、ゆっくりとその扉を開く。そこで目にしたものは・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「離してよ!離してったら!!くそッ!!うぜーぞ!!てめーらぁぁあああ!!!」

 

 

一人の少女が数人の看護婦に押さえつけられて、暴れまくっている姿だった。そして、その少女は看護婦達がひるんだ一瞬をついて、病室にあった鋭利なものをひったくってそれを自分の首に突き刺して肉を抉った。

 

 

ブシューーーーーッ

「・・・ッブ!!」

「な・・・なんてことを!!」

 

 

その少女がつけた傷はあまりに深く即死は免れないほどなので、彼女は少し苦しみながら死んだ。

望はどうして自らそんなことをするのかが分からなかった。しかし、命が言っていたことがこの後すぐに分かった。

その少女が抉った肉と噴き出た血がみるみるその傷口に戻ってきて、あっという間に彼女の首は傷なんて始めからなかったかのように治った。

数人の看護婦はそれを見ると叫び声を上げて、病室絵と飛び出したが、望はそのまま立ち尽くした。これが杏の臓器を移植した結果なのだと。

 

 

「一体・・・これはなんですか?」

「それは私が聞きたいですよ。糸色望さん」

「紹介するよ望。こちらの女性は新井智恵先生。臓器移植コーディネーターで今回赤木杏さんの臓器を彼女や他の人達に移した責任者だ」

「こ・・・こんにちは」

 

 

望が呟いた直後に白衣姿の女性が突然病室に入ってきた。彼女の入室と同時に入ってきた命はその女性、新井智恵を望に紹介した。

命に紹介された智恵に望が軽い挨拶を済ませた後、智恵は望に再度質問する。

 

 

「それで改めて問いますけど、彼女は一体何者ですか?」

「・・・・・ただの・・・私の恋人です」

 

 

智恵に問われた望は杏をただの普通の女の子だとしか答えられなかった。それ以外の答えが言えるはずがない。

そんな時、自らの体を刺して意識を失っていた少女、奈美が起き上がり、自分が死なないことをぼやきながら望の姿を見た。

 

 

「ああ・・・あなた。そこのあなた・・・私を殺してよ。私を無意味に生かさないでよ。ああ・・・ああ・・・私を・・・・・殺してくれよおおおおおお!!!」

 

 

望の姿を見るや否や自分を殺すように要求する奈美に望は狼狽えてその場でじっとしていると、彼女は頭を抱えて苦しみだし、大声を出して彼女の体から“半透明な人型”を出現させて襲ってきた。

その“人型”の出現に望はびっくりするが、反射的に一週間ぶりに“彼女”を出して、その“人型”を返り討ちにする。

その“人型”に一発お見舞いしたとき、同時に奈美は後方に吹っ飛び、壁に激突した後に気絶してしまった。そして、望は彼女も自分と同じ能力を持っていることと今ここではっきりした。

そんな時、倒れた奈美をベッドに運んだ命が望に急に問いだした。

 

 

「望・・・お前今何をした。彼女をどうやったんだ」

 

 

命や智恵にはさっき起こったことを認識していないことに驚く望だが、彼は二人にありのまま起こったことを伝える。

まさしくファンタジーな内容で意味がちんぷんかんぷんですぐには理解に苦しむ命だが、それをある程度理解したとき、ある事実を望に伝えた。

 

 

「望。実は二日前杏さんの墓を掘り出したところ、きっちりと火葬されたはずの遺体が焼け焦げていたが人間の形をとどめていた。否それだけじゃない。彼女の墓を掘るきっかけになったのが、彼女のように臓器を移植した十数名の少女が不死身になり、ずっと何かに怯えて、死を選ぶようになるんだ。しかも・・・「どうかされましたか?」・・・ッ!!望ッ!!来たぞッ!!」

「・・・ッ!?」

 

 

命が話している途中で気絶していた奈美が起きて、さっきまでとは打って変わって丁寧な言葉で話し出す。

命が慌て出す理由がまだ分からない望は一応奈美を見ておいた。そんな彼女は起き出して早々色んな所を動いて何かを探し出した。そして該当するものを見つけた後、それを左前髪につけた。それは十字型の髪留めだった。

 

 

(・・・・・ッ!!!ま・・・まさか・・・そんなことが・・・杏さん!??赤木杏さんですか!??あなたは・・・)

 

 

そのバレッタを見て、奈美を杏かと見てしまう望。奈美はそんな彼を見るとくすっと笑うとまた眠りについた。

望には緊張が走る。死んだはずの杏のような仕草をする奈美に。

 

 

「まさか兄さん・・・これは・・・いやありえない。ありえるはずが・・・」

「いえ、実際にありますよ。受容者(レシピエント)は稀にドナーの記憶の一部を受け継ぐことがあり、これを『記憶転移』と呼ばれています。これは脳だけでなく臓器も記憶しているから起きるそうです」

 

 

あれが杏だと思ったが、すぐにそんなことはないと否定する望。ですが、実例は存在するので智恵は肯定した。

つまり、さっき笑ったのは彼女自身であると言っても過言ではない。

 

 

「いや、まだだぞ望。まだお前に説明していないことがある」

 

 

突然命や智恵の声とは異なる声が聞こえたので辺りを見渡すと、病室に望とほぼ同じ柄の着物を着た男性が入ってきた。

望はこの男を知っている。何故なら彼の一番上の兄である縁(えにし)だからだ。

 

 

「縁兄さん!父上から縁を切られた兄さんが何故ここに・・・」

「縁を切られた・・・・・どうやら勘違いをしているな?縁は切られてはない。糸色家の当主として陰からお家を支えてきたんだ。元来糸色家の当主は前当主が亡くなるまで表には出ないというしきたりなのだ。暗殺や謀反による討ち死にを防ぐためにな。これが現在まで栄え続けるための策だ」

「そう・・・だったんですか」(し・・・知らなかったぁぁぁぁぁ)

 

 

糸色家の長男である縁が現れて驚く望。というのも縁は一家から絶縁扱いとされているため、糸色家の行事や有事の際に居合わせていないのだ。なので会う機会が皆無だったので望は縁の再会にびっくりしたのだ。

だが、望が知らないだけで縁は当主として陰で糸色家を支えていたのだ。

とにかく望の誤解が解けたところで話の腰を戻し、何故この場に縁が現れたのかを望に縁は説明した。

 

 

「ここに来る前に他の全員を見たが、全員同じ境遇を持っている。それは、全員自殺未遂者だってことだ」

「えぇ!?自殺未遂者ってこの子が!?本当なんですか智恵先生!」

「えぇ、そうよ。私は彼女たちを助けてあげたくて・・・生きてほしいために移植したのに・・・これじゃあ私のやったことが悪魔と変わりないわ」

 

 

縁が彼女たち受容者(レシピエント)が全員何かしらの自殺をしたが生きながらえてしまった者だと知った望は仰天した。

智恵は自分がしたことが結果として単なる悪魔の行動だったことを悔やんでも悔やみきれなかったようだ。

 

 

「だが厄介なことに彼女たちと同じ境遇に陥り亡くなったが本当は生きたかった霊が彼女たちに集まり始めている。その霊を成仏させないと彼女たちはその霊に怯えながら暮らすことになる。彼女たちが自殺を繰り返すのはそのせいだ。それに聞いたところによると、彼女たちは死なないそうだな。これでは彼女たちの心は砕け散って確実に廃人になるだろう。それは避けなくてはならない」

「ど・・・どうすればいいんだ縁兄さん!!」

「一つだけある・・・・・何年かかるか分からんができないことではない!!彼女たちの自殺理由の共通点は『学校』に関係することだった。これから考えて霊たちは学校を卒業する前に亡くなった。それなら死後結婚同様に彼女たちを依り代として偽りの学園生活を送らせて全ての霊を未練の一つもなく満足させる。それが唯一の手段だ。これしかないッ!!」

 

 

霊感のある縁は彼女たちが自殺を繰り返す原因として昔に彼女たちと同じ境遇で死んだ霊に取り憑かれていることとこのままでは彼女たちは悲惨な運命に飲み込まれることを指摘した。

受容者となった彼女たちを救うために偽りの学園生活を送らせる案を縁は提案するが、望は一つ疑問が浮かび上がって縁に食いかかった。

 

 

「ちょっ・・・ちょっと待ってください!学園生活を送らせる・・・ですって?校舎は父上に頼めば準備してくれるとは思いますが、問題は担任です!!担任は誰にどうするんですか!?」

「担任?もちろんお前だ望」

「何ですって!?」

 

 

校舎は準備できるとして、彼女たちの担任は誰がやるのかを聞いた望だが、縁から自分がすることを言われて驚いた。

慌てふためく望に縁は根拠となることを話して落ち着かせる。

 

 

「望・・・お前しかいない。お前も見たであろう。彼女たちは全員『何かしらの超能力』を持っている。お前と『同じ能力』が・・・我々では務まらない」

「私と・・・『同じ能力』――。兄さんにも見えるのですか!?」

「ああ。一応な・・・便宜上それは『スタンド』と呼ばれているがな。今の彼女たちだと能力を暴走させて、周りをむやみに傷つけるだけだ。正しい使い方を分からせて社会復帰させてあげられるのは・・・何より命の重さを一番理解しているのはお前だけだ。彼女がつなぎ止めた彼女たちの命をお前が救うんだ。守るんだ」

 

 

縁の説得により、望の心の中に何かが生まれた。死にかけた彼の心に熱く燃え上がるものがあった。

望が生まれて初めて経験するその感覚は彼のどんな絶望をも跳ね返し、彼にある決断をさせるほどの清々しいものだった。

 

 

「命兄さん。杏さんの遺体をその後どうしましたか?」

「もちろん別の場所に移した。あんなものを放っておく訳にもいかないだろう。それがどうした?」

「彼女の細胞、もしくは血を私の体に移してください」

「・・・ッ!?何だと望ッ!!?」

 

 

望の決意、杏の体の一部を自分に移植することを命に頼んだのでこの場にいる三人は彼の口から出た言葉の意味をしばらく理解できなかった。

糸色望が言いそうにない言葉であったために智恵や縁、命は口あんぐりとただただ情報処理をして、命は望にその真意を疑う。

望は相も変わらず清々しい気持ちで自分の意見を命に伝えた。

 

 

「私は彼女たちの担任になるわけです。それなら私も彼女たちと同じ立場にならなければ、真に彼女たちを理解できるとは到底思えない。死なないという苦しみを受けている彼女らが簡単に死ぬ今の私を見て心を開くでしょうか・・・・・彼女たちを救うには彼女たちと同じ運命を歩み、同じ苦しみを味わい、理解することだと思うんです。だから私は杏さんの力を使って彼女たちと同じ・・・人間を超えた存在になります」

 

 

杏の体の一部を移植すると言うことを望の口から聞いたので彼の考えが分からず困惑する命だが、望の覚悟の眼を見ると、言い返す気にもならなれなかった。

誰もあの眼を見ると止めるだけばかばかしい気になるので、三人はこのことを承諾することにした。

かくしてこのときから、糸色家、新井智恵による壮絶な極秘プロジェクトが開始されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが・・・我々が行っている『計画』の全てです」

 

 

時間は再び現在の糸色医院の極秘研究所。壮大な過去を話されて、各々表情が渋る五人。

その五人は望の悲惨とも言うべき過去が明かされてなんとも不思議な気持ちになり、言葉も出なかった。

 

 

「皆さん。どうか我々に力を貸してくれませんか?私は一日でも早く彼女たちの呪縛を解き放せて幸せにしてあげたい・・・それだけが私の唯一の希望なのです。お願いします」

 

 

不思議な気持ちになっている五人に望は彼らの『計画』の協力をお願いするために頭を下げた。一人の男が人生全てを賭けてまでやり遂げたいことを成し遂げるために頭を下げた。そこには何の哀れみもなくただそこには何の曇りもない黄金のように一貫したものがあるように承太郎は感じた。

 

 

「頭を上げてくれ・・・望」

 

 

頭を下げている望に頭を上げるよう言った承太郎は彼の眼を見た。眼だけを見た。

 

 

「望・・・お前のような眼を、いやこの場にいる誰の眼にもだが、私は知っている。それは空条家の、ジョースター家の血族がしている眼だ。私の祖父はそれを『黄金の精神』と呼んでいる。他の四人も持っているその意思はどんなに美しい宝石や財宝よりも気高くずっと価値のあるものだと私は思っている。その気高い意思を枯らすことこそ人間としての生き恥だと思っている。だから望・・・私の返事は『OK』だ。私は・・・私たちは全力で君たちの大切なものを守ろう」

 

 

承太郎の熱弁に望は上げた頭を再び下げてしまった。そして、ぽろぽろと涙が出た。これほど優しい人に会えて心の底から感謝したからだ。

 

 

「ありがとうございます・・・ありがとうございます・・・本当に本当にありがとうございます・・・・・」

 

 

涙を流しながら言った望の一言はこの場にいる誰の心にも染みこんだ。

それは人のかけがえのないものを背負い込む責任から来るもので、承太郎たち五人以外の人達は改めてその責任の重さを再確認してより一層自分の行動が機敏になっていった。

承太郎たちの表だった協力がこれから彼女たちにどう影響するかはこの物語の先に期待するとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから夕方。この時間帯には承太郎たち五人は既に帰っていて、時間的にそろそろ医院を閉めようかと思ってシャッターを下ろそうとする命だが、ふとここに一人の外国人が来ていることに気が付いた。

金髪でかなりのパーマがかかっている若い男性が一人で命のところまでやって来たので命は一応警戒するが、その男は礼儀正しくお辞儀をした後に丁寧な言葉使いで話した。

 

 

「こんばんは。こんな時間にやって来てしまってすいません。僕は“ジョルノ・ジョバァーナ”と申す者です」

「ジョルノ・・・・・ジョバァーナ・・・確かイタリアギャングのボスですよね」

「はい、その通りです」

 

 

丁寧な言葉使いで挨拶したその男性、ジョルノ・ジョバァーナが何故自分に会いに来たのか不明で頭に疑問符だらけになる命だが、ジョルノは頭の中がとっ散らかっている命に手早く用件を言った。

 

 

「実はこれを返すためにわざわざここに来たのです」

「・・・ッ!!これは・・・まさか“カフカ細胞”!!?」

 

 

用件を言いながらジョルノは自分のポケットから肉片が入った試験管を渡した。しかもその試験管は先日研究所から盗まれた試験管である!

杏の細胞が入った試験管を唐突に渡されて驚く命は驚きのあまり思考回路がうまく回らない状態で彼が今知りたいことをジョルノに問いかけた。

 

 

「あなた方が持っていたのですか・・・これを」

「はい。深刻な麻薬中毒者を治すために少々使わせてもらいました。もう僕らが使う用はなくなったので返します」

「何故!?何故ですか!?何故あなたはわざわざ返してくれたのですか!?これを使えば死者だって生き返らせる、死なない生物を生み出せるはずなのにッ!!!あなたに莫大な富をもたらすそれを何故そうあっさりと手放せるんですか!!?一体何故!?」

 

 

ジョルノがその細胞をあっさり返したので、命は彼がどういう神経をしているのか全くと言っていいほど分からないのである。

確かにその通りである。普通ならそれを利用して命たちが手に負えなくなるほどの悪事を犯したり、財閥や豪邸が建つほどの莫大な富を得られたりするわけだが、ジョルノはそうしなかった。

その理由を命がジョルノに聞いたところ、彼は昼間の承太郎がしていた眼と同じ感じを漂わせながら話した。

 

 

「何故?それはこの能力の持ち主の“意思”が分かったからです。これは“死者を生き返らすためのもの”ではなく、“生者を生かすためのもの”だからです。“彼女”の意思は私利私欲のためにあるんじゃない。生きとし生ける全ての生物の純粋な心からの願いを叶えるためにあるんです。確かに僕の知人は亡くなっていますが、仮にもし、彼を生き返らせたものなら、彼はきっと僕の顔を殴り、『死者を冒涜するんじゃあねえッ!!!』と怒るでしょう」

「・・・・・」

「僕は正しいと思えるような道を常に歩いていきたい。だからこうしました。“彼女”の意思を侮辱させないために」

 

 

ジョルノはその能力から杏の意思を読み取り、彼女を尊重するために悪用することなく命に返したのだと言った。

これを聞いて命はジョルノが何て純粋で爽やかな人なんだと思った。彼の意思が承太郎と似たものを感じ取った後、その試験管を懐に入れて医院の中に入った。

 

 

「“彼女”があなたのような人の手に渡ってよかったです」

 

 

医院に入る一歩手前で命はジョルノに感謝の言葉を贈ると、ジョルノは口角を上げてふっと笑い、夕日が染みている街へと消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何ッ!?スコッチ・ウイスキーがやられただとぉッ!??」

「はい。そのようでございます。襲撃した五人の内幹部二名、殺し屋スコッチと彼の資産で雇った面識のあるシアンの四名が死亡。彼が雇った音石明という日本人のスタンド使いが拘束。そして、敵の死者の数、0名。以上が報告されていることです」

 

 

某国某所のビルの社長室でその社長、エッグプラントが自ら送り込んだ刺客たちが全滅したことを部下から知らされていた。

そんな中で手練れのスタンド使いであったスコッチが破れたことにエッグプラントはパニックになってしまう。

 

 

「あのスコッチがだぞ・・・あんな手練れのスタンド使いがどうして敗れるというんだ!?」

「おそらくあの学園にいるスタンド使いの助力もあってでしょう。いずれにしろあの学園の戦力が未知数のままでは我々も手の出しようがありません・・・」

 

 

10年間も殺し屋を営んでいたにもかかわらず誰一人たりとも殺せていないことにパニックになるエッグプラントにその部下の金髪で後ろ髪を束ねている若い男は尤もらしい理由を述べた後、ある提案を持ちかけた。

 

「そこでです。ここは私の提案に乗ってみませんか?」

「・・・??それは何だ?“セサミ・ストリート”??」

「我ら“ワイルド・ドッグ”の第十師団を向かわせるのですよ」

「第十師団か・・・おもしろい。あの『最弱軍団』を使えばおそらく・・・」

「ええ・・・おそらくです。彼らを使えば確実に見えてくるものがあります」

 

 

その男、セサミ・ストリートはエッグプラントに『最弱軍団』こと第十師団を送り込むことを立案して、許可を得た。

そして動き出す謎の組織“ワイルド・ドッグ”の第二の刺客。闘いは次第に激しさを増す。

 

 

 

 

 

To Be Continued・・・・・⇒

 

 

 

 

 

次回予告

 

望 『であるからして・・・』

 

承太郎 『何か妙だな・・・』

 

エルメェス 『エンポリオ!何してやがる!!』

 

エンポリオ 『僕も何が起こったか分からない・・・』

 

アナスイ 『全てがおかしい・・・おかしすぎるぞ!!』

 

徐倫 『これは一体どういうことなの?』

 

??? 『ようこそ・・・「俺の世界」へ・・・』

 

『第弐拾弐話  コントラスト・コネクトその①』

 

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