〔スタンドパワーやスピードが並より劣っているから、戦闘では役に立たず、“格下”と呼ばれているが、この俺がいる限りそんなことはない。スウィート・・・おぉスウィート。お前は強い・・・何処の誰よりも・・・圧倒的に・・・誰も敵う訳ないんだ〕
遠距離パワー型のスタンド、“コントラスト・コネクト”は承太郎達の近くの建物の上の給水塔に身を潜めながら彼らを見張っていた。
自分の部下の無敵さを誇って勝利を確信している“コントラスト・コネクト”。内々隠れながら様子を窺っている彼に誰も気付かず、その局面は動きつつあった。
ビシュ ビシュ ビシュ ビシュ
ドガァ ドガン ドガガガン ドグァァン
「・・・・・・・・ッ」
千里は焦りつつあった。致命傷を負わしたのにいきなり敵が全快になることにだ。今だって小石を飛ばしてダメージを与えるつもりだったのに、全て未知の力のせいで彼女の体をすり抜けて一直線上の車や建物にぶつかっている。
スウィートはというと、彼女が攻撃したということにまるで気付いていないような顔つきをして紙袋から焼き芋を取り出して食べているのだった。
「駄目です。複数攻撃でも聞かないなんて・・・攻撃手段がこれじゃあ見つからない」
「いや・・・そうでもない。さっきの攻撃で水晶玉の数が減った。能力を発動すると数が減る仕組みらしい」
「なるほど・・・つまり水晶玉の数を0にして能力を使えなくさせるということですか」
「まぁ・・・そういうことだ」
スウィートに命中しないことに対して腑に落ちず焦る一方の千里は頭を抱えて悩む。
だが、流石は百戦錬磨の承太郎。このタイミングでスウィートの能力の法則を見破る。
その弱点とも言えうる法則を利用すれば彼女を倒せると考えついたエンポリオだが、スウィートは口に芋をほおばったまま不敵な笑みを浮かべた。
「フフフフフ・・・ゴクリ・・・確かにボクのいうとおりだけど・・・できると思っているの?あと・・・・・15・・・そう15よッ!それに能力で消滅した私のスタンドはきっかり5分で再生する。つまり、あなた方は私を倒せないッ!!」
フフフ・・・私の勝ちよぉーーーーーーーーーーッ!!と大胆にも勝利宣言をするスウィート。確かに彼女の言う通り正攻法では勝ち目はない。5分間何十回も彼女を負傷させる攻撃を与え続けなければならないからだ。しかも『反比例の世界』によりスタンドは弱体化していて、敵のスタンドの方が強い。これほど詰んだ戦況に多くの人が匙を投げることだろう。
しかし、「黄金の精神」を受け継いだ彼らは例外だ。
「“たった5分”でしょう!!それぐらいの時間があれば、あんたを殺(や)れることなんて、造作もないわ!」メシメシメシ
ゴォアアア
「WAOッ!すごいバカ力」
「千里ッ!?ここ一帯を更地にする気!??」
千里は自身の正義の心を燃焼させ、付近にあった乗用車を片手で持ち上げた。これを見てスウィートは驚嘆して拍手をした。
変わって親友の晴美は破壊規模が膨れあがる気がして内心ひいたが、千里はお構いなくそれを思いっきりスウィートに目掛けてブン投げた。
「ウナァッ!!」
ニヤリ「The World Rotates around Me(世界は私を中心に回ってくれる)」
バァ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ
バホォォオオオオオオオオオオオオォン
スウィートは投げられた車に接触する直前、小さい声で英文を言い、何事もなかったかのように佇んでいた。
と同時に、スウィートの後方で車が爆発炎上し、水晶玉が1つ消えた。
「フン。無駄無駄。前と全く変わってな・・・「ドスドスドスドスドス」・・・ぶはぁ!?これは・・・車軸ッ!!考えたわね・・・木津千里・・・」
車との接触を無効にしたスウィートだが、千里はこれだけのために投げたのではないッ!!
二次災害・・・つまり車の爆発によってブッ飛んだその車の部品が彼女を攻撃したのだ。しかも投げる速度も速いので、部品が辺りに飛び散りやすかったのだ。
勿論、爆発や飛び散った部品を操れるわけではないので、道路はめちゃめちゃで、ビルのガラスも全部割れて、中には火災が発生するような大惨事になったが、その代わりにスウィートは爆発で後ろから来た車軸で喉や腹部を貫通してしまったので重傷を負った。重傷を負ったスウィートはその場で倒れ込むが、千里は間髪入れずそのまま彼女の元に歩き出した。
「まだよ・・・まだあと14回。きっちり15回死んでもらわないと気が休めないのよ。私は!!!」
千里は走りながらスタンドを出現させ、倒れているスウィートに右手の日本刀を高く振り上げ、斬ろうとする。
だがその前に、水晶玉が1つ消え、体に突き刺さっていた車軸が全てとれて、立ち上がるスウィート。そして、千里の膝の裏の箇所に後ろから水晶玉のスタンドをぶつけて、千里を倒れ込ます。
バギィィィ
「・・・ッ。クソ野郎・・・」
「もう3分経過してますよ。生意気な口を叩いた割には案外弱いですねぇッ!!」
「ぐげっ・・・ぶぅぅぅ!!」
膝にダメージを受けた千里にスウィートは続けざまに彼女の顔面に水晶玉を叩き込んだ。
そして千里は後ろに大きく仰け反り、きりもまれながら吹っ飛ばされた。
「スタンド能力は、スタンドを操る本体の心からの願望から生まれる傾向がある。殺人鬼が人を殺すために特化した能力を身に付けると言ったところよ。私は逃げたかったんだ。背負いたくなかったんだ。両親を殺してしまったという罪にね。ほんの些細なことよ・・・でもストレスで、つい衝動的になって殺しちゃったんだ・・・。それ故にこんな能力を得たんだわ。結果は良い方へ・・・良い方へ・・・流れ込んでいくッ!!責任や罪といった私にとって不都合なものを排除して気ままに私は生きるッ!!だからあなたたちが私に勝てるはずはないのだァーーーーーーーーーーッ!!!」
「・・・・・・・・」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
先程の攻撃で顔面や膝裏から血を流して倒れている千里を放って、スウィートは自らの過去を暴露し、そこから生まれた“オン・ユア・マーク”の能力についてしゃべり出した。そのことを踏まえて彼女は指を指しながら承太郎たちに自分を倒すことは出来ないと宣言する。
しかしながら、姿を現したときと違って、今度は自惚れを感じず、自分の能力に対する自信のようなものを感じた。圧倒的『凄味』を醸し出していた。
だがそれでも承太郎は、変わらず顔をしかめて彼女を睨む。
「全ての事柄に永遠がなければ最強もない。戦乱の世・・・幾度も支配者が時代と共に移り変わったときのように、物事には必ず欠点が存在する。お前の能力でさえもだ・・・」
「ええ・・・そうね。でもついても無駄だから最強なのよ」
(・・・・・やれやれ。この戦いで必要なのは奴自身の――気付いているか、気付いていないかは別として――弱点を見切ることだな。まだ別の箇所があるはずだ・・・別の・・・致命的な部分が・・・)
弱点がないことを指摘するスウィートに承太郎は弱点はどこかにあると反論する。彼らにとってそれを見つけなければ、ロシアンルーレットのようにじわりじわりと敗北が押し迫ることになる。そのため、必死にヘタを探す承太郎たち六人。その中でようやく脚が完治した奈美があるものを見つけた。
(あれ・・・・・?これ・・・・・って・・・・・??)
彼女が見たものはスウィートの右頬に小さい痣ができていることと、彼女の服の右横腹部分が軽く破れていることだ。
一見どうでもよい、スルーしても良いことだが、これらから彼女の能力の“矛盾点”を知ることになった。
(ちょっと待って!?不都合な事柄をなかったことにできるなら・・・何でその二箇所もなかったことにしなかったんだろう・・・・・・・・もしかして・・・・・そういうこと・・・なら見つけた・・・自称無敵の彼女への突破口を・・・)
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
スウィートに対する2つに違和感からある仮説が浮かんだ奈美。その彼女はその仮説を元に一つの作戦を考えつき、愛や晴美、千里にひそひそ話でそのことを伝えた。
「えぇ!?それで倒せてしまうのですか?」
「うん・・・確証はないけど・・・これしかないッ!!」
「だったらやるしかないわね。千里」
「えぇ。」
伝わった作戦に戸惑いを覚える愛、それとは対照的にやる気のある晴美と千里。確証が取れていないから愛と晴美、千里間でリアクションが違うのだが、四の五の言っていられる状況ではないのは確かなので一致団結する奈美たち四人。
それを見て、スウィートは彼女らが話している内容に訝かしめ始め、表情がきつくなりだした。
「何をするかは分からないけど、無駄よ。私の能力に勝てるはずがないッ!!」
もう余裕の態度はスウィートから消え、今は無意味に悪あがきをする彼女らに苛立っていた。
そして、作戦の皆を聞いた愛は彼女に向かって『ACT1』を出しながら飛び出した。
「くらってください。針の乱射を!!」ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
「笑止笑止笑止笑止笑止ッ!!!そんな単純な攻撃で私を倒せると思っているなんて笑ォ~~~~~~~~止千万よぉーーーーーーーーーッ!!!」
「その言葉・・・そっくりそのまま返すわ。私たちの作戦は“もう既に”完了しているのよ!」
「・・・ッ!?何ッ!」
愛が乱射した針を見て、呆れかえったスウィートだが、即座に千里が背後に回っていたので驚き、そちらへ振り向いた。
彼女が手に持っていたのはたくさんの黒く荒い感じの「棒」だった。この棒は晴美の“イマジネーション”で描いた「棒」である。彼女の「絵」は元々脆くて壊れやすいので、『この世界』ならば、充分に人を殺傷できるであろう。
それを千里は愛の針と挟み撃ちの形になるようにたくさんブン投げた。
「くらいな、くそアマァーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」ブンバァアアァ
(何・・・ですって・・・。こ・・・これって・・・『まずい』・・・『まずいわ』ーーーーーーーーーーーーーーッ!!)
「これが奈美さんのアイデアです。スウィートさん・・・これなら『かわせ』ますかぁーーーーーーーーーーーーーッ!!」
ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
ドプゥゥウアアアァァア!
「がふぅぅぅぅぅ・・・」
千里が暴言を吐きながら投げた棒と愛のスタンドが飛ばす針を見て、スウィートはここに来て初めて青ざめた。ここに来て初めて生命の危機を感じたのだ。
そして次の思考をする前にスウィートの体中がハリセンボンのように棒や針で串刺しになった。
体中から血を吹き出して倒れたスウィートだが、“水晶”が一つ割れたので、再び起き上がった。だが起き上がったスウィートは全快しておらず、少しだけしか回復していないようだ。
心臓には到達してはいないが、もはや戦闘不能に至るほどの重傷を負っていた。
「ゲブッ・・・・・何故・・・・・・・・わた・・・しが・・・・・こんな・・・奴等に・・・・・ガボァアアッ・・・ハァ・・・ハァ・・・重・・・傷・・・ヲ~~~~~」
「これがあなたの弱点です。予想した通り・・・あなた・・・無効にできるといっても“物理的回避『可』能”なことだけでしょ。頬の傷や破けた服が教えてくれました。どんなこともなかったことにできたはずなのにその二つだけはできなかった・・・つまり、その二つは物理的に回避困難だと言うことでしょう。どの時点だかは知らないけど、あなたの能力の影響で攻撃をかわし続けていたのでしょう?でも四方八方から来る攻撃や超高速の攻撃はどう転ぼうとも何度リトライしてもかわせることはできなかった、ということですよね」
ふらつきながらも立ち続けているスウィートに奈美は自分が予想した彼女の弱点を言った。その予想が的をいったために今回の奈美の作戦は成功したのだ。
奈美の作戦に嵌まって重傷を負ったスウィートは踏みとどまれない足で立ちながら苦し紛れに喋り出した。
「そうぅぅぅれがどぉぉおおしとぅぅぁぁああああ!!負けてはいない!!負けてはいないぞぉぉぉ!!!ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・この私わァーーーーーーーーーーッ!!!」
「醜いですね。戦いに対して・・・・・愛ちゃん・・・彼女を“楽にさせてあげて”・・・」
「・・・・・ハイ」
瀕死の状態にもかかわらず怒鳴るようにスウィートは奈美たちに対抗し、戦うことを止めるつもりはないらしい。それを見て憐れと思った奈美は愛にトドメを刺すように頼んだ。
命ぜられた愛は『ACT1』を出して重工をスウィートの中心、つまりは心臓に狙いを定めて発射した。
ズドォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
心臓に針を打ち込まれたスウィートは叫ぶまもなく一気に彼女の目から生気を失って、地に這いつくばった。
その姿を見て奈美は不思議と彼女のことを自分のことのように思い馳せていた。
「“スタンド能力は本体の心からの願いから生まれる傾向がある”って言っていたけど・・・まさにその通りだね。私の能力も“みんなみんな・・・私と同じ風になればいいのに”って思ったもの。あなたもそう・・・きっとどこかで思っていたのね・・・」
奈美の台詞は救急車やパトカーのサイレンの音でかき消されて聞こえなかった。もしかしたら、どうでも良くて彼らの耳には入ってないだけかもしれない。
とにかく、彼らはスウィートの亡骸を背にまた別の場所へ移動するのであった。
「自分の罪を受け入れたいっていうことを・・・」
To Be Continued・・・・⇒
――プロフィール――
・スウィート・ポテト 20代前半。女性。
数年前に両親を殺した過去を持つ“ワイルド・ドッグ”の第十師団隊の一員。焼き芋が大好き。
元々のスタンドが非力でリーダーがいないと何も出来ないため度々他の仲間達に馬鹿にされている。
スタンド名:オン・ユア・マーク
【破壊力:D スピード:D 射程距離:D 持続力:C 精密動作性:C 成長性:E】
能力:都合の悪い結果をなかったことにする スタイル:近距離操作型 分類:道具型
次回予告
??? 『スウィートの敗北は本体の姿をさらしたことにある』
望 『体がうまく動かせられない・・・!?』
アナスイ 『ダメだ!水の中に入れねぇッ!!』
可符香 『いくら不死身でも空気供給ができなければ先生は・・・』
エルメェス 『打つ手が何もねぇーーーーーーーーーーッ!!!』
??? 『ウシャァーーーーーーーーーーッ!!』
『第弐拾四話 ブルー・インパクト』