「クッソ~~~~~。どうしてなんだ・・・どうして俺ばっかこんなにツイてないんだ・・・」
承太郎や望のチームがいる同じ街のカフェのテラスで男が一人で座り、自分の目の下をボリボリと掻きむしっていた。その表情は歯を強く噛み締めるほど険しかった。
「あの・・・お客様。大丈夫ですか?」
「ッ!!問題ない!!ほっといてくれ!!」
「し・・・失礼しました・・・!!」
そんな彼の様子を心配して男の店員が声をかけると、一瞬その男はビクついたかと思うとその店員を下げさせた。
彼の命を賜った店員は滑るように店の中に戻ったが、依然としてその男の表情は変わらなかった。
(ケッ・・・クソが。それはさておき何たることだ・・・・・あろうことか部下が全滅するだなんて・・・あの役立たず共がッ!!この俺に恥をかかせおってッ!!)
心の中で自分の部下の陰口を叩いたその男はここに来る前に“ある男”が言った台詞を徐に思い出す。
『いいか・・・パステクアー。お前のスタンド、“コントラスト・コネクト”は確かに想像する以上に強い。だがどんなに強かろうがお前の自身の精神が強くなければお前は負ける。彼等に対して敬意は表しろよ』
『ああ!?何俺にガン飛ばしてんだよ・・・年下のくせにナマ言うなよ。全く、何でこいつが俺より上なんだよ・・・普通逆だろッ!!逆ッ!!』
『フン・・・・・もう少し話の筋が分かる奴だったら、ピンとして莫大な富を得られるのに・・・・。一応忠告しておくぞ・・・“パステクアー”』
『ケッ・・・余計なお世話だよ!!セサミ・ストリート!』
男、パステクアーは自分が承太郎たちに戦いを挑む前、組織のアジトにて自分の上司であるセサミ・ストリートに言われた忠告を思い出し、頭を抱えて項垂れていた。
今の自分の状況が彼の言う通り芳しくないので、パステクアーは眉を引きつらせながら後ろ指を指されている気がして内心焦りまくる。
(クソッ!!敗北感を感じるぜッ!!だが俺は間違っているわけではない。そのはずだ。俺は20年も前からパッショーネに所属し、ボスの部下であった俺の方が経験は上だ。アイツが下だッ!!)
彼が言ったことが実際に起こったため、目から鱗が落ちそうになるパステクアーはそれをすんでの所で完全に否定する。彼のプライド――とりわけ年上としてだが――があって、そこだけは譲るつもりはなかった。
そして、紅茶が入ったカップの取っ手を握り潰すほどの鬼気を発し、この場にいない上司や敵にに向かって睨んだ。
(グギギギ~~~。俺一人でやってやるよッ!!見返してやるッ!!吠え面かかせてやるッ!!俺の凄さを見せつけてよぉ~~~~~)
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「どうだ藤吉、奴はいるか?」
「いないですね。今のところ・・・・・ですが、代わりに先生や徐倫ちゃんたちを見かけました。全員無事のようですね」
「なるほど・・・・・そうか」
承太郎たち六人は現在スウィートと戦闘した場所から数百メートル離れた街角にいた。敵の次なる襲撃に備えて遠隔操作できる晴美の“イマジネーション”を上方に飛ばして見張り役として用いた。
残念ながら敵は見つけられなかったが、代わりに望たちのチームを発見すると、晴美はそれを承太郎に伝えた。
「よし。まずはあいつらと合流することにしよう。合図を送ってくれ」
「合図ぅ??いや~~私なら合図より『絵』を送るね」ドシュ ドシュ ドシュバ
晴美の報告から承太郎は望達と合流することを第一に考え、晴美に何かしらの合図を送るように指示するが、彼女は首を傾げた。というのも彼女は合図なんかよりも自分が描いた『絵』を送った方が良いと思っていたからだ。
自らのスタンドの指で素早く緻密に鳥の絵を空中に描いた。その絵は彼女の能力によって生を宿し、望達の方角へ羽ばたいていった。
鳥の絵がビルが建ち並ぶ通りを飛び去った後、この場にいる六人全員は全身に寒気が走るレベルの殺気を感じ取った。それを感じ取り真っ先に先手を打つため千里はガードレールの一片を外し、殺気がする方向へそれを突き刺すように投げた。
だが、圧倒的スピードとパワーを持ったガードレールは容易く何かによって弾かれた。その主は勿論スタンド―“コントラスト・コネクト”―だ。
『ぬるいな・・・ぬるすぎて実力の50%も出せなかったわ。雑魚めッ・・・』
「きっっっっさまァ~~~~~~~~ッ!!!イワセテオケバァ~~~~~~!!!」ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド
「あ・・・あれは・・・あのときと同じモードッ!?」
「千里ちゃんッ!?まさか・・・“アライヴ”を使うつもり!?無茶にも程があるわよ!!」
「おい!!これはどういうことだ・・・木津は何をする気だ!?」
「承太郎さんそれは・・・・・・・・ッ!!うわァ!!」
ドヒュウウウウウウウウウウウウウウウウン
“コントラスト・コネクト”は千里を嘲笑し、彼女はそのことで頭にきたはずみでスタンドのオーラを真っ黒に染めるだけではなく、エルメェスとの戦いで少し見せた髪が紅くなり、額に眼が現れる現象を起こし、彼と対峙する。
エンポリオと奈美はこのモードを見て驚きを隠せず、承太郎は晴美に彼女のこのモードのことを聞くが、晴美がその返答を言う頃合いで“コントラスト・コネクト”と千里が互いに接近して怒濤の殴り合いを始めた。
だがその影響で突風が吹き荒れて承太郎たちも含む当たりのものを吹き飛ばした。
この殴り合いはどちらかというと“コントラスト・コネクト”が一方的に攻撃を行っているが、千里は“サムライハート”の刀と斧を使い的確に彼の拳の一つ一つを防いでいる。
〔この女・・・俺のラッシュを二つの得物で紙一重の差で防いでるんじゃねぇ・・・まるで俺の拳がそこに来るのを知っているように防いでやがる・・・何者だこいつ・・・ただ者じゃねぇ!!〕
千里が自分のラッシュを完全に見切っていることに気付いた“コントラスト・コネクト”は一瞬困惑した。が、すぐさまフックをかけて牽制する。
けれども、千里の第三の眼がギョロギョロと動いた瞬間、その攻撃を高速で躱す。膝蹴りやエルボー、回し蹴りなどの手も試みるが、全て防がれるか躱されている。
「“アライヴ”・・・それは『予知』能力ッ!!生前杏ちゃんの瞳に宿ったスタンド能力。何故2つもスタンド能力を持っているかは知りませんが、とにかく!数秒先の未来を見通すことができるようです。尤も、こんなことができるのは千里と左眼の角膜を移植したあびるちゃんだけなんだけどね・・・」
次元が全く違う格闘をしている“コントラスト・コネクト”と千里を二人によって飛ばされた車の陰から眺めている晴美は承太郎に彼女が使う新たな能力について説いていた。
「だけど無茶すぎるッ!!これの使用中はあびるちゃんの場合、左目から血が滲み出るのに対して千里の場合、スタミナ消費が激しい。即座に未来を見通せる分、性能が良い代わりにバテやすくなるリスクをもつのに・・・これほどの長時間の戦闘だともうもちませんよッ!!」
晴美からあのモードが短時間しか続かないことを聞くと、確かに千里の額からドロドロと汗が流れ、息を荒げているのも分かる。心なしか徐々に“サムライハート”の動きが悪くなってきた。
ドゴッ ドゴァ
「こふッ!?ぼは・・・。」
『おいどうした?切れたのか?アガっちまったかぁ・・・?』
流石の“コントラスト・コネクト”も千里の変化には見逃すわけもなく彼女の必死の攻防をすり抜けパンチを入れる。
千里の土手っ腹に拳を叩き込んだことで口に溜まっていた唾が飛び散り、大きく彼女は仰け反ってしまう。
この時彼女の持続時間が限界だったのか、額の眼が閉じかけ、髪も元の黒色に戻りかけていた。
しかしッ!!
ギャァアアン!
「うなあああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」
『何ッ!?「ドギャアアアアアアアアン」ぶふぁあああッ!!』
あろうことか千里は、殴られてしまって膝から崩れ落ちると思っていたが、まさにその逆!!彼女が今持つ余力全てを使い、スタンドで“コントラスト・コネクト”を叩き斬って吹っ飛ばしてしまう。
完全に油断していた“コントラスト・コネクト”は防御も受け身もできず、後方の建物に何度もぶつかりながら飛ばされていった。
力を使い果たした千里はより息を荒げ、右膝と左手を地面につけて倒れ込む。もう完全に“アライヴ”は解除されて元の姿に戻っていた。黒いオーラも発していない。これが彼女の限界だ。
(思っていたほど体力を使ってしまった・・・。私のスタンドも・・・体も・・・どれもこれもボロボロね・・・・・。だけど手応えはあったッ!確実に!100%!私に斬られて死んだ!)
全身に力が入らなくなるほど疲労した千里はもうろうとする意識の中で土煙を上げている建物も見て敵を仕留めたことを何度も念じた。
そして、立ち上がるために左手でアスファルトを掴んだ際、左手に痛みが生じた。どうして・・・と思った千里は左手を見ると、ドクドクと血が出ていた。加えて左手だけではなく、右膝からも血が出ていた。
(う・・・嘘。アスファルトで切れた・・・・・私の肉が・・・。)
左手と右膝がまるで鋭利な刃物にでも斬られたキズを負ったことに千里は動揺して、疲労が溜まった脚でゆっくりと体を起こそうとすると、足が靴ごと斬れて血が噴き出た。その痛みでバランスを崩した千里は背中からこけて、その時背中の肉が服ごと地面に食い込んで裂ける。
「うがぁああ・・・痛い。背中が・・・。くそッ!!野郎はまだ生きているのか!?」
『“一手”・・・俺の方が速かったようだな。えぇ?』
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
体の至る箇所から出血している千里の他に承太郎たちや周りの赤の他人達も例外なく特に足が靴ごと斬れて出血する始末。そんな彼等を眺めながら、“コントラスト・コネクト”は吹っ飛ばされた道を通って、こちらに来た。その頃には地面で身を切る現象は収まっていた。
『俺のスタンドの能力は自動的に“パワー”、“スピード”、“耐久性”の3つを反比例にしちまうが、それ以外は調整が可能だ。尤も“鋭さ”を反比例にすると、つまりは、射程内の全ての平らなものが刃物になる・・・。それだけは禁じ手だったのによぉ・・・。だって危ねぇーだろぉ。座ってたらケツが切れるんだぞ。痛い痛いそんなの・・・嫌ッ!!だが!!お前の得物から身を守るにはそうするしかなかった・・・。だから使った!』
彼曰く禁じ手を使わざるを得ない状況だったので、短い間だけその能力を使った。“鋭さ”を解除した後、“コントラスト・コネクト”は、何の前触れもなく千里に拳を叩き入れて吹っ飛ばした。
バゴバゴ バシ ゲシィ ブゴッ グゲン ドシュバ
『今度は俺の番さ!!さっきはよくもやってくれたなぁ!!?首の骨が折れかけただろうがッ!!!このクソペチャパイストパ女がぁぁああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!』ドッゴォーーーーーーーーーーン
ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴ ドスドバ ドゲ ドギン
“コントラスト・コネクト”は千里を吹っ飛ばした後、超スピードで吹っ飛ぶ彼女の背後をとり、即座に蹴り上げて吹っ飛ばし、また彼女の背後をとって、攻撃する。これは端から見ると、彼女を取り囲むように奴が連続攻撃を仕掛けているように見える。それぐらいの集中攻撃を食らわされ、体中の骨が軋み、内臓が傷つき、吐血しだしたときに“コントラスト・コネクト”は右大振りのパンチを食らわせ、千里を通りの向こうの彼方へ吹っ飛ばした。
血を吐きながら千里は街通りの上空を目にも見えない速さで飛ばされていたが、ふと気がつくと誰かに抱かれていた。
「やれやれ無茶しましたね・・・・・ここからは私たちも参戦するのでご安心を」
「先・・・・・生・・・」
時速何百キロで飛ばされていた千里を望は抱きかかえて一緒に来たアナスイ達に彼女を渡して介抱させた。
そして、負傷した千里の肩を回して近くの日陰に運ぶアナスイとエルメェスを除いた他の四人は前へ出た。
「さあ・・・“コントラスト・コネクト”。とうとう合流しましたよ。今の内なら命だけは助けてあげなくもないですよ。勿論嘘ですが」
『ハッ!!命乞いなら貴様等だろ?この場において誰も俺に勝てないからよ』
「いやいや。私たちには既にプランがあります。貴方を青ざめさせるプランがねぇ・・・」
望の提案(嘘)に“コントラスト・コネクト”が噛み付き、なおも余裕でいるが、望はそんな奴の度肝を抜く計画があることを宣言する。
その宣言と同時に奈美が先陣切って“コントラスト・コネクト”を背後から奇襲をかけた。
だが所詮普通レベルの奈美と“オレンジミント”なのでその奇襲が成功するわけもなく、“コントラスト・コネクト”は彼女の腹に鉄拳を浴びせ串刺しにした。
『何の真似だ?こんなチープな手に引っかかるとでも?ユーズフル・・・まさに鉄砲玉だなこいつは・・・』
串刺しになって吐血する奈美に気にせず、“コントラスト・コネクト”は腕に彼女を貫通させたまま望にあきれながら話し出した。
奈美を罵倒した後邪魔な彼女を振り払おうとしたとき、奈美は重傷の体ではあり得ないほどのパワーで“コントラスト・コネクト”の自分を貫いている腕を自分のスタンドで握った。
「鉄・・・砲・・・玉・・・!?褒め言葉よ・・・。一度命を捨てた報いとして死なない呪いにかかったわたしにはね・・・・・」
『き・・・貴様・・・離れろ!このクソアマッ!!クソが・・・・・ハッ!!「グルルルン ビシィ!」何・・・バカな!どうしてなんだ・・・
腹を貫かれても苦しまず、うめき声一つあげない奈美は“コントラスト・コネクト”の腕をスタンドを用いて掴みながら睨み続ける。そんな彼女に苛立った“コントラスト・コネクト”はスタンドの手を緩めない彼女を地面に叩き付け、彼女の首の骨を折った。首が折れ曲がったことで“オレンジミント”のパワーがなくなり腕の拘束が解けたので簡単に奈美を振りほどいた。
しかしそれを待っていましたと言わんばかりに奈美を振りほどく隙を突いて徐倫とあびるのスタンドに“コントラスト・コネクト”は拘束されてしまう。
だが、一つの疑問点が彼をつっかえさせるのだ。それは自分のスタンドが弱くなっていることだ。いつもならいくら何でも拘束を逃れることぐらいは出来たはずなのにだ。
その時に折れた自分の首を戻して奈美は“コントラスト・コネクト”を見ながら話した。
「捕えた・・・・・ならもう終わりよ。あんたを待つのは悲劇だけだ」
『何だと!?化けもんかよ貴様は・・・。くっ・・・ませるんじゃねぇよクソガキ・・・グッ!?おい・・・これって・・・ぐほおおおおおおおおおおおおおおお!!』
「
首の骨が折れたにも関わらず奈美が生きていて、且つませたことを言ったために、頭に血が上る“コントラスト・コネクト”だが、突如何かに気付き、苦しみ声を出してもがき始めた。しかし、もがいても二人のスタンドの拘束は解けるはずもなくその場に留まっている。
そんな彼を奈美は上体を起こしながら笑って彼が苦しむ訳を説明した。
簡単に要約すると、『普通アレルゲン』の感染による症状で全てのステータスを“普通”にされたので何十キロとあった射程が数メートルに縮んだので本体とスタンドがその距離になるまで引き合うのだが、スタンド自身は“ラヴマシーン”と“ストーンフリー”に拘束されて身動きが出来ない。それで本体が猛スピードでこちらに引き寄せられているのである。そのため何かと衝突してか痛がり苦しんでいるのである。
そして、ものの数十秒で路地裏が騒がしくなり出し、そこから生ゴミをつけたまま転がってきた細身で褐色の男が現れた。
拘束されている“コントラスト・コネクト”の近くで伸びている体の細いガングロ男ははっと目覚めると怯えたように後退りする。
「ひぎぎゃぁあーーーーーーーーーーーーーーッ!!!うああ・・・わあああぁぁ!!お命だけわーーーーー、僕の命だけはご勘弁をををーーーーーーーーーッ!!」
「ん??何だこいつは・・・さっきまでの強気が嘘みてーに掌返して臆病になったぞ・・・」
「ああ承太郎さん。確かにですね。これをあれ・・・『内弁慶』というんでしょうか?」
「きっとそう呼ぶと思いますよ先生」
「いたんですか常月さん・・・」
「えぇ・・・“ずっと”」
さっきまで威勢が強かったが、本体を晒した途端急に腑抜けになる男、パステクアーに周りの皆は気味が悪くなる一方で、そんな今の彼を表現する諺を自信なさげに言う望の背後からまといがひょっこり頭を出して自信をつけさせる。
不意打ちとも言えるまといの登場に肝を冷やすと共に内心何故ハネデュー戦で援護してくれなかったのかを不満に思う望だが、そのことについては後で言うことにして、今は物陰に隠れていた愛を側に来させた。
「愛さん・・・彼の心を読んでください」
「はい・・・かしこまりました先生。“マシュマロウ・ジャスティス”!」
望の命令通り愛はスタンドを出し、その双眼鏡を通して彼の心の中を読み出した。そして、一通りの情報を整理した後、彼に報告した。
「先生・・・彼等の組織の名は“ワイルド・ドッグ”のようです。一瞬ですが読み取れました」
「“ワイルド・ドッグ”ですか・・・・・我々の敵は・・・」
パステクアーの心に一瞬だけだが“ワイルド・ドッグ”の名を思考したので、愛はそれを読み逃さず望に伝えた。
望は少し呟いた後、パステクアーを睨みつけると、彼はヒーヒー言って身を縮ませる。
この時にエルメェスはパステクアーの所持物を漁って、ズボンのポケットからパスポートを取り出した。
「なになに・・・“デザート・パステクアー”、エジプト出身、40歳で未婚。だそうっすよ承太郎さん」
「そうか・・・これなら財団を通してこいつの詳しい所在も分かるってことだな」
「ひぃーーーーーーッ!はわわわわわわ・・・・・僕の情報がぁ」
自分が属する組織の名だけでなく個人情報まで漏洩して赤っ恥をかくパステクアーだが、内弁慶であってか内心と表情が完全に別離していて、ビビりまくっていながら、心の中で恐ろしいことを企んでいた。
(クソがッ!!情報が漏れた!もう後がない・・・このままでは組織に殺されるッ!!殺ってやるッ!!エルメェスのバカにも気付かれていないこの短刀を使って承太郎と望の首をかっ切ってやるッ!!そして次にスタンドを拘束しているあびると徐倫もだぁ!!死ねやぁ!!!)
ドンッ
「“丸聞こえ”ですよ・・・あなたの考えが。情報吸収力が足りなかったようですね」
「えぇ!?・・・・・がばふ・・・」ドブチャ カララン
背中に隠していた短刀を密かに抜いて近くにいる二人を刺し殺そうとするが、殺す前に“マシュマロウ・ジャスティス 『ACT1』”の針を首に打ち込まれた。
愛の読心能力を忘れて思考してしまったので、彼女に企みがばれて反撃のチャンスを逃したパステクアーは打たれた後、仰向けに倒れ、その拍子に短刀を落とし、首から噴水のように血が出てきて最期はうめき声一つたりとも出さずに息を引き取った。
その後、愛は承太郎と望に只管謝りたおした。
「本当に申し訳ございませんッ!!咄嗟の判断でせっかくの情報源を殺めてしまい心からお詫び申し上げますッ!!!」
「大丈夫だ加賀。土下座は止めろ・・・。元々奴から絞れる情報はなかった。後はSPW財団に全て任せるつもりだ。尤も奴は奈美を見ていた・・・生かしておくとこちらの最大の秘密がばれるところだったしな・・・」
「うっ・・・確かに彼は彼女を直に見てましたもんね。ハハ・・・ハハ」
土下座までして謝る愛に戸惑う承太郎はなんとか彼女の体勢を上げさせて彼女に罪はないことを言った。パステクアーが腹に穴が空いたり、首の骨が折れても生きていた奈美を見ていたことを忘れていて承太郎の発言で思い出し、冷や汗をかく望。そんな望にやれやれと呆れるとき、承太郎は野次が増えてきたことに気付いてここにいる全員に伝える。
「どうやら人集りが増えてきたな・・・。路地を通って避難するぞ!」
承太郎の言葉で皆面倒ごとに巻き込まれたくないため路地へ一直線に移動して、スピーディーにこの場から去っていった。
余談だが、彼等の逃走経路上にとあるテレビスタジオがあり、そのスタジオの一室にこういうのがあった。
『超怪力の赤ちゃん登場!?』
そこで企画している番組の準備をしているスタッフと数十分前まで街通りにいたあの奥さんと赤ちゃん。奥さんは赤ちゃんを用意された大型トラックの近くに置いて、カメラはその赤ちゃんとトラックを映す。
「さぁ赤ちゃん・・・バンッてしなさいバンッて・・・ほらやるのよ」
「ドゥブ?」
「ほらほらさっきみたいにトラックを押してそこにいるおじさん達を驚かせなさい」
「ギャァァブ」
「あの~~~奥さん。ダメみたいですね。もう十分も経っていますし、ここはちょっと~~~」
「心配しないでください。やれますから!うちの子はやれますから待っててください!!やりなさい早く~~~~~おじさん達が待ってるでしょう!!私に恥をかかせないでッ!!」
先刻のようにトラックを押してこの子の凄さ(スタンド能力のせいで勘違いをしているが)を見せつけてやりたい奥さんですが、赤ちゃんは数十分もの間面白がって押す気配もない。そろそろディレクターが痺れを切らして打ち切りにしようと奥さんを呼び止めるが、彼女に聞いてもらえず、赤ちゃんを煽った。しかし決してやらない。
「早くやりなさいよ~~~~~~!!!このガキ~~~~~!!!」
「奥さんーーーーーーーーーーッ!!!ちょっと我が子になってことする気なの!??追いお前等!!見てないで早く手伝えよッ!!!」
奥さんが苛立ちすぎてヒステリーを起こし、我が子を襲おうとしたのでディレクターは彼女を止め、続々とスタッフが彼女を止めに入る。
赤ちゃんはその様子を呑気に理解できずにただ眺めていた。
To Be Continued・・・・・⇒
――プロフィール――
・デザート・パステクアー 40歳。男性。
褐色の肌と細い体をしている。癖で目の下を掻く。
残忍だが内弁慶で、面と向き合って話すことは苦手。
パッショーネ時代からエッグプラントの部下でかなりの古株。
スタンド名:コントラスト・コネクト
【破壊力:A スピード:A 射程距離:A 持続力:A 精密動作性:C 成長性:D】
能力:全ての法則を反比例に出来る。 スタイル:遠距離パワー型 分類:人型
次回予告
愛 『すいません!すいません!』
望 『加賀さんはスタンドの未熟さ、そして・・・』
承太郎 『どうやら奴の“狩場”に入っちまったようだな・・・』
??? 『もうお前は攻撃できない・・・』
??? 『おおーーーーーッ!!この“記憶”はッ!!』
愛 『許せない・・・・・私はあなたを許さないッ!』
『第弐拾六話 地獄の女神 加賀愛その①』