さよならジョジョ先生―改稿版―   作:パラレル。

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第弐拾六話 地獄の女神 加賀愛その①

通勤電車には色々な人がいます。

会社に出勤する人や学校に向かう人が意欲のあるなしに限らず玉石混交している。だが、この中でこれら以外のためにいる人もいる。

例えば、人混みの中でやる犯罪のようなものだ。

 

 

今日もそういうスリルを味わいたいと思っているバカな奴がいる。その人は人混みの中扉近くにいる女子高校生のお尻を触っていた。所謂痴漢である。

肥えた体に似合う大きくぎとぎとしているその手で触られている少女は不快に感じるが、ここで叫ぶと何か羞恥に思えて口を閉じていた。

それをいいことにその中年の痴漢は調子づいて尻を触っている手を徐々に下げていった。

その男の手が下がると共にその少女の恐怖心は高まり、彼女の大事なところを触られるとその恐怖は頂点に達した。

 

 

(いやあああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!)

 

 

彼女がこれ以上ない恐怖と戦慄を感じたとき、彼女の体から中型のプロペラ戦闘機が現れた。

しかし、戦闘機が現れたにも関わらず、痴漢や他の人達はそれをまるで知覚していないように変わらず自分の行動をしていた。

そして、出てきた戦闘機はその男の頭に機銃の銃口を向けると、躊躇いなく発砲し、その痴漢の頭を打ち抜いた。

 

 

「ぐげっ・・・べ・・・」ドシャ

 

 

男が頭を打ち抜かれて倒れたことで車両内に悲鳴が響き渡った。そして、その少女、2のへ組の加賀愛はその混乱の中、ことの一切を理解しているのであたふためいてとりあえず頭を下げた。

 

 

「すいません!すいません!」

 

 

 

 

 

 

 

 

「何ぃ!?加賀が痴漢の被害に遭った!?バカ言うなよ望。スタイルは悪い、且つ平凡な顔の彼女がそんなもんに遭うわけないだろ」

「承太郎さん・・・・・いくら承太郎さんでも言って良いことと悪いことがありますよ・・・」

 

 

愛が痴漢の被害に遭った日の午後三時半。終礼が終わり特にすることもないので帰宅しようかと考えていた承太郎に望が呼び止め、今朝のことを伝えた。

それを聞いた承太郎はびっくりし、何かの間違いか何かかと彼女を軽く貶しているように言ったので、握り拳を上げて静かに怒る望。そんな彼に「冗談だ。冗談」と承太郎は言って気を落ち着かせようとする。

承太郎に宥められても青筋を立て続ける望だが、深く息をすって怒りを外に出して、今朝の事件に対する自分の意見を言った。

 

 

「いやですねぇ。私は彼女があそこまでの被害で終わってくれたことに実は感謝しているんですよ」

「あぁ・・・確か前に木津と藤吉の二人に聞いたな・・・。木津の次に気を配っているそうだが、どういうことなんだ?」

 

 

望は痴漢一人を殺しただけでそれ以上のことはしていないので安堵するが、承太郎はそこまで彼女を気配りする意図に疑問を抱き、その真意を聞く。

質問された望は周りに人がいないことを確認すると、小声で伝えた。

 

 

「前にも伝えましたが、ここは自分のスタンド能力を知り、制御させる所でもありますが、流石に能力が強すぎたり、生徒自身が精神的に不安定だったりで、制御が難しい生徒も中にはいます。そのため、能力の暴走を抑えるためにもしっかりと監視の目を光らせなければなりません。木津さんは先日のように熱くなりやすい性格とスタンドの凶暴さ、加賀さんはスタンド制御の未熟さ、そして・・・・・」

「そして・・・・・?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女の内に眠る狂暴さ、です!!」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

愛についてのことが望の口から出てから、周りは殺伐とした空気が流れた。この淀んだ空気に流石の承太郎も汗を流し、息を呑んだ。普段おどおどしている愛が望も一瞬喋るのを躊躇うぐらい恐ろしく危険であることを知ったからだ。

人次第では震えが止まらなくなったり、気を失ったりする者もいるであろう空間で望はさらに情報を追加した。

 

 

「彼女のスタンドは彼女の精神状態で変化するのです。平常なら『ACT1』、危機が迫って恐怖心でいっぱいになると『ACT2』、そして・・・・・彼女の逆鱗・・・つまり、怒りの頂点に達すると、まるで大災害が起きたような破壊をもたらす“マシュマロウ・ジャスティス『ACT3』”になるんです。・・・はい」

「『ACT3』ッ!?・・・・・大災害だと!!?」

「表沙汰にはなっていませんが、彼女がここへ来る数日前に彼女は『ACT3』で自分の忌々しい過去を・・・彼女の自殺の原因であった母親を葬ったのです。その時の彼女は正に“地獄の女神”と形容できる様でした・・・」

「・・・・・やれやれっとしか言えんなぁ・・・もう・・・」

 

 

愛に秘められたスタンドと狂気を伝えられた承太郎はそのことを想像しただけで恐ろしく感じ、帽子の鍔を押した。

 

 

「彼女が背負った業を軽くするためにも私が手厚く見守っているんです。ですから承太郎さん。彼女のためにもお願いがあります!」

「何・・・・・?お願いだと・・・?」

 

 

愛が犯した業を教えた望は続けて承太郎に頼み事を言い出した。承太郎はそれに首を傾げながらその内容を聞いた。

 

 

「実はですね。彼女の下校を付き添ってくれませんか?」

「ん?何でまた・・・」

「彼女がまた下校時に問題を起こさないように見張るんです。私は学校でやらなければならないことが山ほどあるので、如何しても付き添ってあげられなくて・・・お願いします。勿論、承太郎さんだけでは役不足ですから小節さんも同行させますから・・・」

「ふん・・・まあいいだろう・・・・・」

 

 

承太郎は望のお願いで愛の引率を行わなければならなくてその理由を聞いたところ、望の事情もあり理に適っているので渋々同意する。

同意した彼に望は「感謝いたします」とお辞儀して、早速彼を宿直室へ案内した。

 

 

 

 

宿直室で合流した承太郎、愛、あびるの三人は現在学校から最寄りの車の出入りが頻繁な通りのバス停で先発のバスを待っていた。

夕日による陽光で顔を手で覆いながらバスを待っているときに、愛が唐突に承太郎へ話しかけた。

 

 

「すいません承太郎さん・・・迷惑をかけてしまって・・・すいません・・・・・」

「何・・・気にすることはない。私達は君達の領域に片足突っ込んでしまったからな。仕方のないことさ」

「・・・・・」

 

 

愛は承太郎にこんなことになってしまったことを謝ったが、承太郎は何食わぬ顔で彼女を気休ませる。

それを聞いて愛は暫く黙り込むが続けて発言した。やや不安げに・・・・・。

 

 

「私・・・・・時々情緒不安定に陥るときがあるんです・・・。その時感じるんです。私の心がとてつもなく暗く冷たい闇に引きずり込まれる感覚が・・・。私が私でなくなるようなあの感覚・・・怖いんです。私は・・・・・今朝だって私の心が“それ”に飲み込まれそうになったんです。“それ”は『ACT2』のおかげで消えましたが、もしそうならなかったらと思うと、怖くて夜も眠れません・・・」

(・・・・・。やれやれ・・・なるほど。加賀の『ACT2』は自身の心の闇に飲み込まれないように彼女の精神が必死に抵抗している表れってわけか・・・)

 

 

愛の身の上話を聞いて彼女の“マシュマロウ・ジャスティス『ACT2』”の発現理由と役割を理解した承太郎。スタンドが人の心と同一なものであることを再認識したとき、承太郎は愛に名前を言われたので振り向くと、彼女は泣きじゃくりそうな顔で自分の顔を見ていた。

 

 

「私・・・どうすればいいですか!?心の闇とどう接すればいいですか?」

「そ・・・それはだな・・・・・」

 

 

泣き出しそうな目で質問してくる愛に承太郎は少し戸惑うが、彼女のためにもと思ってそれに答えた。

 

 

 

 

「承太郎さん!バスが来ましたよ!」

「「・・・ッ!!?」」

「あぁ・・・そうか。なら乗ろうか・・・行くぞ加賀」

「あ・・・・・はい・・・」

 

 

承太郎が愛の質問に答えようとするとき、蚊帳の外にいたあびるは話を割って、二人にバスの到着を告げた。

それを聞いた承太郎は答えるのを止めて、答えを先延ばしにされて不満に思う愛とあびると共にバスに乗車した。

 

 

乗車したバスの中は静寂に包まれてシィィ~~~~~ンとしていた。しかし承太郎達以外の乗客は無人ではなく、5、6人ほどいた。

 

 

「承太郎さん・・・さっきの「いや待て・・・加賀」・・・え??」

 

 

愛はさっきの問いの返事をもらいたくて、この静寂な空気の中再び問おうとするが、承太郎は待ったをかけた。そう言った彼の真意を確認するため愛は彼の顔を窺うと、その表情は戦いの中で垣間見える険しい表情になっていた。

静まりかえっているバスの中で唯一険しい表情をして殺気立たせる承太郎につられて、あびるも何かを感じ取り、構えだした。

 

 

「このバス・・・()()()()()()()?加賀・・・小節。あまりにも怪しすぎる・・・。ケータイを操作するにしろ、外を眺めるにしろ、何らかの動作をすることもなく、ただ虚空をじっと見つめる乗客のことが・・・」

「確かにそうですね・・・・・愛ちゃん。気をつけた方がいい・・・ここに敵スタンド使いが紛れ込んでいるかもしれない・・・」

「えぇ!?・・・敵・・・スタンド使いですかッ!?」

 

 

承太郎が感じ取った違和感というのは他の乗客が何もしていないことであった。

眠っているわけでもなく、目を大きく開けてじっとしている人達を確認できたあびるは愛に敵がいる可能性が高いことを教える。

そのことを知った愛はびっくりしてバスの扉に凭れるが、何かぬめっとしたものが背中に当たったので振り向くと、そこには数本の触手があり、彼女のことを狙っていた。

 

 

「きゃあああ~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!」

「くッ!そこかッ!“スタープラチナ・ザ・ワールド”ッ!!!」ドォーーーン

 

 

愛が触手を見て絶叫したときに触手が襲い始めたが、即座に反応した承太郎が素早く『時』を止めてくれた。

 

 

「くっ・・・咄嗟に発動してしまって二秒も止められる自信はないが・・・まあ、それでも足りるがな」グイッ

『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァ!』ドギャアア

 

 

『時』を止めた承太郎は“スタープラチナ”でその触手を掴んで愛から離した後、時間切れになるまでそれをボコボコに殴ってバラバラにした。

 

 

「あ~~~~~~~~ッ!!!・・・はっ!?触手はっ!!?」

「承太郎さんが処理してくれたみたいよ。安心して」

 

 

まだ何が起こったか理解できていない愛は混乱するが、あびるが今起こったことを教えた。

”スタープラチナ”のラッシュを食らいバラバラになった触手は辺り一面に飛び散り、痙攣を起こしたかピクピク震えていた。

その時、バスが大きく揺れて三人とも体勢を崩しかけた。原因は運転手が急に苦しみだしハンドルをくるわせたからだ。だが、苦しんでいるのは運転手だけではないッ!!乗客もだッ!!

 

 

「こ・・・これは一体・・・!?」

「決まってんだろ承太郎。我が“スリザー”の触手を微塵にしちまったんだからよぉ。コイツらの頭の中にある触手がさっきのダメージで暴れ回ったんだよ」

「この人・・・一体どこから・・・?」

 

 

乗客達が苦しみだしているので、頭をひねる承太郎に何処からか聞こえてくる男の声がその理由を答えた。

あびるは愛を自分の背中に隠しながら居場所を探そうとすると、自分たちから四歩ほど歩いた席に愛のように後ろ髪を束ねた赤銅(しゃくどう)色の長髪の男がいつの間にかいた。

その男を発見すると『ACT1』を展開した愛が彼の情報を探る。

 

 

「“ダナー・アイベリー”・・・30歳。ギャング組織“ワイルド・ドッグ”の幹部・・・の人です」

「何だと!?バカな・・・パステクアーという男達が攻めてきて二日も経っていないのにもう攻めてきたのか!?あまりにも対応が早すぎる・・・!!?」

「ほぉ・・・・・やはり先日の第十師団で到頭ばれてしまっていたか。・・・まあいいさ。所詮あの戦いは余興さ。全てはこの時のための下準備に過ぎない。オマエ達がいらぬ知識を知ったところで何の得にもなりはしないのだからな」

「余興!?つまりは失敗を前提とした戦いだというの!?仲間の命を何だと思っているの!?」

 

 

愛が“ワイルド・ドッグ”ということを言ったことでダナーは少し感心するが、すぐに無表情になる。

1つの作戦が失敗すれば、また新たな策を練り上げる。しかしどんな策士であろうと作戦失敗から新たの策を生み出すまで、到底数日で考え出し、実行に移すことは出来ない。

そう承太郎は思っていたが、実はパステクアー達はダナーの襲撃のための単なる贄であることがダナーの口から出た。パステクアー達は結果的にダナーのための良い肥やしになったのだ。

自分の恩師である糸色望でも人の命を機関車にくべる石炭のように扱うことを考えついても実行に躊躇するとあびるは思い、にもかかわらず自分の仲間を平気で捨ててしまう“ワイルド・ドッグ”に憤り、その不満をダナーにぶつけた。

だが、ダナーはそれを聞いて不機嫌になり、発言したあびるを鼻で笑い、バスの格子を掴みながら立ち上がった。

 

 

「あのな・・・小節あびる。オマエ等のようなお手々つないで仲良く敵を倒しましょうなんて考えは甘過ぎなんだよ!力で全てを支配するためには時には仲間を自爆させるだけの冷酷さが必要なんだよ。そして勘違いするな!!ギャングならば自分の命の1つや2つ賭けられる度胸もない奴はギャングとは言わねぇんだよ!」

 

 

立ち上がったダナーはギャングとしての生き様を話し、簡単に否定したあびるの考えを否定した。

そしてそのままダナーは両手を触手に変換し、その触手で承太郎とあびるに襲いかかった。承太郎とあびるはスタンドを出して、受けてたとうとするが、その触手をよく見ると、二人に向かっているよりかは二人の死角にいた愛に向かっていた。

 

 

「えぇ!?う・・・嘘!?」

「何!?こいつ・・・まさか」

「愛ちゃんの方を・・・!」

『『ウオーーーーーーッ!!』』

「“やはり”・・・かかったなアホ共めーーーーーーーーーーッ!!!」

ブチブチブチ    ドッシュウウウ

「何だと・・・!?」

「これって・・・嘘でしょ」

「承太郎さんッ!!あびるさんッ!!」

 

 

承太郎とあびるは触手が自分達ではなく愛を襲おうとしているので驚き、咄嗟にその触手が愛に到達する前に防ごうとする矢先、その触手が途中から分裂して一方がバスの扉に、もう一方が二人の首に突き刺さる。愛のではなく・・・。

 

 

「くくく・・・オレのスタンドは肉体を触手に変換して操れるスタンド。分裂もできるッ!ブフフフ・・・承太郎。まず敵地の城に侵入しようと思ったらオマエなら何処を狙うつもりなんだ?・・・・・そう!一番壊しやすい部分だよなぁ。なら、オマエ等に当てはめると誰になると思うぅ??・・・・・クヒヒ、ハハ。もちろん加賀愛だよなぁぁ」

「わ・・・私が・・・・・」

「That’s Right!!パステクアーとの戦いでキミが一番足手まといになると思ったんだよねぇ!!理由はかんた~~~ん!!あの時オマエが一番活躍したからだよ。ということは裏返せば自分は非力でぇぇ~~すって言ってるのと変わんないからねぇ~~~!!」

「こ・・・こいつ。エグいことしてくれるわね・・・・・。まさか敵がこんな戦い方をしてくるとは・・・」

「やれやれだぜ・・・。どうやら私達は奴の“狩り場”に入っちまったようだな・・・」

「それもこれもトップのおかげだぜ。今こうしてテメエ等を追い詰めていられるのは、何もかも全てトップが考えついたことだからよぉぉぉ!!!」

 

 

承太郎とあびるが元々自分の方へ向かっていたのにそれを捌こうとして逆に彼等の首に触手が突き刺さったのを見て愛が涙目になってショックを受けているとき、ダナーは愛をかばった二人に愛こそが二人の弱点、足手まといと告げ、まんまと敵の策に嵌まった二人は苦汁を舐めさせられる思いをした。

 

 

「加賀愛・・・これはオマエのせいだぜぇぇ。オマエが弱すぎるせいで二人はオマエを助けたためにこのオレに多大な隙を作らせちまったからなぁ!!」

「そ・・・そんな。私の・・・・・私のせいで・・・そんな・・・・・こんなことが・・・すい・・・うう・・・すいません・・・・・」

(ふふ。とはいってもこっちには乗客という人質がいる・・・。あのとき承太郎等がオレの“スリザー”を八つ裂きにしてもその時のダメージに呼応して人質達の中の“スリザー”が暴れる。そうすれば二人の行動は限定され、攻めを失ってしまう。結果的にオレの“スリザー”がヤツ等の首に突き刺さる運命に変わりはないが、まあここは・・・彼女の純情な心を利用させてもらうとするよ。くくく)

 

 

承太郎とあびるが自分を庇って敵の策に嵌まったことで涙目の愛はダナーが言った事実によって二手、三手と自分の心に鋭く、深い自分のせいから来る自責の念というナイフに刺さり、徐々にその念を募らせる。

だが、過程はどうあれ、二人の首に触手が突き刺さることに変わりはないため、愛のせいだけだとは一概に言えないが、愛自身を無力化する意味では十分に覿面といえる。

そうこうしている内に二人が刺さっていた触手は皮膚の下を這い、頬の近くにまで上がっていた。だが、承太郎の首に刺さっていた触手はいつの間にか除去されてバラバラなっていた。

その場に触手が散らばった時に、承太郎はダナーの方へ向かい、“スタープラチナ”でぶっ飛ばそうと殴ろうとするが、乗客達のうめき声を聞いてその拳をダナーの顔面すれすれで止めた。

 

 

「そ・・・そうだ承太郎。ハァ・・・ハァ・・・。時を止めた瞬間に触手を取り除き、オレを殴り飛ばそうとしたことは褒めてやるッ!だが!オレを殺し損なえば乗客も巻き沿いになることを覚えておけッ!」

「ちっ・・・・このクズ野郎・・・」

 

 

ダナーを一発で殺し損なえば乗客達は最悪苦痛に耐えられず死ぬ。乗客を人質に取られ為す術を失った承太郎は無抵抗のまま触手に体を突き刺されていった。その状態で承太郎は頭を抱えて膝をべっとりと床につけて今にも泣きそうな愛を優しく見た。

 

 

「加賀・・・そういえばお前の質問に答えていなかったな・・・『心の闇とどう接するべきか』と・・・」

「承太郎さん。ど・・・どうしてどうしてこんなときに・・・」

 

 

こんな時にこんな状態で彼女が出した質問の答えを返そうとする承太郎に愛は疑問に思うが、彼はお構いなく伝えた。

 

 

「慣れるんだ・・・・・加賀。少しずつでいい・・・少しずつ生長すればいい。そして、お前の心の闇を本当の意味で理解できたとき、お前は“それ”を克服できるんだ・・・忘れるなよ・・・・・」

「・・・じょ・・・承太郎さん」

 

 

承太郎の言葉を聞いて愛が涙を流したとき、触手が彼とあびるの頭に到達し、二人は放心状態になってしまった。

 

 

「ふぅーーー。これでもう攻撃できまい・・・・・空条承太郎、小節あびる。ゲヘヘヘヘヘヘヘヘ。人間ってヤツはよう・・・加賀愛。人間ってヤツは単純だ。脳を抑えこめば楽に片がつく。例え無敵と恐れられる承太郎であってもなぁ!!」

 

 

ダナーは愛に近付き、放心状態の二人の肩を借りてぶら下がりながら彼女に向かって話した。愛はそれを見て二人が完全に堕ちてしまって心の底から恐怖心がこみ上げて胃酸が逆流しそうで吐きそうなときにも彼はまだ話し続ける。

 

 

「オレはただお前等を倒すためにここにいるわけではねぇぜ。一番大事なのは情報だ。あろうことかオマエ等はスコッチ等相手に死傷者ゼロ。挙げ句の果てにパステクアーとの戦いで腹に風穴空いたにも関わらずぴんぴんしていた日塔奈美というヤツがいる始末。だからこそそうなるための兵力、技術力、そして個人情報!!それら全てを明かし、我が組織を勝利へ導くための土台とさせるんだよ。この戦いでな」

「そんなことが貴方にできるのですか?」

「できるさぁ。触手を脳に入れれば、人も操れるし、記憶も読めるッ!さあ、小節あびるよ!オレに全てを教えてくれッ!!」

 

 

ダナーが最優先で行わなければならないことはこの戦いで一つでも多くの情報を組織に送ることだと彼は愛に教え、あびるの頭を「なになに~~ッ」と言いながらいじくり、情報を得ようとする。

愛は最初は半信半疑だったが、ダナーが記憶を探るにつれて徐々に冷や汗が流れ始めた。

そして、ダナーがふと動きを止め、これぞと言わんばかりに瞳孔を開けた。彼女の中で“あれ”を発見したからだ!

 

 

 

 

「“聖なる遺体”!?“カフカ細胞”!?おぉーーーーーッ!!この記憶はッ!!そうか・・・そうか、そうだったのかぁーーーーーーッ!!!アハハハハハ・・・・・素晴らしい!!コイツは素晴らしい発見だッ!!」

「く・・・う・・・うわぁーーーーーーーーー!!『ガシィ』・・・ッ!?ハッ!!?」

 

 

ダナーが遺体のことを知り、あまりにも凄すぎて狂乱鼓舞する彼に愛は何もかも終わってしまうと判断し、我を忘れて殴り駆けた。

だが、その拳はダナーに操られた承太郎の掌で受け止められ、そのまま強く握られ愛は逃げられなくなる。

 

 

「さて・・・・・記憶の通りではオマエは不死身らしいが、どれほどのものなのか?」

ドギャブゥウウ

「いぎゃあああーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」

 

 

腕組みをしながら承太郎の背後から愛を見るダナーは、あびるから読み取った情報がどれほどなのかを確かめるために承太郎を操り、”スタープラチナ”の蹴りで彼女の脚を明後日の方向へ砕き折る。

 

 

愛の折れた脚は数秒間痙攣した後、脚の骨はみるみる元に戻り、痣すら残らず治癒した。それを見てますますダナーは興奮した。

 

 

「実に・・・イイ!オレは奇跡的瞬間を見たんだ。人類が・・・新たなる段階へ進み得ることをな!!」

「・・・・・ッ!!」メラメラ

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

ダナーが黒き野心を抱きだしたことで、その衝動が抑えきれずそれが顔と口に出てしまったことで、愛の中の“それ”のスイッチが入った。

ブロロロロロンというエンジン音と共に現れたスタンド、“マシュマロウ・ジャスティス『ACT2』”。それの登場にダナーは驚くどころか逆に呆れ果てていた。

 

 

「Hey!!そんなモン出していいのかよ。忘れたか?コイツ等の頭にはオレのスタンドの一部があるってことを・・・・・一般人も殺していいのかよ!」

 

 

『ACT2』を展開した愛に人質の存在を再び上げるが、『ACT2』が既に出ているためそんなことは通用せず、弾丸を連射する。

その口径30ミリの弾はダナー目掛けて容赦なく撃ち込まれるが、彼の眼前に現れた包帯によって止められる。

愛が確認すると、あびるが“ラブマシーン”を操っていて、更に有無を言わさず巧みに『ACT2』を包帯でぐるぐるにして捕縛した。流石に鋼鉄の硬度を持つ“ラブマシーン”を『ACT2』では破壊できず、がっちりと捕えられていた。

スタンドを捕縛され、しかも性質上それを戻すこともできず、無防備になった愛は呆然としてしまい、その隙に“スリザー”によって彼女は捕まり、ダナーは苦笑した。

 

 

「これがオマエの人生の縮図さッ!!他人(ひと)からは助けられ守られ続け、いざ人を守ろうとしても誰一人守れない・・・それが運命であり、宿命さ!そしてオレは人類の飛躍的な進化のパイオニアとして後世に名を残し、その力で“ワイルド・ドッグ”を世界一に押し上げるッ!!精々オマエも糸色望も2のへ組のヤツ等も全員!!我々の繁栄と統治のための供物になるがいいわッ!!!イギハハハハハハハハハ!!!」

「・・・ッ!!!ク・・・カハッ!来る・・・来た・・・・・囲まれた・・・」

 

 

ダナーに散々罵倒され、屈辱に等しい取らぬ狸の皮算用を聞かされながら、皮膚の中に触手が入り込んでいる愛はこの時、彼女の精神世界で彼女は闇に囲まれていた。一寸の光すら届かない闇に彼女が包まれるにつれて、彼女の心も闇色に染まり始める。

自責や恐怖の声が苦痛と怨嗟の淀んだ唄に変わり、楽しい記憶が惨めで陰惨なトラウマになり、無意識のうちに自重していた彼女の(さが)の鎖が外れ、彼女の精神内がまるで地獄と化した。

 

 

「こ・・・・・これは・・・何だ!黒すぎるぞ!暗すぎるぞ!本当に人間なのか!?」

 

 

愛の脳に触手が達し、彼女の内心で起こっていることが読み取れて、ダナーは圧倒される。そして、そうこうしている内に包帯が軋み始め、さっきとは較べることができないほどの轟音と共に“ラブマシーン”をズタズタに引き裂く。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

『ACT2」より大きく双眼鏡がないプロペラ戦闘機は迫力あるエンジン音を発しながら浮遊して、ダナーと向き合う。

そう・・・これこそが!この(ヴィジョン)こそが愛の心の闇を表したかのようなスタンドッ!!

 

 

「許せない・・・・・私はあなたを許さないッ!!私の心をッ!!先生のッ!!皆のッ!!願いを土足で踏みにじるあなたをッ!絶対に殺してやる・・・」

 

 

“スリザー”に拘束されながらも圧倒的な威圧を向けて静かに微笑む愛。その笑みは正に“地獄の女神”というに相応しいものだった。

 

 

 

 

To Be Continued・・・・・⇒

 

 

 

 

 

――プロフィール――

 

・ダナー・アイベリー  30歳。男性。

 

エッグプラントが気に入っている幹部のスタンド使い。

 

慎重で計算高く、様々な策を用意する諜報員。

 

因みに組織の設立とほぼ同時期に入団した。

 

スタンド名:スリザー

 

【破壊力:D スピード:B 射程距離:B 持続力:C 精密動作性:C 成長性:D】

 

能力:肉体を触手に変換できる  スタイル:近中距離操作型  分類:分裂型

 

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