真夜中の学校。
校舎内から人気がなくなるため夜の学校は古来より薄気味悪い場所と思われている。
そんな場所で長時間いなければならないのは罰ゲームに等しいことだ。やる気なんて相当でないだろう。だが、それを行っている者がいた。それは糸色望と空条承太郎の二人だった。
「何故私が夜勤なんてしなければならないいんだ・・・・・えぇ?望・・・」
「だから何度も言っているでしょう。もう勘弁してくださいよ・・・・・ちゃんとその分ボーナスが出るんですから・・・」
二人は懐中電灯を照らして校舎内を見廻りしていた。だが、承太郎は望に不満を言い流しながら
何故こうなったのか・・・。承太郎は昼間の出来事を思い返す。
「糸色先生。例の件をそろそろやっていただかないと困ります」
「嫌でも智恵先生・・・それは・・・」
「でもやだっては聞き飽きました。今日という今日は筋金入りのその重いチキン腰を上げて貰いますよ」
「えぇーーーーーッ!?嘘でしょう!?」
「問答無用ですッ!!」
カウンセラー室で新井智恵と糸色望があることを話していた。望はその案件をどうしてもやりたくないらしく頑なに断り続けるが、智恵の許しは下りず、終いに彼女にヘッドロックをかけられて否が応でもその件をやらされそうになる。
それを見かけた承太郎は何事かと思って二人の間に入っていった。
「どうしたんだ二人とも・・・何事だ?こんな真っ昼間に」
「あら・・・承太郎さんではないです・・・かッ!」グキィ
「ぐほぇ・・・ギブギブ智恵先生ギブッ!!」
間に入ってきた承太郎に気付いた智恵は首を彼の方へ向けるが、それと同時に望の首から鈍い音が出るほど腕の締めつけを強化し、望は堪らず降参する。
望が観念したので智恵はヘッドロックを解き、自分の首をさする望を尻目に承太郎は事の成り行きを智恵から聞いた。
「実は半年前から糸色先生に生徒間で囁かれている“学校の七不思議”についての調査をするように言っていましたが、なかなかチキンの腰を上げてくれなくて・・・」
「・・・・・。しかしあくまで噂程度の“七不思議”に目を光らせる必要はあるのか?」
「大ありです!事実、それを言い訳にずる休みをする生徒がいる始末・・・。学校内の風紀のためにも必要なんですよ・・・・・。・・・ああ。でしたら・・・承太郎さん。貴方も調査に参加なさってはどうですか?一人より二人の方がきっと心強いと思うので」
「・・・何だと」
承太郎と話している内に、智恵は彼を加えて二人で行う案を考えついて強引に話を進める。
承太郎はそれを聞いていたが、あまりのことなので出る言葉が見つからなかった故に話がトントン拍子で進み、いつの間にか断りづらくなって現在に至るのだ。
(やれやれ・・・早く済ませて床につかせてもらおうか)
回想し終えた承太郎は予め智恵に用意された用紙を懐から取り出し、そこに書かれている内容を読んだ。
・誰もいないはずの職員室のコピー機が動き出して、その傍らにものすごい速さで動いている多重腕の怪物。
・夜の校舎に現れる透き通るように白い肌をした長い髪の少女。
・奇妙な音を出しながらのらりくらりと歩く妖怪。
・何もない廊下で急に何かに引っかかって転倒したり、誰かに肩を叩かれたりする謎の怪奇現象。
・食堂の厨房に現れる二匹の妖怪。
・音楽室から聞こえる少女の不気味な歌と踊っているかのようなラップ音。
・保健室で包帯に包まれた不気味な怪物。
「全く一体誰なんだ。こんな根も葉もない噂流した奴は・・・」
用紙に記載されている七不思議を確認してバカバカしく思う承太郎。ぼやいている承太郎の側で望は愛想笑いでやり過ごし、二人は最初に最後の欄に書かれている怪物が出るとされる保健室の前にやって来た。
いや~~~キンチョーしますねぇ~~~と扉の前で呟く望を見て、承太郎はやれやれと思いながら保健室の戸を開けた。
するとその中では至る所に包帯が散乱していて、七不思議の例の怪物がやったとしても過言ではない状況が二人の前に広がっていた。
「えぇ~~~~~~~ッ!!ちょっ・・・これ・・・えぇ~~~~~~~~~ッ!!?」
「・・・・・フーーーーー。やれやれ」
保健室の惨状を見て言葉を表せないほど困惑する望。それに対してクールにため息を吐く承太郎。その対照的なリアクションをする二人は包帯で散らかった保健室に入り込み、懐中電灯で辺りを照らし出した。
すると、散らばって山積みになっている包帯が急に膨らみだし、そこから例の怪物が姿を現した。
驚いた二人はそれに光を当てると、その怪物は眩しがるが、それでものしりのしりと二人に歩み寄ってきた。
「あれ?・・・こんばんは先生。夜の見廻りですか?」
「「・・・・・ッ」」
その怪物をよく見てみると2のへ組の小節あびるだった。いつも以上に包帯まみれのあびるは沈黙している二人に軽い挨拶をして、こうなった理由を説明した。
そもそもあびるは常に包帯をしているが、それは動物をじゃれているときの傷を隠すためだけでなく、自らのスタンドの補助のためでもあるのだ。
包帯は古すぎると性能が下がると言うこともあって定期的にここの包帯で補充するのだが、毎度毎度包帯を巻いているときに絡まったりしてドジを踏み、夜になるまで身動きがとれなくしまっていたようだ。このとき二人はそれが原因であのような噂が生まれてしまったことを知ることになった。
そして、望が「自分の家でやりなさいよ」とつっこんだら、「包帯の出費がひどいことになるので・・・」と言い訳して、あびるは散らばった包帯を全てかき集めて去っていった。
その場に佇んでいる望と承太郎は彼女が去るところを見届けた後、もやもやと気が晴れない状態で校舎内を歩くことになった。
「どうなってるんだ・・・望」
「知りません」
「これは異種の監督不行き届きだと思うが?」
「知りません」
校舎を歩きながら承太郎は青筋を立てながら望に問うが、当の本人は喜怒哀楽に含まれない“無”の表情で機械的に返答していた。
まさか七不思議にへ組の生徒が関わっていたという事実になんとも言えなくなった二人は一階の校舎を巡回していた。
その時二人の耳に不気味で奇妙な音が聞こえてきた。ボーーーーーーーーーッと音が廊下中に鳴り響き、二人は身構えた。
更に足音が聞こえ始めて、3つ目の妖怪が月光差さぬ廊下の闇からじわりじわりと近づき、その姿を二人に晒した。
「ぼーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「えっ!?“
妖怪が二人の射程内に入ったとき、雲に隠れていた月が姿を現したことで光が差し込み、その月明かりが校舎内を満面なく照らす。
その光で辺りが鮮明になったことで妖怪の正体が分かった。その正体はまたしてもへ組の生徒。出席番号16番“
だらしない身嗜み、バカみたいに口を開けているその少女は焦点の合っていない目で前方に自分の担任がいることに気がついたようだ。
「ああーーー。先生・・・・・こんばんは・・・」
「こんばんは。ところであなたは何をしているのですか?こんな夜中に」
「帰宅してるんですーーーーー。教室で寝ちゃったみたいでーーーーーー。それではーーーーー」
望の問いかけにのんびりとした口調で答えた後、口を開けたまま「ぼーーーーー」という声を出したままのらりくらりと廊下を歩き、夜陰の中に消えていった。
「・・・・・あんな感じなんです・・・彼女は。察してください」
「もうやれやれとしか言えんよ」
望は承太郎に彼女の濃すぎるキャラクターを赤裸々に見られてしまい、項垂れながら察してもらおうとする。対する承太郎はこの状況で出せる言葉を選べず、何とかこの場を納める形でやれやれと言った。
二人が始めた“学校の七不思議”の解明だが、これまでのことから予測できるようにこの“七不思議”、蓋を開けてみるとそこまで深い謎はなく、次々と解決していくのであった。
職員室の怪物は実は晴美が同人誌を描くのに白熱していただけであって、その彼女を発見して望は「いや、家でやってくださいよ」とつっこんだ。
職員室の妖怪は出席番号11番の“
「おい。関内って男じゃなかったのか?どう見ても童女だろ」
「・・・・・」
「それに隣にいた奴に限ってはへ組の生徒じゃないだろ」
「・・・・・」
「望・・・・・。さっきから何黙り込んで顔を逸らしてんだ?」
「・・・・・」
マ太郎達二人のことで確認しておきたいことがある承太郎だが、望はそれに対して何も答えなかった。承太郎が何度も問い詰めても一切答えず、顔を逸らして沈黙を貫いていた。
そんな気まずい二人の側を小森霧が目を閉じながら過ぎていって、二人は驚き混じりに振り返り、彼女の背中を見届けた。
「そういえば彼女・・・・・夢遊病であったことを思い出しました」
「謎がまた一つ解けたってか?」
霧の姿が見えなくなり、反らしていた体を元に戻したとき、二人は彼女が七不思議の一つに数えられていたことに気付いた。
彼女が夜な夜な夢遊しているところを目撃されて、それが噂として広まったのだと考察できた二人は6つ目の音楽室を訪れた。
そこでは風浦可符香がトロイメライの曲をラジカセで流しながら、奇妙なダンスを踊っていた。
その光景を見た承太郎は帽子の鍔を押して深くかぶり、望は今までの鬱憤を吐き出すかの如く大きな声で叫んだ。
「そういうことは家でやれェーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」
「なんなんですか!?何かの当てつけですか!?人が寝る暇惜しんで調べているのにその原因がうちの生徒さんッ!クラス会議の一つや二つは必要ですよッ!!!」
「それはこっちの台詞だッ!!!もとわと言えば、誰のせいだと思っていやがるッ!!他人を巻き込みやがって!!監督不行き届きもいいところだぞッ!!!」
「まあまあ先生・・・承太郎さん・・・ここは二人とも落ち着いてください」
今までのことが積もりに積もって二人は烈火の如く憤激し、互いに険悪なムードを醸し出しているので、同行している可符香は二人を落ち着かせていた。
三人が歩いている廊下には月光が差し込まれておらず、懐中電灯の光を頼りに進んでいた。最後の噂を突き止めれば、はれて任務完了。暖かいベッドで熟睡できるわけだ。
だが、それでも二人の機嫌は戻るどころか更に悪化し、軋轢を生んでいた。
「それでッ!今度はどの生徒が起こしているんだよな!?
「あぁ!!?何で私に聞いてんだよッ!!知るかよッ!!」
「先生・・・・・。言葉が荒々しくなってますよ?」
早く終わらせたいという願望のためか、はたまた眠たいからなのか、そういうことは読み取れないが、イライラの頂点に達している二人は時折傍らにいる者に愚痴をこぼすという愚行をしながら前進していた。
望の言動がキャラにそぐわないことを指摘する度に可符香はつっこみ、度々「仲良くしましょうよぉ・・・」と彼等に呼びかけた。
「そもそも知らないですよ!私の生徒さんの中にそのような現象を起こすような能力を持つ人は・・・「ガツッ」うっ・・・あばぁ!」ズテーーン
「・・・ッ!?先生!?」
「何だ!?どうした!?」
望が承太郎の方を向いて話しているときに何かに躓いて転んでしまった。一連の行動で承太郎と可符香は驚き慌てた。
だが、真の意味で二人が驚いたのは別のところだった。
「ど・・・どういうことだ。何もないのに・・・・・何もないのに転んだだとッ!?」
「あの時明らかに何か堅い物が当たった音がしたッ!・・・のにないッ!?こんなことやれるスタンド使いは知りませんよ!もしかして敵ッ!?」
「その線はないです、風浦さん。この七不思議は半年前から発生しているもの・・・それに噂になっていることから何度か同じ事が起きているということになります。もしや半年前に我々の知らないところでスタンド能力が開花させた者がいるのでは・・・」
「いずれにせよ・・・一発はブン殴る必要があるわけだな・・・・・」
三人は前進するのを止め、周囲を注意深く見張っているとき、月が覆われていた雲から出てきて、光が満面なく降り注いだ。
この時、さっきまでは見えていなかったが、廊下中に椅子や棚などがぽつぽつと周りにあった。望がこけたところ場所を見ると倒れたオフィスデスクが置いてあった。
「これは“透明化する”能力でしょうか・・・もしや。どういう原理かは知りませんが、物を『透明』にすることでいいでしょうか?」
先程起こった現象から望が能力の推理をしているとき、承太郎の背後から数十センチ離れたところで上靴が床に擦る音が聞こえてきた。
その瞬間、承太郎は“スタープラチナ”を出し、音がしたところ目掛けてキツい一発を叩き込んだ。
『オラッ!!』ドゴォォオッ!
「ぶげぇッ!!」ドテン
「・・・やれやれ、どうやら本体は“今”やっつけたようだな。めでたしめでたし」
“スタープラチナ”の不意打ちを食らい、件のスタンド使いは伸びて床に横たわってしまった。
承太郎はその人を倒したのでさっきまで張り詰めていた空気を解くためにほんの些細なジョークを告げた。
「ところで?この少年は誰だ?望・・・・・こんな奴知らないが・・・もしや他クラスか?」
「う~~~~~ん・・・少なくともうちの制服を着ていることですし、2のへ組以外のどっかの生徒さんでしょう。多分」
「えぇ~~~~~~~~~ッ!!!ちょっとッ!?いくら僕が人一倍影が薄いからって言っていいことと悪いことがありますよ!!」
「えっ!?しかし、あなたの顔なんて見たことありませんよ・・・」
「うわ~~~~~~~~!!ひどいッ!!ひどすぎるッ!!遂に担任にまで忘れ去られるなんて~~~ッ!!」
場所は変わらずその廊下で伸びていた頭のさみしい少年が起きたところ、身元確認を行おうとするが、二人とも彼に面識がなく、簡単に分かるものではなかった。
が、その少年はそんな二人を見てショックを受けて涙目になりながら望に文句を言うが、彼に入っている意味が分かっておらず、余計ショックを受けていた。
二人だけならまだしも傍らにいる可符香でさえも首を傾げていたので業を煮やして、その少年は三人に自己紹介した。
「僕ですよ!僕!2のへ組!3番!“臼井影郎(うすいかげろう)”ですよ!」
「ん?・・・ああーーーッ!!臼井君!そうそう臼井君でしたッ!そうでしたねーーー。ハハハ」
「何だ知っていたのか望・・・何で忘れるんだよ」
少年、臼井影郎の名前を聞いた望はそこで初めて彼のことを思い出した。結局は望のクラスの生徒だったので承太郎は自分の生徒の名前を覚えていない望に冷ややかな視線を送った。
そして、承太郎は謎を万事解決するために彼に近付いた。
「ところで・・・臼井だったか?どうしてこんなことになっているか説明してもらおうか?」
「えっ・・・・・はい」
承太郎にこれまでの経緯について聞かれた影郎は包み隠さず、全てを話した。
元々彼は有名な大学の受験を二度も失敗し失意の中にいるとき、偶々命に勧誘されてあれよこれよで偽りの学園生活を給料をもらいながら過ごしていた。
最初は気味が悪いところだと思っていたが、慣れていくにつれてそれなりに楽しい生活だと思えるようになった。
しかし、受験でのストレスのせいか、髪の毛が徐々に抜け落ちていき、半年前ほどでてっぺんちょうの髪が全て抜け落ちてしまった。
困った影郎は命に相談し、“聖なる遺体”の髪の毛を植毛するよう要求した。
これには当初命は賛成できず拒否したが、それでも諦めずに懇願する彼の熱意と覚悟に負けた命は彼に杏の髪を植えた。
元来“カフカ細胞”は他者の体を取り込みやすいものであるため、安易につけた杏の髪は上手く影郎の頭皮に食い込み、植毛は無事成功した。
が、この時に影郎は“細胞”の影響でスタンド能力を宿すが、髪の毛だけを移植したせいか、“細胞”が彼の体と上手い具合に適合せず、能力が不完全に開花してしまってこの半年間自分はおろかあらゆるものを時折透明化させてしまい、相談しようにも存在感までも余計に薄くなっており、相談できなかったのであった。
「そうか・・・つまりは風浦。こいつに“細胞”を移植させれば、この問題は解決するという訳か?」
「えぇ確かに。私の細胞をこの人にあげれば、川の水を放流するように能力を引き出す能力が正常に発動し、能力が完全なものになると思いますよ」
「なら早速やってくれ」
承太郎は影郎の話から“細胞”を与えることが一番の得策であることを可符香に確認してそれを実行させた。命じられた可符香は「は~~~い」と軽く返事をした後、自分の首元の肉を自分のスタンド、”デッド・ラインダンス・デス”を使ってちょびっとだけちぎり取り、影郎の首につけた。
すると、その肉が徐々に影郎の肉と一体化し、自分の肉として変換した。そして暫くすると、影郎の体が小刻みに震えだし、じわわっと大量の汗を流し、終いにビカァアアアーーーーーーーーーッと強く光り出し、三人は光が眩しくて目を閉じた。
光が収まると、影郎は今までにないほどの感情の高ぶりを感じた。
「うははははは!!これでとうとう僕はこの話からレギュラー入りを果たし、ばったっばっと敵を倒し、女の子にモテモテになる日が続くんだ~~~。グフフフフフ」
『皆・・・敵はみんな僕が倒したよ』
『キャーーーーーッ!臼井君ステキーーーーーーーーッ!!』
『結婚シテーーーーーーーッ臼井くーーーーーーーんッ!!』
完全なる不死者となった影郎は解き放たれたスタンドパワーでテンションアップしているだけでなく自分が主人公に返り咲く野心までもアップしていた。
その野心に呼応するように彼の背後に人型のスタンドが現れた。
ヘルメットとグラサンをかけており、体中がぶよぶよの皮で覆われているスタンドを背後に出している影郎は他愛もない妄想するほど舞い上がっており、これから彼は完全に発現したスタンドを用いて栄光のレッドカーペットを渡れる・・・・・
・・・・・はずはなかった。
「あれ?臼井君は・・・・・何処へ行ったのでしょう?急に光り出したと思ったらいない」
「さあな・・・・・少なくとも帰ってしまったのではないか?」
「もう二時前・・・・・二人とももう遅いですし宿直室で残りの夜を過ごしましょうか」
「ふ・・・賛成だな」
「賛成!賛成!」
影郎の姿が見えないので不思議に思っている可符香に帰宅したのだろうと推測する承太郎。二人のすぐ近くに彼がいるにも関わらずにだ。
そしてそんな二人に宿直室で夜を明かそうと望は提案し、同意した二人は影郎のことなんか完全に記憶から抹消して宿直室へ行ってしまった。
二人の後を追う望も影郎のかの字も忘れてその場から去り、一人残された影郎はこめかみに青筋を立てて勢いよく言い放った。
「僕の青春を返せェーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!ド畜生――――――――――ッ!!!」
彼が言い放った叫びは先刻の望より大きく広く響き渡るほどのものだったが、生憎それは誰の耳にも届かず、ただただ静寂だけが響いていた。
そしてまた・・・同じ朝がやってくる・・・・・。
ガガガピガガ・・・《おっ!つながったか。こうしてツラ会わせるのも久しぶりだな。もういくつ経つかねぇ・・・》
「・・・・・」
日本の某所。暁前の刻にビデオチャットで話している男がいた。その男は“ワイルド・ドッグ”のボス、エッグプラントだった。
エッグプラントの通信相手は依然として黙ったままで彼の差し障りのない話を聞いていた。そうしていたら、エッグプラントが急に我に返ったようにはっとなって、《すまないね。いつもの癖で・・・》と反省して改めてその男に伝えた。
《用はたった一つだ。空条承太郎共、この写真の者たちを始末しろッ!!出来るよな?》
「・・・・・」コクリ
その男に見せた承太郎、望達の写真。その写真に写る人物を皆殺しにするように頼んだところ無言で頷き、その男は依頼を承った。
そして用が済んだのでビデオチャットを切ろうとする男にエッグプラントは待ったをかけた。
《待て・・・まだ続きがある。この者共は並大抵の襲撃でもびくともしない鋼鉄の要塞にも等しい奴等だ・・・。一人で殺すのは難しい。だから行くのは少し待ってくれ・・・。数日中に我々が送る助っ人!そいつとチームを組んで倒して欲しい。きっと頼りになるはずだ!ではまた連絡する》プツン
チャットを切った彼はそのままパソコンの電源を落とした後、自分が座っているチェアを後ろへ回転させてそこにいる部下に睨みながら話した。
「・・・で?そいつは本当に役に立つの?お前が見つけたスタンド使いはよぉ」
そう。実はチャット相手に言った派遣するスタンド使いがどういう奴なのかエッグプラントは知らないのだ。全部彼と対面している部下しか知らないのだ。その部下の男は着用しているサングラスをくいっと上げて誇らしげに言った。
「確かに少し頼りないところはありますが、奴の能力と彼の能力を会わせれば、例え最強と呼ばれる承太郎や不死身の糸色望だろうと勝てません」
「その言葉・・・期待しているぞ。“ヴェル・ペッパー”」
「ありがたき御言葉・・・必ずや成功させて御覧にいれます。ボス」
そのサングラスをかけた大男、“ヴェル・ペッパー”の言葉を信じて時が来るのを待つエッグプラント。ペッパーが不敵な笑みを浮かべるほどの力を持ったスタンド使いとは一体・・・・・。
To Be Continued・・・・・⇒
――プロフィール――
・臼井影郎
影と存在感がない2のへ組の生徒。出席番号3番。
ハゲが目立つこと以外これと言った特徴がない。というか存在しない。
基本無遅刻・無欠席を貫いているが、殆ど知覚されていないのでそれは叶わず仕舞い。
あれ??そういえば誰のプロフィールを作成してたっけ?思い出せない・・・。
スタンド名:トライバル・ソウル
【破壊力:B スピード:B 射程距離:C 持続力:A 精密動作性:E 成長性:E】
能力:自他問わず透明にする スタイル:近距離パワー型 分類:人型