さよならジョジョ先生―改稿版―   作:パラレル。

33 / 33
第参拾話 『アンフェアー・ワールド』と『スターティング・オーバー』その②

「クソッ!何処にいるのッ!!あの先公はーーーーーッ!!!」

 

 

プッツンしている愛は望を追って町中を走り回っていた。それは雑踏で賑わう中でも匠に人を避けながら何処までも追跡するほどに。

勿論、上空ではスタンドが旋回中で望を見つけるレーダーの役割として出しており、見つけ次第即発砲できる状態で構えていた。

 

 

「先生・・・殺してやる・・・この手で必ず・・・・・ん??・・・・・」

 

 

望を血眼で探していた愛だが、急に何かに気付いてふと足を止めた。彼女はさっきまでの荒々しい風格とは打って変わって冷静になり、右隣のビルの屋上を見上げた。

頭の中を整理整頓して彼女自身の落ち着きを取り戻したことで見落としそうな小さなものを見つけた愛はそのままそのビルに入り、屋上を目指す。

どうやら彼女にとって自分を辱めた望の追跡をもほっぽり出す大事な用があるらしい・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ!望・・・常月だ!こんな時こそアイツの能力の出番だ!!」

「そ・・・それが・・・・・いないんですよ承太郎さん!!はぐれたようです・・・彼女も同じく敵の術中に嵌まったんだと思います。彼女らしくないですし・・・」

「チッ・・・くそっ!! 」

 

 

場所は変わって望・承太郎サイド。訳あって敵のガード不能の遠距離攻撃に苦しむ二人は空中で四方を飛び回っている弾丸をちらっちらっと見ながら相手の出方を窺っていた。

この状況下で承太郎は思いつきでまといの布化能力を使ってこの窮地を脱しようとした。彼女の能力で布化すれば解除するまで無敵状態になるからだ。

しかし、肝心な彼女も知らず知らずのうちに術中に嵌まり、この場にいないことを望に聞かされ承太郎は舌打ちする。

 

 

「さて・・・この状況・・・・・どうやって王手をかけましょうか?」

「さぁな・・・少なくとも私達の運さえ取り戻せば何とかなる。だがここで動けば敵の集中砲火を食らうことになる。携帯で連絡しようとしても撃たれる。・・・完全に王手だな。私達が・・・」

 

 

車との衝突で粉砕した体組織が完全に修復できたことで立ち上がることができるようになった望は承太郎にどうやって攻略するかを尋ねるが、そんなものはないと返される。

四面楚歌でどうにもならない現実を目の辺りにして呆然としている二人に敵は数多の弾丸を向かわせた。

 

 

「来た来た来た来た来た来た来ましたよーーーッ!!!」

『オラオラオラオラオラ「ドキュン ドキュン ドキュン」・・・オウッ!?』

「うぐっ!?まさか背後からも!!まずい、対処しきれないッ!!」

 

 

弾丸の嵐が押し寄せることを望が告げると、承太郎は“スタープラチナ”で叩き払うつもりだったが、背後からも弾丸がやって来て彼の勢いを失速させた。

死角からの奇襲に驚いて承太郎が一瞬ひるんだ時にはもう彼は前方の弾丸払うだけの間はもう無く、あるのは死の予感だけだった・・・。

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドーーーーーッ

「承太郎さぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーんッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は少々遡り、とある雑踏の多い通り。その一角で常月まといは標的を見失っていた。

 

 

「先生っ!先生ッ!先生―――ッ!!どうしましょう!こんなのってないわ!こんな“不幸”ひどいわ!!先生と・・・はぐれてしまうなんて・・・・・」

 

 

望と一定距離以上離れてしまって精神的不安になりながらも辺りを右往左往していたまとい。彼女は愛から逃げている望と一緒にいたはずだが、いつの間にか望とはぐれてここまで人の波に流されてきたのだ。

 

 

「先生センサーが・・・受信していない。こんなこと一日たりとも無かったのに・・・。うっ・・・先生が近くにいないから私のHPが削り取られる・・・・・このままじゃ・・・死ぬ・・・」

 

 

まといは心の中になる架空のセンサーが機能していないのでどんどん精神的に疲弊していた。

そんな姿を双眼鏡で眺めていた奴がいた。そいつは制服を着ている中学生らしい男の子で、服も髪も真っ黒で均一されている。

そんな奴が見晴らしのいいビルの屋上で傍らにお菓子がたんまり入ったビニール袋を置いてまといを見ていた。

こいつこそ・・・そう!こいつこそ!望や承太郎、まといの幸運を奪った主ッ!!高野山史忠(こうやさんふみただ)であるッ!!

 

 

「ケケケケケ。実に面白いなぁ・・・・・あの絶望っぷり!!あっ!・・・“糸色望っぷり”ギャハハハハハハハハ!!!」

 

 

史忠はまといの様子を見て大いに面白がり、更に思いついたギャグで大爆笑する。

自分が思いついたギャグで大いに笑った後、ビニール袋に入ったお菓子を貪りながら大勢集まって楽しくやっている同年代を見ていた。

 

 

「フンッ!幸せそうな顔しやがって!マジムカツクなぁ~~~。こいつら絶対『こんな幸せな思いをしてる人は自分以外いな~~~い』とか思ってるよ。そんなの大間違いなのによ~~~。真に幸福で運が強いのはボクなのさッ!!何故ならもう既に凡人と較べて4倍も強いからな!!他人の持つ運を自分のものにできるんだからボクが最強なのはあたりまえさぁ~~~!!!そして、こんなことで十万円もくれるなんてやっぱりボクってツイてるぅ~~~~~!!!」

 

 

自分が強いものとして世にいるのだと思い有頂天になっている史忠は大きな声で高らかに笑い、他の人を見下していた。が、ちょうどその時屋上のドアが開いた。

気付いた史忠は振り向くと、そこには後ろ髪を束ね、左目元に泣き黒子があり、史忠が味わったことのない威圧感を発する女子高生がいた。

 

 

「君だったんですね?先生にあんなことをやらせたのは・・・趣味が悪いね、ボク??」

「はっ!?加賀・・・愛ッ!!よりにもよってコイツが・・・」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

ビルの屋上に現れた愛は全ての事情を理解し、青筋を立てて史忠に歩み寄る。その眼はバリバリ殺気立たせて、殺し合いの戦闘に慣れていない史忠をビビらせるこの図はまるで蛇に睨まれた蛙が生きたまま飲まれるようだった。

だが、文忠は冷や汗を掻きながら、脚を震わせながらも強気で愛に当たった。

 

 

「・・・はっ!だけど何ッ!?ボクは今無敵なんだよ。三人分の幸運を奪い取り込んだボクの運勢はツイてるんだッ!!恐れることはないッ!!」

「そういう寝言は私の一撃を食らった後で好きなだけ言ってなさい!“あの世”でね・・・」

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

 

 

強気な態度を取っている史忠に愛はスタンドを出して構え、いつでも射殺可能な体勢に整えた。そして一歩一歩と近付き、距離を四メートル、三メートルと詰めていった。

この緊迫して重苦しい空気は二人の体内時間を狂わすには容易かった。既に邂逅してから数分は経過したと思われているときに愛は距離差二メートルまで近付くと、この重々しい空気が飛行機音と共に弾けた。

 

 

「うおおおおおおおおおおおおお「バキン」・・・うおわッ!!」ドバドバドバ

ドガン ズガン ズガン ズガン ズガン ズガン カキン カキン

「やったぞッ!やはり・・・ボクは無敵だッ!!強運で守られているッ!!ボクの前では誰だろーと万人は手も足も出ないでないのさッ!!」

 

 

愛は機銃をその少年に炸裂させようとしたが、運悪く彼女は前に出した足の足場が急に崩れだし、それで体勢を乱したため少年とは違う方向に打ち込んでしまう。

この事から史忠は確信を得て自分は今どんな敵だろうと膝まつかせる事ができる絶対的な立場にいることを強く理解した。そして、体勢を崩している愛に史忠は自分のスタンドエネルギーを漲らせて彼女を見下ろす。

 

 

「そして!!今!おまえの首元にッ!!ボクのスタンド“アンフェアー・ワールド”を噛ませたッ!!“幸運”を吸い出したんだッ!!つまり5倍!!人よりツイてるぞッ!!そして、これが終われば大人から十万円もらえるんだッ!!唐揚げとかハンバーグとか食い放題だぜぇーーーーーーーーーーッ!!!アッハッハ」

「・・・・・ッ!!キサマーーーーーーーーーーッ!!!」ドバドバドバドバドバドバ

 

 

史忠は愛が犯した数秒の隙の合間に自分のスタンドで愛の幸運を奪ってしまう。

しかし愛は幸運を奪われたにも関わらず機銃を彼に撃った。理由は簡単。彼が私腹を肥やす――特に大切な人達を陥れる意味で――発言をしたことが非常に腹立たしいからだ。

そんな怒りのこもった弾丸が襲ってくるにも関わらず、当の史忠本人は一切躱そうとする意思はなく、呑気に虚空を見つめていた。

 

 

「カァーーーーー。カァーーーーー。カァーーーーー」バサバサバサ

ボンボンボンボンボン

「ガァ・・・」

「なっ!?・・・うぐ・・・・・ぐう・・・「バスバスバスバスバス」・・・そんなッ!!カラスが少年の周囲をバリアーのように囲んでいるッ!!?」

 

 

弾丸が少年の体を抉るよりも先に偶然やって来たカラスがやって来た。だが、“偶然”にしては多すぎる数のカラスがまるで史忠を守るように飛んでいたがために弾は全弾防がれ、挙句に撃たれたカラスの骸が勢いよく愛に衝突する結果となった。

おかげで体中にカラスの羽が引っ付く羽目に愛はなった。

 

 

「これで分かったろう?降参しろッ!おまえはボクを倒すことはできないんだよ・・・絶対に」

「・・・・・・・・」

 

 

もう既に戦って勝てないほど運が愛からなくなったので、史忠は機銃でボロボロになった柵にもたれかかって彼女に降伏するように提案する。

それを聞かされた当の本人は黙り込む。無理もない。全ての行動が裏目に出るようでは何の行動も移せない。唯々時間と力を浪費するだけだ。

愛が沈黙を貫いているため、史忠は彼女が自分の案に対して肯定の意志を表していると思っていると、愛は何かを決意めいた目をして立ち上がった。

だが、その“凄味”は決して戦いを諦めるようなそれではない。されど彼女には怒りの感情を感じるものはない。とても冷静だった。

 

 

「さっきまで怒りにまかせていたからちょっとだけ冷静になってみました。すると如何でしょう・・・ハハ、君・・・思っていたほどたいしたことないですね・・・」

「何ッ!?何を言っているんだッ!!おまえは自分の立場が分かっているのか!?」

「分かっていないのは君ですよ・・・幸運を吸ったから無敵!?とんだお門違いですね!君は自惚れているんですよ・・・自身の能力にッ!!」

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

冷静になった愛は彼に彼の能力に対して自惚れが過ぎると叱咤を飛ばして酷評する。そのことに頭の血管が切れそうなくらい怒り満々の史忠が彼女に怒鳴った。

 

 

「ふざけるなよッ!!ボクは無敵なんだ!沈まない太陽なんだッ!!弱い奴がキャンキャンと・・・・・負け犬が吠えてんじゃねぇ!!」

「負け犬?はて?・・・まあ本当の敗者はこれから分かりますよ。あなたの凝り固まった幻想もろともッ!」

 

 

憤慨している史忠に愛は『ACT3』を出して、銃撃しだした。さっきと同様に史忠は修行僧のようにピクリとも動かず静止していた。

そして、着弾前にからすがさっきよりも多く群れをなしてやって来て代わりに被弾してくれた。

 

 

ドンドンドンドンドン

「見たか!それ見たことかッ!!これで証明されたな!やっぱりボクは無て・・・「ドボバババババァーーーーーン」・・・きゅぷっ!?ばぁぁ!!!爆発ッ!?まさかっ!さっき撃ったのは機銃じゃなくて“ミサイル”だとッ!?」

()()()()()()()()()()()。やはり過信だったって事が!!あなたの能力が貧弱であったと!」

 

 

実はカラスに撃ち込まれた弾はミサイルで、勘違いした史忠は被弾しなかったものの爆風までは防げず、もろに被爆してしまった。

この時愛は被爆した史忠に見せつけるように、強者が弱者に教え込ますように、高らかな勝利宣言を決める。

そしてもちろんながら、爆風を食らった史忠は吹っ飛ばされるわけだが、彼が立っていた場所は屋上の柵近く、当然その身はビルから投げ出される。

 

 

「まさか!・・・・・このボクが・・・死・・・・・うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

ゴキーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン

 

 

3階建てのビルから投げ出された史忠はそのまま真っ逆さまに落下して、真下にあった車のボンネットに激突した。

落下による体への衝撃の苦痛に悶えながらも薄い意識の中で彼は太陽に向かって手を伸ばした。そして、太陽を掴んだと思って手を握るも所詮は距離の差による錯覚。鏡に映る餅を掴もうとするようなものだ。

無敵の力を手にしたと史忠は確信していたが、先程の一連で自分の思い過ごしだと考えついて、自分の無力さを十二分に実感し、眠りについた。

 

 

 

 

「あの子は自惚れすぎた・・・。“運”を手に入れても自分の“運命”を変えることはできない。とても簡単なことでしょうけど誰もそんなこときっと考えやしないでしょう・・・・・。それが人間という悲しい生き物なんですから・・・・・」

 

 

史忠が落ちてきて、ぞろぞろと野次が集まり、どうしたどうした、子供が落ちてきたぞ!、119番だッ!!早く!などの罵詈雑言が飛び交っている様子を屋上から眺めている愛は急に悟ったことを言って、一人さみしい思いをする。

だが同時に愛は奇妙な疑問を浮かべる。その疑問は“マシュマロウ・ジャスティス『ACT3』”を初めて自分の意志で操ったことである。

今まで我を忘れるぐらい怒り任せに『ACT3』を使っていたが、今回は冷静状態でも使用できた。今までに無かった事例。試しにもう一度『ACT3』を出そうとするも失敗する。

何度か試しても『ACT1』にしかならないので、それを為し得た条件をいまいち理解できない愛。しかし、これだけは分かった。これは「成長の兆し」なのだと・・・。

承太郎はこの前少しずつ成長していけばいいと言った。その“少しずつ”がこれなのだと彼女は理解した。

 

 

(今の私になくて、あの時の私にあったもの・・・・・それを明確にできれば・・・心の闇を克服した、つまりはこんな私でも“成長”できたってことかな・・・)

 

 

かつて絶望のどん底にいた少女は様々な人達に支えられてようやくここまで来た。そんな皆の助力に答えるために彼女は今日も成長する。立派な『守れる人』になるために・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「それはそうとどうしよう・・・。先生にひどいことしちゃった・・・。あっ・・・でも先生も悪いよね、うん。先生もきっと・・・」

 

 

色々と感傷に浸っていた愛だが、ふと望のことを思い出して、彼にやってしまった数々の非礼をどう詫びようか――というか詫びる必要があるのか――数十分間考えるのであった。

 

 

そして、愛がそうこうしている内に一台の救急車がサイレンを鳴らしながらやって来て、そこから現れた救急隊員が史忠を担架で運んでいた。

 

 

「この子は死んでいるのか?」

「いや・・・当分は歩けないと思うが、命に別状はないよ。それよりちゃっちゃと運んじまおう」

「おk」

 

 

救急隊員の一人が史忠の様態を窺ったところ、別の隊員が死んでいないことを言ったことでその隊員は胸をなで下ろした。そして、その二人は史忠を救急車に乗せた後、素早く運転席に戻って病院まで連れて行った。

 

 

 

 

高野山史忠・・・・・再起不能(リタイヤ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンドンドンドンドン

「ぐぬっ!?・・・ぐはっ!」

「承太郎さぁーーーーーーーーーーーーん!!!」

 

 

敵スタンド攻撃の嵐をくらい、そのまま地に叩き付けられた承太郎に近寄る望。彼は倒れた承太郎の傷具合を確認しようと彼の体を仰向けにすると、なんとまぁ・・・これは軌跡か!どれも心臓には当たっておらず、更に言えば被弾数もやけに少なかった。

 

 

「時を・・・止めて・・・・・ダメージを最小限にできた・・・運が味方してくれたぜ」

「“運”!?・・・つまり戻ってきたということですか!?我々の『幸運』がッ!!」

 

 

死にはしなかったものの怪我を負った承太郎は運に頼らなければならない選択であったと告げる。このことから自分達の『幸運』が戻ってきていることを望は自覚する。

勿論そのことは二人だけでなく、狙撃手である益井魁も気付いていた。

 

 

「まさか・・・あのガキィ・・・・・あんだけ用心深く言い聞かせてたはずなのに・・・くそッ!!くそッ!!全部水の泡じゃねぇかッ!!!こなくそ~~~~~ッ!!!」

ドンドンドンドンドン

 

 

魁は今回の作戦の肝である史忠が倒されたことを知って、恨み言を垂れた。そしてもう後がないと悟り、魁はがむしゃらに発砲する。

時速100キロは超えるスピードで空気を裂いて、飛行する弾丸は二人の所まで様々な角度や方向から襲いかかってきた。

・・・・・・・・が、

 

 

 

 

 

 

 

 

「うなあああああああああああああああ!!!」ズバババババァーーーーーーーーーッ

「えぇっ!?木津さん!?何故あなたが・・・」

「もちろんそれはあなたを殺・・・じゃなかった。助けるためにここまで来たんじゃないですか。・・・愛ちゃんから」

「すいません・・・今ちらっと殺すって言いかけましたよね?ねぇちょっと!」

 

 

四方八方からやってくる弾丸は突然乱入してきた千里によって全てかき消えてしまった。

彼女の唐突な登場は望を大層驚かし、さらに千里の殺意が垣間見えるドスの強い台詞を聞いて、望は恐怖で縮こまってしまった。

だが、恐怖で縮こまったのは望だけではない。そう、このやりとりもスコープで覗いていた魁もだ。

 

 

「なっ!・・・くそッ!仲間か・・・・・これ以上はまずいな。潮時か・・・」

 

 

肝心の史忠は敗れ、さらに千里という援軍まで登場された今ではもう深追いすることは極めて危険であることを判断した魁は荷物をまとめ始めた。

逃げる支度をする最中にふと自分のライフル銃型のスタンド、“スターティング・オーバー”のスコープを覗いたとき、倒れたままの承太郎と正面を見ている千里が映っていた。だがそこには誰かがいない・・・・・。そう、糸色望だ。

 

 

「あいつ!・・・い・・・糸色望はどこだッ!?ちょっと目を離した隙に、奴は何処に・・・・・ウッ!・・・クゥゥ・・・・・」

 

 

スコープにつまり、その場からいつの間にか望の姿が消えていることに驚き、望は何処にいるのかと焦る魁だが、すぐに彼の居場所は分かった。

彼の居場所は・・・・・。

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ

 

 

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・俺の・・・後ろかぁ・・・」

 

 

ずっと後ろを見ていなかった魁だが、こんな仕事をしているお陰か至近距離から発せられる人の殺気を感じ取ることができるのだ。それが自分の真後ろから感じるともなれば、その意味は言わずもがな。

であるため魁は振り向けなかった。振り向いた瞬間その隙を突いてくると思ったからだ。故に彼は冷や汗を掻きながら震える手でスタンド銃を構えた。

 

 

「時を止めてここまで来たか・・・・・何回止めた・・・ん?・・・最初のうちに言っておくが、接近型のお前が勝てるかどうかなんてまだ分からんぞ・・・とんずらしようとした俺だが、しっぽを巻いて逃げようとした俺だが、“油断”だけはしなかった。最後まで・・・ここから去るまで絶対に“解除”していなかった・・・!!」

 

 

魁の話を黙って聞いている望。微動だにしない望の後ろにはこれまた古いドラム缶が数個配置されていた。

だが次の瞬間、そのドラム缶の中から弾が十数発一斉に飛び出して望へと向かった。

 

 

「決まったッ!勝負は決したッ!!そしてッ!!ダメ押しにもう一撃ぃぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーッ!!!」カッシャーーーーーーーーァァアアン

 

 

望の背後から奇襲をかけたので、望はその対処に追われている。故に自分も至近距離から撃って望に重傷を負わそうと振り向く魁。しかし、彼の予想を大きく外れた。後ろの弾を弾いているだろうと考えていた魁の予想を裏切り、望はただ構えていた。

 

 

「光弾」を叩き込むためにッ!!

 

 

「げっ!!まずいッ!!光弾のことをすっかり忘れて・・・うわああああああーーーー「ドーーーーン」・・・ぐぱああ・・・」

 

 

天使の小型弾(エンジェル・ライフル)”を忘れていた魁は弾丸が望に当てるよりも前に光弾が発射されたことで、碌な回避行動を取れず、そのまま“S・オーバー”と彼の喉を貫かれて仰向けに倒れた。

魁が倒れたのでスタンドパワーが弱ってしまい、弾は望に当たる前に消滅してしまった。

 

 

「あなたは負けましたがまだ死んではいけません・・・。組織の・・・“ワイルド・ドッグ”の情報を話してから逝ってください。さぁ話すんです・・・!!」

 

 

喉から血が噴き出ている魁に望は“ワイルド・ドッグ”の情報を得ようと問い詰める。折角組織につながる人物を目の前にして手ぶらで帰ることなぞ出来ない。

ほんのちょっとでもいい。何かしらの手がかりを掴めないと望は・・・いや自分達は一歩も前に進めないからだ。

そんな望の焦燥を汲み取ってか魁は重い口を開き、掠れた声で言った。

 

 

「だれが・・・答えるか・・・バカが・・・。“ワイルド・ドッグ”には恩がある。・・・生まれつき脚が弱くて・・・職にも就けず、親も死に、絶望の淵にいた俺を・・・・・彼らは助けて・・・くれた。・・・・・だから死ぬなんてこれっぽっちも怖くないさ。彼らのためなら死ねる・・・・・本望だ・・・」

「・・・・・。そうです・・・か・・・・・」

 

 

瀕死の魁の口から出た“ワイルド・ドッグ”への強い忠誠心。この固い信念を持つ男から聞き出せるものはもう無いと判断し、望は意気消沈するが、魁はニヤリと笑い、望にあることを伝えた。

 

 

「一つだけなら教えてやるよ・・・。勝者への土産だ・・・。実は俺は元々スタンド使いじゃあなかったのさ・・・()()()()()()()()()()・・・“ワイルド・ドッグ”に・・・・・」

「何ッ!?スタンド能力を『与え』られた!??・・・それは承太郎さんが前にちらっと言っていた・・・弓矢のことですかッ!?」

「弓・・・矢・・・?違うな・・・あれは“石”だ・・・。あえて言うなら“原石”だ・・・。その石の力によって少なくとも俺や蚊の小僧、そしてもう一人の刺客を生み出した・・・」

 

 

彼の言ったことに驚きを隠せられない望。無理もない。偶発的にスタンド使いの組織が生まれたのだと思っていたことが覆されたからだ。加えて、その数を増やしていくものが従来とは異なっていたものだからだ。承太郎の口からしか伝えられていない弓矢とは別の・・・。

スタンド使いを生み出す媒体に対する情報を処理していく望だが、更に別のことで更に脳の血圧を上げる。

 

 

「スタンド使いがもう一人ぃぃいいいッ!!!い・・・一体誰なんですッ!?」

「ククク。さぁな・・・・・“ネズミ”・・・ということしか知らん。一週間前に生み出した後ずっと野放しにしているからな・・・まあこれから死ぬ俺にはそんなこと知る権利も・・・義務も・・・ありはしないからな・・・・・ククク・・・クク・・・・・ク・・・・・ク・・・・・・・・」

 

 

別のスタンド使いの刺客について望は必死になって魁に問いだしたが、彼は答えを明確には言わず、そのまま静かに息を引き取る。

葉の間に豆でもあれば簡単に噛み砕けるほど望は歯を食いしばらせ、このやるせない気分を味わった。

自分の誇りを守って朽ちた骸を見下ろすようにさんさんと照らす太陽は妙に暑かった。

 

 

 

 

To Be Continued・・・・・⇒

 

 

 

 

――プロフィール――

 

・高野山史忠  14歳。  身長:145cm

 

自惚れ思考が高い中学生。好物は唐揚げ、ハンバーグ。

 

学力が低いため、深く考えることを苦手とする。

 

因みに両親は平凡そのもの。

 

スタンド名:アンフェアー・ワールド

 

【破壊力:E スピード:C 射程距離:A 持続力:A 精密動作性:D 成長性:B】

 

能力:幸運を奪う。  スタイル:遠隔操作型  分類:昆虫型

 

 

・益井魁  殺し屋。

 

前髪がトサカのように長い。

 

脚はとても弱く、普段はいつも座っている。

 

3年前に“ワイルド・ドッグ”から能力を与えられ、その力でスナイパーを営んでいた。

 

スタンド名:スターティング・オーバー

 

【破壊力:B スピード:A 射程距離:A 持続力:C 精密動作性:C 成長性:E】

 

能力:ライフル弾を操作する。  スタイル:近遠距離パワー型  分類:道具型

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

承太郎 『重要なのは「聞く」ことじゃなくて「聴く」事だ・・・』

 

望 『・・・は・・・はぁ・・・・・』

 

承太郎 『「見る」ことじゃなく「視る」ことだ・・・』

 

望 『こ・・・こいつ、思ってた以上にやばすぎるーーーーーーーーーーッ!!!』

 

承太郎 『“スタープラチナ・ザ・ワールド”ッ!!・・・いけるか!?』

 

望 『こいつ!スタンドは何体いるんだーーーーーーーッ!?』

 

ネズミ 『シャアアアーーーーーーーーーッ!!!』

 

『第参拾壱話  ネズミ狩りへ行こう』

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。