昼過ぎである。そろそろ午後一時になる頃で、生徒たちは昼食をあらかた食べ終えているはずだ。
その時間に望は屋上に向かっていた。
理由は簡単、承太郎に呼ばれたからである。
三時間目の終わりに、「話があるから昼休みに屋上にきてくれないか」と言ってきたのだ。
まあ話だけなら別にと思ったので屋上まで階段を上っていた。
が、屋上に近づければ近づくほどどんどんその足取りは重くなり、額から汗がだらだらと流れた。
望は薄々感づいている。これから起きる事を・・・・・。
屋上のあるフロアに到着した望は、屋上に出る扉をゆっくり開いて、辺りを見渡すと、真正面のフェンスに承太郎が彼を背にして景色を見ている。いかにもゴゴゴゴというものが出そうな雰囲気だ。
今、彼は望が来たことに気付いていないようだ。
そのため、望はゆっくりと来た道を戻ろうとするが、承太郎は振り返り、望に声をかける。
「望先生。待ってましたよ」
「はは、やっぱり気付いてたんですか」
逃走するという道は、空しくも崩れ落ち、前へ進む道しかなくなった。
尤も相手が承太郎なら尚更無理だが。
望は承太郎の所まで進みながら再び辺りを見渡したが、彼以外誰もいない。あらかじめ、彼は、仲間にそうさせるように言った。
つまり承太郎と望とのワンツーマン。とことん、サシで話したいのであろう。
そして望は、承太郎とその差2mの間隔を開けて立ち止まった。
2m、それは承太郎のスタンドの射程距離と同じだ。
どういう訳かそれだけ開けた。やろうと思えば今すぐスタープラチナを叩き込める。しかし、そんな卑怯なことをするつもりはなかった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
しばらくの間、沈黙の時が流れたが、沈黙に耐え切れず、最初に望が口を開いた。
「それで・・・いったい何のようですか?」
「いや・・・君を呼んだのは他でもない・・・だがその前にひとつ聞きたい」
望の質問に答えようとする承太郎。しかし、その返答よりも言いたいことがあるらしい。
望は「?」と首をかしげていた。
「てめー・・・何故抜かねぇ・・・?もしかしたら俺がてめーの敵かもしれないんだぞ」
「フッ。何世迷い言言ってんですかぁ?もし私がその気なら、とっくにあなたに叩き込んでますよ。なんせわたしの射程距離は5mですから」
承太郎の目つきはこれまでとは比べのものにならないほど恐ろしかった。そして、口調も学生時代に戻っている。
望も望だ。午前中とは180度変わり、承太郎とメンチをきっている。
これだと午前中は人形のように、本性を隠しているようだ。
「フッ。案外容易く化けの皮が剥がれたな。糸色望!まさかこれほど玉だったとはなぁ!」
「ご冗談を、最初から気付いてたのでしょう?それよりあんたこそ、本当はガサツでいかにも不良って感じですねぇぇぇ!!よくここまで来れましたねぇ!」
互いの本性を曝け出す二人。こんなところ誰かに見られたら、ひくか気絶するレベルだ。だから二人っきりにしたのであろう。
だんだん二人の心に呼応するのように風が荒れ始めた。髪や服が激しく揺れても二人は平然だった。
「はぁ・・・戦わざるを得ないって訳ですか。私は木津さんみたいに『戦場のみが私の居場所ッ!』ていうタイプじゃあないんですがねぇ」
マントを靡かせながらそうつぶやく望。十数年前に同じ事を言った奴を承太郎はふと思い出したが、すぐに考えるのをやめた。
「俺もそうだ、無利益な戦いほど愚かなことはない」
承太郎は若い頃不良で、飲酒・喫煙ときには牢屋まで入った。
しかし、そんな承太郎でも決して自分から危害を加えることはなかった。喧嘩を売られたらかうが、自ら進んで喧嘩を売ったりはしなかった。
理由はおそらくどうでもよかったのだろう。
「だが、てめー否、てめーらが!この学校で何を企んでいるのかが知りてぇ!それが人のための良いものかはたまた私利私欲の悪しきものなのかなぁ!!」
荒れる風の中で承太郎の正義の炎は逞しく燃えている。それに何らかの関係で同調したのか、彼の背後からオーラが発生している。
どんなに悪そうに見えても、彼の心は清く輝いている。昔も今も。
「フッ・・・、それに・・・」
「・・・・・・!?」
シリアスな雰囲気のこの場に承太郎の笑い。あまりにもおかしい。
望は何で彼が笑ったか分からず、顔をしかめながら後方に少し下がるが、承太郎は気にせずにこう発言、否、こう断言した。
「何故だかなぁ、今の俺はてめーと力
承太郎の笑いは、そういう感情から来たものだ。彼の帽子の左側のつばを右人差し指で押さえ、クイッと右側のつばまで指を動かした。
「だから・・・・、抜きな。てめーのスタンドを・・・午後の授業までには出れるよう手加減してやるからよ」
「はぁーー。しかたないですねぇ。久々に本気を出しますか」
これは承太郎なりの宣戦布告の合図だろう。こうなったら逃げるのも癪である。
望はだるそうな体を伸ばして、戦闘態勢に入る。
「それじゃあお見せしましょう。我がスタンド、“
ズキュュュュュュュュュウウウウン
勢いよく彼の背後から上空へ飛び出すスタンド“秒速の天使≪ミニット・エンジェル≫”。その姿は、正しく天使のような翼、頭上の輪、そして慈愛に満ちた髪留めをしている少女の形をしている。
見た目パワー型ではないように見えるが、騙されてはならない。そういうスタンドもいる。
承太郎もスタンドを出して構える。
そのスタンドは、物凄い筋肉質の人型で正しく承太郎の分身と形容できる代物だ。
お互い射程距離内に入っている。
どちらかが速いの勝負になる。
相手の力はお互い未知数なので、油断はできない。
こうした、沈黙の時が暫く続いた後、承太郎は動いた。
うおおおおと雄叫びを上げて、望に先手必勝の一撃を与えようとするつもりだろう。
しかし、その足は急に止まる。なぜなら、承太郎目掛けて何かが飛んできたからだ。
承太郎は即座に反応してスタンドでその飛び道具を掃った。
それはナイフ、それを知って再び殴りかかろうと思ったが、すでに望は後方に下がっていた。
敵ながら天晴と思ったが、それよりも承太郎には重要なことあった。
(あのナイフ、ヤツの腕も、スタンドの腕も一瞬も動かずに飛んできた。そういう能力か?いや、それに今の風の強さでもあれほど速度が遅い訳がない)
今の風力はだいぶ落ち着いている。2mの差でナイフを弾いた承太郎の精神力はすばらしいが、弾くことができたのは、ナイフの速度が遅かったためである。
2mの距離の差で成人男性が突っ込んでいる相手にナイフを投げたなら、手を大きくスイングするはず、そしてかなり速いため、相手は普通防げない。
承太郎でも避ける動作はとる。
しかし、望とスタンドのどちらの腕も1mmも動かず、かつ、ナイフを遅く投げることができるのか。
投げることは、スタンド能力と推測できるが遅い理由が分からない。スタンドの能力・パワーが仮に弱いとすると、何故自分で投げないか。
承太郎はそういうことを次々と推測した。
(まさか、誰かが隠れて投げたのか?ヤローを守るために。しかしどこからだ?ここらへんは注意深く確認したが、いなかったはずだ。ましてはヤローの後ろに隠れて一緒に来ることなんて一般人には出来る筈が・・・・)
「・・ッ!!!まさか!!!!」
「ようやく気付きましたか」
承太郎がようやく一つの真理に辿り着いたことにニヤニヤとする望。
承太郎は思った。何故早く気付かなかったのかと。
「そうスタンド使いは!!」『1人じゃありません!!』
急に女の声が聞こえた直後、望が羽織っていたマントが上空へ飛ばされた。もう一度言うようだが、風は強くない!!
「こいつはいったい!?」
何が起こっているのかわからない承太郎はたまげていると同時に、そのマントが形を変えて、一人の少女となった。
その少女はおかっぱ頭で望同様着物を着ていた。
「て・・・てめぇは・・・」
「そう、
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
承太郎が見つけた六人の内の一人にその少女は入っていた。
「先生の“
To Be Continued・・・・・⇒