午後1時25分。
昼食を食べ終え、生徒たちは5時間目のために席に座っていた。
2のへ組も同様だが、他クラスと1つ違うことは教諭が来るのが少し遅かった。
他クラスはチャイムが鳴る前に来ていたが望はチャイムが鳴ってから来た。
「すいません皆さん。色々あって遅れました。それでは授業に移りましょう」
「いや、先生待って下さい」
昼休みに承太郎に殴られていたことが嘘かのように全開の望。
そんな彼が生徒たちに一旦謝罪した後、授業を始めようとするが、それを真ん中分け少女、木津千里は止めた。
「全くもって、理由になっていません。そこは、きっちりと話すべきでは?」
「色々ありまして」
「先生。はぶらかさないでください。」
「何もはぶらかしていませんよ」
「何か起こったんですか?」
「いや何も。それでは授業を始めます」
「先生・・・・・。」
承太郎と戦ったことを伏せる望。そこまでして隠す理由は分からないが。
そんな中、一人の女生徒が望の顔をじっと見つめる。もちろんまといではない。
(ああ・・糸色先生・・・・愛しき先生、なんちゃって)
そんなダジャレを心の中で呟き微笑みながらじっと見つめる彼女。
(先生・・・・あなたはどうして先生なの?あなたが先生で無ければ私達の愛を邪魔する障害は何も無いというのに)
もうセリフがまんまあれだが、彼女のその微笑みには慈愛に満ちていた。
(先生・・・・あなたのためなら私は・・・・命も惜しくはありません。だから・・・・・)
しかし、急にどんどんその微笑みは影を濃くしていた。そうそれはもはや・・・・
(あなたを傷つけた者たちを始末します)
悪魔のようだった。
放課後、徐倫は廊下を歩いていた。理由はなく只歩いていた。
時刻はすでに4時半を過ぎていた。帰宅部はもうほとんどいないであろうと徐倫は思っていると、「すいません」と声をかけられた。振り返るとそこに見覚えのある女生徒が立っていた。
「あっ、あなたは確かへ組の・・」
「あびる。“
出席番号22番。小節あびる。好きなもの:動物の尻尾
クラスの中では背が高くスタイルも良く、左目は包帯によって隠れている。
常に包帯をしているので周りからはDVを受けていると言われているが、本当は動物園でアルバイトをしていて、その動物たちとじゃれていて怪我をしている少女だ。
余談だが、彼女の部屋には動物の尻尾のコレクションを飾っている。どこぞのギャンブラーたちよりタチが悪い。
そんな彼女が徐倫に話しかけてきた。
「ん?どうしたの?」
「いや・・・こんな時間まで残っているなんて精がでますね」
「ああ・・・どうも」
徐倫はあびるに褒められて少し照れる。見るようじゃバックを持っているからこれから帰るつもりだろうか。
そんな事を言おうかと考えた徐倫。だが、口にしたのは別の言葉だった。
「それで1人になった私を倒すとか考えてないよね・・・・小節あびるさん」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
目を鋭くして質問する徐倫。その目からは殺気がガンガン来る。
「な・・・何のことでしょう」
「とぼけてんじゃねぇ!!父さんからもあんたがスタンド使いであることは聞いてんのよ!!単独で来たって事は私を倒す気まんまんってことでしょう!?」
自分の素性があちらにバレてる・・・。あびるはそう考えた時自然と目の色を変えた。
と同時に、あびるに巻いていた包帯が一斉に徐倫に目掛けて襲ってきた。
「ストーン・フリィィィィィーーーーー!!」
徐倫はそう言い、自分のスタンド、“ストーン・フリー”を出し、その包帯を払い飛ばした。
そして、二人は一旦間を置いて相手のスタンドを観察した。
徐倫の“ストーン・フリー”の
あびるの方は見当たらないが、おそらく“包帯”であろう。その証拠に包帯が生きているように活動しているからだ。
「いかにも・・私はスタンド使い。名を“ラヴマシーン”。私のスタンドはスタンド使い関係なく『視える』から先生に使用を制限されてるのよ」
「ふーん、『視える』スタンドかぁ・・・でも“ストーン・フリー”に弾かれるってことはあまりパワーはないようね」
「確かにパワーないけど・・・」
あびるの弱点はパワーの無さと理解した徐倫。だが一方で平然としているあびる。何をするつもりだろうか。
そう考えていた徐倫は急に足元に違和感があると思い、下を見ると・・・・
包帯があった!!!
そのことに気づいたとき包帯がそこら中にあることに今気付いた。
そして、徐倫がおったまげる前にあびるは腕を動かし彼女を拘束した。
ピッッッシィィィィィィィィン
「拘束力ならあります」
「な・・・何じゃあこりゃああ!!」
スタンドも縛られた徐倫。何とか振り解こうとするが、彼女の言うとおりうんともすんともいわない。
「後、私の操る包帯は“保護色”ができましてねぇ。戦う前に仕掛けておきました」
これがあびるが平然とした理由だ。相手に気付かせずに捕縛する、それができるから一人で来たのだ。
徐倫は焦りながら包帯を解こうとした。自分を殺すほどのパワーは無いが、人質になることだけは避けたかったからだ。
でもなかなか解けない。スタンドのパワーを全開にしてもビクともともしない。
一旦諦めてあびるの方へ見ると彼女は包帯を野球ボール並の大きさに纏めて徐倫の方へ歩を進める。
「嘘でしょ・・・あんた」
「私にもちゃんとした攻撃方法があるのよ」
そう言い、あびるは徐倫の顔面に纏めた包帯を叩き付けた。
「ほら!!」ドゴォォォ!
「ぐげぇ!」
「ほらほらほらほら・・・・」ドゴ ドゴ ドゴ ドゴ ドゴ ドゴ
「ブ、ブ、ブ、ブ、ブ、ぐお」
痛くないようで結構痛い。それを何十回も繰り返された。
何十回もされると徐倫の顔はいたる所が腫れ上がっていた。そんな状態の徐倫は顔色ひとつ変えず彼女に問う。
「何故だ・・・何の理由で私と戦うんだ!私達があんたらにとって邪魔だからと言いてぇのか!?」
「別に・・・そんな事無いわ。理由は1つ先生を傷つけたから」
互いに敵対意識はないはずだから戦う理由も、襲われる理由も無いと徐倫は思った。
ただ、あびるにとっての理由は自分たちの担任を傷つけたことらしい。ということは、
「まさか、戦いを見てたの!?」
「いいえ、ぶらぶらと校庭を歩いていたら、屋上で音がしたから行ったら先生が倒れてて、『誰が先生をッ!』て思ったら、自己紹介そうそうスタンドを出した承太郎さんが怪しいと思ったから」
「でも・・やったのは父さん一人よ」
「けど変わらないでしょう。スタンドも使えるそうだし、共犯よ」
「確かにそうですね」
彼女は戦いを見ていなかった。つまり『時止め』のことは知らない。少しほっとする徐倫だがまた新たな疑問が浮かび上がる。
「ねぇ?なんでそこまであの担任に忠実なわけ?独占欲が強すぎるわよぉ。こういうのを“ヤンデレ”って言うのかしら?」
「う~~~~ん。確かに私もここまで先生を独占したいなんて思うのもいつだったかしら・・・あっ、思い出した」
そのような気持ちをし始めた正確な時を思い出し徐倫に言った。
「私の『初めて』を先生にあげた時かな」
「はあ!?」
理解不能だった。徐倫の頭の中で『初めて』の意味を何十回と検索した。意味を理解するのにある程度時間が掛かった。
「分かりませんか?つまり処・・」
「言わんでいい、言わんでいい、言わんでいい!!」
意味を言うあびるだが徐倫の必死の叫びで遮った。
「えっ!?つまり、えっ!?あ、あんた!貴重な自分のヴァージンなんだと思っているの!?普通好きなヤツにやるだろう!!」
「先生のことはする前から好きだったわよ。してから先生への愛が大きくなったの。これでいい?」
「いいわけねぇーだろう!!そこは普通同年代だろッ!!」
「別にいいでしょ、誰に『初めて』あげても他人には関係ないでしょ。・・・それに私には『そういう恋愛』できないし」
『初めて』を誰にあげるかで討論になっている2人。女の子がそんな事を言ってはいけません!
最後に言ったあびるの言葉に疑問を抱く徐倫。対してあびるはガールにあるまじきガールズトークでテンションが上がっていた。
「ああ、こんなこと言ってるとあの時のことを思い出して興奮してきたわあ。ウフフフフフ」
彼女は自分の腕を手で掴み、上下に擦り合わせてテンションを上げる。
それに対して徐倫はグツグツと怒りが込み上げてきた。
「あんた・・・それって・・・ただ寝とられただけだろうがあああああああああああああ!!!!」
ブチィィィィィィィッ!!!!
噴き出した怒りは、“ストーン・フリー”に伝わり、包帯を破り去った。と同時に徐倫の乙女の怒りもブチッと切れた。
「あんたが誰にヴァージン上げようが知らないけど、急に闘志が湧いてきたわ!!」
今の徐倫はどっかの誰かさんの髪型を貶されたように怒っている。
そんな彼女を見てあびるは緩みきった精神を直して構えた。
「今のこんな私を攻撃して来るなら・・・」
「くッ、“ラヴマシーン”」
「最後までとことん来いッ!!オーラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ・・・!!」
徐倫があびるに突っ込んできてラッシュを与えようとする。だが、それらを包帯でガードする。
その包帯を破ることはできず、徐倫は攻撃するのを止めた。
「ちっ、結構堅いのね。」
「防御力ならまといちゃんにも負けないからねっと」
「うおっ!!」
攻撃を止めた瞬間、あびるは徐倫を捕らえるために包帯を伸ばす。それを巧みにかわし、窓ガラスを割り、外へ逃げた。
あびるはそのことに気付いた瞬間、外を見るが徐倫はもう50メートルも向こう側にいた。
彼女にとって逃げられる事は、一番の難点だった。なぜなら、彼女は生まれつき運動が出来なかった。見た目とスタンド使いなのにできない。だから、へ組の中で最も足が遅い。
そうこうしている内に徐倫はもう見えなくなった。このままあびるは諦めるのか。
いや、諦めない!!
あびるは左手を左目の所に持っていきしばらく押さえた。そして、フッと笑い、何処かへ行ってしまった。
左目の包帯から血を出しながら・・・
徐倫は今校舎裏にいた。校舎内にいても包帯で捕まるからだ。
それに校舎裏はあまり手入れをしておらず草木が生い茂っている。一先ずここに隠れておこうと決めたのだ。
(彼女の射程距離はおそらく5メートル程の筈。だから此処らへんに隠れてあの子を待ち・・うおっ!)
徐倫が今後の作戦について練っているときに何かにつまずいた。振り返ると包帯が自分の右脚に巻き付いていた。
「何ーーーッ!!まさかッ!あびるの包帯って遠くまで伸ばせるのか!?」
「その通りです。私は何百メートル先まで伸ばせるの。この学校の敷地内なら満面無く伸ばせます。あなたがここに来ると思って先に仕掛けて置いたの」
そして、何時の間にかに校舎の陰から出てきたあびるはもう徐倫の数メートル先の正面にいた。
「うおおおお!!!“ストーン・フリー”!!」
自分の脚に包帯が巻かれてながらも、あびるを攻撃しようとする徐倫。
だが、彼女の攻撃は全てあびるにかわされる。
「なっ!?なんでなんで当たらないの!?左目は包帯してるから視えてるのは右目だけなのに・・・左目の出血と関係があんの?」
そう、徐倫の言う通りあびるは、かわす度に左目の出血量が多くなり、最終的には垂れてきた。
徐倫はその出血と回避に関係があると考えていたとき、あびるはその一瞬の隙を突いて、徐倫の首の後ろから包帯を巻きつけ5メートル後ろの木に叩きつけられた。
「ごはッ!!」
「もうあなたと遊んではいられません。早くあなたのお父さんを倒さなければならないですからね。ちなみに私の左目は幼い時に事故で怪我をして高校入学前に移植したんです。よくは分かりませんが左目に力を入れると出血する代わりに、人が次にどう行動するかが分かるんですよ」
そう言いあびるは徐倫の首を絞め始めた。ただ絞めあげてない、激突した木に予め何重もの包帯を巻き付かせている。
最終的には磔刑のようになるが、徐倫はそうならないために踏ん張っている。
「無理ですよ、ここであなたが踏ん張っても、結局は首が絞まっていることに変わりはありません。諦めてください」
しかし、あびるの言葉に徐倫は耳を傾けずに踏ん張っている。相当首が絞まっているのに必死に必死に。
「無駄だつってるでしょう!!首が絞まって知能が下がったんですか?踏ん張るぐらいなら首の包帯取る方が最も効率よくあなたが助かるのよ!?」
徐倫の無駄な踏ん張りに流石のあびるもキレるが彼女は一向に止めない。
呆れたあびるは思いっきり力を入れた。
そして、徐倫の首、否、体が“バラバラ”になった。
「なっ!!?何ですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
驚きのあまりあびるは思いっきり叫んだ。そりゃそうだ。
あびるは2メートル程前に進んでどうなっているかを見る。そこには『長い糸』が残っていた。
「糸?彼女は『糸を操る』能力だというの!?じゃああれは分身で本体は別の場所!?(どこなの!?いろんな所にあえて仕掛けたのに踏まれる反応なし、一体どこに!?)」
とあびるが思っていると、ふとゴロゴロと何かが崩れる音がする。あびるがよーーく聞いてみると石か何かを崩しているような音がする。
しかもその音がどんどん近づいて・・・・・・・
(まさか!!?彼女!!)
しかし、もう何もかもが遅かった。そうあびるが気付いたときには地面から“ストーン・フリー”の両腕が彼女の目前にッ!!
(地面の中を掘って!!!)
『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ・・・・・!!!』
流石のあびるもそのラッシュに対応できず、呆気なくくらってしまう。
あびるをスタンドで殴っている最中に徐倫は地面の中から出てきて殴られている彼女を見るのだ。
「惜しかったわね。あんたが私の能力を知っていたら、勝っていたのにね。因みに私の能力は『肉体を糸に変える』能力。
今になってあびるに能力を教える徐倫。否、徐倫はあの方法をするためにわざと能力を見せなかった、と考えた方が妥当だ。
何故なら、草木がここいら一帯に生い茂っているから穴を掘っても気付き難い所だからだ。
「いくらあんたの能力が強くても、土の中までは流石に忍ばせることは考えてないようね。敗因はそれよ」
徐倫は敗因の理由を述べているが、あびるに意識があるかは皆無だ。
「じゃあね」
『オォーラァァァァァッ!!!』
ドゴォォォォォォォン
あびるを嵐のようなラッシュから開放した徐倫。あびるはもう完全に気を失っている。あびるは宙を少し舞って落下する。
どさっとあびるが落ちた後、徐倫はその場に倒れこむ。
「やれやれって感じだわ。正にギリギリね」
彼女の作戦はこうだ。
まず“ストーン・フリー”で自分が入れる程度のトンネルを掘るため地面にしがみつき、掘れたら体を糸にし包帯の拘束を解きトンネルに入る。一部をトンネルに気付かせないためにより遠くに設置する。
後はあびるの隙を突いて地中から攻撃する。以上だ。
もし掘っているときに体が数センチでも浮いてバレてしまったり、もっとトンネルの穴に近づいたり、囮の糸がトンネルに続いていると気付かれてトンネルの中に包帯を入れられていたら・・・・。
そんなことを想像するだけで冷や汗が出てきた徐倫。その汗を拭い、承太郎達を探しにこの場を去った。
その後、承太郎達を探している徐倫だが、承太郎達はもう既に帰っており、もういないことが教員から知らされた。
だるい体を起こして、家に帰ろうとする徐倫。だが彼女の前からある男が向かって来た。
その男は糸色望。徐倫は彼に笑顔で話しかける。
「あ、糸色先生じゃないですか」
「おや?徐倫さん、こんな遅くに何やってるんですか?」
「いえ。あなたの教え子のあびるちゃんとぉ、戦ってたんですぅ」
「おや、では彼女に勝ったということですか。流石は承太郎さんの娘さんですね」
「「アハハハハハハハハハハハハハハハハハ」」
和やかな会話をしていたが、急に徐倫は望の肩を掴んだ。しかもおもっくそ。
「あの・・・徐倫さん?ちょっと痛いんですけど」
「でもねぇ、どうしても怒りがおさまらないんですよ・・・あんたに対して」
「え?それってどういう事ですか?」
「そのままの意味だよ!!乙女の純潔奪いやがってッ!!このクサレ寝取り先公野郎ォーーーーーーッ!!!!!」
「え!!?それってどういう・・いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
数刻後、糸色望はボコボコにされた状態で焼却炉の中に入っていたのを見廻りに来た警備員の人に発見される。
小節あびる・・・・再起不能(リタイヤ) 翌日、包帯の量が増えた。
糸色望・・・・再起不能(リタイヤ) 翌日、意識不明のため休み。
To Be Continued・・・・・⇒