カルデアのアルバイト清掃員の日々   作:ターボー001

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アステリオスがお手伝いしてくれる話

カリカリとペンが走る音が部屋に響く。

 

 

(明日くらいには目を覚ますかなぁ。)

 

 

俺はベットの上で胡坐をかいて座り何となく天井を見つめ、未だに意識を取り戻さないマスターの彼のことを考えていた。

 

 

 

 

 

「血圧、体温、脈拍、異常なし。健康そのものですね。」

 

 

 

そう呟くとナイチンゲールさんがカルテとペンを机に置く。

 

 

 

彼に輸血の協力をして目覚めてから2日間、俺は大事を取って基本ベットの上で過ごしていた。

大げさだなぁと思ったが提唱者がナイチンゲールさんだったので大人しくいうことを聞いた。

だってそうしないと健康のために命を奪われるという矛盾が発生しそうなんだもん。

 

 

 

 

 

「じゃあ・・・」

 

 

「ええ。今日から仕事復帰しても構いません。 ただし!無理はしないように!」

 

 

「わ、わかってますって。だからそんなに顔を近づけないでください。」

 

 

「あなたが休んでいる間、私が最低限の衛生環境を保ってきました。が、やはりあなたが休む前とは衛生状況が悪化しています。なのであなたが仕事復帰をするのはとても嬉しいことです。でも、だからと言って無理をしてあなたが倒れたら私は悲しい。」

 

 

「・・・ナイチンゲールさん。」

 

 

 

珍しくしおらしい感じのナイチンゲールさんの言葉に心が満たされていく。児童養護施設出身の俺には、こういった誰かに必要とされていると実感できる言葉は非常に胸に刺さるのだ。

 

 

 

「と、とにかく、あなたにもう治療は必要ありません。すぐに衛生環境の改善をお願いします・・・無理をしない程度で!」

 

 

 

「はい! いってきまーす。」

 

 

 

 

すぐに背を向けて照れているのをごまかすナイチンゲールさん。茶化したい気持ちが芽生えたがメスが飛んできそうなので辞めた。

触らぬ英霊に祟りなしってね。さてお仕事して気を紛らわそう。

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりの廊下を汚れ具合を視認しながら歩き、掃除用具が置いてある倉庫に向かう。

 

 

 

「あれ?」

 

 

 

 

倉庫に着いた俺は少し違和感を感じたので思わずそれを口に出した。いつも使う清掃用具が数点足りないのと、それらを運ぶカートが無いのだ。

 

 

 

 

(盗まれた? いやいや金にならないしなぁ。)

 

 

 

 

バキッ!

 

 

 

 

 

顎に手を当てて名探偵張りに推理する・・・フリをしていた俺の後ろの方で何かが折れるような音がした。

そこへ向かうと目に入ったのは大きな体躯、白い髪、真っ暗な闇の中心にある赤い眼。

 

 

その巨大さに思わず見上げたまま動かないでいると赤い眼がこちらに気づいて俺をとらえる。

するとゆっくりとこちらに近づいて来た。普通なら逃げだすところなのかもしれないが何回かマスターの彼といるところを目撃していたのできっとサーヴァントなのだろうという認識はあった。

ただ・・・名前がわからない!! あれ~? 彼の名前なんだっけ? 1回くらい聞いた気がするんだよな~。本人に聞くのもちょっと気が引けるなー。

 

 

 

 

 

「ぼく、あすてりおす。」

 

 

 

「!!」

 

 

 

頭を抱えている俺の心情を察してくれたのか。なんと!彼から自己紹介をしてくれた!

 

 

 

「ますたぁと、えうりゅあれが、はじめてはなすひとにはじこしょうかい? しなさいって。」

 

 

 

マスターは彼のことだとわかったがもう一人のエウリュアレ?ってのがわからない。誰だ? でも助かった!!ありがとう2人とも!英才教育万歳!

さてと自己紹介されたらこちらも返さなくては

 

 

 

 

 

「俺は・・・」

 

 

「しってる。ますたぁのいのちのおんじん。」

 

 

 

「・・・・・・。」

 

 

 

 

間違ってはいない。うん、間違ってはいないんだけどその呼ばれ方は恥ずかしい!!訂正したい!!

でも彼の目を見て話していると何故か否定出来ない。否定しちゃダメな気がする・・・

 

 

 

 

「・・・ここで何をしていたの? アステリオス君。」

 

 

 

訂正を諦めて話題を変えることにした。

 

 

 

 

 

「ますたぁをたすけてくれたから、いのちのおんじんにおれいしたくて、そしたらえうりゅあれが、かわりにおそうじしたら?っていうからおそうじしてた・・・だけど・・・おれた・・・ごめんなさい。」

 

 

 

シュンとした表情で彼はきれいに二つに折れたモップを差し出してきた。

 

 

 

「そ、そうか・・・大丈夫・・・まだ代わりのモップがあるから気にしないで!」

 

 

 

本日2度目の胸刺さりな彼の言葉に目頭を熱くさせながら必死にそれを抑えて俺は言葉を紡ぐ。しかし彼の表情は晴れなかった。

 

 

 

「よし!じゃあアステリオス君には別のことを手伝ってもらおうかな?」

 

 

「べつのこと?」

 

 

「そう!アステリオス君は大きいからね、高いところの窓ふきをお願いできるかな?」

 

 

「うん! わかった!」

 

 

 

大きく頷くとにっこりと彼が笑った。彼に雑巾の絞り方から乾拭きのやり方まで教えて、俺も自分の作業へと取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお!!」

 

 

 

アステリオス君と協力して掃除を終えるとその作業時間の短さに驚き、思わず感嘆の声をあげた。

普段なら脚立を使って拭く窓も彼の場合だと不要になり、一度脚立を降りて動かしてまた登るという手間もない。

おかげで普段の半分以下の時間で掃除が終わった。

 

 

 

 

「すごい!!アステリオス君のおかげで早く仕事が終わったぞ! ありがとう!」

 

 

「ぼく、やくにたった?」

 

 

「たった、たった。すんごい役に立った。」

 

 

「うへへへ。」

 

 

 

俺の言葉に手を頭の後ろにやり、擦りながら体をモジモジさせて喜びを体現させるアステリオス君。すると

 

 

 

 

 

グゥーー

 

 

 

 

突如なった大きな音。そしてアステリオス君がさっきまで頭にやっていた手をお腹に移動して一言。

 

 

 

 

「おなかすいた。」

 

 

 

「じゃあ手を洗って一緒に食堂に行こうか。」

 

 

 

「うん!ごはん~ごはん~♪」

 

 

 

 

即興のごはんの歌を歌いながら手洗い場に向かって歩き出すアステリオス君。何故か俺までも楽しくなり一緒にデュオしながら手を洗い、食堂までとその歌を届けに行った。

 

 

 

 

「なんだその奇妙な歌は?」

 

 

 

「あっ、エミヤさん。 からあげ定食お願いしまーす。」

 

 

 

「ぼくも、おんなじやつ。」

 

 

 

 

怪訝な顔をしながら問うてきたのはカルデアの飯担当、エミヤさん。彼もサーヴァントなのだが彼の作るご飯がそれはまぁ一級品なのである。

彼が来る前の食堂の味はもう忘れてしまった。まずくはなかった気はするがこの味を知ってしまったらもう戻れない。しかし食堂のご飯数日ぶりだな~、からあげ定食楽しみ~。

 

 

 

 

「アステリオスのは承ったが君のは却下だ。」

 

 

 

「ええ!?何で!?」

 

 

口の中が完全にからあげ定食になっていたところにまさかのシェフの気まぐれ。思わず抗議の声も大きくなる。

 

 

 

 

「とある人物から君の今日の献立はニラレバ炒めにするようにと言われている。」

 

 

 

誰だよそんな鬼畜の所業をする・・・・一人しか思い当たらないなぁ。

 

 

 

 

「私も彼女の反感は買いたくないからな。諦めろ。」

 

 

「いのちのおんじん、かわいそう。」

 

 

「命の恩人?・・・ああ、そういうことか。」

 

 

 

エミヤさんがアステリオス君と俺を交互に見ながらクスクスと笑ってくる。

 

 

 

 

「・・・ニラレバ炒めでいいから早くしてください。」

 

 

 

「ああ、すまんすまん。承った・・・クフフ。」

 

 

 

プンスカという音がエミヤさんに伝わるように怒りを体現しながら歩き、席に着くと隣にアステリオス君がちょこんと座ってまたご飯の歌を歌いだした。その可愛さのおかげで俺の心は浄化され怒りはどこへやら。

 

 

 

 

「からあげ定食とニラレバ定食、おまちどう。」

 

 

 

からあげの香ばしいタレの匂いが鼻孔をついてくる・・・残念ながら俺のじゃないけど。でもきっとこのニラレバもうまいに決まっている。

 

アステリオス君と一緒に手を合わせ、

 

 

 

 

「「いただきます!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

予想通りの美味さに箸はどんどん進み、半分ほど食べ終わったころ、エミヤさんが小皿に3個からあげを乗せて僕のおぼんの横に置いた。

 

 

 

「マスターの命を救ってくれたお礼・・・としては安すぎるがせめてもの気持ちだ。受け取ってくれ。・・・くれぐれも彼女には内緒だぞ。」

 

 

 

「エミヤさん・・・ありがとうございます!」

 

 

 

「なに、命の恩人にはちゃんとお礼をしないとな?」

 

 

 

口角を上げて悪戯っぽく笑うエミヤさん。

 

 

 

「・・・エミヤさんまでその言い方やめてくださいよ。」

 

 

 

「いやだった?」

 

 

 

 

早々にご飯を食べ終えていたアステリオス君が心配そうにこちらを見つめていた。し、しまった!

 

 

 

「い、いや、別に嫌じゃないよ!む、むしろ嬉しい。うん、すごい嬉しい!・・・あっ。」

 

 

 

「決まりだな。」

 

 

振り返ると先程と同じ笑顔のエミヤさん。やられた。 以降、俺のあだ名が「オンジン」になるのだが当然このときの俺はまだ知らない。

 

 

 

「はぁー、エミヤさんにいじめられた。アステリオス君、慰めてー。」

 

 

完全にふてくされた俺は力なく椅子に座り悪態をついて優しいアステリオス君の言葉を待ったのだが

 

 

 

「・・・くんはいらない。」

 

 

「えっ?」

 

 

予想外の言葉が返ってきた。

 

 

 

 

「あすてりおすでいい。ずっと、きになってた。」

 

 

 

「ふむ、同意見だ。どこか距離を感じる。ましてやマスターの命の恩人に敬称など使われては心地悪い。私も今後はエミヤでいい。」

 

 

 

 

「いや、急に言われても。」

 

 

 

「では練習をするか?」

 

 

 

そう言ってエミヤさんに椅子を回転させられ、アステリオス君と向き合う形になる。アステリオス君が目を輝かせながら待っている。

い、言うしか選択肢がない。

 

 

 

 

「ア、アステリオス?」

 

 

「はい!」

 

 

 

呼ぶと彼は嬉しそうに笑い、手を挙げた。

 

 

 

「では次は私の番だな。」

 

 

「ひぃ~。」

 

 

 

 

結局この後、エミヤのことも呼び捨てで呼び、一件落着と思えたがそれを目撃した他の一部のサーヴァント達から「2人だけずるい!」という声があがり、

俺に呼び捨てで呼ばせるゲームがカルデア内で流行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

おまけ

 

 

 

 

「あのー、ナイチンゲールさん?」

 

 

 

「・・・・・。」

 

 

 

「聞こえてますよね? おーい?」

 

 

 

 

「・・・・・。」

 

 

 

「婦ちょ・・・」

 

 

 

「ナイチンゲールです!」

 

 

 

「・・・・フローレンス?」

 

 

 

「・・・・・・・婦長でいいです。」

 

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