俺達の知ってる『なのはさん』じゃねぇ   作:乾操

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最近スゴく更新ペースが早いです。
でも、突然遅くなると思うので気を付けてね。

次回から一旦文章の書き方を従来通りに戻す……かも。カモノハシ。


4.暴走列車で

「私たちが丹精して作り上げたデバイスですから、壊したりしちゃダメですよ?」

 

ちっこい上司、リィンフォースⅡ(通称リイン)曹長は新デバイスを受け取りに来たフォワード陣の周りをクルクル飛び回りながらそう説教した。

四人のデバイスの出来は上々で、ティアナとスバルが心配した『新型との相性』も問題なく調整されていた。実際に装備してみても、長年連れ添ってきた相棒のような気がした。

 

「この子達はまだまっさらな、赤ちゃんみたいな状態です。皆さんが成長するのと同じように、デバイスも成長していくですよ」

「なんだか、素敵ですね」

 

スバルは待機形態の新たなる相棒、『マッハキャリバー』をそっと撫でて優しく囁き掛けた。

 

「これからよろしくね、マッハキャリバー」

《こちらこそ、相棒(バディ)

 

デバイスは魔導師にとって単なる道具以上の存在だ。互いに信頼関係を築いていくのは、人間と同じだ。

だから、デバイス……特にインテリジェント・デバイスは持ち主に似ると言われる。

 

「皆さんが悪い人になると、デバイスも悪い子になっちゃいますよ~」

「な、何だか怖いね」

「キャロに関しては大丈夫さ」

 

ブルッと震えるキャロにエリオはそう言った。

これから命を託すことになる相棒は、リインの言う通りまっさらな赤ん坊の状態である。だがそれは、自分達も同じなんだと四人は同時に思った。自分はデバイスを信じ、デバイスは持ち主を信じる。それが確立されて始めて一人前と言えるだろう。

 

「おっ、もう受け取ったのかな?」

 

そこへ一人前のエース、高町なのはがやって来た。いつもは首にかけているデバイスを今日は手からぶら下げている。

 

「リイン、ストレンジ・ハートの調整お願い」

「はいです!」

 

どうやら彼女は相棒の調整のついでに新人達の新デバイスを見に来たようである。

彼女はそれぞれのデバイスを嘗めるように見るとフーンと嬉しそうに鼻息を吹いて素敵な笑顔を作った。

 

「いいデバイスだね」

「ホントですか!」

「もちろん」

 

なのはが太鼓判を押してくれたのだらか、その通りなのだろう。デバイスマイスターの言うことももっともだが、一番信頼できるのはデバイスをいつも実用している人物の保証である。

 

「大切にしなきゃね。魔導師にとっては、デバイスが恋人のようなものだから、たっぷり愛してあげてね」

《私は貴女が恋人なんてヤです》

 

ストレンジ・ハートの即答にティアナは一瞬笑いそうになったが、なのはが余りにも素敵な笑顔をこちらに向けてきた為すぐに顔から笑いを消した。

と、その時。彼女達の顔を赤色灯の点滅が照らし、スピーカーからけたましいサイレンの音が鳴り響いた。新人達の顔に緊張が走る。

 

『第七区にて、無人運転中の輸送列車が襲撃を受けている模様。スターズ、ライトニング分隊出撃!』

「あーもう!こんなときに!」

なのははうも文句を垂れながらメンテナンスを受ける直前だったストレンジ・ハートを取り上げて首にかけた。その顔は、口とは裏腹に嬉しそうである。

当然だ。待ちに待った、テロ事件なのだから。

 

「先にヘリで待つ。みんなも、準備ができたら来てね」

「了解!」

 

この時のなのはの声の調子は隊長のそれであった。だが、その顔はなんとも邪悪な笑みを浮かべている。

 

 

 

『列車は平均毎時七十キロ、規定速度を守ってクラナガン中央駅に向かって進行中。このままで行くと、二時間後には市街に侵入します』

 

隊員たちを乗せたヘリコプターはクラナガン郊外の山岳地帯を飛行していた。下には流れの速い川が流れており、堕ちれば一貫の終わりと思われる。

 

「今回、隊長と副隊長は上空の敵機を排除、みんなは、列車内の制圧を行ってね」

「敵の目的は『レリック』と呼ばれるロストロギアの一つだと思われる。盗られるなよ」

 

ヘリの中、フェイトと副隊長のシグナムが制圧作戦の概要を説明する。ヘリコプターは最新型で機内が静かなため、インカムを使わなくても十分に声が聞こえる。

もちろん、その目の前で居眠りをしているなのはの寝息もバッチリ聞こえた。

 

「……おい、高町……」

 

シグナムは隊内では『なのはと似ている』と言われている。だが、それはあくまでバトルマニアのトリガーハッピー気質な部分の話であって、守護騎士の将なこともあり、規律には大変厳しかった。

 

「ふぇ……んがぁ」

怒りを孕んだシグナムの声になのはは一瞬目を覚ますも、直ぐ様眠りの園へと引き返していってしまった。シグナムは拳をワナワナと震わせる。

 

「起きろ高町!貴様、後輩たちに示しがつかんと思わんのか!」

「ムニャムニャ、煩いなぁ、ニート侍……」

最後の「ニート侍」は微かな、本当に微かな一言だったのだが、ヘリの消音技術のこともあってバッチリシグナムの耳に届いていた。

 

「誰がニート侍だ!貴様よりは働いているぞ!」

 

「そこは張り合うところじゃねぇだろ」とヴィータが呟いたが、これは聞こえなかったようで、シグナムは説教を続ける。

 

「隊長たるもの、一に規律、二に規律!三、四も規律で……」

「五に睡眠……」

「違う!」

 

二人の繰り広げる無意識のコントにフェイトは笑いを堪えようと必死である。だが、流石に止めなければならないと思ったらしく、「シグナム落ち着いて」と半笑いで仲裁に入った。

 

「しかしだな……!」

「みんな怖がってます。作戦前には止めておいた方が」

 

たしかに、フォワード四人はシグナム怒りのお説教を若干だが怖がっていた。シグナムは少し顔を赤くすると、一つ咳払いをし、相変わらず眠りこけるなのはをキッと一瞥した。

別に彼女はなのはを気に入っていないわけではない。しっかり認めている。だからこそ、言いたいこともあるのだ。

 

「とにかく、だ。無茶はしないよう、任務を果たせ」

「日頃の訓練の成果を見せるときだぞ。気張ってけ!」

 

シグナム、ヴィータの激励に四人は元気よく、少し緊張ぎみで「了解!」と答えた。

 

「目標が見えました!寄せる!」

 

操縦席からヘリパイのヴァイス曹長が確認の声を掛けてくる。フェイトがお願い、と答えるとヘリは高度を下げ、列車の上に並走を始めた。

後部の降下ハッチが開き、気圧の違いが強い風を起こす。

 

「スバル、行くわよ……!」

「おう!」

 

二人は互いに激を入れ合うとハッチの外へ駆け出し、外へ飛び出した。数秒後、降下する二人の身体を一瞬だけ光が包み、それが晴れた時にはバリアジャケットを纏った姿となっていた。

外で装着するのは、その際に発生する魔力の衝撃がヘリのバランスを崩す可能性があるからである。うん、きっとそうだ。

二人は体勢を整え、列車の屋根に着地する。

 

『スターズ3、4、着地しました』

『スゴーイ、このバリアジャケット!』

 

ヘリのスピーカーから二人の声が流れ出してくる。スバルは新しいデバイスの心地に興奮しているようだ。

次は、ライトニング分隊の番である。

最年少の二人はハッチの縁に立ち、下を覗いた。そこには電車の屋根と、その上で行動を始めたスバル、ティアナの姿があり、そのすぐ横にはどこまでも深い谷が見えた。

 

「………」

 

キャロはその高さに思わず脚がすくむ。訓練では問題がなかったのに、本番となるとこうも緊張するものか。

彼女の不安が伝わったのか、肩でフリードリヒし心配気に喉を鳴らす。

 

「大丈夫?」

「えっ?」

 

ふと横を見ると、エリオが微笑みかけてくれていた。彼の手は、優しくキャロの手を握っている。

 

「不安なら、一緒に降りよう?」

 

その言葉はキャロにとって嬉しいものだった。彼女はその境遇上、こうやって支え合える同世代の人がいなかったのだ。

二人は息を合わせて飛び降り、バリアジャケットを展開して見事車両の上に着地して見せた。

その光景を、小さな窓から薄目を開けたなのはが微笑みながら見ていたことは、誰も知らない。

 

 

 

 

モニターには、山岳地帯を走る輸送列車が映し出されている。その上で、若い魔導師達が一般的に『ガジェット』と呼称される自立兵器と激戦を繰り広げていた。

 

「機動六課……か」

 

それを白衣に身を包んだ一人の男が椅子にゆったりと腰掛けながら見ている。長めの髪から覗く顔は、どこか生身の人間らしくない、冷たいものを感じる。

 

「ふむ、やはり興味深い連中だ」

「と、言いますと?」

 

そんな男の側にブラウス姿の女性が寄り添っている。女性の方は知的な妖しさを纏わせた、魅力的な雰囲気の女性だった。

 

「高町なのはは知ってるかね?」

「本局のエースですわ」

「ふふん、その通りだ……ウーノ」

 

男はウーノと呼んだ女性の身を低くさせ、彼女の艶やかな肌を優しく撫でた。

 

「その姿が見えないのだ。私は彼女に興味がある」

「ドクター……私では?」

「フム、嫉妬かな?素晴らしいことだ」

 

ドクターと呼ばれた男の手は顔から胸に滑り、そのまま太ももへ移るとソッとスカートの中に入り込んだ。

 

「ン……お戯れを」

「分かるかね、人間らしさというものは、生殖器官があるかどうかだけでは判断できないのだよ」

 

脱力したウーノは男の膝の上に半身を預ける形で倒れ込んだ。彼女は息を若干荒げ、顔もほんのりと赤くなっている。

 

「こういうのも、人間らしさなので?」

「そうだな」

 

彼の手の動きにウーノは幽かな悲鳴をあげた。

 

「私には、夢があるからね」

「そのために、私たちをお創りになったのでしょう?」

「そう言うな」

 

彼は顔にニヤリと笑みを浮かべると、モニターに視線を固定したまま反対の手でウーノの頭を撫でた。

 

「君たちが必要だ。いてくれないと、困る……」

 

 

 

事態はおおよそ良い方向に進んでいた。

大小様々なトラブルに見舞われたものの、日頃の訓練を思い出し、なんとか切り抜けたのだ。

この『大小様々なトラブル』というのは、エリオが吹っ飛ばされたり、エリオがかっ飛ばされたり、エリオが崖下に真っ逆さましたり、である。

崖下真っ逆さまには全員がヒヤリとしたが、キャロの頑張りでフリードリヒを本来の勇ましい姿に(竜魂召喚と言うらしい)が成され、間一髪、彼を救い出した。

この辺の活劇を是非ともここに書きたいのだが、アニメと全く同じ流れのため、断腸の思いで割愛させていただく。決して面倒なわけではない。

 

さて、状況は刻一刻と変わる。

列車の外の敵は大方一掃し、残るは内部のみとなった。

 

「突入して、片付けるわよ」

 

ティアナは相棒のクロスミラージュを構えながら屋根の上の作業用扉を見下ろして三人に言った。 しかし、スバルが異を唱える。

 

「いや、援軍が来るまで待った方がいいよ」

「え? なんで?」

「中は敵がどれだけいるか分からないし、時間は十分にあるし」

 

もっともである。

それに、スバルはティアナが初の実戦だからだろうか、らしくなく妙に興奮しているのを感じ取っていた。

 

「何よスバル……」

「なのはさんも、無茶はいけないって」

 

スバルの言葉に彼女は少し息を飲んだあと、何やら唸ると首をガクンと落とした。

 

「わかったわよ……でも、援軍がいつ来るかも分からないじゃない」

『その心配は、ないよ』

 

突如なのはの声が頭の中に響いた。念話である。

四人はキョロキョロと辺りを見渡し、上を向くとそこには太陽を背にして飛ぶなのはの姿があった。照らし出されるシルエットは、天使のそれに見える。

 

「制空権は、大丈夫なので!?」

『うん!私に任せて!』

 

いつになく頼りになるなのはに、スバルは「流石はなのはさん!」と感激し、ティアナとエリオも援軍が来てくれたことにホッとしている。

ただ、キャロだけはそのなのはに違和感を感じていた。声の調子が、いやに楽しげなのである。

彼女は目を凝らし、逆光の中の暗い顔を覗いた。

笑っている。笑っているというか、興奮しているように見える。

キャロは更に幼い頃、諸事情により村を追い出され、各地を放浪していた時期があった。その間、彼女には様々な危険が降り注ぎ、その度にフリードと協力して乗り越えてきたものである。

その放浪の過程、彼女は必然的に危険を察知する能力を備えるようになった。なにかが起こりそうな気配になると、第六感が彼女に危険を報せるのだ。

そして今まさに、彼女は感じたのだ。

……あぁ、これはヤバイやつだ……と。

 

「みなさん、急いでフリードに乗ってください!」

「何?どうしたの?」

 

急に慌て始めたキャロにスバル達は戸惑いの声をあげる。ティアナも、

 

「まだ作戦中よ……」

 

と声を荒げた。だが、キャロの目があまりにも迫るものだったため、その先の言葉が詰まってしまった。

 

「でも、僕たち全員をフリードで運ぶって出来るの?」

「出来るかな……いや、出来なきゃだめ!出来なきゃマズイ!」

 

当のフリードはその巨躯に似合わず不安げな呻き声をあげる。だが、キャロが近くに寄り、「お願い、私たちだって、まだ死にたい歳じゃないの」と囁くと事態を察知した様子で勇ましく羽を羽ばたかせ始めた。

 

「早く乗ってください……!」

 

 

 

結果的に、キャロの野生の勘は適切な判断だったと言えよう。

空の上、眼下に走る列車を見ながらなのははストレンジ・ハートを掲げた。

 

「やっぱり、海なんかじゃなくああいう物体に撃ちたいよね」

《全くです》

 

掲げられたストレンジ・ハートの上には魔力のスフィアが形成され、大気中の魔力も吸い上げながらみるみる大きくなっていった。

彼女の目には、列車の上の後輩の姿は映っていない。

 

「列車は止まらない。なら、こうするしかないよね?」

《全くです、マスター》

 

魔力のスフィアは密度を上げ、巨大なエネルギー体となっていた。彼女はそこから発せられるピリピリとした感覚に身を震わせていた。

 

「いくよ、ストレンジ・ハート!」

《了解、マスター》

「スターライト……」

 

彼女は息を吸い込み、ストレンジ・ハートを腕が引き抜けそうな勢いで降り下ろした

 

「ブレイカァァァァ!」

 

魔力のスフィアは一瞬だけその空間から姿を消し、次の瞬間には巨大な光の柱となって輸送列車の先頭部分に降り注いだ。

完全な物理破壊型に設定してある。

放たれたSLBは先頭車両を無惨にもぐずぐずの鉄塊に変身させ、それだけでは飽きたらず先の線路、さらには山岳の一部を崩壊させた。すさまじい轟音と共に岩石や放り出された車両が揉みくちゃになりながら下の川へ転落していく。

山肌に巨大なクレーターが建設された。

当のなのはは、股座から全身に駆け抜ける快感に身を悶えさせ、恍惚の表情を浮かべていた。

 

「あぁ、ヤバイ、イッちゃいそう……」

『そのまま逝っちまえバーカ!』

 

通信機が壊れんばかりの勢いで罵声を浴びせてきたのはヴィータである。振り向くと、そこにはヘリが飛んでおり、ハッチからフェイトに羽交い締めにされながら暴れるヴィータの姿が見えた。

 

『なのは、どうするの?これ、もう災害のレベルだよ?』

 

フェイトが震える声で訊いてくる。線路の一部が山ごと破壊されたのだ。しばらく復旧は無理だろう。

だが、なのはの声はいつも通り明るく元気なものだった。

 

「大丈夫!ヴィータちゃんが報告書で『やむを得ない状況だった』ってことにしてくれるから!」

『ヒャッ!?』

『あっ、おい!?ヴィータ!しっかりしろ!』

 

ヴィータの悲鳴と、シグナムの叫びを耳に聞きながら、なのはは爽やかな風に髪を靡かせた。火照った身体に、風が心地よい。

 

「あぁ、思い出すだけで……」

 

彼女は再び身体を快感に震わせた。

そんな姿を、フリードにしがみつくフォワード陣は唖然として見詰めている。

その四人の中、「流石はなのはさん……!」と感動に瞳をうるうるさせるスバルはやはりちょっとおかしいのだろう。

 

 

こうして、クラナガンの平和は守られたのであった。

 

 

つづく




レリックの存在忘れてた。川を流れてるのを局員が回収したと思っててください。


いつのまにかお気に入り数が増えてました。ありがとうございます。
スト魔女が分かる方は、スト魔女二次の方も読んでやってください。喜びます。でも、片方は書いてる本人もよく分かってないので注意を。

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