俺達の知ってる『なのはさん』じゃねぇ   作:乾操

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リィンじゃなくてリインだと指摘されて、「HAHAHA! そんなはずはない!」と思い確認したらリインでした。思い込みって怖いね。ご指摘ありがとうございました。一応直しましたが、直し忘れがあれば教えてくださると嬉しいです。

あと、今回なのはさん殆ど出てないです。


6.ホテル・アグスタ 後編

ホテル・アグスタを取り囲む鬱蒼とした森。その中で、一人の強面のおじさんと、小さな妖精のような人型……リインと同じ融合機だろう……が息を潜めて警備の様子を観察していた。

 

「スカリエッティは、好かんな」

 

男は手にしていた双眼鏡を目から離して呟くと軽く咳き込んだ。

 

「旦那、どうしたんだよ急に」

「ルーテシアの心にツケ込むのが気に入らんと言ったんだ」

 

周りを飛び回る融合機を指で小突くと彼は再び双眼鏡で警備の様子を確かめた。少なくとも彼の目に映っている警備は、気が抜けているのが分かった。

 

「ルーテシアの所へ行ってくれ」

「はいよー」

 

融合機は男の側を離れると一つ宙返りをしてみせ、のままも森の奥へと飛んでいった。木々を器用に避け、スピードを落とさずに飛ぶ。しばらくすると少し開けたところに出て、その中心に一人の少女と、昆虫を思わせる甲冑に身を包んだ男……女かもしれないが……が立っていた。

 

「ルールー!」

「アギト」

 

ルールーことルーテシア・アルピーノはアギトと呼ばれた融合機に気づき、口許をほんの数ミリだけ動かし形ばかりの笑みを見せた。

 

「旦那がさ、そろそろ良いってさ」

「分かった……ガリュー、お願いね」

 

彼女がそう言うと隣にいた昆虫甲冑の人間、もとい召喚獣ガリューはまるで忠実な騎士のように礼をし、サッとその場から消え去った。そのスピードにアギトはヒューッと口笛をならす。

レリックの反応は感じられた。ホテル・アグスタにあるのはほぼ間違いない。

それをガリューが見つけ出すまで、そう時間はかかるまい。

 

 

 

 

しばらく警備している内にいつの間にやら影は小さくなっていた。

中では午前のオークションが終わり、昼食の真っ最中だろう。警備の人間達も、そろそろ遅めのランチタイムである。

 

「ティア、私たちもお昼ご飯貰いに行こ」

「はぁ、ようやくお昼か……」

 

何事もないまま数時間、同じ場所で警備しているのは未熟な彼女達には中々の苦痛である。ヴィータなどに言わせれば、何事もないだけありがたく思え、と言われるであろうが、彼女達には何かあってくれた方が生きた心地がするというものだった。

 

「じゃぁスバル、私の分も取ってきて。誰か一人は残しておかなきゃ」

「わかった。行ってくるね」

 

昼食が相当嬉しい様子で、スバルは小躍りしながら配布場所へ走っていった。その背中を見送り、ティアナは改めて頭を警備に集中させた。

 

『ティアナ、聞こえる?』

 

それと同時に、通信機で話し掛けてきたのは指揮官代行のシャマルだった。その声には、少し焦りが含まれている。

 

「どうかしましたか?」

『キャロが、転移召喚の気配を感じたそうなの』

 

召喚は一般的な魔法とはまた違うシステムで発動される。召喚師はその独特な波長を何と無くだがキャッチすることが出来るのだ。

また、キャロの専門分野に索敵も含まれている。何か来るのは確実と言えた。

 

「了解しました、警戒します」

『お願いね』

 

通信が切れるとティアナはバリアジャケットを展開し、クロスミラージュを構えて辺りの怪しい気配を少しでも感じ取ろうとした。

身体がじんわりと温かくなり、脈が少しだが速くなる。周りはとても静かで、自分の息遣いが妙に大きく感じられた。

 

「……来たっ!」

 

彼女が強烈な魔力を感じた瞬間、数百メートル先で無数の魔法陣が出現し、そこからこれまた無数のガジェット・ドローンが姿を現した。

現れたのは『Ⅰ型』と呼ばれるもので、カプセル状の身体に小さなカメラを幾つか備え、卑猥な触手を生やしている。

 

「頼んだわよ、クロスミラージュ!」

《了解》

 

彼女は二丁拳銃をイメージした相棒を構え、照準を敵のど真ん中に定めた。集中力が高まり、身体の奥から力が溢れてくるのを感じた。

 

「ティア~」

 

だが、その呼び声に脱力してしまった。振り向くと、二つのランチボックスを手に持ったスバルが駆けてくるのが見えた。

 

「すごいよ、中身。ゴージャス!……あれ、どったの?」

「『どったの?』じゃない!」

 

のほほんとしたスバルに怒声を浴びせながらティアナはガジェットの群れに指さした。

 

「敵!エネミー!分かる!?」

「あぁ、ヤバイね……ご飯どうしよう」

「そこら辺に置いときなさいよ!」

 

ゴタゴタしていると、ガジェットが瞳に相当する部分から青白く光るレーザーを発射してきた。可視可能なレーザーである。生身に当たればひとたまりもないだろう。

ティアナはプロテクションを展開してそのレーザーを防ぎ、スバルにさっさとバリアジャケットを装備するよう急かした。

だが、スバルはランチボックスを何処に置こうかと右往左往しており、ティアナは怒りを通り越して呆れてしまった。

スバルはティアナも認める通り、非常に優秀な魔導師である。だが、食べ物やその他彼女のお気に入りが絡んだ事態となると一気に冷静さを失い、この様な有り様を見せてしまう。

 

「スバル、あんたいい加減に!」

「だって、お昼なんだよ?」

「だから何よ!」

 

ティアナもまた優秀な魔導師である。が、万能ではない。更には未熟なのだから、スバルに気を取られて前のガジェットの挙動に直ぐ様気付けなかったのは愚かではあるがしょうがない事とも言えた。

敵が右往左往する不自然なスバルを見逃すはずはない。

 

「……! スバル!」

「えっ……うん!?」

 

ガジェットの一機がスバルに向かってレーザーを発射したのだ。

ガジェットのレーザーは光速よりは遅く進むが、それでも煌めいた瞬間には着弾しているものである。そのため戦闘では、常にガジェットの向きを把握し、射線から少しずれて行動するのが原則だ。

だが、スバルはそれを怠った、というより出来なかった。

「スバルッ……!」

「うわっ!?」

 

レーザーが煌めく。放たれた光線は空気を突き抜けてスバルの身体を貫かんとする。レーザーは、スバルの肌を容赦なく焼き、貫くことだろう。

だが、ティアナの目に奇跡とも言えるような光景が展開された。

間一髪、スバルは脚を折り、しゃがんだのだ。彼女の髪を少しだけ焦がしたレーザーはそのまま真っ直ぐ延び、減衰して消滅した。

ティアナは目の前に迫ったガジェットを手早く処理すると座り込んだスバルの元へ駆け寄った。

 

「大丈夫なの?」

「………」

 

返事はない。どこか悪い場所に当たったのではないかと心配になった。だが、ティアナが肩に手をかけようとした途端にスクッと立ち上がった。背筋は伸び、脚もしっかりしている。

 

「大丈夫なのね? バリアジャケットを!」

「……うん」

 

スバルはバリアジャケットを身に纏い、臨戦態勢に入った。が、その様子がどことなくおかしいのをティアナは感じ取った。

 

「スバル、ホントに大丈夫?」

「ティア、あのさぁ」

「……なに?」

「あのお昼ご飯さぁ」

 

先程スバルが手にしていたランチボックスはガジェットの攻撃で彼女の手を離れ宙を舞い、綺麗に切り揃えられた芝生の上に引っくり返っていた。中身は見事に飛び出し、もう食べられないだろう。

 

「あのお昼ご飯さぁ、私の見たこと無いような食べ物も入っててさぁ、貰ったときからスッゴく楽しみにしてたわけよ」

「それは、残念だったわね。でも、いつまでもウダウダ言ってたら……」

「聞くところによればさぁ、一流のシェフが作ったとかでさぁ」

「スバル、あんたいい加減にしなさいよ!」

 

らしくなく未練がましいスバルに思わずティアナはカッとして、ビンタの一発でもお見舞いしてやろうかという気分になった。

しかし、スバルの顔を見た瞬間、その怒りはサーと引いてしまった。

その顔は全くと言っていいほど無表情で、口は一文字に閉ざされている。しかし金色に輝く瞳からは明らかな怒気が溢れ出ており背中からも何やら気のようなものが噴出していた。

そんなスバルはティアナの肩をポンポンと叩き、耳元でただ一言、

 

「召喚師殺してくる」

 

と囁き、戸惑うティアナを残してウィングロードと呼ばれる魔法の道を空中に出現させると猛スピードで走り去ってしまった。

 

 

 

 

 

森の中、ルーテシアは目を瞑り、ガジェットの操作をしていた。オートマチックでも操作は出来るが、暇なのである。

ガジェットを操作して警備の局員をおちょくるのは、中々楽しい。

 

「ガリュー?」

 

だからであろうか、ガリューが帰ってきたことに気が付かなかった。

 

「ごめんね。どうだったの?」

 

ガリューはなにも喋らない。その鉄面皮から気持ちを読み取れるのは主であるルーテシアのみだった。

 

「そう……じゃぁ、帰ろうか」

 

ルーテシアはそう囁くとその姿を森の闇の中に消した。

 

 

 

 

「コロース」

 

スバルは無数のガジェットをスクラップに変身させながら辺りを走り回っていた。

無論ガジェットもむざむざスクラップにされる義理はないから、必死の(機械に必死という概念があるかは疑問であるが)抵抗を見せ、迫り来るスバルにレーザーの雨を降らせる。

 

「コロース」

 

しかしどうやらスバルは人間止めてるようで、光速に迫るレーザーを紙一重のところで避け続け、すれ違い様にガジェットを粉砕していく。

 

「食べ物の恨みがこれ程とは……」

 

ティアナはスバルの取りこぼしを撃ち倒しながら必死で追い縋る。取りこぼしを相手にするのはかなり不満であった。

彼女のプライドは長所でもあり短所でもあった。相棒と連携して敵を倒すのは至上の喜びがあるが、その相棒のおこぼれを貰うハイエナ的な戦いは悔しいものがあった。

「くっ、スバルが邪魔で狙えない……!」

 

彼女の持ち味である中距離からの狙撃は動き回るスバルが邪魔になって中々うまく出来なかった。左の敵を狙うとスバルが現れ、右を狙うとまた現れる、といった調子である。

 

「どきなさいよ!」

「コ・ロース」

 

バーサーカーなスバルは聞く耳を持たない。その姿は、どことなくなのはのそれを思い出させた。

ガジェットは後退を始めていたが、二人にとってそれはどうでもよいことだった。

 

(魔法弾の操作は、まだ慣れていないが!)

 

スバルがあまりにも邪魔に感じられたティアナは思いきってまだ習得途上の技術を使うことにした。魔法弾を思いのまま操るにはかなりの技術が必要なのである。

 

「変なところに飛んでいくな、当たれよ!」

 

そう口の中で念じ、彼女はクロスミラージュの引き金を引いた。放たれたオレンジ色の魔力弾はティアナの思念で操作され、空中で不規則な動きを取った。

 

「集中……集中……」

 

操作には先にも述べた通り高い技術力が必要で、特に集中力が要求される。

頭の中で動きを正確に思い浮かべ、エネルギー体を動かすのだ。

本人はあまり自覚してはいないが、ティアナはこのような操作にかなりの適正があった。訓練を積めばかなりの使い手となり、今後の彼女の進路にも大きな影響を与えることだろう。

だが、いかんせん、今は訓練が足らなかった。

放たれた魔法弾は初めこそ順調に動いていたが、一瞬……ほんの一瞬だけティアナは前をチョロチョロ動くスバルのことを考えてしまった。

 

「しまった……」

 

スバルは愛しの昼食を奪ったガジェットを殴るのに夢中である。避けることはない。物理破壊設定にしている魔法弾を受ければ、スバルと言えど大ケガをしてしまうだろう。

ティアナは思わず目を瞑った。本当は耳も塞ぎたいところだったが、そんな余裕はなかった。今に、魔法弾の直撃を受けたスバルの悲鳴が鼓膜を振るわすことだろう。

「……?」

 

悲鳴は、聞こえない。彼女は恐る恐る目を開いた。

そこには、ウィングロードの上でガジェットの身体の中に拳を突っ込んだままキョトンとするスバルと、肩に相棒のグラーフ・アイゼンをのせたヴィータの姿があった。

 

「あぁ……副隊長……」

「このバカヤロウ……!」

 

ヴィータの顔は怒りと何やらえもいわれぬ感情をごちゃ混ぜにしてひきつっていた。

ティアナはそれを見てその場で座り込んでしまったが、それはヴィータが怖かったのでも、この後の懲罰が嫌だったからでもなかった。

 

 

 

 

「シャマルお待たせ……って何や、もう片付いたんか?」

 

屋上で指揮を執っていたシャマルのもとにヨレヨレになったドレスを着たはやてが駆けつけた頃には騒ぎは沈静化し、綺麗な芝生の上ではガジェットの亡骸をエリオとキャロが突っつき回していた。

 

「みんな頑張ってくれたから。特に、スバルがスゴかったのよ」

「ン? そうなんか」

 

日頃の訓練の成果であろうか、とはやては想像する。辺りに残るウィングロードの残滓やガジェットの変わり果てた姿からして、その場所でスバル無双が行われていたことは確かであろう。

 

「この調子だと、なのはちゃんを技術的に越える日も近いなぁ」

 

はやては『技術的に』の語気を強めて言った。

彼女の視界の隅では残骸にディバインバスターを撃とうとしてフェイトに止められているなのはの姿が映っていたが、見なかったことにした。

とにもかくにも、彼女としては部下の成長は喜ばしいことであった。

だが、この事が後々、間接的ではあるが騒動を引き起こすことをこの時誰も想像していなかった。

 

 

つづく

 




StSのアニメを少し見直してみて、「キャロの髪質悪そーだなー」と思いました。所々爆発してますもん。寝起きとか凄そう。でもVividだと綺麗になってたよね。アジ○ンスでも使ったのかしら。
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