Fate/Grand Order巻き込まれる魔法少女達   作:Dr.クロ

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次に向かうは迷宮、そこで待つのは本と子供達


第四夜~迷宮のメリー・クリスマス~

前回、サンタアイランド仮面と遭遇してからイリヤ達は次なる目的地である迷宮に来ていたのだが…

 

美遊「…此処、さっきも来たよね」

 

イリヤ「うん……」

 

現在、サンタリリィが進めば行けると考えもなくズンズン進んだ結果、迷っていた。

 

サンタリリィ「……道に迷いましたね…」

 

刹那「迷ったね、見事に……」

 

ルビー「サンタリリィさんが深く考えずに歩いた結果ですね~」

 

そう言ったルビーに違います~とサンタリリィは腕をブンブン振って否定する。

 

サンタリリィ「こ、こっちが目的地かなって啓示があったんです!冷静に振り返ると単なる気のせいでしたけど!」

 

イリヤ「それ普通にやっちゃいけない事だよね!?」

 

言い訳にイリヤがツッコミを入れると一同の耳に声が聞こえた。

 

美遊「あれ?この声って…」

 

サンタリリィ「む、何かいますね。良かった。きっとクリスマスのリクエストをした方ですね!」

 

そう言って駆け出すサンタリリィにイリヤは慌てて止めようとする。

 

イリヤ「ちょ、ちょっと待って!?」

 

サンタリリィ「なんですかイリヤさん!いきなり止めて!」

 

止められて不満なサンタリリィにイリヤは良く見て!と叫ぶ。

 

モンスター「オマエラヲハライッパイクッテヤルゼェ!!」

 

サンタリリィ「ギャーーーー!?」

 

イリヤ「モンスターだよあれ!」

 

ルビー「ああ、これはプレゼントはワ・タ・シになりますね」

 

出て来たのがモンスターだったのにサンタリリィとイリヤは絶叫し、ルビーが呑気に言う。

 

サンタリリィ「そんなこと言っている場合ですか!?」

 

イリヤ「とにかく戦おう」

 

ツッコミを入れるサンタリリィにイリヤはそう言いながら転身し、美遊も構えるのを見てサンタリリィも慌てて構える。

 

刹那「あっ、術殺騎の混合だ相手」

 

襲い掛かるトナカイマンやスノーマンのクラスを確認して参ったな…と刹那はぼやく。

 

サンタリリィはランサーでイリヤと美遊はキャスターだから相性ではアサシンに有利だがライダーとは分が悪い。

 

刹那「しょうがない。イリヤちゃん、アサシンのクラスのサーヴァントカード使ってくれない?ライダー相手じゃあ不利だから有利に変えるためにね」

 

イリヤ「は、はい!」

 

ルビー「イリヤさん、どのカードにしますか?」

 

指示に頷いた後にルビーの言葉にこのカードとジャックの描かれたサーヴァントカードを取り出す。

 

素早く動けてなおかつこれから会いに行くと言うのもあって即決であった。

 

イリヤ「夢幻召喚(インストール)!!」

 

その言葉と共にイリヤの姿は光に包まれた後に服装はジャックの服装に変わり、その後にナイフを持って駆け出す。

 

イリヤ「はぁっ!!」

 

ズババババッ!!

 

連続で放たれえる斬撃はスノーマンやトナカイマンを切り裂いて行く。

 

サンタリリィ「えぇーい!」

 

美遊「速射(シュート)!」

 

それにサンタリリィや美遊も続いてモンスターを撃破して行く。

 

刹那「!イリヤちゃん後ろ!」

 

イリヤ「っ!」

 

その後に刹那の言葉と共にイリヤは前に出てジャイアントスノーマンの攻撃を避けた後に体制を立て直す。

 

サンタリリィ「とやー!」

 

イリヤ「この!」

 

追撃しようとしたジャイアントスノーマンにサンタリリィが攻撃してよろけた所をイリヤが斬撃を炸裂させて倒した。

 

イリヤ「よし!これで残りは…」

 

サンタリリィ「あと一体!」

 

一気に行くよ!と言う刹那のに頷いてからイリヤは宝具を発動する。

 

イリヤ「此よりは地獄。“わたしたち”は炎、雨、力――殺戮を此処に……解体聖母(マリア・ザ・リッパー)!!」

 

連続ですれ違いざまに切り裂いて行き、最後に大きく切り裂いて離れると共に最後のモンスターは倒れる。

 

イリヤ「た、倒せた…!」

 

美遊「ホント無事に終われたね」

 

お互いにふうと息を吐き出し、サンタリリィもやりましたと言った後…

 

???「サンタさーん!サンタさーん!どーこーにーいーまーすーかー!」

 

サンタリリィ「……今の声は!サンタを求める子供たちの声です!さ、呼び掛けましょうトナカイさん!ここでーす!どこですかー!?」

 

刹那「あ、きっとあっちから…ほら」

 

聞こえてきた声にサンタリリィも大きい声で呼びかける中でナーサリーとジャックが来る。

 

ナーサリー「ああ良かった、やっと見つけたわ!」

 

ジャック「だいじょうぶ?絹を裂くような悲鳴が聞こえたけど」

 

嬉しそうに言うナーサリーの後にジャックがサンタリリィを心配そうに見る。

 

サンタリリィ「だ、大丈夫です。全然大丈夫です。それより、リクエストをした方々ですか?」

 

ジャック「そうだよー!……ってあれ?あなたがサンタさん?」

 

ナーサリー「去年のサンタさんはいないの?」

 

首を傾げる2人にサンタリリィは顔を伏せたがすぐさま気合の籠った目で顔を上げる。

 

サンタリリィ「今年はこの私、ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィがサンタです!」

 

イリヤ「(よく噛まないで言えるなー;)」

 

自信満々に流暢に名乗るサンタリリィにイリヤは感嘆する。

 

ジャック「なっがーい!」

 

ナーサリー「まるでスパムみたいに楽しいお名前ね!」

 

美遊「(スパムって;)」

 

サンタリリィ「スパム!?」

 

そんなサンタリリィの名前にジャックはそう言い、ナーサリーの感想にサンタリリィは驚く。

 

ナーサリー「でも残念!去年のサンタさんにお礼を言いたかったのに!」

 

ジャック「そうだね。あんなにたくさん、プレゼントをもらえたんだし」

 

サンタリリィ「アルトリアサンタさんはそんなに沢山プレゼントをくれたんですか?」

 

残念そうに呟く2人にサンタリリィは聞く。

 

ナーサリー「うん、わたしとジャックにとっては初めてのクリスマスだからいっぱいくれたの!」

 

ジャック「トナカイさんともお友だちになれたからね!」

 

イリヤ「そう言えばあれは凄かったね…」

 

美遊「サンタオルタさん。あの子達の為にもね」

 

刹那「いやーあの時は大盤振る舞いしたよ」

 

マテリアルを見て思い出して言うイリヤに美遊も同意する中で頑張ったよなーと刹那はうんうん頷く。

 

サンタリリィ「先代サンタさんが……」

 

ナーサリー「さ、準備はいいかしら?」

 

え?とナーサリーの言葉にサンタリリィはえ?となる。

 

サンタリリィ「準備?準備って何のですか?」

 

ジャック「またまたとぼけちゃってー。わたしたち知ってるよ。サンタさんはね、プレゼントあげるときにね、たたかわなきゃいけないの!」

 

ルビー「あーこれはもしかして…」

 

戸惑うサンタリリィにジャックは笑って言うのにイリヤ達は思い出してあーとなる。

 

サンタリリィ「た、戦う……ですか?いや、これまでやや不本意ながら戦いを繰り広げてきたのは確かです」

 

イリヤ「不本意……?」

 

刹那「不本意部分が少なかったもんね」

 

戸惑いながら言ったサンタリリィのにイリヤはえーとなる隣で刹那は苦笑する。

 

サンタリリィ「しかし、サンタとは戦いを振りまく者ではなく、愛を振りまくもの……成長した私が振りまかなくなったものです。…………………おのれ、成長した私!!」

 

サファイア「自分で自身に怒っていますね」

 

刹那「落ち着こうねサンタリリィちゃん」

 

憤慨するサンタリリィにサファイアは思わず呆れる中で刹那が宥める。

 

サンタリリィ「す、すいません。自分の未来の事を考えるとつい」

 

イリヤ「(怒る程なんだね;)」

 

ナーサリー「マスターといちゃいちゃしてる、はしたないのだわ!」

 

謝るサンタリリィのを聞いて冷や汗を掻くイリヤをスルーしてナーサリーがそう言う。

 

サンタリリィ「イチャイチャしてる訳ではありません!」

 

ルビー「え~?ホントで御座るか~?」

 

イリヤ「ルビー!?」

 

そう言って茶化すルビーにイリヤは話を拗らせないと叩く。

 

ナーサリー「クリスマスはわたしたち子供の時間よ!カップルなんかに奪わせないわ!」

 

美遊「いや、カップルでもない;」

 

否定する美遊だがナーサリーとジャックはやる気満々であった。

 

ナーサリー「いっぱいプレゼント貰おうねナーサリー!」

 

ジャック「貰いましょうねジャック!」

 

イリヤ「ああもう、やる気満々だよ!」

 

美遊「戦うしかないみたいだね…」

 

サンタリリィ「仕方ありません。今回も不本意ですがやってあげます!」

 

そう言ってそれぞれ武器を構えて戦闘態勢に取る。

 

刹那「イリヤちゃんはジャックを!サンタリリィはナーサリーをそれぞれ相手にして!」

 

その言葉にはい!と答えて言われた通りにイリヤはジャックと、サンタリリィはナーサリーと対峙する。

 

美遊が入ってないのは流石に3対2はズルいと言われるだろうからの配慮である。

 

それを察した美遊は刹那の隣に移動する。

 

美遊「あの…刹那さん」

 

刹那「ん?なあに?」

 

2人の戦いを見ながら美遊はおずおずと刹那に話しかける。

 

美遊「サンタリリィなんですけどなんか……クロと似た感じがするんですよ…もしそうだとしたら…」

 

刹那「……」

 

そう聞く美遊に刹那は無言のまま困った様に頭を掻く。

 

刹那「大丈夫だよ美遊。そうはならないようにするから」

 

美遊「そう…ですか…」

 

その後に笑って安心させる様に言う刹那に美遊は固くなっていた表情を和らげる。

 

刹那「それに元々これはそのためだしね……(小声)」

 

美遊「刹那さん?」

 

ボソリと呟いた刹那は首を傾げる美遊にううんなんでもないと返す。

 

サンタリリィ「たあっ!」

 

イリヤ「はあぁ!」

 

同時に攻撃を繰り出すと共にナーサリーとジャックは吹き飛んで転がる。

 

ナーサリー「あいたたた…やるわね」

 

ジャック「でもまだまだ!」

 

そう言ってジャックは飛び出し、ナーサリーは魔力弾を放つ。

 

ルビー「むむむ、やはりお強いですね二人とも」

 

サンタリリィ「ですがこっちもまけませんよ!」

 

そう言って2人は奮起してジャックとナーサリーとぶつかり合う。

 

美遊「二人とも頑張って!」

 

サファイア「ファイトです!イリヤ様、サンタリリィ様!」

 

応援にイリヤとサンタリリィは頷いた後にそれぞれ同じ方向に2人を飛ばす。

 

その後にサンタリリィが魔力を開放する。

 

サンタリリィ「聖なる夜、ステキでムテキなキセキの一瞬。優雅に歌え、かの聖誕を(ラ・グラスフィーユ・ノエル)! ……しゃんしゃんしゃん♪ しゃんしゃんしゃん♪ しゃんしゃんしゃん♪ しゃんしゃんしゃん♪」

 

持っていた槍を掲げると放出された魔力がクリスマス関連のに変化してジャックやナーサリーへと降り注ぐ。

 

イリヤ「色々降ってきた!?」

 

ルビー「お~まさに聖夜に相応しい風景ですね」

 

それにイリヤは驚き、ルビーはそう感想を述べてる間に呆気に取られていたジャックとナーサリーは降り注ぐ奴に避けられずに埋もれる。

 

サンタリリィ「えっへん!どうですか私の宝具は」

 

イリヤ「す、凄いよサンタリリィ!」

 

美遊「サンタらしい宝具だね」

 

2人の誉め言葉にえっへんと胸を張るサンタリリィの後に埋もれていた2人が出て来る。

 

ナーサリー「負けちゃったわ…」

 

ジャック「うわーん!」

 

イリヤ「(…あ、しまった!?)」

 

サンタリリィ「え?ま、負けたらどうなるんですか!?」

 

突如泣き出す2人に戸惑うサンタリリィだがイリヤは今更ながら思い出してやば…と呟く。

 

ナーサリー「負けちゃったらプレゼントは貰えないの!そういう約束なのよ!」

 

ジャック「しかたないよね……」

 

サンタリリィ「でもちゃんとプレゼントは用意しているのに……」

 

悲しそうな2人にサンタリリィはどうすれば良いかと思われた時…

 

バシュッ!

 

サンタリリィ「はっ!?」

 

彼女の足元に…薔薇が付いた黒鍵が刺さる。

 

刹那「薔薇の黒鍵……天草、某有名な月の美少女戦士のアニメでも見たのかな…?」

 

それを見て刹那は誰にも聞こえない様にぼそりと呟いた後にその人物は現れた。

 

サンタアイランド仮面「少女の嘆き、少女の喜びを聞いたとき、駆けつけ三杯、寿司食いねぇ。サンタアイランド仮面、参上……!」

 

イリヤ&美遊「(惨状の間違いじゃないの!?)」

 

名乗り文句に状況から見てイリヤと美遊は思わずそう心の中でツッコミを入れたくなった。

 

ルビー「惨状じゃないですかねこの状況だと」

 

サンタアイランド仮面「参上!」

 

イリヤ「言い切った!?」

 

サンタリリィ「お師匠さん…!」

 

そんな2人のを代弁するルビーのを無視して言い切った後にサンタアイランド仮面はコホンと咳払いしてサンタリリィに近づいて耳打ちする。

 

サンタアイランド仮面「案せずとも、これこの通りの行動を取れば大丈夫です(ひそひそ)」

 

サンタリリィ「えっと……でも、嘘は良くないような……」

 

不安そうなサンタリリィにサンタアイランド仮面は続ける。

 

サンタアイランド仮面「クリスマスは嘘が許される日なのです。エイプリルフール?何ですかそれ」

 

白蛇の少女が聞いたら炎上案件な事をさらりと言うサンタアイランド仮面だが、その説得が効き、サンタリリィは決めたのか頷く。

 

サンタリリィ「わ、分かりました!」

 

イリヤ「(わ、私はどうしよ!?)」

 

ルビー「(イリヤさん、此処は私にお任せを!)」

 

美遊「(え、ルビー何を…)」

 

それにイリヤもどうしようかと思った時にルビーが何かしようとするので美遊はどうするのかと思った後…

 

ルビー「ちょいさ!」

 

ぷす!

 

イリヤ「あう!?」

 

美遊「イリヤ!?」

 

ルビーが掛け声と共にイリヤに注射の様なのを刺し、イリヤはバタリと倒れて美遊が慌てて駆け寄る。

 

イリヤ「や、やられたー……ごふっ」

 

美遊「イリヤ、大丈夫?」

 

サンタリリィ「え、あ「はいオマケ(ぷす)」あふん、やら…れた…(バタッ)」

 

チーンとなるイリヤの後に続けざまにサンタリリィもされて倒れる。

 

ナーサリー「ほえ?」

 

ジャック「へ?」

 

刹那「あー、どうやら2人と違ってダメージが溜まっていたから倒れたみたい~こりゃあサンタ側の負けだね~」

 

それにぽかーんとする2人へと刹那は棒読み口調で言う。

 

ナーサリー「勝ったのね、勝ったのね!嬉しいわ、嬉しいったら嬉しいわ!」

 

ジャック「やったね、それじゃあかいたいするね!」

 

サンタリリィ「それは止めてください」

 

勝てたのが嬉しいのではしゃぐ2人のでジャックの言葉にサンタリリィはガバッと体を起こしてからそう言ってまた体を倒す。

 

どうやらプレゼントを渡すのでルビーが打った薬のは弱めだった様だ。

 

イリヤ「……」

 

美遊「あれ?イリヤ……?」

 

シュィィィ…

 

刹那「ちょ、イリヤちゃん座に帰りかけてる!?」

 

光が漏れ出してるイリヤに刹那は絶叫する。

 

ルビー「あ、やっべ、ちょっと強くし過ぎました。てへっ♪」

 

サファイア「てへっじゃないでしょう姉さん!?」

 

美遊「イリヤぁああああ!?目を覚ましてぇ!?」

 

刹那「れ、令呪を持って命じる!回復せよイリヤちゃん!」

 

失敗失敗と言うルビーにサファイアは叫び、美遊が必死に揺らす中で刹那が慌てて令呪で回復させる。

 

イリヤ「はっ!?今、行っちゃいけないところに行きかけてた!?」

 

美遊「良かった…戻って来た」

 

サンタアイランド仮面「ほら上手くいったでしょう?」

 

サンタリリィ「は、はい!」

 

ガバッと起き上がるイリヤやホッと安堵する美遊を見ながらそう言うサンタアイランド仮面のにサンタリリィは頷き…

 

サンタリリィ「何となく納得いくような、いかないような気がしますが……」

 

美遊「そうだね;」

 

なんとも言えない顔をするサンタリリィに美遊は頷く。

 

ジャック「その仮面の人はおかあさん?」

 

サンタアイランド仮面「いえいえ、残念ながらおかあさんではありませんよ。ですが、クリスマスは貴女のおかあさんが沢山できる日です。良かったですね」

 

イリヤ「え!?」

 

刹那「ほう…ジャックに変なこと吹き込む奴は霊基変換…いや令呪自害の刑に処す」

 

そう言ったサンタアイランド仮面に刹那がすっと笑ってる様で目が笑ってない笑顔で令呪の付いた手を掲げて見せる。

 

サンタリリィ「興奮しないでくださいトナカイさん!」

 

サンタアイランド仮面「ふふふ、マスターの不興も買ったところで、それではご機嫌よう、アデュー!」

 

そう言い捨ててサンタアイランド仮面はシュバっとその場から消える。

 

サンタリリィ「お師匠さん……!」

 

イリヤ「あの人、ノリもあの月に変わってお仕置きよのアニメで出る人のノリで行くのかな;」

 

ルビー「だと思いますよ」

 

そんな飛び去るサンタアイランド仮面のにイリヤは呆れる中でナーサリーとジャックが笑顔で言う。

 

ナーサリー「さ、新しいサンタさん!わたし《ナーサリー》と、」

 

ジャック「わたしたち《ジャック》のおちゃかいにしょうたいするね!」

 

イリヤ「わぁ~お茶会!」

 

目を輝かせるイリヤ達へとこっちだよ~と2人は歩き、刹那達も続く。

 

しばらく進むとパーティ会場な場所に着き、準備してたであろうアステリオスとエミヤがいた。

 

エミヤ「随分と時間をとったようだ。いつも通り乱闘があったのだろう」

 

イリヤ「エミヤさん!」

 

美遊「なんでここに?」

 

そう言って近寄って来たエミヤに2人は驚く中で本人は苦笑する。

 

エミヤ「去年の二の舞を避けるために一人でアステリオスの迷宮に籠ろうと思ったのだが、ジャックとナーサリーが出迎えたいと言うので急遽手伝っていた訳だよ」

 

イリヤ「去年の二の舞って……ああ」

 

ルビー「見事に巻き込まれてましたもんね」

 

答えたエミヤのにイリヤとルビーは思い出して確かにあれは二度と巻き込まれたくないなと同意した。

 

エミヤ「それでマスター、彼女が新サンタと言う訳か」

 

刹那「うん、そうだよ」

 

サンタリリィ「こ、こんばんわ」

 

その後にサンタリリィにを見るエミヤに刹那は頷き、サンタリリィは挨拶する。

 

ナーサリー「そうなのよ、この子が新しいサンタさん!プレゼントをくれるのよ!名前はええっと……ええっと……」

 

ジャック「ジャンヌ・スパム・ダルク・スパム・オルタ・スパム・サンタ・スパム・リリィ・スパムだっけ?」

 

エミヤ「もはや人名ですらないな……」

 

もやは早口言葉並の長さにエミヤは呆れる。

 

サンタリリィ「スパムは除外してください!」

 

エミヤ「ああ、た抜き言葉の類いだな。それでも長いが……」

 

訂正するサンタリリィのにエミヤは呆れながらそう返す。

 

その後にサンタリリィがおずおずとエミヤに話しかける。

 

サンタリリィ「エミヤさんは……クリスマスプレゼントをリクエストされていませんよね?」

 

エミヤ「生憎と、そのような年齢は過ぎたものでね。それに私の故郷においてクリスマスは保護者がプレゼントを与えるものと決まっているのさ」

 

問いに対しエミヤは苦笑してそう返す。

 

サンタリリィ「アステリオスさんはリクエストしていませんね。願い事はないのですか?」

 

アステリオス「ある……けど。いいんだ」

 

続けてアステリオスに聞くサンタリリィだが本人もまた首を横に振る。

 

サンタリリィ「む、私が幼いから頼りにならないとお思いかもしれません。しかし、こう見えても私は立派なサンタクロース!さあ、願い事を言って下さい!!」

 

アステリオス「……こんなひが、できるだけ、できるだけ、ながくつづきますように」

 

そう言って自信満々に言ったサンタリリィはアステリオスから出て来た言葉に目を丸くする。

 

サンタリリィ「え……?」

 

アステリオス「こうやって、しょうかんされて、いろいろなばしょにいって、たたかって―――いつかはおわることだけど。つらいこともあるけれど。……いまがたのしいから。このらびりんすにいてさえも、たのしいなんてゆめのようだから」

 

そう言って笑顔で言ったアステリオスのにサンタリリィは先ほどの自身の言葉に恥を知る。

 

サンタリリィ「……その、願いは……ごめんなさい、私には……叶えられません」

 

アステリオス「うん、だからいいんだ。りょうり、たべる?」

 

謝罪するサンタリリィにアステリオスは笑って料理を勧める。

 

サンタリリィ「……いえ、サンタですから。料理は結構です」

 

アステリオス「ざんねん。おいしいよ?」

 

イリヤ「アステリオス…」

 

美遊「なんかその気持ち…私分かるかも」

 

遠慮するサンタリリィに少し寂しそうに言うのを見てイリヤは胸を握り締め、美遊はその思いに共感する。

 

美遊「私だって自分の事で色々とあった。けどイリヤや皆といる今はホントに楽しいってアステリオスの気持ちが本当に分かる」

 

イリヤ「美遊…」

 

噛み締める様にそう言う美遊にイリヤもまたアステリオスを見る。

 

エミヤ「君は……サンタになってどのくらいだ?」

 

サンタリリィ「こ、今年が初めてです」

 

するとエミヤが質問し、サンタリリィは慌てながら答える。

 

エミヤ「ふむ。基礎になった英霊はジャンヌ・ダルクか」

 

イリヤ「(あれ?)」

 

サンタリリィを見て顎を摩って呟くエミヤにイリヤは少し違和感を覚える。

 

どことなく彼のサンタリリィを見てる感じが試してる感じに見えるのだ。

 

イリヤ「(エミヤさん、一体何を…)」

 

サンタリリィ「も、もう私の事はいいでしょう。さあ、お二人にプレゼントです!」

 

そんなエミヤのから逃れる様にそう言ったサンタリリィのにナーサリーとジャックは目を輝かせる。

 

ナーサリー「どんなプレゼントかしら、楽しみだわ、とってもとっても楽しみだわ!」

 

ジャック「お人形さん、お人形さん!」

 

イリヤ「(大丈夫かな…)」

 

美遊「(少し心配…)」

 

ワクワクする2人に事前に聞いていた2人は不安になる。

 

サンタリリィ「……だ、大丈夫です。きっと、お二人の役に立つ、はず、です……」

 

ごそごそ

 

エミヤ「それは……」

 

アステリオス「う?」

 

ジャック「……これなに?」

 

そう言って指し出されたのは…袈裟を羽織った青年の概念礼装だった。

 

エミヤ「それは……」

 

アステリオス「う?」

 

ジャック「……これなに?」

 

ナーサリー「何?」

 

呆気に取られるエミヤと首を傾げる3人にサンタリリィは顔を伏せる。

 

サンタリリィ「阿蘭若(あらんにゃ)とはお坊さんが修行する物静かな場所のことで……お、お二人が静かな場所で、遊ぶことだけではなく勉学に励めるように、と…」

 

イリヤ「(あれー?ものすっごく見覚えのある人物の気がするんだけど…ってそうじゃなくて!)」

 

渡すのは確かに聞いていたが流石にそれはプレゼントに全然向いてないとイリヤは思う中でサンタリリィは震えながら理由を続ける。

 

サンタリリィ「ジャックさんも……ナーサリーさんも……お勉強は大切だと……その……ええと……お二人のためになる……ならないですよね……ご、ごめんなさい!!」

 

後悔か、自分が情けないのか…あるいはどちらともあってかサンタリリィは涙を流しながらその場から走り去る。

 

刹那「サンタリリィちゃん!?」

 

イリヤ「い、行っちゃった…」

 

美遊「お、追わないと!」

 

それにイリヤと美遊は慌てて追いかける。

 

ジャック「い、いっちゃった……」

 

ナーサリー「どうしよう、サンタさんが悲しんでいたわ!クリスマスなのに!」

 

それに2人は慌てて、ジャックはわたしたちのせい?と呟いたのでエミヤが否定する。

 

エミヤ「いいや、二人のせいではないよ。冷めない内に少し料理を食べなさい」

 

ジャック・ナーサリー「はあい」

 

アステリオス「どうしよう。こ、こまった…」

 

そう言って2人を落ち着かせ、アステリオスが戸惑う中でエミヤはチラリと別の方を見る。

 

エミヤ「さて……何時の間にかそこに佇んでいた、そこの胡散臭い仮面男。解決手段はないのかね?」

 

どうなんだね?とサンタリリィが出て行くと共に現れた…先ほど去った筈のサンタアイランド仮面を睨む。

 

サンタアイランド仮面「解決手段を模索する前にまずはそもそもの原因を知ることから始めるべきでは?」

 

エミヤ「正論だな。だが、ジャンヌ・ダルクならともかくとして、ジャンヌ・オルタ……ましてリリィともなると」

 

そう問うサンタアイランド仮面のにエミヤはそう返すが問いをした人物は続ける。

 

サンタアイランド仮面「いえ、何となくですが理由は掴んでます。彼女には()()()()()()()()()()

 

エミヤ「欠けているもの……か。む、どうした?」

 

刹那「ちょっとエミヤに頼みたいことが…()()()と一緒に……」

 

出て来た言葉に呟いたエミヤは刹那の頼みたい事に訝しげになる。

 

 

 

 

イリヤ「サンタリリィちゃーん!」

 

美遊「ま、待って!」

 

あれから迷宮からも飛び出して走るサンタリリィに普通に走るのでは追いつけないと感じて途中から飛んで追いかけてなんとか追いついたイリヤと美遊は声をかける。

 

サンタリリィ「!」

 

ルビー「もう、いきなり走るからびっくりしちゃいましたよ」

 

サファイア「そうですね。走られるものですから飛んで来ました」

 

ビクッとなるサンタリリィにルビーはそう言い、サファイアも続く。

 

イリヤ「ねえ、なんでいきなり逃げ…」

 

サンタリリィ「………………」

 

そう言って声をかけたイリヤはサンタリリィの泣き出しそうな顔に言葉が途切れる。

 

そんな彼女にイリヤは本当にクロの時と同じ感じだと思った。

 

美遊「(やっぱりだ。サンタリリィはクロと似た感じがする。……少しバランスが崩れたら消えてしまいそうなそんな感じが…)」

 

イリヤ「(でもなんで…)」

 

サンタリリィ「……私にはないんです……」

 

そう小声で会話してるとサンタリリィが口を開く。

 

イリヤ「え……?」

 

サンタリリィ「有用性だけが、私を立たせる全てで。有益性だけが私を織り成す全てです。願いはなく、いつ死んでも当たり前。希望はなく、いつ消滅しても当然な存在。元から、根幹から、私と言う存在はあり得ない。あり得ない存在に、あり得ない概念に、願うものなど存在しない」

 

出て来た言葉に2人は言葉が出なかった。

 

それだけ、彼女の言葉が重かったのだ。

 

なんとか言葉を出そうとしたイリヤは小太郎や藤太から聞いたのと今までの彼女の行動を当て嵌めて行きついた考えを言う。

 

イリヤ「じゃあもしかしてサンタをやろうとしてたのって……」

 

サンタリリィ「はい……こんな私でも一つだけできそうな役割……己が希望ではなく、他者の願いを叶えることでよしとする―――サンタクロース。サンタならできるかと思ったんですが私は……」

 

そう言って顔を伏せるサンタリリィにイリヤと美遊はどうすれば…と顔を見合わせた時…

 

「サンタさ――――ん!」

 

サンタリリィ「びぇ!?」

 

呼びかける声にサンタリリィは驚き、イリヤ達ともどもした方を見る。

 

そこには、刹那と共に来るジャックとナーサリーの姿があった。

 

ジャック「あ、いたいた!」

 

ナーサリー「もう、足が早いのね!トナカイさんを置いていく気!?」

 

刹那「イリヤちゃん達が止めてくれたんだね。ありがと」

 

そう言って声をかける2人を横目に刹那はイリヤ達にお礼を言う。

 

サンタリリィ「お、置いてはいきません!その、プレゼントを配った方に用はありません。私は次の場所へ向かわなくては……」

 

ジャック「あんなプレゼントいらなーい!」

 

そう言われてサンタリリィはうぐぅ…と呻いて落ち込む。

 

サンタリリィ「そ、そうですよねー……。要らないですよねー……」

 

ナーサリー「そうね。静かな場所でお勉強なんてわたしたちには物足りないわ」

 

ジャック「だから、このプレゼントはへんきゃーく!」

 

そう言ってジャックはさっき渡されたのをサンタリリィに返す。

 

サンタリリィ「うぅ……」

 

イリヤ「サンタリリィちゃん…」

 

ナーサリー「その代わりね、その代わりね!わたしたちのお願いを叶えてほしいの!」

 

美遊「お願い?」

 

なんだろうと3人は首を傾げる。

 

サンタリリィ「願いのリクエスト……ですか?えっと確かお人形と―――」

 

ナーサリー「ううん、そんなの要らないわ!」

 

イリヤ「え?いらないの?」

 

代わりをの渡そうと探るサンタリリィへとナーサリーが言った言葉にイリヤは驚く。

 

そんなにイリヤにええ!とナーサリーは頷き…

 

ナーサリー「お人形も、ぬいぐるみも、ケーキも、ツリーも、スターも、パーティーもなーんにも要らないの!」

 

サンタリリィ「え、じゃ、じゃあ何ですか!?それ以外に叶えられるものなんて――――」

 

出て来た言葉にサンタリリィは驚きながら問う。

 

ジャック「あるの、あるのよサンタさん!わたしたちからのお願いは―――」

 

ナーサリー「海を見に行きたい!」

 

イリヤ「海を」

 

美遊「見に行きたい…?」

 

出て来た言葉に2人は顔を見合わせる中で2人は笑顔でうんと頷く。

 

ジャック「海を見に行くの!」

 

サンタリリィ「う、海……ですか?海って、あの海……ですよね?その、知識だけですが……ザアザアゴウゴウと言う感じの、地上とは異なる概念の場所と申しますか……」

 

イリヤ「(そんな感じだったっけ…?)」

 

戸惑うサンタリリィのにイリヤはうーんとなったがふと、引っかかった。

 

何に引っかかったのか…それはサンタリリィの言葉の中であった知識だけと言う所だ。

 

イリヤ「(もしかして…海を見たことない?)」

 

そうなると元になったジャンヌも生前、本物の海を見ていないと言う事なのかとイリヤが考え込んでる間にジャックとナーサリーが言う。

 

ジャック「難しいことはわかんない!わかんないけど、アステリオスがじまんするの!」

 

ナーサリー「海は広くて、広くて、とっても広いんですって!わたしたちなんか、豆粒みたいなんですって!」

 

私が豆粒なら、アステリオスは大岩かしら?とナーサリーは首を傾げる隣でジャックが続ける。

 

ジャック「わたしたち(ジャック・ザ・リッパー)はロンドンからでたことないし、海を見たこともないの!そんなもの、見るよりさきに死んじゃったし」

 

ナーサリー「わたしだってそうよ!海を見たことなんて一度もないわ!アステリオスもそうだったけど少し前に海を見て、船に乗って、大冒険を繰り広げたんですって!羨ましいわ、妬ましいわ、妬ましいわ!」

 

サンタリリィ「海、船……大冒険……そんな事が…」

 

イリヤ「(あ、凄いドキドキしてる)」

 

美遊「え、ちょっと待って。つまり海を見に行きたいと言うのが―――」

 

目を輝かせているサンタリリィは美遊の言葉にあっとなって2人を見る。

 

ジャック「そう、わたしたちのリクエスト!」

 

ナーサリー「さっきの返品を受け取ってくれたのだからもちろんサンタさんは叶えてくれるわよね?」

 

ルビー「おやおや、どうしますサンタさん?このリクエスト」

 

笑顔で言う2人のにルビーは聞く。

 

そう言われてサンタリリィは戸惑ってもごもごしてしまう…

 

ビシュン!

 

すると彼女の足元に薔薇の黒鍵が刺さる。

 

ナーサリー「あら、薔薇の黒鍵だわ」

 

イリヤ&美遊「(ってことはもしかして…)」

 

すぐさまそれにイリヤと美遊は脱力する。

 

サンタアイランド仮面「サンタアイランド仮面……参上」

 

イリヤ&美遊「やっぱり……」

 

サンタリリィ「お師匠さん!教えて下さい!!私はどうすれば良いのでしょう!?」

 

現れた人物にホントこの人は何がしたいのとイリヤと美遊が思う中でサンタリリィが聞く。

 

サンタアイランド仮面「無論、彼女達の願いを叶えるべきです。貴女はもう返品を受け取ってしまった。受け取ってしまった以上、サンタは別の願いを叶えなくてはならない。しかし子供というのは我が侭なもの。このままでは彼女たちのリクエストを叶えぬ限り、返品返品また返品、おお汝こそモンスタークレーマー……!」

 

刹那「それ、ゲオルギウスに怒られない?」

 

呆れた顔でツッコミを入れる刹那にコホンと咳払いしてサンタアイランド仮面は続ける。

 

サンタアイランド仮面「……と言うことになりかねません。ですから彼女達の願いを叶えることから始めましょう。約束します。そうすれば貴女は必ず立派なサンタクロースになると」

 

サンタリリィ「……わ、分かりました!ジャック、ナーサリー。貴女たち二人をこのラムレイ二号で海に連れて行きます!」

 

そう言われて決心出来たので了承するサンタリリィにナーサリーとジャックはやったーと喜ぶ。

 

ルビー「おやおや、意外な展開になりましたねイリヤさん」

 

イリヤ「う、うん…」

 

大丈夫なのかな…とイリヤは不安がるのを知らずにサンタリリィは元気よく号令をかける。

 

サンタリリィ「それじゃあ早速出発しましょう!」

 

刹那「ちなみに私を置いて行ってたの気づいた?」

 

そう言われてサンタリリィは冷や汗を流しながら慌てて弁解を始める。

 

サンタリリィ「あ、いえ。忘れていたわけではないです」

 

ナーサリー「思いっきり忘れていたと思うのだわ」

 

ジャック「すぽーんと頭から抜けてたよね」

 

サンタリリィ「う、うるさいですよ!それじゃ、皆さんソリに乗ってください!ラムレイ二号出発です!」

 

忘れてたんだなとナーサリーやジャックに言われて怒る様に誤魔化すサンタリリィにイリヤと美遊は苦笑した後に刹那と共に乗り込む。

 

飛び上がった後に、あ、お師匠さん!とサンタリリィは思い出した様にサンタアイランド仮面へと顔を向ける。

 

サンタアイランド仮面「はいはい?」

 

サンタリリィ「ありがとうございます!私、頑張ります!」

 

お礼を言ってサンタリリィはソリを動かす。

 

サンタアイランド仮面「ありがとうございます……か。フフフ、果たしてそれはどうですかね……」

 

エミヤ「何を悪役ロールしているのかね、君は。先回りせねばならないだろう、行くぞ」

 

そんなサンタリリィの背を見ながらそう言ったサンタアイランド仮面にエミヤは呆れた顔でツッコミを入れて移動を始めようとする。

 

サンタアイランド仮面「……溢れる悪役オーラで締めたかったんですがねえ」

 

エミヤ「なに考えてるのだ君は…」

 

ホントに大丈夫なのかねぇ…とエミヤはふうとため息を吐くのであった。


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