なぐもんすーぷれっくす   作:ながも~

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グモリア001 (IS)

 今、非常にマズイ状況にある。

 周囲からの視線が、たった一点……自分へと集中しているのだ。

 針の筵とはまさにこの事。もしも視線に質量があったらなら、身体は疾うの昔に蜂の巣となっていた。

 いや、胃に穴が開きそうだった。むしろ既に開いてるかもしれない……

 

 ひとまず、視線は全て後方……最悪、左右からしか来ていない。

 必死に視線を前へ固定し、視界から周囲の視線をシャットアウトする。

 

 ―――どうしてこうなった。

 

 本当に、そう思う。

 

 

 

 

 この世には、科学で説明出来ない事がある。

 幽霊だとか、魔法だとか。そういったファンタジーなモノでは無くて、もっと現実的な話で。

 即ちそれは“現代科学”で説明し切れないモノであり、所謂オーパーツと呼ばれる代物だった。

 

 して、現代。そのオーパーツと認識されるモノが、世界には存在していた。

 その名はインフィニット・ストラトス、通称IS――《無限の成層圏》と名付けられたパワードスーツである。

 

 謎の原理で空を飛び、謎のエネルギーでバリアを展開する。

 仕舞いには謎の技術で物体を電子化し、そして再度物質化させたりも出来る。

 機能どれ1つとってもオーパーツの癖に、そんな謎技術がこれでもかと詰め込まれた逸品である。

 

 ……そして、それは世界に500個くらいあった。

 1個でもトンデモナイのに、3桁もあった。冗談じゃない。

 しかもそれを作ったのが未成年の女子だと言うのだから、本当に笑えない。この世界はファンタジーだった。

 

 そのISだが、極めつけに意味不明な機能がある。いや機能というか欠点なのだろうか。

 何故か、女性しか動かせないのである。理由を知っていそうな開発者は逃げたので、誰も知らない。

 

 そんなこんなで世界に残された500近くのオーパーツ。

 世界中の研究者達は、この謎技術を解明したくて仕方がなかった。

 そこで作られたのがIS学園……世界中から集められた才能ある少女達が、ISのフルポテンシャルを引き出せる様に頑張る場所である。

 

 

 

 ………――ん、織斑さん!!」

 

「……ぇ、あ。すいません聞いてませんでした!」

 

「織斑さんの番ですよ、自己紹介」

 

「うう……わかりました……」

 

 

 渋々と席を立つ。振り返れば、視界に映るのは女子、女子、女子………

 

 ……そう、この学園には少女しか居ないのである。女子校だった。

 いや技術関連で男性も居るのだが、テストパイロットとしては女性しか居なかった。

 

 

「織斑って……やっぱり千冬様の……」

 

「……いいなぁ……」

 

 

 ヒソヒソと声が聞こえる。

 俺は割りと、耳が良い方なのだ……今だけは難聴になりたい。

 この空気の中で自己紹介とか勘弁してほしい。

 緊張のあまり妙な事を口走ったりしそうだし、この注目の中でそんな事をすれば卒業までのネタである。死ぬ。

 

 ちらり、と窓際の席へと視線だけ向けてみれば、そこには幼馴染が居る。

 目と目が合った。視線の交差……心の中で呪文を唱える。

 

(た・す・け・て)

 

 1秒、2秒と経ち……肝心の幼馴染は首を傾げて終わった。

 なんてこった、お前それでも俺の幼馴染か……いや、俺がお前の立場でもそうすると思うけど。

 

 改めて言おう。この学園は女子校である。

 で、ありながら……実は俺、男性である。何故かテストパイロット生。重ねて言う、男性である。

 

 

「織斑さん大丈夫? 自己紹介だけど……後に回そうか?」

 

 

 小声で背後、教卓から声が聞こえた。

 さっき名前を教えてくれたが、山田先生である。童顔の若手教師なのだが、もしかしなくとも新任教師だろうか。先生の声にも緊張が滲んで見える。

 

 自己紹介を後にまわしてもらう……実に甘美な誘いだった。

 しかし、もしそれを受けようモノなら、きっと卒業までシャイな子、略してシャイ子として扱われるだろう。それはマズい。

 なればこそ、ここでいっそ自棄糞にでも自己紹介した方が今後の為なのである。

 

 すぅ……っと一呼吸。

 心を落ち着けて、視界全てに映るクラスメイトを見据える。

 

 

「……織斑円夏です」

 

 

 やっべ、ネタ尽きたわ。

 幼馴染へ視線を向ける。目を逸らされたチクショウ。

 ならば逆側ならどうか。知り合いは誰も居ないだろうが、もしかしたら救いの女神が―――

 

 ――ドアの隙間から、知り合いが覗いていた。

 いや、知り合いというか、実の姉だった。なんで此処にいるんだ。

 

 

(ち、千冬姉ぇ!! 助かった、自己紹介のネタが無いんだ!!)

 

 

 必死のアイコンタクト、廊下に立っていた姉は鷹揚にコクリ、と頷いて視線を返してきた。

 

 

 

 

 

(――好きなものはお姉ちゃんです、と言え)

 

「――好きなものは、おにゅッ?!」

 

 

 な、何てことを言わせやがる!

 思わず舌を噛んだ。油断していた……まさか身内が敵だったとは。

 

 ニーチェ曰く、神は死んだらしい。

 ついでに今、俺も死んだ。これから俺は自己紹介で噛んだ奴として認識されるのだ。死ぬ。

 

 恥ずかしさのあまり顔を下げた。

 俯いて震える俺の視線に映るのは、2房の髪束……俺の頭から垂れるツインテール。

 

 

(本当に、なんでこんな事に……)

 

 

 正直、本当に涙目だった。

 色褪せて見える視界の中、右手に嵌められた白銀の腕輪だけが輝いて見えた。

 

 助けて、しまっちゃうおじさん……!!!

 

 

 

 

 

 

 人里離れた山奥の様などこか。

 たった1人でそこに住む魔女がいた。

 へらへらと笑いながら、世界を手球にとる魔女である。

 

 ――インフィニット・ストラトスには不可思議な機能がある。

 1つはバリア。大抵の物体を停止させ、エネルギーを減衰する不可視の力場。

 1つは反重力航法。重力に反して、推進器無しに自在に動きまわる。

 1つは物体の量子化。物体の存在を量子の海へと引き摺り込み、存在を遷ろわす機能。

 

 そしてもう1つ、乗り込んだ者の髪を左右で結わえる機能。

 通説では髪が長かった場合に、機関部に巻き込まない様にする為に存在すると言われている。

 この機能故に、ISにはもうひとつ。ツインテール・ストラトスという呼び名があった。まあ、誰も表立っては呼ばないが。

 

 

 そして最後にもうひとつだけ、殆ど誰も知らない、知られていない機能があった。

 それは適合した“男性”を、女性に変える機能。

 

 そう、Twintail-Stratosは、Trans-Sexial機能を持っていた。

 この機能を発動させたのは現代においてただ一人、織斑円……いや、織斑一夏ただひとり。

 

 

 魔女はただ独り、世界を手球にへらへらと笑う。

 

 

 ――― 俺、ツインテール・ストラトスに乗ります。

 




 執筆タイトル「俺、ツインテール・ストラトスにのります。」

 内容としては
 「インフィニット・ストラトス」
 「俺、ツインテールになります。」
 以上、2作のクロス。

 「最弱無敗の神装機竜」を入手したので、その記念に書いた。
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