多分、ネタにしやすいんだろうな……うん、きっとそう。
織斑千冬は苦労人である……原因はいつも目の前にある。いや、合った。
幼馴染の篠ノ之束、其が主犯であり、実行犯である。いつもそうだ。
毎度毎度、騒動を起こしては周囲に迷惑を掛け……それを収めるのは、いつも千冬だった。
去年は学校のプールが真っ二つに割れて、地下から巨大ロボが出現した。
半年前には宇宙旅行と称して月の裏側まで飛ばされた。
三月程前にはかわいい弟が妹になっていた。
先月に至ってはミサイルが降ってきた。
それでも、騒動の一部だけだ。
実際にはその数倍……いや、百倍以上は事件を起こしている。
そのクソ迷惑な幼馴染なのだが、毎度騒動を起こす前には、必ず姿を消す。
おそらく、騒動を起こすまでの準備期間――すなわち開発期間が必要なのだろう。
そして今。
全開の事件から一ヶ月もの間、騒動が無かった。当の本人は何処に雲隠れしたのか、姿を見せない。
千冬はここ数日、嫌な予感が止まない。平穏な日常の最高記録は2週間、それを既に倍以上更新している。
―――これは、何かとんでもないモノが来る。
束(バカ)の起こす騒動は、準備期間に比例して被害が大きくなる。
……いや、正確には千冬への疲労と言い換えよう。とにかく、面倒臭いのだ。
「何処だ……何処に居る……事を起こす前に確保しないと……」
街中を血眼になって探す。
何処に居るのか、そもそもこの街に居るのかすら解らない。
彼女の実家である篠ノ之神社へ行っても当然居ないし、妹に聞いても行方知れずだ。
首筋にチリチリとした感覚が奔る。
事件の前兆だった。最早、千冬はバカが騒動を起こす直前になると感覚で解る。束鎮圧の専門家としてのカンが備わっていた。
「――ッキャァァ!!!!」
それほど離れていない、街の一角から悲鳴が聞こえた。
方向と聞こえた距離から察するに、場所は―――
「――――篠ノ之神社だと?!」
さっき行った時は何も無かったのに!!
驚き、しかし冷静に判断を下し、即座に走る。
最初からギアはフルスロットルに。バカの騒動は発生から時間経過するともっと面倒臭くなるのだ。
それはまるで、乾季の森林火災の様に……最初の内に鎮圧しなければ、手が付けられなくなてしまう。
何せ、以前は間に合わず、弟が元に戻る過程で分裂して……なんと妹が生まれてしまったのだから。本当に、苦労した。
街角を疾走し、十字路を北へ。
閑静な住宅街を爆走した後に、境内へと続く階段を駆け上がり。
そして、へらへらと笑いながら両手をブンブンと振り回して大はしゃぎする少女を視界に捉えた。
「あー、はろはろーちーぃちゃあああんんッ!!!!」
「このクソウサギィィィ!!!! 今度は何をしたァ!!!!!!!!!」
千冬の視界に映るのは、漆黒の巨人だった。
大木程もある四肢を持つそれは、束を片手に掴んで、まるでメリー・ゴーランドの様にぐるんぐるんと回っていた。
どうやら、腰に回転軸があるらしく、下半身は大地に吸い付いていると言わんばかりの不動。
ふぅ、と一息。
まずは落ち着いて、周囲へと視線を向ける。
クソウサギこと束はバカだが、実行までの手段は手が込んでいて、そして技術的観点では天才だ。
何が起きるのか、全く予想が出来ない。冷静さを欠いていては思う壺。ならばこそ、常に心に平常心を。
右見て、左見て、念のためもう一度右見て………と見せかけて上を見て。
一応下見て、後ろを見て――ふと気付く。
「今回の被害者が居ないな」
おかしい、女性の悲鳴が聞こえたハズなのに。
肝心の被害者が居ない………千冬の脳裏に、いくつか可能性が浮かび上がる。
「さては、お前が此処に居るのは時間稼ぎ……別の場所で誰かが?!」
「被害者は私だよおおおおちぃーちゃあああああああああん!!!!」
冗談は寝てから言え。
千冬はそんな顔でバカを見る。
「ほ、ほんとなのにぃぃいいい!!!」
涙目でブン回され続ける幼馴染は、確かに被害者っぽい風体だった。
遠心力が辛いのか、心なしかぐったりとしている。
前にブン殴った時、その勢いでコンクリート壁をブチ抜いてもケロっとしていた実績を持つバカが……だ。
「ふん、じゃあなんだその黒いのは」
「ご、ごーれむ君だよぉー!!すごく強くてぇぇぇ、無敵ぃぃぃぃ!!!」
「なんでそんなモノを……」
「ちーちゃん強すぎるからぁあっぁあぁ!!!」
「全くもって意味が解らん。何だそれは」
理解の外だった。
いや、今まで理解出来た事などほとんど無いが。
「まあ良い。それは破壊しても良いんだろう?」
「いいけどおおおおおおお」
「ならそのまま待ってろ……破壊する」
言って、千冬は半身になって両手を構える。
腰溜めに添えられた右手が、相手を狙う標準の様に向けられた左手が、それぞれが黒き巨人を穿つ必殺の刃へと。
息を吸って、止めて。
刹那の加速を以って肉薄し、振り回される両腕の下へと潜り込み、右の貫手を放つ。
――――ッズガアアァアン!!!!
大凡、金属を生身で殴ったとは思えぬ破砕音が広がり、ゴーレムがズルズルと地面を滑った。
そう、地面を滑っていった。
同時に、落とされた束が地面をずしゃしゃっしゃーー!っと勢い良く転がる。
「……莫迦な。今のは本気だったんだが」
束が起き上がる。
ちらり、と視線を向けてみれば案の定何故か無傷だった。
「だから言ったでしょ、強くて無敵だって!」
ぶいぶい!そう言ってピースサインを送る元気なクソウサギ。
あー、ウサギ絞めたい。思考の大半を埋める世界平和への一歩を抑えこみ、目前の問題を対処する為の手段を模索する。
「いくら地上から衝撃だけで上空のミサイルを吹きとばせるちーちゃんの貫手でも、アレは破壊出来ないよ!!」
「なんだそれは、ふざけるもの大概にしろよ貴様」
束の顔が微妙に歪む。
顔に書いてある。お前が言うなと。
「ちーちゃんに言われたくない………」
「五月蝿い。それよりもあのゴーレム君とやらを破壊するにはどうすれば良いんだ」
作者なら知っているだろう?
そう続ける千冬に、束が我が意を得たりとばかりに笑顔で近寄った。
「うん、うんうん!! そうだね、ちーちゃんと束さんの技術が合わされば最強が最強で超最強だもんね!!」
「意味がわからん。得物があるならさっさと寄越せ。温厚な私も流石に怒るぞ」
「わー、おこったちーちゃんはこわいからなー。うんすごいこわいー」
見るからにヨコセとばかりに手を伸ばされた千冬の掌に、束が懐から取り出したモノを置く。
とっておき中のとっておき、最強にして究極の一品を。
「さあちーちゃん!! 早速抜いてよ!!!」
それは、小振りの刀だった。
だが、クソウサギが取り出した其が、ただの刀なハズが無い。
――しかし、しかしだ。
時間が無いのだ。また首筋がチリチリとしている。即ち何かが、危機が迫っていた。
黒い巨人は、光り輝くカメラアイを此方へと向け、何やら構えている。
このまま放っておけば、間違いなくろくでもない事が起きる事は確実だった。
故に、逡巡無く抜刀する。
刃が鞘走り、火花を散らしてその姿を顕す。
鞘は束へ投げ捨て、抜き身の刀を青眼に構えた。
「……お前が作ったにしては、マトモじゃないか」
正直に言うと、千冬はこの刀を抜き放った瞬間に見惚れていた。
磨き抜かれた鏡の様な刀身と、その表面に波打つ刃紋、そして刀身の反りに至るまで。
何もかもが設えたかの様に、千冬の好みに合致していた。
……否、設えたのだろう、束が作り上げた、千冬の為の最高の一振りなのだから。
構えた刃に、ほんの少しあどけなさを残した少女の不敵な笑みが映る。
刀身と合わさった様な銀雪色の長髪を風に靡かせて。
真紅に染まった瞳が、千冬の視線とぶつかった。
――誰だ、この少女は。
チリリと、首筋に奔る感覚に顔を顰める。
ふと刃を覗き込めば、そこに映る少女も顔をしかめていた。
……改めて言おう。千冬は類まれなる「篠ノ之束が仕出かす騒動に対するカン」を持っている。
そのカンが、答えを出していた。
(……あぁコイツ、私だな)
千冬を手の内にある刀と一体となる感覚が襲う。
否、襲うというよりも、それは母が子を包み込むような、優しさを感じる何かだった。
首筋に奔るチリチリとした警報は鳴り止まない……むしろ、より強くなっていた。
張り詰めた緊張感の最中で、千冬はどうすれば良いのか――何をすれば良いのかが解っていた。
まるで導かれる幼子の様に、千冬の身体が自然に動いた。
………あ、これはマズイパターンだな、と思いつつ。
―――この世に悪がある限り。
キィン、と音を響かせて一振り、横一文字に銀閃を奔らせる。
――――清めの白刃が、正義の鉄槌を。
ゆったりとした動作で刃を“敵”へと向ける。
「魔剣少女、ぶりゅんひるで☆ちふゆ……参上!!! ――身体が勝手にぃぃぃ!! 何をしたクソウサギィィィ!!」
「ちーちゃんを最強にする武器だよ!!! あああああちっちゃくなったちーちゃんぷりちぃぃいいい!!!」
織斑千冬、17歳、高校生。
何やら小さくなりました。クソウサギは後で締めます。
執筆タイトル「魔剣少女ぶりゅんひるで☆ちふゆ」
当然原作は「インフィニット・ストラトス」。
それと、「妄想奇行みたいな漫画、もっと出ないかなー」とか思いながら1分で構築した。
ちっちゃくなったぷりちーちふゆちゃん☆はクソウサギが送り込むクソ迷惑な発明品を(誠に遺憾ながら)愛刀の雪片(まほうのかたな)でずんばらりし続けるのである。
そして、やがて目の前に突如として現れる第二の魔剣少女が……!!
「魔剣少女、びゃくしき☆まどか……見参!! ――このセリフに慣れてきた自分が怖い」
(……あの少女、私と似ているな……)
(……あの子、俺と似てるなぁ……)
びゃくしき☆まどか、一体ダレナンダロウナー。