誰かが「艦娘と海軍が初めて出会った時の話が読みたい」とか言うから……!!
な、なぐもんは悪くない。悪くないんだからね!!
※正確には、「読みたい」では無く「書きたい」と言ってたが、些細な違いである。
海軍兵器開発局は重圧の最中にあった。
突如現れた、人を模した様な形状の化け物共。
各国が保有する戦闘艦、即ち空母やイージスの持つ兵力で一切の傷が付かず、小型ボートより尚小さい、その身体を活かした旋回性能で以って翻弄し、必殺の一撃を持つモノ共。
大量のミサイルをつぎ込み、やっと1匹倒し、幾つもの船を犠牲にして漸く手に入れた検体を調査して解った事は……よく解らないという事だけだった。
検体は部位ごとに研究用としてビンに収められ、各国の研究所が保管する事となったが、気付いた時にはどろりとした黒い液体へと変貌していた。貴重な検体が形を失い、上層部からの責を問う声が響く。
無理を推して改めて検体を得ても、やはり液化してしまった。保管方法が悪いのか、或いは液化では無く、何かしらの形状変化なのか。
そして、それらの化け物共は、いくらか数を削った所で何の気晴らしにもならなかった。
破砕し、撃滅し、粉砕し。どんなに数を減らしても、気が付けば元の通り、数が居る。
――深海から際限無く湧き上がるソレを、上層部は深海棲艦と命名した。
『あの化け物に対抗出来るだけの兵器を完成させろ』
それが開発局への、上からの御達しである。
改めて言おう、開発局は重圧の最中にあった。
上層部からの無理難題。海洋から時折響く砲撃空爆の破壊音。
恐怖とストレスの二重苦が祟り、局員達は次々と精神に異常を来し……終には最後の1人となってしまった。
そして、その最後の1人すら、たった今限界と達した。
両目は落ち窪み、口角からは泡を吹き。両腕は震えて、兵器の設計すら儘ならない。
思考を占めるは、せめて新型の砲弾でも開発しよう……とだけ、朧げな記憶が残るのみ。
そして、事件は起きた。
火薬調合の為の炉の前で、ふらりと足がもつれたのだ。
ぐらりと身体は倒れ、棚へと衝撃が加わる。棚に並べられていたのは各種砲弾製造の為の材料だ。
材料だけは、十分に供給されている。無いのは休みだけだ。そして、その材料がすべて炉の中へと落ちた。
弾頭形成用の鉄鋼、信管用にと液体火薬、物は試しとマンガン、ニッケル、亜鉛、タングステン等々……
あと、せめてものストレス発散にと誰かが持ち込んだ、飴やチョコ、クッキー。
―――何か素敵なモノ沢山と、液化検体……誰が呼んだか、通称『ケミカルX』。とにかく全部が炉に落ちた。
そして、奇跡が起きたのである。
「艦隊のアイドル、那珂ちゃんだよ~☆ よっろしくう!!!」
「やったあああああああああああああ!!!!!!!!!!」
こうして生まれた彼女達……即ち艦娘。
彼女たちが、軍艦の代わりに海洋上で戦果を上げ、人類の窮地を救ったのでした。
「………え、ご存知無いのですか?
彼女こそ、開発局の絶望の中から生まれ、今や海岸のアイドルとなった超旗艦型アイドル那珂ちゃんです!!!」
な、なぐもんは悪くない………(震え声)