HF 作:なまむし
「××ですね」
どうやら僕は鬱病になってしまったらしい。
鬱病だと先生から言われてしまった。
先生が鬱病だと言うんだから僕は鬱病なんだろう。
どうして鬱病になってしまったのか心当たりが全くない。
「×××ですね」
手遅れだと言われてしまった。
先生が治してくれるんだろうに。
なんでそんな酷いこと言うんだ。
「××で×すんですよ。×は×す××を×××だけです」
そんな無責任な。
自分で治すだなんて。自分は治す方法を教えるだけだなんて。
そんな事が出来たら僕はこんなに酷い鬱病にはならなかったんだ。
だって、もう二年も経つんだ。どんどん悪化しているんだ。
治る見込みがないんだ。
病気は気から。
その気の持ち方が僕にはあまりにも出来なかった。
あれ?僕今なんていった?
どうして鬱病になったか覚えていないのに。
何故か昔のことを思い出した気がする。
気がするだけなんだが。
あ、そうそう、僕の名前はイサシ。
必要とされていないので近々社会に殺されるだろう。
ゴミも同然なんだ。
僕の____________
病院から家に帰ってきた。
どうやって帰ってきたのかよく覚えていない。
今日も、効きが遅い薬を貰ってきた。
毎日かかさずのんでいる。多分。わからないけど。
幻覚は見えないが、幻聴が聞こえるので普段は無音でヘッドフォンをつけている。
それでも幻聴は聞こえてくる。
だがその幻聴があまりにも自分の声に似ているので、もしかしたら自分の心の声なのかもしれない。
心の声が「今日はもう寝よう」と言っているので、僕も寝ることにする。
布団に頭まで潜って、誰かに「このゴミが」とさけびながら頭を殴られないように睡眠をとった。
一睡もできなかった。
いつも通り布団から這い出た。
酷い時は布団にセメントで固められたように動けなくなって布団から出られないけど、今日は大丈夫な日だった。
僕はまだ高校生なので、高校に行かなければならない。
鬱病は、会社人は会社に勤めながら、学生は学校に通いながらでも治療することが出来るので行かなければならない。
仕方なしに通ってはいるものの、とても行きたくないのが正直な所。
何も関心を持たなければ大丈夫だ。
視線を気にするな。
人の会話を小耳に挟むな。
視界と聴覚に壁を作ろう。
じゃなきゃまた自分で自分を傷つけることになる。
同じクラスの生徒達全員が僕の事を指差して笑いそうで本当に怖い。
この教室で息を吸うのすら怖い。
どこでも生きていていいのかわからない。
自分は本当に死んだ方がいいのかもしれない。
ぼ________________
気を使ってくれる友人が数人いるので、友人達とソーシャルゲームでの話題を出しながら家に帰ってきた。
ドアを開け、鍵をかけ、鍵をかけ、鍵をかけ、影をつけ、溜息をつき、靴を脱いで、鞄を肩から床にずり落とし、廊下を進んで、リビングのテーブルの上から薬を取って、自分のへ「おかえり」
母だ。
「ただいま」
僕はとても優しい母をもった。
こんなになってしまった僕にも過去と同じように優しく接してくれる。
「イサシ」
優しい声で僕を呼ぶ。
「何」
「鬱病、特に意味も無く散歩したり、森林浴したりするのがいいって会社の同僚に聞いたから今度してみてね。ゆっくりでいいから治していこう。晩御飯何がいい?」
母から思わず顔を背けたくなるのを必死で耐えた。
「ありがとう、あした、近くの、葉っぱ公園ってとこ。散歩してみる。晩御飯の材料何がある?」
「豚肉あるわよ。あと鶏の胸肉。野菜はたくさん」
「じゃあ生姜焼き食べたい」
「りょーかい」
母はキッチンに向かった。
僕は自分の部屋に着いた。
なんで、こんな
母の優しさが胸に染みる
の、だが
とても、痛い。
ここが、
心の、
いたい。
薬を乱暴に口に突っ込み、水をがぶ飲みして布団に入った。
晩御飯が出来るまで寝よう。
寝ると何もしたくなくなるけど、起きていたら無駄な思考を回してしまって本当に死にたくなる。
恐らく晩御飯を食べて、歯を磨いて風呂に入った気がする。
風呂場に入った時、ふと、風呂場のドアの取っ手が、浴槽の水が、歪んだ。
母がいうには、僕はタオルを風呂場のドアの取っ手にかけ輪っかを作り、その輪っかに首を入れて体の力を抜いて首吊り自殺を測ろうとしたらしい。
気が滅入る、とは、まさに、このことだ。いつものことだ。
いつも気が滅入っている。
生きててごめんなさい。
朝起きると、母はもう仕事に行ってしまっていた。父は夜勤帰りで寝ていた。
呼吸を整え、電話を手に取り、学校に連絡を入れた。
今日は学校を休むと。
母に、昨日、迷惑をかけ、違う。
母には昨日、散歩で葉っぱ公園に行くと言った気がするが、もう少し遠くに行こうと思う。
どこにも、誰にも、自分の居場所を知られたくない。
今日はとても晴れていた。
散歩日和だった。
森に来た。
奥に進めば山だ。
ここで彷徨ってれば、誰にもバレない気がする。
気がするだけで、気が楽になる。
たしか、幽霊が出そうな廃墟があるだの、自殺者がいたと言われる湖があるだの、色々と噂があった気がする。
とにかく、森林浴をしよう。
心を落ち着かせたい。
何も考えたくない。
ここに来る途中でだって、ゴミ捨て場が僕を誘ってきた。
お前もゴミだろう ここに座れよ
ゴミ収集車を待とうとしてしまった。
時間を持っていかれた。1時間以上ゴミ捨て場に座り込んでいた。
意識はあったが、その意識を取り戻して、嫌な汗を吹き出しながら走った。
一刻も早くそのゴミ捨て場から離れたかった。
気が付いたらもう森にいた。
本当に、世の中気が滅入る事ばかりだ。
ヘッドフォンを耳から外し首にかけた。
深呼吸しながら、整備された道から外れてけもの道を歩く。
鳥のさえずりすら聞こえない。葉が擦れる音と、自分が踏む土の音しか聞こえない。
何故か、心が軽くなっていく気がした。
とても落ち着いていた。
とても落ち着いた場所だった。
心が落ち着いた。
何日ぶりにか、無駄な思考を全部退けられた気がする。
とてもいい気持ちだった。
水のせせらぎが聞こえたので、その音に吸い寄せられるようにフラフラと歩いていると、川を見つけた。
その川には先客がいた。
黄色い髪の毛の子供がいた。
顔を洗っていた。
気持ちよさそうだ。
近付くととても驚かれた。
黄色く大きな尻尾を大きくビクつかせ僕から離、尻尾?
よくみると人間じゃなかった。
頭から黄色い耳が生えていた。狐みたいだ。これは所謂獣耳だろう。
なにか喚き立てているが、何一つ耳に入ってこなかった。
なんかゴチャゴチャ言ってるなくらいしか認識が出来なかった。
とりあえず笑っておいた。
よくわからない生物には、あまり関わらない方がいい。
その方が相手にとってもいいだろう。
川の水に手を入れた。
とても冷たく、気持ちがよかった。
「なにか、あったの」
獣人の子供が、落ち着いた口調で話しかけてきた。
やっと何を言っているのか伝わった、違う、話しかけてきたのか?
なんでだ?
というか、なにかってなにが?「なにが?」
「____…」
この子が言うには、僕はあまりにも死んだ目をしているらしい。
死んだ魚の目、ではなく、死んだ目をしているらしい。
酷い言い草だ。そして、こんな森の奥にまで手ぶらで来るには何かしらわけがあるのだろうと言われた。
なんの意味もないのだが、これは、ただの散歩のつもりだ。
あわよくば、僕が世間から消えれないかと考えて散歩に来たのだ。
それらをそのまま顔を洗いながら子供に伝えた。
とても気持ちがスッキリした。
ひんやりとして、涼やかだった。心はとても晴れやかだった。
こんなに気分がいいのは本当に久しぶりだった。
「あそこから、せけんから逃げたいの?」
子供が問うてきた。
「ああ」
僕は即答した。
「俺は、もうあそこに戻りたくないんだ。あそこで、過ごしたくないんだ」
子供に、調子に乗って病気のことまで話してしまった。
今日は何故か口が軽い気がする。
普段なら喋るというか、口を開くことすら躊躇するのだが。
散歩は、とてもいい効果があったのかもしれない。
僕の家は、苦しい。
自分の部屋にいても、苦しい。
生きていていいのか考えてしまう。
母と会うと胸が苦しい。
こんな僕になってしまって、生きていていいのかわからなくなる。
学校も、先生も、友人も、僕の事を、覚えてもらっているのが本当に苦しい。
申し訳ない気持ちで一杯になって心が潰されそうになる。
あの道も、
あのゴミも、
鳥も、
猫も、
全てが苦しく、辛い。
生きていいのかわからない。
あの場所にいていいのかわからないのだ。
まずい、思考が
「じゃあ、あたちといっしょに、ここですごさない?」
「…え?」
この子供は、チンチラは、名前をまおこというらしい。
この森の噂、幽霊屋敷とおぼしき廃墟で、日々過ごしているらしい。
世間から逃げたい、母から、迷惑を掛けたくない母から逃げたい僕にとって、その案はとても魅力的で、
とても
素敵で、
とても、
とても
「ありがとう」
この僕の返答に、まおこは最初首をかしげたものの、
数秒後に嬉しそうに頷いて、ボロボロな屋敷に案内してくれた。
わざと文章しっちゃかめっちゃかにしました。今回だけよ。
いつもしっちゃかめっちゃか?細けぇこたぁいいんだよ!気にすんな!