向カイ風ニモ負ケズ   作:柴猫侍

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二十九. 持つべきは友

 時間を忘れていたら夕方になっていた時のように、フウは真っ白だった空間が真っ暗闇に変化していることを知覚した。

 行く当てもなく、トボトボと歩く。

 その最中、彼女は一つの光源を目の当たりにした。

 

―――たき火?

 

 暗闇の中、煌々とした輝きを放つたき火。

 あの周りだけは、炎によって紅蓮に照らされ、とても暖かそうだ。

 そう思うや否や、身体の冷たさを覚えたフウは、呼び寄せられるようにたき火の下へ駆けよっていく。

 ここが天国か地獄かは皆目見当もつかない。

 しかし、たき火に当たるくらい許されるだろうと、フウは飛び火に入る虫のようにたき火へ走る。

 

「……あれ?」

 

 だが、たき火に近寄っていく内に気が付いた。

 自分の小指にある線―――いや、糸だろうか。火の灯りに照らされて漸く気が付いた一本の糸に、フウは怪訝に眉を顰める。

 

 これはなんだ?

 どこと繋がっているのだ?

 

 考えれば考えるほど疑問が浮かぶ。

 答えの出ぬ問いに暫し悩む。たき火を目の前にし、いつまでも悩むことをまどろっこしくも思えてきたが、何故だかこのまま放っておいていいことだとも思えなかった。

 

―――旅が終わったら、い~~~っぱい土産話するって!

 

「あ……」

 

 突如、脳裏に鮮烈に思い起こされた映像。

 まだ下忍になったばかりの頃、よく遊んでいた友人と交わした約束のことも思い出した。

 

「……戻らなきゃっス」

 

 踵を返し、小指の糸を頼りに道を引き戻す。

 先程までとは違う。独りぼっちで歩くことは不安だが、明確に誰かと繋がっていることを意識している今、暗闇の中でも突き進むことは恐くない。

 

 糸を辿り、走る、走る、走る。

 

 どれだけ走ったか分からないが、無我夢中で戻る途中、煌々と光っている出口のようなものを目の当たりにした。

 溢れんばかりの光。

 ああ、そうだ。たき火などよりも、こちらの方が温かく優しい光だ。

 

―――……フウ。

 

 あと少しで出口にたどり着こうとしたその時、そこに立っている一つの人影に気が付く。

 逆光で顔は良く見えないが、懐かしい声だった。

 その懐かしさに導かれ、徐に手を伸ばす。

 すると、出口に佇んでいた一人の少年は、青年にも見える大きな姿へと変貌し、困ったような笑顔を見せ―――フウの手を取った。

 

「……ごめんっス。やっぱまだそっちには行きたくないっス!」

 

 手に伝わる熱に涙しつつ振り返り、満面の笑みで別れを告げる。

 

 誰かが後ろで手を振ってくれているような気がしたから。

 

 

 

 ***

 

 

 

「ふにゃ」

 

 突然目が覚めた。

 

(……体チョー痛いっス……)

 

 意識が覚醒するや否や、全身が筋肉痛にでもなったかのような痛みに襲われ、思わずフウは顔を歪めた。

 その後、おぼろげな視界の中、周囲の状況を確認する。

 目が覚めたばかりで暫く何が起こっていたか思い出せなかったが、自分が“暁”と自称する男たちに追われ、途中胸に何故か穴が空いた所為で倒れたことまでは思い出せた。

 

 金縛りにでも遭っているかのように動かない体を無理やり動かし、胸を確認するフウ。

 元々平らだった胸へ、逆に凹みを作られてしまった訳だが、何故だかどうしてか胸に空いた風穴は綺麗さっぱりなくなっているではないか。

 不思議に思いつつ、今度は周りに目を向ける。

 夜なのか、灯りがほとんどなく見辛いことこの上なかったが、天井があることを確認し、自分が今部屋に居ることは気が付けた。

 

(……ん? なんであっしは部屋に居るんスか?)

 

 確か、倒れた時は外だったハズ。

 にも拘わらず部屋に寝かされているということは、誰かが運んでくれたという意味だ。

 

 一体誰が?

 

 自分を追いかけていた敵が運んだとなると、ウカウカ眠っても居られないが、今一度周囲に目を遣って視界に入った人間に、思わず目を見開いてしまった。

 

(……誰っスか?)

 

 大人びた少年だった。

 子どもというには些か落ち着いている印象を与えるが、大人と言い切るにはまだあどけなさが残っている。

 そんな少年を見遣り、暫し思考していると一人心当たりがあった。

 

 あの暗闇から自分を引き戻した少年―――シライトだ。

 

 確かに、よくよく見てみれば、シライトの面影が残っているように見えなくもない。

 だが、些か顔を合わせていない期間が長すぎた。今のところ、目の前の少年は“シライトに似ている”であって、シライトであると断言はできない。

 しかし、横になっているフウの目の前で、胡坐を掻きながら眠るという非常に腰に悪そうな眠り方をしている姿を目の当たりにすれば、つい最近まで看病してくれていたことはフウでも分かった。

 

(ああ、やっぱりシライトなんスね……)

 

 どうやってかは知らないが、自分を誰かが助けた上で、シライトが看病してくれている。

 それだけで嬉しい気持ちになったフウは、安心感からか再び睡魔に襲われた。まだまだ眠い。一度胸に風穴を開けられたのだから仕方はないが、体力が完全に戻っていないようだ。

 

(もうちょい寝るっス)

 

 船を漕いでいるシライトに心の中で『おやすみ』と唱え、再び瞼を閉じるフウ。

 暫くすると、見慣れた空間が目の前に広がった。

 

「ん? ここは……」

『―――……ウ……フウ』

「あれ、この声……」

 

 ふと響きわたってくる声に辺りを見渡すも、中々その声の主が見つけられない。

 おかしい。いつもなら、相手の巨大さも相まってすぐさま見つけられるのだが、今回に限ってはどれだけ辺りを見渡せど、“彼”の姿が見当たらないのだ。

 

「どこっスか?」

『下だ』

「ありり? わっ! 誰っスか!? あっし、そんなダンゴムシみたいな知り合い居ないっスよ」

『だれがダンゴムシだ』

「ん……いや、もしかすると七尾っスか?」

『そうだ』

「わぁ~! ちっちゃくなったっスねェ……脱皮したんスか?」

『だっぴしたらふつうはでかくなるだろうが』

「あ、そうか!」

 

 フウが興味津々に屈んで見下ろす先には、カブトムシのような姿からダンゴムシのような丸っこい姿へと変貌してしまっていた七尾の姿があった。

 あの巨体が嘘のようだ。

 辛うじて“七尾”という名の由来の七つの尾は残っているが、それにしても小さくなったものである。

 小さくなった所為かは謎だが、心なしか声が甲高くなり、舌足らずな喋り方だ。

 

「じゃあイメチェンッスか?」

『ほんとうにそうおもうか……?』

「いや、違うんスね。そう言うんだから」

『まあな。だが、こうかふこうか、またおまえのなかにいれられちまったみてえだ』

「? どういうことっスか?」

『……しかたねえ。せつめいしてやるよ』

 

 首を傾げるフウにやれやれと首を振る七尾は、おバカなフウでも理解できるよう、稚拙な喋り方で懇切丁寧に会話を始める。

 

 

 

―――まず最初に、俺はお前から引き剥がされた。

 その所為で、お前の中の経絡系が引っぺがされて、後は浄土へ直行の道のりだった。

 だが、ラッキーだったな。すぐにお前のダチとやらが来てくれて、死なねえように死にかけのお前を治療してくれた。

 それだけだったら、幾ら治療されても死んでただろうな。

 だが、もっとラッキーだったのは、俺たちはその前に“蛹化の術”で抜け殻を残していたことだ。

 あれも、前の俺に比べたら搾りカスみてえな量だが、しっかり尾獣チャクラってモンが残ってる。暁とかいういけ好かない連中は、俺そのものが目当てだったから、抜け殻に興味を示さなかったが、後で来たお前のダチは気づいて持ってきてくれていた。

 

 どうやらお前のダチ―――シライトだったか?

 アレは精神エネルギーが多めのチャクラで周囲のモノと精神を通わせて、身体エネルギーを集める術を使ってお前を助けようとしていた。

 そのおかげで、抜け殻ん中に残っていた分の俺がそいつに意識を繋げられて、的確な指示を出せたんだよ。

 それからは……まあ、俺も人間の医療について詳しいことは語れねえ。

 だが、ラッキーなことに医療忍術紛いのことができる輩が大勢いた。

 そいつらの協力で、抜け殻はお前の中に戻って、俺もこんなに小さくなっちまったみてえだが、なんとか俺も復活出来て、ついでにお前も助かったっつー訳だ―――。

 

『わかったか?』

「要するにラッキーだったってことっスね!?」

『……それでいい』

 

 フウがどこまで理解できているかは分からないが、とりあえず色々偶然が重なり、命をつなぎとめることができた。それさえ理解できればいい話だ。

 

『だいぶぶんのおれは、あのへんてこなぞうにすいこまれちまった。まあ、じかんがたてばもとにもどれはするが、しばらくのあいだ、おれはいぜんみたいにおまえにチャクラをあたえるのはできなくなるからな』

「へー。時間が経てば、また前みたいにおっきいカブトムシみたいな姿になるんスね?」

『まあな』

「えへへッ。あっし、七尾の子ども時代も見れてなんか得した気分ス! 前の人柱力さんは、きっと見れなかったっスもんね! 七尾、こう見えて結構ジジイっスから!」

『ひとことよけいだ』

 

 ジジイ発言が気に食わなかったのか、苛立ちを見せる七尾。

 しかし、尚も笑顔で小さくなった自分を見つめているフウに、今更いちいち腹を立てることも馬鹿馬鹿しく思えてきた。

 

 そうだ、こいつは昔からこんな奴だった。

 イケない。体が小さくなってしまった所為か、精神年齢の方も下がっているのかもしれない。

 

 そう反省している間にも、フウはしつこく『七尾―♡』と小さくなった七尾を指で撫でまわす。

 そんな彼女に業を煮やしたのか、七尾は目をキッと凄ませる(昆虫的な瞳であるため、凄ませる余地はないのだが)。

 

『おい、フウ』

「ん、どしたんスか?」

『おれは“しちび”なんてなまえじゃねえ』

「え? じゃ、じゃあ今ここに居る七尾は偽物……!?」

『ちがう。“しちび”なんてなまえはな、にんげんどもがおれたちのしっぽのかずだけみてかってにきめたなまえだ。おれには“ちょうめい”っていうなまえがちゃんとあるんだよ』

「ちょーめー?」

『“おもたい”に“あかるい”で“ちょうめい”だ』

「“重たい”に“明るい”……あー、なるほどォ! なんだ、七尾ってあだ名だったんスね」

『まあな。それがいつしか、まるでほんみょうみたいなあつかいをされてきた。まあ、こっちがわざわざなのることもなかったから、にんげんどもにもしんとうしなかったんだろうがな』

 

 そう語る七尾―――否、“重明(ちょうめい)”。

 確かに、小さくなる前のあの重厚感ある甲殻と、陽の光を反射して鮮やかに輝く翅を思い出せば、重明と言う名前も合点がいく。

 

「いい名前っスね! じゃあこれからは重明って呼んでいいっスか!?」

『……かってにしろ』

 

 満面の笑みで『ちょーうめい♪』と呼んでくるフウに対し、重明はつっけんどんな様子で背を見せる。

 だが、以前の威圧感たっぷりの姿と比較すると、些かこじんまりしてしまった重明のその態度には、愛くるしささえ覚えてしまう。

 

「えへへッ。ちょーめー、チョーメー、重明ェー!」

『だまれ、こむすめ』

 

 その後も、フウの意識が完全に寝落ちるまで延々と名前を呼ばれ続けた重明は、うんざりとしつつ―――それでいて遥昔のことを思い出すのだった。

 

 

 

 ***

 

 

 

「……ん」

 

 ふと目が覚めると同時に、腰に途轍もない痛みを覚えた。

 反射的に伸びをすれば、えげつない音を腰が奏でる。バキバキと、それはもう聞いているだけで清々しい気分になってしまいそうな音だ。

 だが、一晩中胡坐を掻いて寝てしまっていたシライトは、自分の腰はほどほどに、目の前で寝ているハズのフウへ視線を向ける。

 

 昨日―――フウの蘇生に成功してからの話だ。

 頭に響く“七尾”となる声に導かれ、なんとかフウの蘇生に成功した後は、戻ってきたカカシたちと合流し、そのまま滝隠れへと向かった。

 木ノ葉から滝には、すでに事件の内容は伝わっていたようであり、思っていたよりもすんなりと滝隠れの下に木ノ葉の面々は足を踏み入れ、滝の者の厚意を受けつつ任務の疲れを癒した。

 

 シライトも、久方ぶりに会った家族との出会いもほどほどにし、未だ意識の戻らないフウの身を案じ、襲撃の可能性を危惧し、里長の家に寝かされているフウに、特別につきっきりで看病することを許されたのだ。

 全ては、新たな里長となったシブキの意思である。

 若く優しい彼は思考も柔軟だ。他里の者を受け入れることに抵抗感のある里の古株たちとは違い、フウを助けたことに対し、素直に礼を述べた彼だったからこそ、容体の急変に備えるという意味で、フウの蘇生に成功した医者であるシライトに看病を任せてくれたのだ。

 

 そういう訳で一夜を明かしたのだが、少々疲労がたまり過ぎていた所為で、いつからか寝落ちしてしまっていたようである。

 

(フウは……)

 

 視線をフウの顔に向けるや否や、自分を凝視してくる彼女の姿が目に入り、思わず硬直してしまった。

 

「おはよっス。そんな風に寝てたら、体バキバキになっちゃうっスよね」

「……フウ?」

「フウっすよ! まさか、顔忘れた訳じゃないっスよね!?」

「……ううん……割と忘れない顔だし……ちゃんと覚えてるよ」

「それって褒めてるんスか?」

 

 穏やかにほほ笑むシライトは、少しばかりショックを受けているフウの手を握る。

 今度は―――温かい。

 確かに感じられる命の熱に、目頭が熱くなる感覚を覚えた。

 

「よかった……」

「えへへっ……重明から聞いたっスよ。シライトが頑張ってあっしのこと助けてくれたこと」

 

 手を握り返すフウは、上体を起こしつつ、太陽のように明るい笑みを浮かべ、こう言い放つ。

 

「ありがとう!」

「……ううん、いいよ」

 

 固く握られる手の熱に、思わず涙が零れてしまった。

 心から、医者をしていてよかったと思える瞬間。それは患者が死の淵より舞い戻り、笑顔を見せてくれる瞬間だ。

 

「友達……なんだから」

 

 友であるならば尚更。

 嗚咽を上げて涙を零すシライトを前に、フウは戸惑いつつ、それでいて優しい眼差しを見せ、彼の涙が収まるまでずっと―――ずっと背中を撫で続けるのだった。

 

 

 

 ***

 

 

 

「本当に、あなた方にはなんと礼を申せばいいものか……」

「いや、そうも里長に頭を下げられるとのォ……」

「いいえ、あなた方はフウの恩人。これから滝は、木ノ葉の同盟国として協力を惜しまぬ旨を、是非ともあなたの口から火影殿に伝えてもらいたい」

「そうか……よし、任せろ」

 

 滝隠れの里の出入り口にあたる部分で話していたのは、自来也と里長のシブキだった。

 フウの安否も確認でき、もう里に残る用事もなくなったため、木ノ葉に向かって帰るのはごく自然の流れであると言えよう。

 後ろでは、ナルトたちは友人たちとの再会を改めて懐かしむように話しており、既に帰路につく準備は万端だ。

 

 そんな時だった。

 

『待ってェ~~~!』

「……お、なんだァ?」

 

 里の奥より聞こえてくる声に、自来也のみならず他の者達も目を凝らし、迫ってくる人影に焦点を合わせる。

 こちらへ向かって来ているのは、シライトに負ぶわれてやって来たフウだった。

 ゼェハァと息を切らすシライトに背負われる彼女は、満面の笑みを咲かせ、自来也たちに声をかける。

 

「アンタ達が、あっし助けてくれた人たちっスか!?」

「こ……コラ、フウ! ここに居る人を誰だと思ってるんだ!? 木ノ葉の伝説の三忍こと自来也様だぞ!」

「へぇ~! あっしと是非友達になってください!」

 

 突拍子もなく、シライトに背負われつつ友達申請をするフウ。

 そんな彼女に、自来也は鼻の下を伸ばす。

 

「なんじゃなんじゃ~、まずは友達からってか!? えぇ!?」

「エロ仙人、いい加減にするってばよ……」

「そっちの人も友達になって欲しいっス!」

「え、おれか!?」

 

 自来也の次は、ナルトに目をつける。

 困惑するナルトであったが、目を爛々と輝かせて手を伸ばす彼女の申し出を断る理由もなかったため、少しため息を吐いてから、『よろしくだってばよ!』とナルトは手を握った。

 その瞬間、得も知れぬ感覚を彼女の中から感じたものの、余りにも僅かな違和感であったため、ナルトは気のせいだと考えることをやめる。

 

 その後もフウは次々に友達申請をし、この場に居る木ノ葉の面子全員とめでたく友達になった。

 

「えへへっ、これで友達百人の夢がまた近づいたっス!」

「なんか……すみません」

「いや、いいんだ。是非とも今後も木ノ葉の里をよろしく頼むぞ」

 

 喜ぶフウの一方で申し訳なさそうにしているシライトへ、自来也が肩を叩き、彼の労をねぎらう。

 

 それからは、遅れてやって来たヒナイとミズチにも別れを告げ、名残惜しくなる前にと早々に自来也たちは滝隠れの里から去っていく。

 

「またなー、みんなー!」

 

 子供らしく手を振るナルトに、負けじとフウも手を振り返す。

 似た者同士だと、思わず笑ってしまうシライトも、友達を救うことに助力してくれた者達へ手を振ることをいとわない。

 やがて、彼らの背中が見えなくなるまで、シライトたちは手を振り続けた。

 世界は予想以上に広いが、世間が余所以上に狭いことも知っている。

 またいずれ出会う時のことを思いつつ、シライトたちは里の中へ戻らんと踵を返した。

 

 そんな時、ふとミズチが声を上げる。

 

「ねえ、センセー」

「……はい?」

「これからどうするの? 里でゆっくりでもする?」

 

 それは今後の動向についてであった。

 

「しらたきが残るってんなら、オレも暫くはここに滞在するぞ」

 

 ヒナイの意見に、口火を切ったミズチは同意するように頷く。

 そんな彼らの言葉にまず反応したのは、シライトではなくフウだった。

 

「お話聞かせてほしいっス!」

「……フウ?」

「みんなの旅の話……シライトと約束してたんス! だから、あっしにみんなの旅の話を聞かせて欲しいっス!」

 

 満面の笑みでそう口にするフウに、三人は思わずフッと口元を緩めた。

 暫し旅はお休み。

 今後は、世界に羽ばたいたことのない少女のために、自分達の旅の話をしてやろうではないか。

視線で合意する三人は、はしゃぐフウに温かい眼差しを浮かべつつ、里の中へ戻る。

 

 

 

 滝の音間近に語るは旅路。

 

 

 

『―――まったく、もつべきは“トモ”だな。おれもおまえもラッキーだぜ、フウ』

 




***第五章 完***

最終話は七夕の朝七時七分に投稿です。
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