西尾維新先生の作品「十二大戦」と「十二大戦対十二大戦」をよんで思わず書いてしまったモノです。皆様の暇つぶしになれば幸いです。(_ _)
ゴーストタウンの中心近くに聳え立つ真新しい廃ビルを見上げながら、
「(*´Д`)…なんつって」
「あら、そこで殻から首を伸ばして馬鹿面を晒しているのは『亀』ではありませんの」
文字通りの馬鹿面を晒していた家名は背後から掛けられた声に心底驚き、そして、振り返った瞬間に己の死を直感した。
振り返ると其処には美女が立っていた。抜群のプロポーションに長く美しい金髪。少々派手なメイクを施したその女性は街を歩けば十人中十人が振り返るレベルの美女だ。そして、その上で更に二度見ならぬ三度見をするに違いない。何しろその美女の両手には巨大な機関銃が握られているのだから。
「こ、こんにちは
「ええ、家名さん。何時も通りの感情の籠っていないお世辞をありがとうございますわ」
美女の名は
家名は異能肉と相性が悪い。
異能肉もそれを理解しているからだろう、大戦開始の前に戦士同士が出会ってしまうという事態だというのに余裕な態度を崩すことなく冷や汗を流す家名を鼻で笑う。
「今回の大戦にまさか家名さんが『亀』の戦士として参加するとは思っていませんでしたわ。てっきりあの長女が参加するとばかり思って楽しみにしていましたのに…亀井家は今回の大戦に本気で挑む気はありませんの?」
「はは…はぁ。どうなんでしょうかね。
「ああ、なるほど、確かに今あの長女が大戦で死ねば亀井家は没落ではなく撲滅しますものね」
そんな異能肉の反応を受けて家名は何とか目の前の危険人物を納得させることが出来たと安堵した。何度か同じ戦場で仲間として戦い、何度か敵として戦ってきた異能肉という戦士の性格をある程度は把握しているつもりの家名は異能肉が大戦もまだ始まっていないのに参加者を殺すような豊かでない真似をするとは思っていなかったが、恐怖とそれは別である。
「では、また後で」
―――名家に相応しく豊かに殺してあげますわ。
家名なんかと共に会場入りする気など無い異能肉が別れのあいさつの後にした物騒な呟きを聞き逃す幸運を逃した家名は顔を青くする。
「(;^ω^)…なんつって」
殺される。それはきっと間違いのない事実だった。何しろ今回、家名が立つ戦場は今まで戦ってきた戦場とは比較にならない規模の戦場だ。それこそ人口五十万人規模の大都市群を一夜にして滅ぼして、その場所を戦場として用意できる規模の大戦。十三年に一度だけ開催される十三人の戦士たちが命を賭けて勝利を目指す戦争。その名もずばり十三大戦。
『亀』の戦士として神話通りに誰よりも早く『招待状』に書かれた集合場所にやって来た家名が怖がりながらなかなか会場入り出来ずにいるのも納得なレベルにインフェルノがヤバい。
恐がり過ぎて言語野が若干おかしくなった家名は気を取り直すようにいやいやと首を振る。・
「俺は誇り高い亀井家の戦士だ。家長である大姉ぇに命じられて十三大戦に参加してるんだ。ビビっちゃ駄目だろ。例え十三大戦に参加する戦士の一人が異能さんだってわかっても、恐がることなんて………いや、嫌だぁ。異能さんと戦いたくないなぁ。…だってあの人の能力チートじゃん。『
日常生活においても手放すことのない愛機関銃二丁で数多の戦場を無双する異能肉の姿を何度も見てきた家名は自分が異能肉に勝利する光景を思いうかべようとして、思い浮かべることが出来なかった。想像の中での家名は十中八九、蜂の巣どころか木っ端みじんに粉砕されている。
「異能さんが『亥』の戦士として大戦に参加してる。それは見方を変えれば俺が戦わずして十二人中一人の戦士の情報を得ているっているアドバンテージでもあるんだけど、それは異能さんからしても同じだからなぁ。俺が異能さんの能力を知っているように、異能さんも俺の能力を知っている」
そして家名の能力では異能肉の『
「(;^ω^)…なんつって。もう考えるのは止めて、そろそろ行こう」
家名は真新しい廃ビルのエントランスへと向かう。
予定通り、一番早く『招待状』に示された集合場所の目の前までやってきて異能肉以外にはばれない様に十二人の戦士たちに先を越されながら、十二人の戦士たちを見送った。
そして、集合時刻を過ぎてから集合場所に到着する。
「『亀』の神話通りだ。これでいい」
十二人の戦士たちの会場入りを見送った家名は(十二人の戦士たちの何人かがエレベーターで昇っていたのを見ていたので)安心しながらエレベーターにのり廃ビルの最上階へと上がっていった。そして最上階の一室。そこは遥かなる高見から地上を見下ろす展望スペースとして設計されただろう大部屋。そこには立食パーティー様に用意された豪華な料理と家名がこれから殺し合う十二人の戦士たち。そして、一つの首切り死体が転がっていた。
「( ゚Д゚)…なんつって。あれ、十三大戦もう始まってるの?」
一番最後に会場入りするのも遅刻するのも作戦通り。けれどまさか仮にも十三戦士の一人である自分が来る前に十三大戦が始まっているなんて思ってもみなかった家名は(ルールとか全然聞いてないんだけど!)と慌てた。
慌てて顔見知りであり自分の少し前に会場入りした異能肉に目線を送るが彼女は家名などには関心がないのだろう目もくれずに異様な風体の男と何か喋っていた。
首切り死体の傍に立つ両手に血塗れの巨大な鉈の様な刃物を持った異様な風体の男は手に持った刃物を異能肉に向けながら言う。
「んんん?僕じゃないよ?僕じゃないよ?証拠もないのに、人を疑うのはやめて?」
首切りしたいの傍に立つ血塗れの刃物を持った彼、おそらく『卯』の戦士-
家名が異能肉が挑発のままに暴れるような女性ではないことを知ってはいてもハラハラする中で
「ようこそ、戦士達」
という声がした。唐突に聞こえた声。家名が声のした方向に顔を向けるとそこには何の音も無く現れ、最初からそこにずっといたかのように、部屋の窓際に、塗りつぶしたような夜景を背景にして、シルクハットをかぶった老人が立っていた。全員の視線がそちらに向く―――その中で家名の視界の端に壁を背にして寝ている少年の姿が映った。
戦士の中では若いと言われる家名よりも幼い少年はこれから命を賭けて戦う事となる十一人の戦士達と一人の首切り死体。そして謎の老人を前にすやすやと気持ちよさそうに寝ていた。そんな少年の神経を家名は疑った。
そんな家名の思いを置き去りに謎の老人は声を上げる。「皆様お揃いのようですので、それではこれより、第十二回十三大戦を始めさせていただきます。エヴリバディ・クラップ・ユア・ハンズ!」そう言って老人は高らかに手を打ったが、むろん、それに追随する戦士は一人もいない。唯一、流されるまま手を打ってしまいかねない戦士である家名は(良かったまだ始まってなかった!)と安堵していた。
「私は本大戦の審判を務めさせていただきます、ドゥデキャプルと申す者です。どうかお見知りおきを」と、深々と一礼をする老人。そして、その名前を聞いた瞬間に名前を覚えることを諦めた家名は首切り死体の事も『亥』の戦士・異能肉の事も『卯』の戦士・憂城の事も壁際で寝ている少年のこともいったん忘れて傾聴の姿勢に入る。『人の話をよく聞くこと』。それは家名が二番目の姉から散々言い聞かされてきた人として当然の事だった。
「早速ではございますが、これよりルール説明に入らせていただこうと思います。後ろのテーブルをご覧ください」
家名がドゥデキャプルの言葉で振り返るとテーブルにあった料理が何時の間にか下げられていて、代わりに十三個のどす黒い宝石がテーブルの上に置かれていた。
「(*´ω`*)ふつくしい…なんつって」
同じ大きさで同じ色の宝石が十三個。これをどうするのかは家名が考えた通りであり、「おのおの、おひとつずつお取りください」ドゥデキャプルに促されるまま十二人の戦士が一つずつ宝石を手に取った。唯一、壁際で寝ていた少年が宝石を取りそこなう所だったが、一人の戦士が宝石を手に取った帰りに彼を揺り起こした。
その光景をみて家名は(あいかわらずだなぁ)と思った。
少年を揺り起こした戦士。彼女のことを家名は知っている。『申』の戦士・
家名がアレはどうするのだろうと考えていると「なあ、審判員さんよお」と、そこで挙手する戦士がいた。
「俺様の弟の分の宝石が、どうやら余ってるみたいなんだけど、これは俺様がもらってもいいのかい?」
そんな図々しいことをいう男の顔をみて家名は驚いた。男の顔が首切り死体の傍に転がる首の顔と瓜二つだったからだ。そして家名は彼らが、かの有名な双子の戦士。
そんなことを考えている間に残った弟の分の宝石はドゥデキャプルの采配により兄が持つこととなった。
「へへへ、ラッキー。儲け儲け」
「ただし、『呑み込む』のはひとつにとどめていただくよう、お願い申し上げます」
「あん?呑み込む?」
ドゥデキャプルから弟の分の宝石を手を受け取った断罪兄弟の兄が首を傾げるとドゥデキャプルは薄い笑みを浮かべながら言葉を続ける。
「ええ。他の皆様も、どうかその宝石を噛まずに呑み込んでください---必要でしたら、水はこちらで用意しますので」
どす黒い宝石は呑み込むのには少し躊躇するサイズではあったが、二番目の姉より『出されたものは残さず食べること』は当然だと常日頃から言い聞かせられていた家名はドゥデキャプルに水を頼んで宝石を呑み込んだ。
そうして全員が宝石を呑み込んだのを確認するとドゥデキャプルは「ご一同、ご含飲されましたね?では明かさせていただきますが、今ご一同に呑んでいただきましたのは、毒の塊にてございます。猛毒結晶『獣石』---人間の胃液と独特の化学反応を起こし、おそよ十二時間で人間を死に至らしめる劇薬でございます」その衝撃の告白を受けて家名以外の十一人の戦士は誰も驚かなかった。言い換えると家名は心底驚いた。
「(;^ω^)…なんつって」
まさか毒の宝石だとは思わなかったが、最早後悔しても遅いと悟った家名は平静を装ってドゥデキャプルの言葉に耳を傾ける姿勢を見せる。
「一度体内に呑み込んでしまえば、もう吐きだせない形状になっておりますので何卒悪しからず。準備も整いましたので、具体的なルール説明に移らせていただきます。一度しか申し上げませんので、どうかお聞き逃しの無いようお願いします。と言っても、今回は間違い用の無いほど、シンプルな取り決めに致しました。第十一回大会のとき、少し複雑な仕組みにし過ぎましたので―――我々も反省するのです」と、ドゥデキャプル。
「今、配らせていただいた十二個の宝石を、すべて集められた戦士の優勝です―――優勝者となった戦士は、どんな願いでもたったひとつだけ、叶えることができる次第でございます」
シンプルなルールだった。ようは名作漫画のドラゴンボールと同じだと家名は思った。違うのは叶えられる願いが三つではなく一つだけだというくらいだろう。願いを叶える過程で死人が出てしまうのも漫画と同じだと家名は考えて(…現実と漫画をごっちゃにしちゃ駄目だろ!)と心の中で叫んだ。その叫びはきっとこの場の誰にも届かない。
家名は気を取り直して考える。ルールはあまりにシンプルだ。しかし、疑問を抱く余地がないかと言えばそうではない。シンプルなルール故にシンプルな疑問が真っ先に思い浮かぶ。それをドゥデキャプルに尋ねようか家名が迷っていると、自分を見ている一つの視線に気が付いた。異能肉の視線だ。異能肉は目線だけで家名に「行け」と言っていた。家名は『亀』の戦士なのに「わん」と吠えたくなった。
家名は挙手をする。
「あーと、あのドゥデキャ?いや、ドゥデギャ?…もういいや。審判員さんに聞きたいんだけど、参加する戦士が全員服毒してるなら、優勝しようとどうなろうと結局、全員が死んじゃうってことだよね?それは優勝する意味なくない?」
「当然の疑問でございますので、当然の答えを返させていただきます。優勝された戦士には、副賞として解毒薬を提供致しますから、どうぞご心配なく」
当然の疑問に当然の答えを返された家名は納得すると同時に、優勝しなければ確実な死が待っていること、また最後まで生き残っていたとしても優勝した時点で十二時間が過ぎていれば解毒が間に合わずに毒死してしまうという厳しいルールであることを改めて痛感した。
ドゥデキャプルへの質問を終えた家名は異能肉の方を見る。異能肉はもう家名を見てはいなかった。
「(´;ω;`)くぅーん…なんつって」
異能肉の態度は何時もの事なので家名は気にしない。
前回大会とは違い十二時間という明確なタイムリミットが明示された第十二回十三大戦のルール。生きて優勝したければ十二時間以内に他の戦士を倒さなければならないというルールは十三大戦に参加している全員が選ばれし戦士であることを考えれば、それは決して低いハードルのクリア条件ではないだろう。
けれど、問題はそこじゃないんだろうなという家名と同じ思いだったらしい一人の戦士。陰々滅々とした雰囲気を放つ、丈なす黒髪の男。おそらく世界で一番有名な戦士であり、間違いなく世界で一番強い戦士。『丑』の戦士・
「宝石は胃液と反応するといったかね?つまり、宝石は胃酸で溶けるということかね?」
「はい、ご明瞭です。個人差はあるでしょうが、制限時間が近づくにつれ、熔解し―――最終的には消えてなくなると思っていただければ結構でございます」
失井の質問によって誰か一人ででもそんな事態が腹の中で起これば、誰も優勝できなくなるというルールも明かされた。
そんな中で家名は(異能さんに砂流さんだけじゃなく、失井さんが参加してるって時点で俺の優勝は無理だよなぁ。勝てないよなぁ)とそんな悲観的なことを考えていた。
「儂からもひとつ、質問させていただいてもよろしいですかのう?」と、そこで割り込むように『未』の戦士が口を開いた。
『未』の戦士のことを家名は知っている。というより、家で聞かされて育っている。家名の親の親の世代に活躍した戦士の一人だ。現在は引退したと目されていた戦士がいることに家名は驚いて然るべき場面であったが、『亥』『申』『丑』で一杯一杯な家名はもう考えるのを止めた状態だったため、反応しなかった。
「儂の戦闘スタイルは、なんというのでしょうな……、少々獰猛でして。まさかこの衆目の場で手の内を明かすわけにもいきませんが、強烈な爆発物を使わせていただこうと思っている仕儀なのです。もちろんそんなことは起こらないように気を配る所存ではありますがのう、意に添わずして、蒐集している最中に、その宝石を破壊してしまった場合は、どうなるのでしょうかの?」
手の内を晒さないと言いながら爆発物の使用を匂わせって他の戦士を威圧する老獪な戦士に対して家名は(爆発オチなんてサイテー)と思った。
けれど『未』の戦士が質問した内容は家名も知りたいと思っていたことだった。仮に家名が腰に差す日本刀、その名も名刀『
「ご安心ください。毒の宝石が反応するのは人間の新鮮な胃酸のみにてございます―――それ以外では、どんな物理的な破壊力をもってしても、傷つけることは叶いません」
だから、ドゥデキャプルのそんな言葉に家名は安心した。
「では、これが最後の質問だがね」と『丑』の戦士が舵を取り直す。気が付けば宝石を呑み込んでから、それなりの時間が過ぎていた。これ以上長引けばこの後の戦闘に響くかもしれない。それはこの場の戦士全員の考えだった。
「その頑丈だという宝石を、我々はこうして、己が体内に呑んでしまったわけだがね―――人間が呑み込んでしまった宝石を、いったいどうやって、集めろというのかね」
「方法は各人の手腕とご判断にお任せいたしますが、しかし参考までに申し上げますれば、相手の腹をかっさばくのがもっともてっとりばやいと、私などは愚考します」
こうして第十二回十三大戦がはじまる。
始まる前から優勝も勝つことも諦めた『亀』の戦士・家名は(まあ、優勝も勝つことも出来なくても、やりようなんていくらでもあるよね)と(^ω^)こんな顔をしながら思った。
本名・
武器は日本刀『