憑依先は悪役令嬢   作:クライムベル

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お仕事

「こんなモン・・・ですわね。」

 

藤の会会長専用室。

そこで、束になっていた仕事を終わらせた私は、溜息をつきながら、紅茶の入っているティーカップに手を伸ばす。

 

 

/一般執務室―――――――扉\

扉 /扉―応接室―扉―通路―扉―会長室

\入室検査室―お茶会会場―扉/

 

藤の会はこんな感じの間取りとなっているのだが、会長室へは、全部の部屋から入れるようになっている。

 

(ちなみに私は一般執務室の扉をよく利用している)

 

しかし、会長室は基本締め切りになっており、鍵を持ってるのは私だ。

 

それは、私が部屋の中で仕事をしてる時も同じ。

 

それは何故か?まぁ、一言で表すなら私の格好である。

 

数年前にとある魔術師が開発した新素材の服。それを着ているのだ。

 

「訓練用」と名を打たれたそれは、貴族は到底着ないようなシンプルすぎるデザインであり、カラーリングも、どピンクに白の縦ライン。そう。その名は・・・・・・

 

「ジャージ」である。

 

金の髪をヘアゴムで束ね、黒縁のメガネをかけ、ピンクのジャージを着ながら、魔道式文字ライターを叩き報告書を書いている。

 

そんな姿を他人に見られたらいけない・・・。

 

そんなわけで部屋は締め切りだ。

 

まぁ、着なきゃいいだけなのだが・・・本当にこの姿が至高であり最も落ち着くのだ。

 

私は前世、男だった頃。まぁ、色々な異世界転生の話をネットの小説投稿サイトや、書籍でよく読んでいたんだか・・・

流石にこの展開は予想にもできなかった。

 

だってさ?だってだよ?

 

主人公でも、ヒロインでもなくて読者含むたくさんのキャラからのヘイトを集める悪役令嬢に転生して、ジャージ着て魔道式文字ライターを叩いて報告書作ってるんだよ?

 

・・・正直前世は仕事が恋人だったから、この空間は心地いいけどさ。

 

ともかくだよ。こんな姿ほかの人に見られたら恥ずかしいってレベルじゃないんだよ。

 

ちなみに、必要な書類とかは仕事を始める前。ちゃんとした制服着てる時に2~3日分まとめて持ってきてるので問題は無い。

 

「さて・・・と。提出予定の書類は全部終わったし・・・。今日は早めに帰れるかな・・・。」

 

そう呟いた先、連絡用水晶(固定式電話のようなもの)に着信が入る。先を見るとどうやら入室検査室のものからかかってきたようである。

 

『レイシア様。セロ様がご面会を要望されております。』

 

かけてきたのは爺やの愛称で知られている藤の貴族対応専門職員である。

 

「セロ様が?いいですけど・・・。少し待っていて下さるよう伝えて下さいますか?できるだけ早く行きますわ。」

 

『了解致しました。』

 

通話を終了して、そそくさと着替える。

 

「急げ・・・急げ・・・。」

 

流石、ジャージ。脱げる速度は一級品である。

 

「これでよし・・・ですわ。」

 

髪をとき、メガネを外す。(ちなみにメガネは伊達。前世つけてたからね。)

 

制服に着替え直して、会長室から出る。応接室には既にセロがいた。

 

「遅かったな。」

 

 

「申し訳ありません。少し・・・。」

 

「まぁいい。今日はお前に調べてほしいことがあってな。」

 

「調べてほしいこと・・・ですか?」

 

「ああ。今年からの転入生でエルシェ・クラメルって奴がいるはずなんだが・・・」

 

おい!こいつ少しは自分で思い出す努力をしろ!どうせ再開したけど自分は全然覚えてないから私に頼もうって口だな。

 

「申し訳ございませんがわたくしは忙しいのです。ご自分でお調べになっては如何ですか?」

 

「なんだいきなり?女の名前を出したから妬いてるのか?」

 

ちげーよ!前世から私はセロはあんま好きじゃないの!

めちゃくちゃウブで中の人が○山昂輝くんみたいな男キャラか、玄○哲章とか、屋良○作みたいにおっさんガン振りの男キャラが好きなんだって!

 

「違います!人探しや人調べは我々の仕事では無いと言っているのですわ。」

 

そう反論するとフッと笑い、

 

「そうか。邪魔したな。」

 

そう言って応接室から出ていく。

 

むきー!こんなキャラだからエルシェに人気投票で負けるんたよ!

 

「わたくしも戻りますか・・・。」

 

会長室に戻り、制服のまま書類のチェックをしていると、既に時計は7時を指していた。

 

この学校は部活みたいな制度はなく、自習室も6時で閉まるため、この時間帯だと生徒は元より、宿直担当の教諭しか残っていないはずである。

 

まぁ、こんな時間まで残っていても学園から寮まで5分も掛からないから別に大丈夫なんですけどね。

 

会長室を出て、一般執務室側の扉から出る。鍵をかけて正に出ようとした時、コンコンと執務室の扉をノックする音が聞こえた。

 

「し、失礼します・・・」

 

そう言って入っきたのは小柄な女生徒だった。

 

「どうしたんですの?こんな遅くに・・・」

 

その女生徒は私の事を見て少し怯えていた。

 

やっぱり、皆さん私の事怖いんですね。

 

「女帝様!私を・・・助けてください!」

 

「は、はい?」

 

その願いは・・・私にとっての初めてのご指名だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




お久しぶりです。リアルが忙しくてこちらに手をつけれませんでした・・・。

今回はセロもきちんと出しましたよ。

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