アルベドさん、総てを知る。   作:イスタ

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04 心の共有

 

「いえ、至高の御身には問題など一切ございません。全ては私の失態です」

 

「そ、そうか?なら良いのだが……うーん、この異常事態と何か関係があるのかな」

 

「……異常、ですか?」

 

 

「ああ。どうやら私にしか感知できなかったようだが、現在この《ナザリック地下大墳墓》は未曾有の異常事態に巻き込まれている。セバスとナーベラルはその調査のため地上に向かわせた」

 

セバスとナーベラルを見送った後、玉座の間に残った俺は、なぜか泣いているアルベドをひとまず落ち着かせ、今起こっている異常事態の情報を整理していた。

 

 

「申し訳ありませんモモンガ様。そのような重大事項を見落とすとは、守護者統括として失格。如何様にも罰をお与え下さい」

 

「いや、良いのだ。恐らくだがこれは私にしか観測できない類の異変だろう。お前たち《NPC》が自覚していないのなら、それはそれで問題はない」

 

「…モモンガ様、もしやその『異常』とは、先程モモンガ様が呟かれていた『ユグドラシルの終わり』と何か関係があるのでしょうか」

 

「うむ、聞かれていたのか……そうだな。正直に言ってしまうと、我々が知るこの世界ーーー《ユグドラシル》はつい先刻、その内包する全てを巻き込み崩壊する筈だったのだ」

 

「な……!そのようなことが!?」

 

「ああ。だがそれが起こらない。我々が愛した世界の崩壊、このナザリック全ての喪失、それはどう足掻こうと、何があろうと覆らぬ決定事項であった筈なのにだ」

 

 

 

「……現状、概ね理解致しました」

 

「む、自分で言っておいて何だが……突拍子も無いこのような話を、信じてくれるのか」

 

「はい。尊き至高の御方のお言葉を疑うようなシモベはこのナザリックには居りません」

 

 

こういう所は設定通りなんだな。さっきのセバスやプレアデス達もだが、NPCは俺に従ってくれている様だ。

 

 

「それに、先程モモンガ様より"頂いた"御心。永遠の別れのようなあのお言葉はそういう意味だったのですね」

 

「俺の……いや、私の"心"だと?」

 

「先程モモンガ様より賜りました新しい力です。妻は夫の心に寄り添い支えて差し上げるもの。不肖このアルベド、妻としてとこしえにモモンガ様にお仕え致します」

 

「……妻?」

 

「はい」

 

 

妻?

 

え、もしかしてさっき変更した設定の影響か!?アルベドが俺の妻!?

 

(コ、コンソールはもう出ないし、戻す方法は無いよなぁ……。最後だと思ってやらかしてしまった。はぁ、タブラさんに申し訳が立たな過ぎる)

 

 

「すまないアルベド。確かに私は先程おまえの設定を書き換え、私のつーーー妻としたが、具体的にどのような変化が齎されたのかは把握していないのだ。恐らく現在ナザリックが巻き込まれている異常事態にも関係があるだろう。詳しく聞かせてくれないか」

 

「なるほど。畏まりました」

 

 

 

 

 

 

 

「…つまり、お前に新しい”スキル"が発現したと?」

 

「はい。正確には"モモンガ様と私の間"に生まれた感情の共有能力ですが」

 

「効果はお互いの心を、そのまま……筒抜けで……。は、ハハ。あぁ…そう…」

 

 

セバスとプレアデスを見送った後、玉座の間に残った俺は、落ち着きを取り戻したアルベドからとんでもない告知を受けていた。

 

 

『モモンガと通じ合っている。』

 

先程俺が出来心で変更したその《設定》が、どうやらそのままアルベドの能力として反映されてしまったようだ。

 

アルベドが泣いていたのは、俺がユグドラシルのサービス終了を悲観する強い想いが彼女の心にも流れ込んだから。

俺の仲間たちに呼びかけるような未練ったらしい想いが、全てアルベドに伝わってしまっていたようである。

 

(あんなカッコ悪すぎる心の中身全部筒抜けとか、どんな羞恥プレイだよ!)

 

 

「ですが思考全てという訳ではなく、お互いが《共有》をある程度望んだ状態でなければスキルは機能しないようですね。現在はモモンガ様の御心を感じることができません」

 

「な、なるほど。これは私の方こそ無様な所を見せてしまったな。すまなかった、こんなことでは支配者失格だ」

 

「とんでもございません!モモンガ様の悲しみは私の悲しみです!どうかシモベとして、そして何より妻として!その御心に少しでも寄り添うことを御許し下さい!」

 

「アルベド……」

 

「ところでモモンガ様。先程も申し上げましたがこのスキルは”夫婦二人の間に発動する”スキルでございます。異常が発生している現状を正しく把握する意味でも、ぜひモモンガ様側からも私の心を……」

 

そう言い、大きく腕を広げて俺を迎え入れるような動きをするアルベド。

豊満な胸がぶるんと揺れ、思わず目が行ってしまう。

 

いかんいかん、彼女はそういう意味で言っているんじゃない。

アルベドは俺の心を覗いてしまった。それが意図せず行ったことであり、俺が羞恥を感じていることに気づいたのだろう。

自分の心も覗かせることで、俺の立場を守ろうとしてくれている。

 

「そうだな……だが心の共有とは、一体どうすればいいのだ?」

 

「モモンガ様が望まれれば、問題なくスキルは発動するでしょう。私の方は常にモモンガ様を望んでおりますので、実質的なオンオフはモモンガ様の意思一つで行われるかと」

 

「そ、そうか。ではアルベド、悪いが少しだけ心を覗かせてもらうぞ」

 

「はい。もとより私の全ては貴方様のもの。どうかご覧下さい、モモンガ様」

 

 


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