やはり俺の青春ラブコメは間違っている 終   作:兼田先生

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2話 彼と彼女の休日はまだ終わらない

 

 

 俺、比企谷八幡はディスティニーランドに向かうため雪ノ下と電車に乗っている。

 ーーわけなのだが、雪ノ下が近い。今、雪ノ下が隣に座っているわけだが…とにかく近いのだ!(大事な事なので2回言った)

 

 普通に吐息が聞こえる距離である。ぼっちスキル、スキルマの俺には心臓に悪い。

 

「ーー比企谷くん、何をもぞもぞしているのかしら。挙動不審で気持ち悪いのだけど、通報するわよ?」

 

「フッ、挙動不審なのはいつものことだろ…俺は過去に2回も通報されたことがあるからな」

 

 いつもの毒舌の雪ノ下雪乃だ。この毒舌は別に嫌いじゃない。

 いや、決してドMというわけではないからね?変な性癖があるわけじゃないからね?

 

「それを恥じらいもなく言える貴方の神経を疑うわね。反省…いえ、いっそ生まれ変わったほうがいいわよ」

 

「まぁ、そのほうがいいかもな。」

 

 会話はそこで途切れる。いつもなら俺も雪ノ下もキレのある受け答えが続くはずだが。

 俺も、恐らく雪ノ下も緊張しているのだろう。いや、もしかすると俺だけかもしれないが。

 

 そのまま時は経ち、いつの間にかディスティニーランドの最寄駅、舞浜駅に到着していた。

 

「にしても休日なだけあって駅に人が多いな」

 

 ハッハッ、見ろ!人がゴミのようだ!おっといかん、ついジブリのあのキャラのセリフを口走るところだった。

 

「ーーそうね。では、私達も早く行きましょうか。」

 

 ディスティニーランドか。12月に雪ノ下や由比ヶ浜、それに一色に葉山達と来たばっかりだな。

 

『いつか、私を助けてね』

 

 ふと、ダイビングアトラクションに雪ノ下と二人で乗った時の事が脳裏をよぎる。

 あの時、雪ノ下が言った言葉の意味はまだわからない。何から助けて欲しいのか。

 確率的に低いがもしかすると幻聴だったのかもしれない。

 

 だが、もし雪ノ下のこの言葉の意味をいつか理解した時、俺はきっと…。

 

「何をボーッとしているの?」

 

「あぁ、悪い」

 

 ーー彼女を助けるだろう。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「で、今で何分待ったっけ?」

 

「はぁ…呆れたわ。貴方まさかもう疲れたの?まだ15分しか並んでないじゃない」

 

 今、俺達はパンさんのバンブーファイトに乗るために並んでいる。

 通常なら人気がそれほどないので人も少ないが、休日だけあって少し混んでいる。

 

 正直今日はグッズ買って帰れると思っていたが、先にアトラクションに乗りたいと言われたので仕方なく一緒に乗ることになった。

 断る勇気はさすがになかった。雪ノ下の威圧がすごくて首を縦に振ることしかできなかった。

 

 いや、マジ怖かったッス。

 

「ぼっちってのはな、並ぶのが苦なんだよ…特に俺クラスになると存在感なさすぎて順番を抜かされるどころか、いつの間にか列から除外されるまであるぞ」

 

 だから基本俺は列に並ばない。

 

 ぼっちにとって行列はいわば地獄である。誰とも話すわけでもなく、ただ携帯電話と向き合い時間を潰す。

 もし仮に携帯電話も忘れていたらもう終わりである。時間を潰す手段がなくなる。

 

 もうただひたすら物思いに耽るしかない。

 

「貴方の存在感の話なんてどうでもいいのだけど…」

 

 でしょうね。

 

「お、そろそろだな」

 

 気づけば俺達の順番まで回ってきた。ようやくアトラクションに乗れる。

 

 ーーわけだが…

 

「一応言っておくけど、アトラクション中は静かにしていてもらえるかしら?」

 

 まさかの私語厳禁。これは前の時もそうだった。まさにパンさんガチ勢の鑑のような存在である。

 

「……」

 

「♪〜」

 

 鼻歌まで歌って物凄く楽しそうだ。

 もし内面を知らず、今の柔和な表情だけを見たら確実に惚れているところだろう。

 

「もうすぐゴールだな」

 

「はぁ…静かになさいと言ったでしょ?貴方、目だけでなく耳も腐っているの?」

 

 俺を射殺すような目つきで睨んでくる雪ノ下。おいおい、気合い入りすぎじゃないですかね。

 その後はまぁ雪ノ下が怖いので俺はゴールまで黙り込んだ。そして無事俺達はゴールに着いた。

 

 アトラクションから降りた後、雪ノ下は少しの間機嫌が悪かった。言うまでもなく俺のせいだろう。

 少しの間様子を見て、質問のタイミングを伺う。

 

 ーー今だ

 

「さて、グッズ見に行かねぇか?」

 

「ひ、比企谷くん。その前にアレ…」

 

 あの冷静沈着な雪ノ下が慌てている。一体彼女の目には何が写っているのだろうか。

 俺は恐る恐る、彼女が指差す方向に顔を向ける。するとそこにいたのは、パンさんだった。

 ーーいや、正確に言うとパンさんの着ぐるみを着た人間がいた。

 

「比企谷くん。一緒にパンさんと写真を撮りましょう…」

 

「え?」

 

 てっきり、『パンさんと写真を撮りたいから貴方には撮影をお願いするわ』というと思っていたのだが。

 

 まさか、雪ノ下と二人だけで写真を撮る日が来ようとは…

 一応、奉仕部でなら写真を撮ったことはあるが雪ノ下と二人での写真はまだ一枚もないだろう。

 

「じゃあ早く撮るわよ。誰かに撮影をお願いしてもらえるかしら?」

 

「わかった。あの〜すみません。写真撮ってもらいたいんですけど…」

 

 俺が通行人の方に話しかけ、承諾をもらいカメラを渡す。

 その間、俺と雪ノ下はパンさんの元に近づきそれぞれ両隣に並ぶ。

 

「撮りますよ〜!ハイッ、チーズ!」

 

 礼を言い、撮ってもらった写真を覗き込む。うむ、悪くない。俺達らしい写真だ。

 

「フフッ、中々いいわね」

 

「だな…心なしか俺の目が輝いているように見えるぞ」

 

「そうかしら?貴方の目の腐り具合はいつも通りね」

 

「へいへい…そうだな」

 

 さて、写真も撮ってもらったことだしそろそろ本当の目的を果たす時がきたようだ。

 元はといえば、雪ノ下がパンさんの期間限定グッズ入手のためにきたのだ。

 

 かなり時間が経ってしまったが極力早めに済まし、帰ろう。

 最近、録画したアニメがたまっているからな。プリ◯ュアとか。

 

 そう思っていた矢先のことだった。

 

「あれ…先輩?」

 

 聞き覚えのある、というか忘れようのない声がどこからともなく聞こえた。

 いや、だが…冷静に考えて「あいつ」が今ココにいるわけがあるまい。きっとあれだ…空耳に違いないな。

 

 ーーあの『一色いろは』がディスティニーランドにいるはずがないのだから

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