やはり俺の青春ラブコメは間違っている 終   作:兼田先生

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第2章 本物編
4話 突如日常は崩壊を始める


 

 

 

 学生にとっても社会人にとっても恐らく月曜日ほど気持ちが憂鬱になる日はないだろう。

 月曜日というのはこれから始まる苦痛の一週間の言わば幕開けだからだ。

 

 特に俺、比企谷八幡は月曜日が死ぬほど嫌いだ。月曜日の朝は元より腐った目が、一際腐っている。

 

「あ〜ダルィ…体が重いな」

 

 今、俺は学校に向かうため自転車に乗っている。だが体が、足が鉛のように重たく感じ中々前に進まない。

 今日が月曜日だからという理由も関係しているが、一昨日雪ノ下とディスティニーランドに行って肉体的に疲弊しているからでもあるだろう。

 

 ちなみに昨日は家でゆったり過ごしていた。一瞬たりとも家からは出ていない。

 アレ?そう考えると昨日ゆっくり休んでいるな。まぁ細かいことは気にしないでおこう。

 

「あっ…はちまーん!」

 

 ん、何か後ろの方から誰かの声が聞こえたような気がする。

 

「待って〜はちまーん!」

 

 だんだん近づいている。高いソプラノの声が印象的な声だ。声だけで不思議と安らぎを与えてくれる。

 

「この声は、まさか…」

 

 俺が今、一番会いたかった相手、そう俺の大好きな…。

 

「おはよ〜八幡。」

 

「お、おう。おはよう」

 

 全ての人に安らぎと癒しを与えてくれる大天使、戸塚彩加だ。

 自転車に追いつくために走ってきたからか、少し汗をかいていた。その汗を拭う姿がまた絵になっていて思わず見惚れてしまう。

 

 いや待て。比企谷八幡。少し冷静になるのだ。

 ーー戸塚は男子。戸塚は男子。

 気を落ち着かせるためにここは一句読むんだ。

 

『病気かな、病気じゃないよ、病気だよ』

 

 これはもう病気ですね。まず一句詠んでる時点で病気不可避ですわ。

 

「行こっか」

 

「そうだな。もうすぐチャイム鳴るし早めに行くか…あ、カバン俺のカゴに入れてくれ。持つよ」

 

「あ、ありがとう」

 

 戸塚は電車&徒歩通学なので小柄な体格には重そうなカバンを俺のカゴに入れた。

 カバンをカゴに入れてわかったことはカバンが見た目以上にとてつもなく重いということだ。

 

 戸塚は小柄なのにすごいなと俺は感心する。

 

 何せその重いカバンに付け加え、戸塚はテニスラケットも毎日持っていっているのだ。

 絶対、あの体格ではキツイと思う。正直俺でもキツイだろう。

 

「八幡、今日は4時間授業だよね?」

 

 自転車を押しながらボーッと歩いていると並走する戸塚が話しかけてきた。

 

「え?そうなのか?初耳なんだが」

 

「もぅ。八幡、平塚先生の話聞いてなかったの?確か、ホームルームの時間に言ってたと思うんだけど」

 

 マジで?今日って4時間なの?ラッキーだわ。今日早く帰れるじゃん。

 いや、待てよ。今日も奉仕部は通常通り活動するのだろうか。だとすると、結局何も変わらないのでは。

 

「結局どうなんだろうね?」

 

「Maybe so,Maybe not」

 

 つい先日、英語の授業でやった長文にやたら出てきた言い回しを無意識に使ってしまった。

 

「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない、ってこと?」

 

「そうだな…。まぁどうせ学校に着いたらわかることだし…」

 

「そうだね!」

 

 まだまだ戸塚成分を摂取したかったが気付けば皮肉にも学校に着いてしまった。

 俺はその日は朝から天使と登校できたからか一日中、授業を眠らずにしっかりと受けることができた。

 ちなみに授業は戸塚の言う通り4時間授業だった。

 

「さて、帰るか」

 

 授業が終わり、戸塚と挨拶を交わしてそそくさと教室から出ようとした。だが、一人の女の子によって遮られた。

 

「ヒッキー!まさか帰るつもり?今日普通に部活あるんだよ!」

 

「いや、帰るつもりではなかったぞ。ただトイレに行くつもりだったんだ」

 

「なんで荷物持って行く必要があるの?あと、何で目を逸らすし!」

 

 由比ヶ浜はアホの子のくせに変なとこ鋭いな。俺レベルとはいかずとも洞察力に長けているのかもしれない。

 俺は仕方なく、帰るのは諦め由比ヶ浜と二人で奉仕部の部室に向かった。

 

 奉仕部の部室につくと、由比ヶ浜が勢いよく扉を開けて奥に入っていった。

 俺は一つ欠伸をし、後から由比ヶ浜に続いて中に入った。

 

「こんちには」

 

 中には既に雪ノ下がいた。いつものように椅子に座り、本を読む姿は風格というかそういったものを感じる。

 

「おう…」

 

 俺は雪ノ下から目線を逸らす。一昨日のことが急に脳裏をよぎったからだ。

 どこか気恥ずかしくてまともに目を見ることもできない。

 

「ゆきの〜ん」

 

 由比ヶ浜がいつものように雪ノ下に擦り寄る。気の所為かいつもより雪ノ下との距離が近い。

 

「由比ヶ浜さん。近いのだけれど…少し離れてもらえないかしら」

 

 ほらほら、雪ノ下さん照れちゃってるじゃないですか。つまり、これは本気で嫌がってる訳ではないだろうな。

 

「えへへ…」

 

「はぁ…仕方ないわね」

 

 いつにも増して百合百合しいですね。まぁ幸せそうでなにより。やっぱり平和が一番だな。

 

「そういえばゆきのん、一昨日ごめんね!誘ってくれたのにいけなくて!」

 

『一昨日』というワードにふと、俺は反応する。恐らく、あのディスティニーランドのことだろう。

 由比ヶ浜は三浦や海老名さん達と遊ぶ約束をしていたからその事を謝っているのだろう。

 

「ーーえ?あ、別にいいのよ。貴方も予定があったのだから。気にする必要はないわ」

 

「ありがと〜!ゆきのん!」

 

 雪ノ下は言い終えると、俺の顔をちらりと見てきた。俺は即座に目線を逸らし素知らぬ顔で読書を再開する。

 

「あ、ゆきのん!それって期間限定のパンさんストラップだよね!」

 

「えぇ、一昨日と、友達と行って買ってきたのよ」

 

 友達って誰だよ。お前に由比ヶ浜以外に友達いたのかよ。え?俺のことか。

 あくまで俺と雪ノ下は友達ではないはずなのだが。ま、咄嗟に出てしまっただけだろう。

 

「へぇ〜そうなんだ!」

 

 雪ノ下なりにうまく誤魔化せていたのではないだろうか。俺はほっと胸を撫で下ろし、紅茶を飲む。

 このまま何もなければいいのだが、何か一波乱起きそうな気がする。

 

『ガラガラガラ』

 

 ちょうど、飲み干す直前、奉仕部の扉が開いた。中に入ってきたのは今一番会いたくない人物だった。

 

「一色…」

 

「先輩。一昨日はすみませんでした。雪ノ下先輩とのデートを邪魔してしまって…先輩達付き合ってたんですね」

 

 いつになく真剣な表情をみせた一色が放った言葉。さっきまで穏やかだった部屋全体が凍りつく。

 

「は?ちょ、お前、色々誤解してるから…そもそもデートしてないから!てか付き合ってないから!」

 

 俺は恐る恐る後ろを振り向く。そこには静かだが、確かに怒っているであろう由比ヶ浜が。

 片や、予想外の出来事に狼狽えている雪ノ下の姿も目に映った。

 

「…」

 

 一体どうすればいい。この修羅場みたいな状況を打破するには一体どうすればいいんだ。

 

 ーーさて、比企谷八幡はこの絶望的な状況を乗り切る策を練ることができるのだろうか?

 

 5話に続く!

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