やはり俺の青春ラブコメは間違っている 終   作:兼田先生

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5話 探し求める本物はまだ遠い

 

 俺は今まで数々の修羅場を潜り抜けてきた。場数の多さだけは学年一だと自負している。

 だが、そんな俺でもこの状況を乗り切る策が思いつかない。果たして俺の長年培った巧みな話術で乗り切れるのだろうか。

 

「言っておくが俺達は別に付き合っても況してやデートもしていない」

 

「じゃあどういうことだし!」

 

 由比ヶ浜が少し声を荒げ、俺の顔をジッと見つめる。一色も由比ヶ浜と同様に俺の顔を見つめる。

 

「まぁアレだ、雪ノ下がグッズを欲しがっていたんだがな一人で行きたくないからと、俺を誘っただけだ」

 

「へぇ…そうなんだ」

 

「ーー本当にそれだけですか?」

 

 事は解決しそうに思ったのだが、一色が横槍を入れてきた。一色は何か引っかかりがあるようだ。

 俺はこれ以上事態が悪化することのないように切実に願う。一色さん、もう何も言わないで。

 

「超仲よさげに写真も撮ってましたよね?」

 

「え?そうなの?ヒッキー!」

 

 え、何で知ってるの?その時君、居なかったよね?まさか全部見られてたのかな。

 

「いや、違う!あれは成り行きというか…何というか」

 

「成り行き…へ〜。先輩ちょっと嬉しそうな顔だったじゃないですか?」

 

「ちょ、おま…」

 

 一方的に俺が追い込まれている。流石に多勢に無勢か。そうは言っても2対1なので数の上では変わらんのだが。

 仕方ないので、雪ノ下に助けてくれと合図を送る。すると雪ノ下は気づいたのか、俺に加勢してくれた。

 

「ーーコホン、誠に遺憾ながら比企谷君のいう通りよ。私がグッズを買うために彼に同伴をお願いしたの」

 

 遺憾て、おかしくないですかね。一応助けようとする姿勢には感謝するが。

 

「まぁそういうことだ。俺達は別にそういう関係ではない。これまでもこの先もな…」

 

 俺は三人の前で声高に断言した。言い終えた後チラリと雪ノ下の様子を伺うと少し顔を曇らせていた。

 対して由比ヶ浜はどこか悲しげな表情を浮かべ、敢えてそれ以上は言及してこなかった。

 

「ーーすまん、今日はもう帰るわ」

 

 少し居づらくなったので、俺は荷物をまとめ帰る支度をする。

 それを誰にも制止されることはなく、俺は扉を開け足早に教室を出た。

 

(やってしまったな…)

 

 帰り道、俺は自責の念にかられた。せっかく進展した三人の関係をまた壊したかもしれない、と。

 でも同時に思うことがあった。それは三人の関係はまだ本物とは程遠いのではないかということだ。

 

『俺は本物が欲しい!』

 

 部室で俺の胸中を明かし、3人の関係は一見進んだようにみえた。

 だがそれも結局欺瞞だった。お互いがお互いに無意識のうちにどこか遠慮していたように感じる。

 

 このままで俺達は本物の関係になれるのか。そもそも本物なんてあるのだろうか。ただの理想に過ぎないんじゃないか。

 

「わからん…まぁ考えても仕方ないんだが…」

 

 とりあえずその事は置いておこう。すぐに結論が出ることでもない。

 

 それより今から何処に行くべきか考えねばなるまい。勢いで飛び出してきたので行く宛がない。

 

「まだ2時か。とりあえず、駅前のカフェでも行くか…彼処なら2時間は潰せるし」

 

 この時間なら駅前のカフェは人も少ない。付け加えて平日であるわけだし。

 且つ安くて美味しいコーヒーが飲める。スタバなんかよりお得である。

 

 そうと決まれば行動あるのみ。俺はすぐに駅前のカフェに向かった。

 

 

 ーーーーーーーーーー

 

 

「やっぱここのアメリカンコーヒー苦味も少ないし美味いな…マッ缶よりは苦いけど…」

 

 駅前のカフェに着いた俺は一杯250円のアメリカンコーヒーを頼み、今その味を堪能している最中である。

 

「ハァ…落ち着くわ」

 

 やはり一人でのんびりとしている時間は至福のひとときである。誰にも気を使うこともないし。

 この時間は誰にも潰されたくはない。例え誰であろうと。あ、戸塚と小町なら許す。

 

「あ!比企谷君だ〜ひゃっはろ〜!」

 

 一体誰だ?この俺のブレイクタイムを壊そうとする不遜な輩は。

 あれ?よく思い返せ…。この声忘れたくても忘れられないあの人の声では?

 ーーそう、魔王こと雪ノ下陽乃だ

 

「はぁ…雪ノ下さん…」

 

 突如、俺の至福のひとときは魔王によって壊された。よりによってこの人に遭遇するとは…。

 神様一生恨むぞ。もう何があっても許さないんだから!

 

「何か嫌そうな顔だね。私と会うのが嫌だったかな?」

 

 その言葉になぜか俺は妙な寒気に襲われ、思わず外していた目線を上げる。

 陽乃は上はベージュのトレンチコート、下は黒スキニーを着用していた。

 

 薄ら笑いを浮かべ俺の顔を見つめる。そして当然のように俺の横に座った。

 

「ーーそうかもしれないですね」

 

 まぁその通りなんだが。正直一番会いたくなかったわ。

 

「そんなことより、お姉さんと話そうか?少し時間があるのよね。どうせ比企谷も暇でしょ?」

 

「まぁ…そうっすね…」

 

 俺は無駄な抵抗はしない。この人の前では何もかも見透かされたような気持ちになるからだ。

 ここは適当に相槌うったり、話を合わせておけば済むだろう。最もそれもこの人の前では無駄な行為だろうが。

 

「じゃあ早速お姉さんから質問!本物はもう見つかったのかな?」

 

「!?」

 

 本当、この人だけは掴めない。全ての物事が雪ノ下陽乃の掌で踊らされているかのようだ。

 俺が今何に悩んでいて、何に苦闘しているのか全てお見通しなのだろうか。

 

「その反応はまだ見つかってないってことか〜」

 

「まだ…ですね」

 

 俺は視線をぷいと逸らしアメリカンコーヒーを啜る。

 

「本物なんてあるのかなぁ」

 

 陽乃は冷たい声でポツリと呟いた。無機質で感情のこもっていない声。

 戦慄を覚え、一瞬硬直したが俺は依然として視線を逸らしコーヒー片手に遠くを見つめる。

 

「ーーあってほしいですけどね。まぁただの俺の願望であり自己満足なのかもしれないですけど…」

 

「あってほしいか…。君はそんなロマンチストな子だったのかな?」

 

「いや…」

 

「違うよね。リアリストだよね」

 

 確かにそうだ。今の俺は手の届かない本物を追い求めている。確かに昔から本物の関係に憧れていた。だがそんな物は存在しないと割り切っていた。

 

 今こうなったのは由比ヶ浜と雪ノ下、奉仕部で過ごした時間が特別だったから。彼女達とならきっと本物の関係になれるとおもったから。

「相手のことを理解したい」「知っていたい」そういう自分の傲慢な思いを彼女達なら許容してくれるとおもったから。

 

「ところで、君のいう本物って何かな?」

 

「ーー」

 

 本物とは何か?以前雪ノ下雪乃にも同じ質問をされた。あの時は何も答えられなかった。そして今も明確には答えられない。

「偽物」ではない全てのもの。では一体それって具体的に何なのか。

 

 結局まだわからないのだ。本物、本物とおまじないのように連呼しているだけで本物とは何か未だわかっていない。

 

「まだわからないです…けどいつか…」

 

 それが何なのか知りたい。

 

「けどいつか…か。やっぱり比企谷つまらないなぁ。昔の君の方が好きだったなぁ〜」

 

 今の俺と昔の俺は違う。今の自分の方が好きだ。かといって以前の自分が好きではなかったといえば嘘になる。

 

「元々俺は面白いやつでも何でもないですけど」

 

「私的には面白かったよ。昔はね」

 

 陽乃は小悪魔のような笑みを浮かべ答えた。俺はつい、どの辺が?とツッコミそうになったが平静を装う。

 

「今日はもう帰るね〜。比企谷。『本物』、見つかるといいね」

 

 ニコリとこちらに微笑み、陽乃は立ち上がりそのまま帰っていった。

 俺はただ去っていくその後ろ姿をずっとぼんやり見つめていることしかできなかった。




誠に申し訳ございません。大変遅くなりました…
受験が終わり、やっと一息ついたので投稿しました

そう、実は受験生でした…

これからはしっかりと投稿していきたいと思います




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