「……て」
……何かが聞こえるような気がする。いや、俺の気のせいか。なんせ俺は死んだのだから。お陰で身体が浮いている気分だ。
「おにい……て」
やはり、何かが聞こえる。もしかして死後の世界とやらに着いたのか?
「お兄ちゃん起きて!」
俺の近くでそう言われ、思わず目が覚める。
「あっやっと起きたね、お兄ちゃん!」
そう言いながら、何故か俺のことをお兄ちゃんと言ってくる少女がいた。なんだこいつは……?と俺はそう思いながら身体を起こす。
「早く着替えて、お父さん達のところに行きましょう!」
お父さん……?何を言っているんだ? 俺の父さんは交通事故で亡くなった筈だが?
そう思っていると、少女が「はーやーく!」と急かしてくるので、取り敢えず少女を部屋から出して着替えをしようとするが疑問が浮かぶ
「……俺はこんな服を持っていたか?」
スーツみたいなのもあれば、日本では見られないような服もある。そして極めつけは、この部屋だ。
俺の部屋はこんなにも広くはなかったし、家具もこんな高そうなのは置いてなかった。それでは違う家ということか……? いや、これだけ部屋が広ければそれだけ家もでかい筈だ。そんな家は俺の近くでは見なかった。
そして最後はあの少女が俺のことを『お兄ちゃん』と呼んでいた事だ。普通は見知らぬ人ならお兄さんかおじさんだ。もっとも、俺はおじさんという歳ではないが。
そしてあの少女のスキンシップ。あれは見知らぬ人にするのではなく、身内や兄妹等にするような……
俺は常に思考しつつ、恐らく正装であろうスーツを着る。出ようとする前に机に手鏡が置いてあった。恐らくあの少女のものだろう。そう思いながら手鏡を見ると
「……えっ?」
不意に声が出てしまった。何故なら鏡に映っているのはよく知っている自分の顔ではなかったのだから。
髪は金髪で瞳の色は琥珀色、そして顔は整っている方……少なくとも、俺の見た目に何一つ一致しない……どうなっているんだ!? ……まさか俺は転生と言うやつをしたのか?
俺がそう思っていると、
「お兄ちゃんー!早くしないとお父さん達に怒られちゃうよー?」
廊下から、少女の声がドア越しから聞こえる
「あぁ……今行くよ」
そう言って俺は扉を開け、部屋を出て少女と一緒に廊下を歩く。すると妹が何かを考え出す。
「うーん、おかしいなあ……」
「何がおかしいんだ?」
「いつもはとってもうるさいのに今日はとても静かだと思ってー」
……しまった、元の奴はそんなにおしゃべりなのか。
「……いや、気にすることは無いさ」
と俺は言うが、
「なんかお兄ちゃんがそんなんだと調子狂うなあ……」
そんなに元の奴はうるさいのか……
そう思いながら妹と話していると、リビングへと着く。
すると椅子には一人の男性が座っていた。恐らくあれが父さんなのだろう……
そう思っていると、
「お父さん、おはよう!」
「おはよう、ユウナ」
そう言って2人は挨拶をしていた。成程、妹の名前はユウナか。
俺はそう思いながら、俺も挨拶をする。
「父さん、おはよう」
「おはよう、ハヤト」
父さんから挨拶が返ってくる。そしてこの身体の名前は隼人というのか。
そう思っていると、恐らくキッチンであろうところから女性が皿を持って出てくる。
「ほう、今日はサンドイッチか」
父さんがそう言うと、
「えぇたまにはいいと思って」
「母さんが作る料理はなんでも美味しいからな」
「ふふっありがとうお父さん」
と父さんと母さんがイチャイチャし始める。そうすると妹が、
「もう、早く食べようよ!」
「あぁすまんすまん」
「それじゃ、いただきましょうか」
母さんがそう言うと、皆で手を合わせて、
『いただきます!』
と言い、皿にあるサンドイッチを手で掴み食べる。……おいしいな。
そう思っていると、妹が美味しいと言ってサンドイッチを食べていた。
そして、自分の分を食べ終わったのか俺の方を見る。俺は、皿にまだあるもうひとつのサンドイッチを差し出す。すると、妹が俺にありがとうと言いながら食べ始める。
「ハヤトが朝からそんなに食べないなんて珍しいわね」
と母さんからそう言われた。まずいな元の身体の奴は朝から多めに食べる奴だったか。
「……今日はそんなにお腹が空いてなかったんだ」
そう言って誤魔化すと母親は「あら、そう?」と言ってあっさり信じてくれた。
「ご馳走様でした」
俺がそう言うと、椅子を立ち歩いて自分の部屋に戻る。そうして部屋に着き扉を開けてベットに座りながら考える。
「誰かはわからないが、何故俺を転生させたりした……?」
生憎、俺はラノベ等でよく見るトラックで跳ねられたわけでもなく、神の不手際で殺された訳でもない。更に、俺は善人ではなく、悪人の方だろうに。
「クソッ! 一体何で俺はこんな所にっ! あのまま死んでた方が姉さんと父さんと母さんで一緒に暮らせたかもしれないじゃないか!」
俺はそう言うが、悪人が天国に行ける訳無いかと思うと笑いが出てしまう。
「誰か教えてくれよ、俺がこんな所にいる理由を!」
「では、私が教えましょう」
俺がそう言うと、後ろから女性の声が聞こえる。振り向くと、銀髪でとても綺麗な女性がいた。……さっきまでは、人の気配も感じなかった……それなのに、いきなり出てきて俺の後ろに居るなんて何者なんだ?
「すみません、自己紹介が遅れました。私の名前はエリアと言います」
俺がそう思っていると、女性が自己紹介をしてきた。
「あぁ……俺の名前は」
俺も自己紹介しようとすると、女性に止められる。
「いえ、既に存じてします。……苗川赤也さん」
女性はそう言って俺の名前を言う。……こいつ、前の俺の名前を……っ!?
俺の名前を言われて思わず身構える。
「身構えなくても私は別に何もしませんよ」
エリアはそう言って両手を挙げる。
「なら、お前は何しにここに来た?」
「だから貴方が悩んでいたことを教えてあげると言ったじゃないですか」
そう言ってエリアは、にこりと微笑む。こいつ……俺の何を知ってるんだ。
「無論、何でも屋をしていたことや姉の為に手段を選ばなかったことも知っています」
エリアはまるで俺の心を読んだかのようにそう言って来た。
「……お前、人間か?」
思わず、俺はそう言ってしまう。するとエリアは、
「私、こうみえても女神なんですよ」
と言ってきた。冗談きついな……だがしかし、女神なら心を読むことも、気配を消して俺の後ろにいることも余裕で出来る。
「意外と信じてくれるんですね?」
「……まあな」
否定できるところがないしな。と心の中でそう思う。
「……それで、教えてくれるんだろ? 俺を転生させた理由を」
「いいでしょう 、それでは教えてあげます……では、頭を出して下さい」
俺がそう言うと、エリアが頭を出せと言ってきた。……何をする気だ?
「言葉で話すより、直接頭に情報を入れた方が早いでしょう?」
「……そうだな」
そう言って俺は、その場にしゃがみ込む。すると頭の上に手を置かれ、一気に情報が頭の中に流れ込む。
俺を転生させた理由や、俺だけでなく姉さんも転生させていること。それ等を理解すると、置かれていた手が離れる。
「……成程、大体わかった。つまりあんたは俺達に幸せに生きて欲しいと」
「……そうです、私はあなた達を見てとても可哀想だと……」
「余計なお世話だ、誰がしてくれと頼んだ?」
俺がそう言うと、エリアは怯む。
「でも、私は……!」
「俺達は頼んでもないのに、こんな事をして満足か?救った気にでもなったのか?」
「所詮、お前がやっていることは偽善だ」
俺がそう言うと、エリアは黙っていた。
「……だが、転生したからにはこんな事を言っても意味は無いか」
俺はそう言ってベットに横になる。
……言葉では言えないが、少しばかりは感謝している。もう1度姉さんと一緒に暮らせるという事に。やれやれ……さっきまでエリアにあんなことを言ってたのにな。
俺がそう思っていると、さっきまで目に涙を浮かべていたエリアが少し微笑んでいる。……そういや、心を読めるんだったな。
俺がしまったなと思っていると、エリアが渡すものがあったと言いながら黒いケースを差し出してきた。俺はそれを受け取り、ロックを外して、中を見るとボルトアクション式の狙撃銃であるFR-F2と自動小銃のS&W M39等色んな銃が入っていた。
「これは……?」
「もし襲われたりした時に自衛手段がなければと思いまして、それに銃の扱いは慣れているでしょう?」
俺がそう聞くとエリアはこう言ってきた。その答えに思わず苦笑してしまう。
「そういや姉さんは何処にいるんだ?」
「……何処か遠くの場所にいるみたいですね、残念ながら私は教えることは出来ないんです」
俺がそう聞くとエリアはそう言ってきた。そこは自分で探せってか? お前の上司もなかなか粋なことをする。
俺はそう思いながら、エリアに聞きたいことがあったので聞いてみる。
「それで、姉さんを探す為にはどうすればいいんだ?」
「貴方の姉さん……千夏さんを探す為に旅に出れば良いでしょう。ここの文化として15歳になれば大人になる為に4年間は旅に行けるらしいですし」
「つまりはその時に探せということか」
「今、貴方の肉体は13歳ですので2年後ですが」
……2年後か、その間に銃の練習とかしておかなければな。
「まだここには銃というものは無いので使う際は気をつけてくださいね」
俺がそう思っているとエリアがそう警告してくる。ダガーナイフ等も練習しておくか。
「それでは、この石を渡しておきますのでこれを握りながら心の中で私を呼べば何時でも私と会話できます」
そう言ってエリアは俺に水晶のように透き通った石を渡してきたので俺はそれを受け取る。
「応援しているので頑張って下さい」
そう言って俺の目の前からエリアが消える。天界に帰っていったのか。そう思いながら俺は再びベットに横になり今後のことを考える。
姉さん、今は待ってて必ず会いに行くから。
俺はそう思いながら、意識を手放した。