総合センターの中にあるデスクワークに四人の少女達はモニターを見つめて硬直した。
彼女らはある研究しているこの場所の護衛を任されていた。
外には使い捨ての猟犬部隊が見張っていたはずだったのだ。
だが、それはたった一人の少女によって壊滅させられた。いくら使い捨てとは言え、暗部組織の一つだ。それなりに役立つ筈が一瞬で一人も居なくなってしまった。
それを実行した金髪に赤いドレスの姿は見た事がある。
「……こんなの聞いてないわよ……」
レベル5である麦野沈利ですら冷や汗をかいて頭を抱えた。
何の実験をしているかも知らされていない。
ただ解るのは侵入者がもっとも相手にしてはいけない人物だったからだ。
第一位の一方通行である坂田銀時の妹。
暗部組織【スクール】の幹部、坂田心理だった。
総力ではこちらに部がある。彼女を殺す事は出来るだろう。それ相応の犠牲も伴うが。
だが、彼女に繋がりがある奴ら黙ってはいないだろう。
闇に生きながら光に溶け込みつつ有る第二位で心理のリーダーである垣根帝督。
最近、心理の妹になったという情報が入った第三位の御坂美琴。
そしてやはり一番は心理の兄である最強の超能力者で最強の侍とも言える坂田銀時。
この最強の3トップが動いてくるのは確定だろう。そうなれば【アイテム】は速攻で壊滅する。
モニターを見ながら麦野達は沈黙。誰も口から声を出す事が出来なかった。
モニターでは心理が器具とともに研究員達を壊している。
護衛は何をやってるんだ!?
何故来ない!?
と慌ただしくしている。
『まだ妹達を利用しようとしている馬鹿な人達。貴方達は逃げる事も隠れる事も出来ない。だって、ここが貴方達の墓場だから』
楽しそうに獲物を捕らえて歩く彼女にこちらから見ても不気味過ぎて笑えない。
心理が来た理由は第三位のクローンにあったようだ。麦野は
「…兎に角、暫く見てるしかないか…」
険しい顔をして言うと、他のメンバーも頷いた。
『全く、ここがどこ解らぬと言うのに随分と物騒な音が奏でる場所に来てしまったでござるな』
そして新たな人物もモニターに映し出された。黒い髪をしたツンツン頭で、ヘッドホンにサングラスをして変わった服装をして刀を持っている男がいた。心理は彼は高杉と桂と同じ世界の人間だと、感づいた。
その男は心理と研究員達を見て瞬時に把握し、刀を構えて
「ぐぁああああ!!!」
研究員の一人を斬った。
『…あら、私の味方をしてくれるの?』
研究員は驚きながらも、銃を向けて発泡してくる。
二人はそれを避け、次々と斬り倒していく。
『主の音はどこか、暗く淀んでいるが…拙者にとって眩しいくらい綺麗なあの人の音に似ていたのでな。それに此奴らの音は碌でもない、聴くに耐えない酷いものだ。どちらを味方をすればいいか、なんてのは直ぐにわかったでござるよ』
この男の感性は独特な物で音で人を判断するのかと心理は心の中で驚いた。それにあの人、とは眩しいくらい綺麗な音で誰だかわかった。
言われてみればそうだな、と彼女も思ったからだ。
『坂田銀時』
『!!!!!』
心理が言った名前に男は思わず刀を落としてしまった。心理はそれに気づいた研究員が銃で狙っているのを見てそれより早く頭を狙って撃ち抜いた。
見事に頭に直撃して絶命した。
『……何故、銀時の名を』
死んだ筈の人間の名前を何処かも分からない場所で聞いたのだ。驚くのも無理はない。
『私は坂田心理、銀時の妹よ。元の姿は分からないけど…この世界で違う人間として生まれ変わったみたいなのよ。本人から聞いた。それに高杉さんからも聞いたわよ。貴方達の世界がどんなものなのか』
銀時の妹と名乗った少女はそう言った。ここはつまり、自分の知らない別世界と言うことだ。しかも高杉まで知っていると来た。彼もこの世界にいる事になる。
『晋助もいるのか。つまり拙者の事も?』
『高杉さんが率いる鬼兵隊ってとこにいるんでしょ?また子さんから聞いたの。“アタシがここにたどり着いたって事は万斉先輩もここに来ているに違いないっス”ってね。貴方がもしかして河上万斉さん?』
『正解であるな。…そうか』
来島また子もいる。納得がいく。自分はまた巡り会える事が出来る。
どんな人間になっているにしても坂田銀時にまた会えるのだから。
『そうそう。コレ、最近撮った写真』
彼女は御守りがわりとして懐に入れていた写真を取り出して見せた。
そこには高杉、また子。それに信女と桂も写っていた。
『この人が私の兄である銀時よ』
心理が指した場所はその四人の間に妹である彼女とその隣にいる白髪の少年。
高杉と引けをとらない悪い顔をした銀時を見て万斉は苦笑した。
『…随分と変わったのだな、銀時』
『でも中身はまんま同じみたいよ』
高杉さん達が言ってたわ
ニコりと笑う彼女に万斉はそれもそれでだなとまた苦笑した。
『私はまだやらないといけない事があるけど、万斉さんはどうするの?』
「拙者も付いて行こう』
万斉は心理ととも行動する事に決めた。
映像から消えたのを見て麦野はため息を吐いた。
「どうやら、私達は碌でもないもんを守ろうとしてたみたいね」
頭を抱えだした麦野に絹旗とフレンダを困り果てた。
クローンの話が出た時点であの実験を諦めていない連中に自分達をお守りに使われようとしているのだ。
「ちっ。胸糞悪いわ。どっちが有利かなんて最初から決まってたもんじゃないの」
そう言って麦野は立ち上がった。
「この仕事、降りるわよ」
三人に向かってそう言い放った。
立ち入り禁止区内に一台の赤いスポーツカーが停まっている。
その中には身体中に機械を貼り付けられている少女と白衣を着たボサボサの頭をした男。
打ち止めと天井亜雄。
「…ハハッ。ここまで来れば邪魔をする者がいない。このウイルスさえ打ち込めば…」
カタカタとパソコンにウイルスを完成させる為に方式を打ち込んでいく。
あともう少し。
「コレで一方通行も参加せずにはいられないだろう!レベル6を誕生させるのはこの私だ…!!」
方式を完成させ、enterキーに手をやる。
天井は口元を緩ませ、指をそこに近づける。
ドゴンと車に衝撃が走り、それと共に何者かの手によって外に投げ出された。
「ぐぅううううう!!?」
思い切り投げ出された天井はアスファルトに叩きつけられた。
「オイ、このクソゴミ屑が」
痛みに耐えながら声がする方向を見る。
其処には真っ白な翼を広げた茶髪の少年がいた。
天井はその正体を知っている。
「第二位…っ!!」
一方通行に次ぐ第二位の垣根帝督が虫ケラを見るような目を向けて立っていた。
垣根は天井を無視して打ち止めを見た。危害を加えないようにした為に無事だった。
貼り付けられた器具を破壊し、パソコンも木っ端微塵にすると打ち止めの頭に手をやる。
「ギリギリ間に合ったか」
ふぅ、と一息つく。
すると上体だけを起こした天井がこちらに右手で銃を向けている。
「何故…っ!?闇にいるお前がこんな事をしている!?そうか!一方通行が絶対能力者になるのが気にくわないのか!?なら、お前がこの実験に参加してくれれば第一位を超えられるぞ!!」
気が狂ったのか今度は垣根に実験を持ちかけてきた。はぁ、と溜息を吐いた後、翼で銃ごと右腕を吹き飛ばした。
「ぎぃいいいい!!!!」
最早、声も出ない程の激痛にのたうち回る。
「確かにレベル6は魅力的かもしれねぇ。ちっと前の俺なら喜んで受けてたろうな。だが、今の俺にはどうでもいいんだよ」
怠そうに頭を掻きながら、恐怖に陥ってこちらを見る天井を睨む。
「散々、虫ケラのように殺してきた俺が言う事じゃねぇが…コイツらだって生きてんだ。これからも這いつくばって生きなきゃならねぇんだよ。だから、テメェらの玩具にさせるわけねぇだろうが」
数え切れない程の人間を殺してきた。だけど、一人は部下になった少女。もう一人は自分より上に立つ少年。
立場は違うのに何か同じ真っ直ぐなものを持っている二人に毒された。
クローンに対してもこんな考えを持つようになってしまった。
「それに後ろを見ろよ。俺より怖いのがいるぜ?」
ククっと自嘲気味に笑いながら天井の後ろを見る。
怯えながらも天井も釣られる。
そこには
「俺の大切なもんに手を出した事を後悔しながら死んでいけ」
左目に包帯を巻いた男、高杉晋助が刀を振りかざしていた。
「ひっ!」
立つ事も逃げる事も出来ずにいると、いつの間にか心臓をピンポイントで貫かれていた。
その為、天井は一瞬で絶命した。
高杉は刀を死体から抜き、鞘に収めると打ち止めを抱き抱える。
「あっけねぇな…まぁ、ゴミらしい最期だな」
垣根がつまらなそうに呟くと高杉はフン、と鼻で笑った。
「大ごとになってから救ったほうが良かったか?」
嫌らしく言う高杉に
「…いや、それはそれで面倒だ」
少年らしく笑って返した。
少しすると「う、うーん」と抱き抱えられた打ち止めが薄っすらとめを開ける。
「…貴方がミサカを助けてくれたの?ってミサカはミサカはまさか晋ちゃんが来るとは思わなかったって予想外な展開に驚いてみたり!」
「ブハァっ」
打ち止めが高杉の事を晋ちゃんと呼んでいるのを垣根は思わず吹き出してしまった。
耐え切れずに笑っている少年に高杉は睨みつける。
「何、笑ってんだクソガキ」
「い、いやだって晋ちゃんって似合わねーな、アンタ!!」
睨まれてるのも関係なく笑っているのに対してチッと舌打ちした。
「…そんなにおかしいかなぁ?ってミサカはミサカは不安げに晋ちゃんを見上げてみる」
少しシュン、とした打ち止めの頭をくしゃりと撫でて
「何もおかしくねぇよ。疲れただろ?もう一回寝ろ」
優しい表情を向けると安心したのか、「ありがとうってミサカはミサカは…」と言い切る前に眠った。
「アンタ、ロリコンか?」
「……お前も死ぬか?」
まじ勘弁だと言って逃げるように飛び立った垣根を見つめてまた舌打ちをした。
そして芳川に連絡をして迎えに来るまでにへこんだボンネットの上に座って目を閉じた。
このままロリコンになってしまうのか www