やみなべのネタ倉庫   作:やみなべ

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こんな感じの設定は見たことがなかったので……。
後半はネタバレの嵐です。ご注意ください。


ありふれた生命の使い方

人生なんて所詮二者択一の連続だ。

AかBか、ではない。その区分方法だと、時にはCやD、あるいはそれ以上の選択肢が発生する。

 

そう、AかBかではなく、(選ぶ)(選ばない)か。それが全てだ。

どんな複雑な状況でも、どれだけ雑多な選択肢があったとしても、結局は同じこと。

思い浮かぶ選択肢一つ一つを順番に、1か0かで検証していく。(選ぶ)なら実行し、(選ばない)なら次の選択肢へ。それを繰り返し、最後の選択肢……「新しい選択肢を探すか」さえも(選ばない)なら、もう一度最初から。

これはきっと、「選択」という事柄以外にも言えることで、要は(ある)(ない)か、それが全て。

 

ならば、「1」と「0」の羅列で構成されたプログラムで動く機械と人間、両者にどれほどの違いがあろうか。

 

そんな考えを持つようになったのは……果たしていつからだろう。

物心ついた頃には既にはそうだった気もするし、この生命の帰結が見えたと思った“あの時”かもしれない。

あるいは、この悪趣味な箱庭へ招かれた時だろうか。それとも、もっと別の……

 

(まぁ、そんなことどうでもいいか……)

 

今更思索に耽っても仕方がない。いや、あるいはこれはある種の現実逃避なのかもしれない。

とうの昔に諦めはついている……というよりも、諦めた後のくせにこんなことを思うなんて、それこそ失笑ものだ。

 

もう自分は「0」で、既に「1」を選んでいる。

取り返しはつかないし、立ち止まることもできない。

後は、精々上手くやるだけだ。

 

視界の端には、並走する様にピッタリと横につく「ソレ」が見える。

後ろからは、多分「あの人」も追ってきているだろう。

 

自分を止めるためでは……ない。だって……

 

(考えることは同じ……かな)

 

そう、きっとどちらも考えていることは同じだ。

だって、僕たちはまるで違うようで、ある一点ではとても良く似ているから。

 

――――――――元より「0」しか持たないソレと

 

――――――――一足早く「0」へ至った僕

 

そして――――――――ようやく「0」にたどり着けた人

 

ここにいる僕たちは、誰も彼もが「1」がない。

持っていなかったのか、失ったのか、捨てたのか。その違いはあれど、根本は同じ。

だから、行きつく結論が同じだとしても、なにも不思議はない。

 

「じゃあ、頼める?」

「確認…訂正。了承、最終機構の実行を承認。…………………良い旅を」

「ははっ、それいったい誰のセンス? 趣味が悪いなぁ。いや、一周回っていい趣味してるのかな?」

「反省、最後にユーモアに挑戦しましたが、上手くいきませんでした。記録の消去を要請します」

「……」

 

驚いた。何が驚いたって、ソレが冗談なんて口にすること自体が驚きだ。

必要な時に必要なことだけ口にする、そういうものだと思っていたのに。

正直、アレが冗談だとは全く思っていなかったのだ。大方、どこかの誰かに吹き込まれたものをなぞっただけだろうと……。

 

唖然とする僕を尻目に、背後から微かな笑い声が漏れた。

ソレの冗談がツボにはまった……という事はないだろう。

あの年中眉間に皺を寄せた人を笑わせるには、この程度では到底足りない。

だから、笑ったのはもっと別の理由だ。その理由も、大凡想像がつく。

そしてきっと、これこそが彼らの望んだことで、かつてソレを使わなかった理由でもあるのだろう。

 

「……すまん。結局、お前たちを巻き込んでしまった」

 

微かな笑い声に続いて背中にかけられたのは、苦渋に満ちた謝罪。

この人の真意は知っている。だから、この結末に至ってしまったことが苦しくて仕方がないのだろう。

 

一人で何もかも背負う、なんてどこぞの勇者みたいなことを考える人じゃない。

ただ、「背負うべき人たちで共に背負う」というのがこの人の理念だ。

そこに僕たちは含まれていなかったというだけの話。

とはいえ、別に背負ったつもりはないし、巻き込まれたつもりもないのだが……。

 

(まぁ、なんて言ってもきっと責任を感じるんだろうなぁ)

 

そういう人だ。ならば、余計なことに時間を費やすべきではない。

残された時間は、もう数秒もないのだから。

 

「先輩なら上手くやってくれますよ、それで良しとしましょう」

「肯定、むしろ本懐です」

「教え子…………いや、●●に頼らねばならんと言うのが、尚更情けないがな」

 

小声で呟かれたので聞き取れない部分はあったが、何を言ったのかは想像に難くない。

 

(ああ、ようやく認めたんだ。まったく、ツンデレというかなんというか……)

 

事ここに至るまでついぞ口にしなかったその言葉。

それを、この土壇場で微かに零すあたり意地っ張りと言うか頑固と言うか……。

 

だからこそ惜しいと思う。どうせなら、思いっきり大声で言ってやればいいのに。

そうすれば、先輩もきっと喜んだことだろう。

 

(ああでも、こういう状況で言われたんじゃ素直には喜べないか)

 

そんなことを思っているうちに、遂に身動きが取れなくなっている先輩にたどり着き、追い越す。

視界の端に映った先輩の眼が、驚きに見開かれる。

 

当然だ、今も僕たちの後ろではみんなが先輩同様動けなくなっている。

だが、別に奇跡とか偶然とかそういうのではない。一応、それぞれなりの理由があって動けているのだ。

その理由に気付けない先輩ではないはずだが、それなのに驚いているあたり、さすがに余裕がなかったことの表れだろう。

 

その顔が、少しばかり前の……でも、遠い昔のようにも思えるあの人を思い出させた。

随分と変わってしまったが、やはり先輩は先輩なのだと改めて実感する。

何かを言おうとしているが、生憎とそれを聞き届ける余裕はない。

それは、置き去りにしてきた人たちが挙げる叫びにも似た声も同じ。

できるなら聞きたい声もあるのだけど、聞けないのが少し残念だ。

 

(あの人は、最後なんと言ってくれているのだろう。まぁ、仕方がない、か)

 

なにしろ、目の前のクソ野郎に生じた僅かな虚、これを無駄にはできない。

千載一遇であり、恐らくは唯一無二の好機。

 

残念ながら、僕たちは勇者でもなければ神子でもなく、ましてや理不尽を更なる理不尽で踏みつける化け物でもないけれど……それでも、十把一絡げの雑魚、一山幾らのモブ、路傍の小石……そんなにオマケにだって意地がある。

 

「「「吠え面かきやがれ!!」」」

 

 

 

 

 

 

これは奈落の化け物の物語に付随する、負け犬と不出来な兵器、そして……死に損ないの余話である。

 

 

 

 

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 

 

 

月曜日。

それは多くの人々、自宅警備員さんなどをはじめとした一部例外でもない限りは、概ね一週間で最も気と足の重くなる日だろう。

とはいえ、それも朝の内の話。昼時ともなれば、いい加減休日モードから平日モードにスイッチが切り替わる。

 

それを示すように、午前の授業を終えた各教室に朝の憂鬱とした空気はなく、むしろ活気と喧騒が溢れている。

騒がしいを通り越しいっそ「五月蠅い」と言ってもいいざわめきの中を、一人の少年がゆったりとした足取りで歩いていく。

 

歩調は決して速くはない。スタスタとかキビキビとか、そういう擬音からは程遠い。

まぁ、さすがにノソノソとかトボトボとか言うほど緩慢ではなく、その中間とでも言えばいいだろうか。

早くもなく遅くもない速度で歩く少年の顔に浮かぶのは、微かな笑み。

まるで心地よい音楽でも聴いているかのような、今にも鼻歌でも歌い出しそうな穏やかな笑顔だ。

 

そんな彼が歩いているのは、2年生のフロア。

では少年が2年生なのかと言うと、それも違う。少年は1年生で、今は2年の先輩に用があって訪れている。

普通なら見慣れない生徒の存在に気付き視線を向ける者の一人や二人いても良さそうだが、誰一人として彼に見る者はいない。

無視しているわけではない、気付いていないわけでもない。

いることはわかっているし、見慣れない生徒であることもわかっているが、ただ何となくそちらに視線が向かない。

 

それは、少年に不思議なほど現実感がないからだろうか

存在感が薄いとか、浮世離れしているとかとは違う。

言語化は難しいが、見る者が見れば「ここにいない」とそんな印象を抱かせるなにか。

あるいは、「空気のよう」と表現する者もいるだろう。ただし、その場合は「今にも溶けて消えてしまいそう」と言う意味になるが。

 

そんな、なんとも表現に困る少年は迷いのなく一つの教室の前で足を止める。

戸の窓から中を覗けば、そこには目当ての人物が机に突っ伏していた体を丁度起こしたところ。

前の授業である体育が早めに終わり、体調の問題で見学していたおかげで着替える手間がなかった分、早く教室に着けたのが功を奏したようだ。

いつもならさっさと教室を出て昼寝をしている相手だが、念のために見に来て正解だったらしい。

 

「失礼します」

 

一応の礼儀として戸を開けながら挨拶をする。

やはりここでも、妙な現実感の薄さが作用しているようで、視線を向ける生徒はほとんどいない。

ただ、さすがに数人程度は少年に視線を向ける生徒もいる。

基本的には「誰だ?」「一年生?」と言った様子の反応を小声や視線で向けてくるが、中には例外もいる。

例えば……というか、唯一彼の要件を察した凛とした少女が「なるほどね」と言わんばかりの表情だ。

 

その少女…八重樫雫は少年に向けて軽く肩を竦めて見せる。

本人として「ちょっと待ってあげて」とでも言いたいのだろう

ただ、碌に話したこともない、本当に「顔見知り」程度の間柄ではそれを察するのは無理と言うもの。

ただ、僅かに疑問符を浮かべながら雫の視線を追えば、その意味も分かる。

 

(? ……ああ、なるほど)

 

そこには、目当ての先輩の寝ぼけ顔ではなく、腰まで届く長く艶やかな黒髪の少女の後ろ姿。

少年からすればやはり先輩にあたるその少女が、目当ての先輩を色々構っていることは知っている。

少年からしてみればその真意は明らかなのだが、どうやら「知らぬは本人たちばかり」という状況らしいことも。

いや、どうも周りの生徒の表情や視線を見る限り、ほとんどの生徒は気付いていないようだ。

もしかすると、気付いているのは少年と雫だけかもしれない。それほどまでに、周囲からの反応は非好意的だ。

 

(なんで気付かないかなぁ……いや、認めたくないだけ? それならまぁ……)

 

納得がいかないこともないような気を否定するのは些か狭量と言うものか。

なにしろ、相手は校内の二大女神とまで称される美少女、白崎香織なのだ。

それが冴えないオタク少年にそういう感情を持っているなど、普通は受け入れがたい……のかもしれない。

理解も納得もいまいちできないが、そうとしか解釈しようがないのでそういうことにする。

むしろ、彼からすれば逆の感想が浮かぶのだが……。

 

(鈍感すぎるのはアレだけど、やっぱり白崎先輩は見る目があるなぁ)

 

別にそこまで古い付き合いというわけではなく、件のオタク少年とは中学時代からの(一応)友人だ。

だからというわけではないが、その人間性はそれなりに理解している。

だからこその感想だ。そして、きっと周囲の人間は彼の人間性をあまり……と言うかほとんど知らないのだろう。

知っていれば、彼のクラス内での扱いはもっといいものになっているはずだと思う。

 

まぁ、別にそれを非難する気はないし、「オタク」という人種に対しての偏見も仕方ないとも思う。

そもそも、彼の良さは香織や雫のそれとは違い目立つ類のものではない。積極的なアピールもしないので、余計分かりにくい。だからと言って隠したり取り繕ったりもしておらず、オタクなことも含めてオープンにしている。

結果、目に留まりやすい「オタク」な部分だけが同級生たちに周知されているのだろう。

 

(先輩の周りに流されないところはすごいと思うけど、もうちょっと周りの目を気にしても良いと思うんだけどなぁ)

 

オタクであることを隠せとか、積極的に自分の良さをアピールしろと言うわけではないが、明らかに一人だけ浮いている。たぶん、それが一層周りからの扱いを悪いものにしているのだろう。

 

基本、人間に限らず生き物は異物を排除しようとするものだ。そして、周囲の目を気にしないことなど、この年頃はおろか大人だって難しい。

意識的にか無意識的にかは定かではないが、自分たちとは違う事を彼らも気付いている。「ナンバーワンよりオンリーワン」と口にすることはできる。そうありたいとも恐らく思っているだろう。

だが、実際にそうあれるほど強い人間は稀有だ。たぶん、そうありたいけどできないやっかみも含まれているのではないか、少年はそう思っている。

 

オタクであることを隠さないのもそうだ。誰だって一つや二つ隠しておきたいことがあり、彼らの認識ではオタクであることもそれに含まれるのに、隠そうとしないどころか「それがどうした」と言わんばかりのオープンさ。

できないことをできるからと言って、痺れたり憧れたりする人間ばかりではない。

むしろ、自分にはできないことを平然とやってのけることに反感を持つ人間だっている。

その相手が、一見すればあらゆる面で自分より勝るものがなければなおさらだ。

 

そこに加えて、校内屈指の美少女からの積極的アプローチ。これでは一層反感が募ろうというもの。

あるいは、二人が付き合ったりでもすれば状況は改善……

 

(されないよなぁ、たぶんだけど)

 

外部から見れば、ある種の「美女と野獣」になるのだろう。余計に反感が募るだけだ。

 

(いじめとかになってないだけマシ…ってところかな。いや、案外もうなってるのか?)

 

残念ながら、入学してから日の浅い1年生では、特に他学年となると既に程度の低い嫌がらせを受けていることなど知りようもない。

加えて、腕っぷしや人望など諸々含めていじめの抑止力になる物を持っていない身なので、もしそうだとしても防ぎようがない。

ただ、だからこそ少年は香織や雫のことも「スゴイ」と思う。

 

(周りはあの調子なのに、白崎先輩はそんなの全然気にしないんだよなぁ。多少天然と言うか鈍すぎる気もするけど。それに、八重樫先輩も「温かく見守る」って感じだし)

 

あの二人は二人で、周りに流されない芯の強さを感じる。

まぁ、雫に関して言えば、眼差しが優しすぎて「お母さんみたい」と思ってしまうのだが。

それでも、あの二人が周囲とは一線を画する人物なのは確かだろう。

二大女神と言って男子どころか女子からも人気の高い二人だが、外見だけではなく内面も伴っているからこそだ。

それに並ぶ内面の持ち主と思えば、後輩としても中々に鼻が高い。

少し位アピールしても罰は当たらないだろうに……とも思うが。

 

(まぁ、そんなことに気を遣うくらいなら趣味に全力を傾ける人だし、言っても無駄だろうなぁ)

 

無駄な努力とわかっていることだし、理解している者が少なくとも三人はいるのだから、わざわざ言う必要もないだろう。

そういつものように結論し、やれやれとばかりにため息をついて顔を上げてみれば、香織の積極的なアプローチにタジタジと言った様子だ。

 

(馬に蹴られたくはないし、出直そうかな……あっ)

 

どうやら判断が遅かったらしく、うっかり二人の目が合ってしまった。

 

(助けて!)

(どうぞお幸せに)

(見捨てられた!?)

(では、僕はこれで……)

(薄情者~~~~~~~~~!?)

 

別にアイコンタクトで意思疎通ができたわけではない。少なくともオタク少年……南雲ハジメは全くと言って良いほど意味を拾えていない。ただ、可愛い後輩に助ける気が全くない事が分かっただけだ。

逆に後輩の方はほぼ完全に拾っているのだが、分かった上でにこやかに流してさっさと背を向ける。

ついでに、雫に対しても軽く会釈。あちらからは「仕方ないわね」あるいは「悪いわね」と言わんばかりの苦笑が返された。つくづくオカンである。

 

「ぁ、し、白崎さん! えっと~、そ、そうだ僕これからちょっと用事が!?」

「用事? あ、なら私も手伝うよ」

「いや、それは……」

 

当然用事などデマなので先が続かない。忙しなく泳ぐ視線からその場しのぎなのは明らかだが、香織はハジメの言葉を疑っていないらしく華のような笑顔を浮かべて善意100%だ。

さすがにハジメとしても、そんな表情をされると罪悪感がチクチクしてくる。

とはいえ、ここで流されるわけにはいかない。罪悪感よりも周囲の視線の方が痛いのである。

故に、ハジメは薄情にも背を向けた可愛い後輩……佐伯(さえき)(かける)をだしに使う。

 

「あ~、そこにいるのは1年の佐伯君じゃないか! いったいどうしたんだい!」

 

清々しいまでの棒読みである。

とはいえ、純真な上に天然が入っている香織は「え?」と素直に反応して振り返った。

もちろん、その瞬間にハジメが「良し、この隙に」的な若干悪い表情を浮かべたことには気づいていない。

 

学校一の美少女である香織に好意を向けられているなど全く思っていないハジメからすれば、香織の存在は邪魔者とは言わないまでも厄介なものと言わざるを得ない。

フレンドリーに接されて邪険にするような人間ではないので殊更悪く思ったりはしていないが、扱いあるいは対応に困る相手なのは確かなのだ。

 

とはいえ、翔としてもここで巻き込まれるのはたまったものではない。

加えて、余計なところでタイミングの良さを発揮した校内随一のイケメンとして評判の天之河光輝が「南雲にも用事があるみたいだし……」とかなんとか言いだし、さらに親友である坂上龍太郎が「早く飯にしようぜ」とせっつくものだから、事態は待ったなしだ。

あるいは、相手が香織でなければそこで話は切れるのだろうが、彼女は彼女で中々に押しが強い。

自分の想いには気付いていないくせに、妙に積極的なのだ。

それくらいのことは知っている翔からすれば、絶対にここで引き下がるはずがないと思わずにはいられない。

絶対、間違いなく、翔も含めて面倒な事態になる未来が目に浮かぶようだ。

 

なので、全力の「何もありません」アピールでこの場を凌ごうとしたところで、思わぬ方向から待ったがかかる。

 

「見つけたぞ、佐伯。お前、こんなところで何をやっている」

 

不意にかけられた声に振り向けば、そこには中肉中背の濃紺色のスーツを着た男性教諭が立っていた。

比較的小柄で170cmに5cmほど届かない翔より少々高い位置にある目は、その人柄を表すように厳しい。

翔のクラスの担任教諭である山戸(やまと)(けい)だ。

昨年三十路を迎えたばかりというには些か老けて見えるのは、眉間に深く刻まれた皺にも一因があるだろう。

 

「あ、先生。どうかしました?」

「話があるから生徒指導室に来いと言っておいたはずだが?」

「あ~……そういえば、そんな話もあったような」

「ふん、忘れていたな……まぁいい。そう時間のかかる話でもない。それより……」

 

苦笑いで誤魔化そうとする翔に向けられていた視線がハジメたちに向けられると、全員の背筋が思わず伸びる。

なにしろ、継は昨年までハジメたちのクラス担任を持っていたのだ。丸1年この厳めしい目に晒されていれば、思わず背筋も伸びるというもの。

まぁ、顔立ちや視線の厳格さに対し、実の所そこまで頑迷な人物ではないし、ハジメたちもそれを知っているのだが……第一印象と言うのは色々厄介だ。

 

「南雲、目の下にクマができているな。またゲームか」

「あ、あはははは……」

 

ギロリ、と言う擬音が相応しいほど視線が鋭くなる。

実際にはよく見なければわからないほど薄いクマなのだが、見逃してくれはしない。

対して、ハジメも翔に倣ったわけではないだろうが、同じような苦笑いで誤魔化しにかかる。

もちろん、それで誤魔化されてくれるような相手ではないが。

 

とはいえ、口数の多い人ではないのでそれ以上言い募ったりはしない。

代わりに、香織をはじめとりあえず周りにいた面々に「あいさつ代わり」とばかりに端的なコメントが飛んでくる。例えば香織と光輝には「他人のことも良いが、まずは自分のことだ」とか、龍太郎には「パン? また早弁か」とか、締めの雫には「あまりこいつらを甘やかすな」といった具合だ。

 

香織と光輝はよくわかっていないらしく首を傾げ、龍太郎は「勘弁してくれ」とばかり。

逆に、雫は何か感じるものがあるのか神妙な様子だ。

ただ、あるはい「だからこそ」こうも思う。

 

(外見と口下手なせいで誤解されがちだけど、よく見てる。龍太郎はまぁともかくとしても、自分自身のことがおぼついてない香織と光輝のこともわかってるし、私がつい先送りにしてることとかも見抜ているのよね)

 

例えば、光輝の悪癖であるご都合解釈について、だ。

光輝自身には自分自身をもっと客観視しろと言っているのだし、折に触れて注意するだけでは足りないことを雫にも指摘している。香織についても同様だろう。

ただ、如何せん言葉足らずなところのある人なので、雫くらい察しが良くないと完全には読み取れないのだが。

だが、一つだけどうにも釈然としない点がある。それは、ハジメへの対応だ。

 

「しかし、南雲。いつまでここに通うつもりだ」

「え、え~っと……」

「ここにお前に必要な物などないだろうに」

(なんでこんなに南雲君にはあたりが強いのかしら……でも、生徒の選り好みとかする人じゃないし。檜山君とかへも基本的なところは変わらない)

 

あまり素行が良いとは言えない生徒に対しても、厳しくはあれどもハジメに対するほどではない。

分かりにくいが、より良い方向に進んでほしいという思いを雫は拾う事ができる。

ハジメに対する時にはそれができないわけではないのだが、妙に厳しすぎるというか……

 

(ゲーム嫌いだから? いえ、それだけとは……)

 

確かに、継のゲーム嫌いはそれなりに有名だ。雫は直接見たことはないが、校内への携帯ゲーム機の持ち込みやゲームアプリの利用には普段から2段増しくらいで厳しいという噂も耳にしている。

修学旅行に持ち込んだ時は、床に叩きつけて壊しそうになったのを何とか自制した、なんて話もある。

真偽のほどは定かではないが、そんな噂が飛び交うくらいにはゲーム嫌いで通っている。

だから、徹夜でゲームをして登校してくるハジメを目の敵にしているのだ……なんて噂もあるが、雫はそれには懐疑的だ。

 

彼は厳しくはあれども、決して理不尽な教師ではない。

むしろ、外見と言動の厳めしさに反し寛容で、生徒の自主性を尊重してくれる、と言うのが雫の人物評。

顧問を務める生徒会や文芸部では特に慕われ、体育祭や文化祭でちょっと弾け過ぎな内容があっても擁護してくれるし、文芸部の作品がかなりきわどくても眉をしかめるだけ。

話しかけにくくはあるが、話のわかる相手だ。

そんな彼が、例え重度のゲーム嫌いだったとしても、ハジメを目の敵にするとは思えない。

 

とはいえ、ならどうしてこうも厳しいのかと言うと答えが出ない。

その答えを出すには、雫とハジメの関係性は薄すぎる。

逆に、ハジメとそれなりに親しくしている翔は内心でただただ納得するばかり。

 

(あ~、わかるわかる。確かに、先輩ってなんで高校に進学したんだろうって思うことあるんだよなぁ。

 進学なんてしないで……というか、今からでも中退して働けばいいのに)

 

翔は知っている。ハジメの父親はゲームクリエイターであり、母親は少女漫画家であること。

そして、オタクとして見下されている彼だが、誰よりも真面目に人生を考えているし、現状クラスどころか学校の誰よりも社会的評価を受けられる能力を有していることも。

なにしろ、父親の会社や母親の作業現場でバイトし、既に即戦力級の技術があるのだ。

その他の「無限の未来が広がっている」「未知数」と言えば聞こえの良い、卵たちとはものが違う。

 

担任であった継もそれを知っているからこそ、「お前なんでまだ学校なんて意味のないところ来てんだよ。そんなことしてないで働いて社会に貢献した方がはるかに有益だろうに」と言いたいらしい。

彼の目には、ハジメがいつでも出られるのにわざわざ鳥籠に入った鳥にでも見えているのだろう。

だからこそ、さっさと出ればいいのにと苦言を呈さずにはいられない。

あれはあたりがきついのではなく、単に呆れているのだ…………実にわかりにくい。

 

そんな継や翔の内心を知ってか知らずか、ハジメは深々とため息をついて内心で愚痴る。

 

(もういっそ、こいつら異世界召喚とかされないかな?

 どう見てもこの四人組、そういう何かに巻き込まれそうな雰囲気ありありだろうに。

……どこかの世界の神か姫か巫女か誰でもいいので召喚してくれませんか~)

 

そんな愚痴が届いたわけでもないだろう。

だが、確かにそれは何の前触れもなく出現した。

 

光輝の足元に、白銀に輝く円環と幾何学模様が。

 

突然の事態にだれもが動けずにいる中、魔法陣は徐々にその輝きを増していく。

同時にその範囲を広げ、まもなく教室全体がまばゆい光に満たされる。

遅れて生徒たちの間で混乱が生じはじめ、同時に先の授業後から生徒たちと談笑していたために教室に残っていた社会科担当、畑山愛子が叫ぶ。

 

「みんな! 教室の外へ!」

 

だが時すでに遅く、皆が動き出すよりわずかに早く魔法陣は爆発的な光を放ち全てを飲み込んだ。

しかしその瞬間、ハジメだけは聞き取ることができた、目の前の厳めしい男性教諭が零した一言を。

 

――――――――――――――――まさか、帰れるのか?

 

その意味をハジメが知るのは、いくらか後の話。

 

 

 

*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 

 

 

※以降、セリフだけのダイジェスト版でお送りします。

 尋常ではないネタバレの嵐なのでご注意ください。 

 

「ようこそトータスへ、勇者様。そしてご同胞の皆さま。歓迎いたしますぞ。

 どうか、エヒト様のご意思の元、我らをお救いください」

「…………なんにも、かわっちゃいねぇんだな、ここは!!」

 

「先輩の天職って……」

「あ~……これ」

「錬成師? ステータスは……あ」

「翔は?」

「薬師、らしいです」

「ゔ! ステータスもそうだけど、技能もたくさんある、ね」

「ありますね。まぁ、薬物耐性とか状態異常耐性とか、すっごくらしい気もしますけど」

 

「違う、錬成ってのは……」

「なんで、先生そんなに詳しいんですか? 確か、短剣士じゃありませんでしたっけ」

「昔取った杵柄ってやつだ、気にするな」

(いや、かなり無理あるんですけど……)

 

「まるで本を読むのがサボりみたいな言われ様でしたね」

「まぁ、仕方ないんじゃないかな」

「了見が狭いというか……いえ、世界と言うか視野が狭いんですね。自分の知ってることしか知らないのが人間ですけど、自分の知らないものがあることを知らないんでしょうね、あの人。まるで子どもだ。いや、力ばっかりある分、子どもより性質が悪い」

「君、そんなさらっと毒吐く人だったっけ」

「薬師なので」

「毒も薬のうち? って誰が上手い事言えと?」

 

「すまない。二十層と聞いて油断した。まさか、あんなトラップにかかるバカがいたとは……」

「先生……」

「俺もついていくべきだった。そうすれば、こんな……」

「いいえ、先生のせいじゃありません。アレは、誰にもどうしようもなかったことですから」

「……誰にも、か。だからこそ、俺は……」

 

「佐伯、八重樫、俺は今からオルクスに潜る」

「南雲君を探すんですか? でも、一人でなんて無茶です!」

「もしかして、先生の隠し事と関係あります?」

「南雲にでも聞いたか?」

「ええ、まぁ……」

「あいつはアレで察しも良い。気付いたとしても不思議はないか」

「八重樫、お前は一人で、と言ったが逆だ。俺一人なら、恐らく底まで行ける。他ならいざ知らず、幸いこの迷宮のことはよく知っているからな。その意味で言えば、白崎が起きていなくて助かった、あいつがいたら無理やりにでもついてきただろうからな」

 

「そうか。あの人たちは、お前を使わなかったんだな」

「これは……ゴーレム、なのか」

「ん……でも、見たことない形」

「だろうな。こいつは既存のどのゴーレムとも違う」

《確認、攻略者2名。これより主人(マスター)として認証します》

 

「なぁ、アンタいったい何者なんだ。もういい加減、教えてくれてもいいんじゃないか?」

「そう、だな。お前たちはここまでたどり着いた。なら、もう隠す意味もない。

 まぁ、お前たちももうある程度予想はできてるだろう。

 俺の名は……ケイ、ケイ・オルクス。組織としての解放者の一員、オスカー・オルクスの弟子だ」

 

※第一章だとオリキャラの内、大体この人がメインになっちゃうんだよなぁ。

 第二章以降は分散すると思うんだけど。

 ちなみに第二章以降をダイジェストにすると……。

 

「私も、一緒に連れて行って。ううん、なんと言われたってついて行くから」

「俺は、お前の知ってる俺からかけ離れたもんになっちまった」

「あの時みたいに、手の届かないところに行っちゃうのは……嫌だから」

「ハジメ、連れて行こう」

「は? いや、だが……」

「こいつとは決着を着けなきゃいけない。こいつに勝って、ハジメの特別になる。

 それに、どうせすぐに諦める」

「こいつじゃないよ。でも、勝って特別になるっていうのは同感かな」

 

「ほら、一応持っておけ」

「なんです、これ?」

「薬だよ。それも神話級のな。薬師のお前なら、俺とは違った使い道もあるかもしれねぇだろ」

「……なるほど。じゃ、有難くいただきます。でも、何で2本? 貴重なものなんでしょう」

「1本は…………お前用だ」

「……はい」

「あと、どれくらい保つ」

「天職のおかげで思ってたより引き延ばせてますけど、2・3ヶ月ですかね」

「…………すまん」

「元々わかりきっていたことですから、気にしないでください」

 

「ああ、そうだ。一応言っておくが、亜人族を見かけたら助けておけ」

「は? そりゃまたなんでだよ」

「必要だからだよ。俺じゃ、辿り着けない場所もあるからな」

「ふ~ん」

「ん……あそこに薄汚いウサギがいる」

「誰が薄汚いですか!?」

「ああ、ホントだな。涙やら鼻水やらでばっちいが、確かにウサギだ」

「初対面で酷過ぎません!?」

「二人とも……」

 

「ハウリアねぇ。兎人族も変わったもんだ」

「何か知ってるんですか?」

「ハウリアって部族は知らんがな。ただ、俺の知ってる兎人族を一言でいうなら……」

「言うなら?」

「部族単位のマハトマ・ガンジー」

「……だれ?」

「ああ、私たちじゃないと分からないよね」

「おいおい、それって非暴力不服従のか? それがどうしたらこうなるんだよ?」

 

「クラルス、だと。お前が?」

「そうじゃが、どうかしたのかのう? って、なんじゃ! 人の顔を見るなりいきなり泣き出しおって!?」

「おいおい、どうしたよ?」

「戦友の! 同志の! その子孫がこんな変態じゃ泣きたくもなる!」

「ん……わかる。この駄竜は存在が罪。死んで全竜人族と私たちに詫びるべき」

「あふん! ハァハァ、ご主人様に続き、なんと弁えた御仁じゃ……たまらん」

「フラメル! フラン! 俺は、俺は……!」

「いや、誰だよ」

「多分、昔の仲間とかだと思うけど……」

「二人とも、クラルスの名に恥じない奴らだった。

 だが! 何が酷いって、こいつとフランが瓜二つなのが余計腹立つ!!」

「あぁ、それは受け入れがたいですよねぇ……」

「んん、いかん下着を変えねば。しかし、フランじゃと。そなた、大婆様のことを知っておるのか?」

「は?」

「へ?」

「ほ?」

 

「あんた、いったい何を……」

「ん~、いくら強力な魔物でも、相手が生物なら僕の土俵なんですよねぇ」

「っ!? まさか、これは毒か! だが、どうやって……」

「技能、調合の派生スキルに『薬品生成』と言うのがありまして」

「毒人間、ってことかい」

「別に毒に限りませんよ。回復薬や解毒剤、造血剤に睡眠薬。まぁ、大抵の薬は作れちゃうんですよ。

 回復役が減っちゃったんで、結構重宝してるんですけどね。

 ただ、生物じゃない相手や薬の効かない相手にはさっぱり効果がないんですけど……彼らには、問題ないみたいで安心しました」

「ちぃっ! 厄介な……」

(まぁ、先輩からもらったこれと僕の体質との合わせ技が完成したら……我ながらヤバすぎるよねぇ。生きたBC兵器とかシャレにならないし。どうしよ……)

 

「油断大敵、ですよ」

「なん、で……確かに、人形にしたはずなのに……」

「色々な薬を使ってたからですかねぇ。不思議じゃありませんでした? 刺した割に出血、少なかったでしょう」

「ふん、だからって君一人で何ができるってんだ!」

「佐伯君! あなただけでも……!」

「いえいえ、もう仕込みは終わってますから」

「は?」

「直接戦闘能力が皆無に近い僕に勝ち目はありませんからね、操られてるふりをしている間に色々と」

「なにを……」

「生憎と完成したばかりで実戦使用は初めてなんですよ。さてさて、どうなることやら。

 ああでも――――――――――――――――まともな死に方はしないと思った方がいいですよ」

 

「握れますか?」

「っ!?」

「僕の体は薬であると同時に毒。その上、あれもありますからねぇ。触るのはお勧めしな……」

「舐めないで! そんなの、こっちは先刻承知の上よ! あなたには何度も助けられた! 本来私たちがやらなきゃいけないことも肩代わりさせてきた! それなのに今更、貴方を拒むわけないじゃ……」

「……」

「…………佐伯君、あなたこの手……」

「まぁ、そういう事でして。まさか、躊躇なくとは思いませんでしたけど」

「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ」

「皆さんには秘密にしてください。知ったところで、何がどうなるものでもありませんから」

「あなたはそれで……」

「良いも悪いもありません。もう、済んだことですから」

 

「おい、師匠」

「いい加減その師匠ってのやめろ。今更お前に教えることなんぞない。

 あっという間に追い抜きやがって。

大体、師匠とかいう割にお前には敬意ってものがないだろ、敬意ってもんが」

「良いから聞けっての。その……なんだ、アンタにはこれでも結構感謝してるんだ。だから……なんだよ」

「お前、熱でもあるんじゃないか? おい白崎、ちょっとこいつ診てくれ!」

「アンタもか! お前ら俺のことなんだと思ってやがる! あ、こら待ちやがれ!」

「らしくねぇこと言ってんじゃねぇよ。寒気がする」

「この野郎……」

(笑えるな、師匠。俺が、一番大事な時にいられなかった俺が、今や師匠なんて呼ばれてやがる)

「わかった、もう言わねぇよ」

(礼を言うのは俺の方だ。お前は知らんだろうが、クソ神を歯牙にもかけないお前の態度が俺にはどれだけ痛快だったことか。散々やられっぱなしだった使徒どもを蹴散らす姿が、どれだけ励みになったことか。

ありがとな、馬鹿弟子。お前が希望をくれたんだ)

 

「なんでだよ! それだけの力があって、なんで見捨てるんだよ! 俺に力があれば、みんなを救って……」

「黙れ、天之河」

「え?」

「みんな救うだと? お前、何様のつもりだ」

「いや、だって、人を救おうとするのは当然で……」

「いいか、そういうのはまず人を救えるほど余裕があるやつがすることだ。何度も言ったはずだ『他人のことも良いが、まずの自分のことだ』と」

「ですが、だからと言って見捨てるなんてことは間違ってるでしょう!」

「正しいか間違っているかじゃない。余計な世話だと言っている!」

「よ、けい? な、なにが余計だっていうんですか」

「俺は、少なくとも俺はお前に、あるいは誰かに『救ってほしい』なんて思っちゃいない」

「救われたくないっていうんですか?」

「違う。俺たちは、誰かに『救ってもらわなきゃならない』ほど惨めじゃないと言ってるんだ。

 こいつはあいつにも言ったがな、お前たちは自分たちが帰ることに全力を注げ。この世界のことは、この世界に生きる者たちでやればいい。どこかの誰かに救ってもらわなきゃならんほど俺たちは惨めじゃないし、救われなきゃ生きていけないのなら、いっそ滅べばいい」

「なっ!?」

「何を驚く。それともなにか、お前はこれからもずっと俺たちを救い続けてくれるのか? そんなものは優しさとは言わん。そんなものは人を堕落させる悪魔と同じだ。

 救うってのは、ただ助ければいいなんて言うほど軽くねぇんだよ。

 

いいか、俺たちから――――――――――――――――尊厳を奪うな。

 

未来も、自由意思も、何もかも奪われてきた。俺たちに残された宝を奪うのなら、お前は勇者でも何でもない、ただの略奪者だ」

「略、奪、者……」

「まぁ、あいつはこの話をしたら即答で『そのつもりだ』とか言ってたがな。

 ったく、あいつ向こうに戻ってまっとうに生きられるのか? 不安だ」




ネタですし、色々なご都合主義は勘弁してください。
時間軸的なあれは、空間を超えるという事は時間を超えることに似る、と何かで見たので。

ちなみに、基本コンセプトの中に香織から属性「不憫」をなんとか取っ払う事が含まれます。うん、ホントに不憫過ぎて……最終的には良い感じのところに落ち着きましたが、後半に来るまでの不憫さがもう……。ちょっとあれな部分もあるけど、いい子なのに。

あと、主人公格の一人の継はまぁ、最後まで読めばわかる通り元々トータス出身。ただし、解放者たちの時代。使徒とかとやり合っている中、空間魔法で生じた隙間に落っこちて地球へ。戻りたいけど戻れず……だったのがまさかの事態。本人的には、相当時間が流れたのになんも変わってない世界に怒りと責任を感じています。
対外的には短剣士となっていますが、本当は錬成師。オスカーの生成魔法も習得済みなので、ステータスプレートを即座にいじった結果です。これは、大迷宮攻略者に神代魔法を継承させる方法を確立させる際の被験者になったから。
また、もし負けた時の保険として構想されていた大迷宮にも一枚かんでいたので、オルクスをはじめその他の大迷宮の知識もあるという反則。役どころはハジメたちのナビゲーター兼ハジメの錬成の師匠。奈落で再会した時点でハジメの方が上回っている点もあるのですが、12歳で神結晶を作ったオスカーの弟子と言うのは伊達ではなく、正統派の錬成師としてハジメにはない技術やノウハウがありそれを伝授することに。師匠や弟子ほどぶっ飛んだ腕はありませんが、正統派の錬成師として十分「オルクス」を名乗れる腕はあります。結果、ハジメの錬成の腕を底上げしてくれます。具体的には飛空艇や衛星兵器の完成が早まります(ヤバいね!?)。
大昔を知っている分、色々(主にティオのせいで)頭を抱えることがある。
恐らく、両親を除けば唯一ハジメが頭の上がらない相手。技術や力ではなく、精神的な問題。色々教わったり、奈落まで探しに来てくれたりというのもあるが、「救いなんぞいらん、自力でなんとかすることに意味がある」「帰ることだけ考えろ、俺の知ってること(大迷宮や神代魔法等々)は全部教える」というスタンスに尊敬の念を抱いている……が、お互いにあんまり素直じゃないので、悪態を付き合うツンデレ師弟関係に。

もう一人の主人公格の翔は香織が抜けた穴を埋めると同時に、早い段階で香織が抜けることからハジメが関与しない場面を何とかする要員ですね。まぁその結果、嫁~ズに多少変化が生じる可能性もありますが……その分、光輝にも変化が生じるのでノーカンにしてほしい。え? 釣り合わない? 仰る通りで、返す言葉もありません。
ちなみに、こいつはこいつで常識(?)の範囲で訳アリ。それがいろいろな要素と化学反応して、ハジメとは違った意味で手の付けられない何かになっちゃいます。
ある意味ハジメとは対称的な人物で、生きることをはじめ我らが魔王様が「執念」の人なのに対し、こちらは根本に「諦観」がある感じ。

最後の不出来な兵器君は、早い段階でハジメに合流してしまう香織や翔の底上げ役。
元は解放者たちが作り上げた決戦兵器。概念魔法とは別の意味での、神代魔法の合わせ技。中々できない切り札の代用として造られたものの、その後に愚痴大会の中で出来上がっちゃったのでお蔵入り…というより「よく考えたらこれってクソ神の使徒とおなじじゃね?」と気づいて方針転換したというのが真相。大迷宮に籠った後も、オスカーの手でカスタムが続き、オルクス攻略者にはその都度与えられては戻るを繰り返してきた。そして、ハジメの手で更なる魔改造が……という感じになったらいいなぁ。
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