やみなべのネタ倉庫   作:やみなべ

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わぁい、振り返ってみれば最後に投稿したの約一年前~……大変申し訳ない。その上、結局またもや一発ネタと来たもんだ。

書けなかったから書かなかった、ホントにただそれだけ。理由を上げればいろいろあるけど、突き詰めればそれがすべてなのである。

とりあえず、どうしてこんな内容が思い浮かんだのか。
「陰の実力者になりたくて!」への興味は前々からあったものの、主人公の癖が強すぎて「ちょっとなぁ」となり避けていたのですが、でも他のキャラクターに興味があったのでとりあえず読みやすい漫画から履修。そのまま「二次創作とかどうなってんのかなぁ」と思ってみたら人気の割に案外ない。
だとしたらぁ…とちょっと想像を膨らませてみた次第。実は、これとは別設定の方が先に浮かんだのですが、とりあえずこっちを書き起こしてみました。

ちなみにそっちの場合、シャドウガーデンとは全然関係ないところで悪魔憑きを瀕死になりながら治療したり、治療した子が知らないうちにグランドロクデナシ経由でサーヴァントたちと繋がってたり、ちょっと世界を見てみようかなぁと旅に出たらその子中心に「国境なき医師団」みたいなのできて密かに悪魔憑きの治療や待遇改善に動いていたり、そのメンバーがどっかで見たようなカード持って超人的な動きを見せていたり、気付くと何故かディアボロス教団とシャドウガーデン双方から重要人物扱いされてたり、挙句の果てにシャドウとか言うよくわかんないのから「君も陰の実力者ムーブしたいんだね」とズッ友扱いされる……そんな話。
話しの大半が本人の知らないところで進行していくので、半ば以上オリ主(山羊角の獣人、割と本気で碌でもない半生を送った重度の人間不信)ものになりそう。

ちなみに、試しにpixivの方のアカウントでも投稿してみましたで、ご了承ください。


〈カゲジツ×FGO〉は? 陰の実力者って、なんのこと? 

それは透き通るような青空の、何の変哲もないとある日のこと。

ミドガル王国に本店を構えるミツゴシ商会の一角に設けられた執務室で、シャドウガーデン最高幹部“七陰”第一席たるアルファは部下からの報告に目を通していた。

 

(みんな、よくやってくれているわ。末端構成員の洗い出しと活動拠点の絞り込み、おかげでディアボロス教団の動きも多少は事前に察知できるようになってきた。でも……)

 

成果は上がっている、それは紛れもない事実だ。しかし、何もかもが順調かと言えばそうではない。

 

「……はぁ。流石に、幹部級の尻尾を掴むのは難しいわね。手詰まり、というわけではないけど、教団中枢に手をかけるのはいつになることか。こんな時シャドウなら……」

 

そこまで考えたところで、アルファは頭を振ってリセットする。

 

(確かに、彼なら私たちが辿り着いていない事実を、見通せない闇の先を掴んでしまうでしょうね。でも、そうやって全てにおいて彼を頼ってしまっていては私たちシャドウガーデンの存在意義が失われる。シャドウには遠く及ばなくても、少しでも彼の力にならないと)

 

まぁ、そもそもそのシャドウ本人が彼女たちの仇敵であるディアボロス教団の存在を知らない、というか“陰の実力者ごっこの設定”と思って信じていないのだが……アルファたちは知る由もない。

双方の間に横たわる絶望的な溝、即ち認識の齟齬あるいはすれ違いが存在することを知らないことは、果たして幸運なのか不運なのか。一つ言えるのは、それを理解する者がいれば、日々頭を抱え慢性的な胃痛に悩まされることになるだろう、ということか。そんな憐れな被害者がいないことだけは、素直に“善いこと”と言えるだろう…たぶん。

 

とはいえ、そんな事実を知るはずもないアルファは自らの不甲斐なさに自責の念を覚えずにはいられない。

だが、同時に彼女は凡そあらゆる方面に才覚を示す才媛でもある。その中には、自制心や己を客観視する能力なども含まれる。シャドウ関連に関しては、些か不具合を起こすようだが。

とりあえず、思考が堂々巡りに入ろうとしていることに気付いたところで、気分を入れ替えるために冷めかけのコーヒーに口をつける。

 

「ふぅ……」

 

そうして一息つけば、周りを見る余裕も戻ってくる。

例えばそう、窓から燦々と降り注ぐ日の光とか。

 

昨夜の雨で空気中の塵やゴミが洗い流されたのか、今日の王都の空はどこまでも澄み渡った青色をしていた。

それに誘われるように窓辺に足を運んで窓を開く。すると、気持ちのいい風がアルファの頬を擽った。

風によって舞い上がる長い金紗の髪を抑えながら見上げた空が、遠く置き去りにした寂寥を呼び起こす。

 

(……………………………そう言えば、“あの人”は空を見上げるのが好きだったわね。澄み切った青空、燃える様に赤い夕暮れ、瞬く満天の星空。いえ、それだけじゃない。月も、雲も、雨や雪だって……まるで世界の全てを慈しむように、優しく目を細めていたっけ)

 

もう、何年も思い出すことのなかった思い出だ。どうして今になって思い出したのか自分でも不思議だったが、存外答えはすぐに出た。

 

(あの人だったら、こんな時どうしたかしら……)

 

昔から、妙に諦めの悪い……いや、基本的にそんなことはなかったか。我儘とか執着が強いということはなく、諦めるべき時、退くべき場面ではちゃんと自分を抑えることができていた。

しかし、他人にはいまいち理解できないポイントで頑固さを発揮することが少なからずあった。だからだろう、彼ならどう行動するかつい考えてしまった。

 

「………さ…」

(まぁ、あまり奇をてらった答えは返って来ないでしょうけど)

 

諦めが悪いと言っても、だからと言って起死回生のアイディアが都合よく閃くようなタイプではなかった。彼はいつだって、出来ることをできる範囲で愚直に実行するだけの人だった。幼い頃から多方面に才覚の片鱗を見せていたアルファには、その姿は酷く泥臭く思えたものだ。

そう、だからアルファは幼心に一度聞いてみたことがある。「どうして、そんなにこだわるの」と。

 

(彼は、何と答えたんだったかしら)

「…る………ま」

 

感銘を受けるような答えではなかったように思う。ありきたりで、面白みなんてまるでない、しかし不思議と力強い、その答えは……

 

「あ…ふぁさ…」

(そうだ。確か……「ただ、そうしたいと思ったから」と「まだできることがあるから」だったわね。あの人はそんな理由で、あの時も、最後まで私を……)

 

誰が見ても、自分自身ですらもうどうしようもないと理解し、諦めた状況だった。その後シャドウと出会い救われたのは、ある種の奇跡だった。シャドウのような“特別な人間”だったならいざ知らず、どこまでも凡人だった彼にできることなどなかった。そんなこと、彼だってわかっていたはずなのに。それでも、最後まであきらめようとしなかった。

そこまで思い出して、胸に残った小さな棘の存在を自覚する。同時に悟った、忘れていた…というよりも、思い出さないようにしていたのだろうと。だって、思い出したところで、できることなど、ないのだから。

 

「…ル…ァ様」

(自己満足ね。“せめて、生きていることだけでも伝えたい”なんて)

「…ルファ様…アルファ様」

「っ! ぁ、ごめんなさい。どうかしたかしら、ガンマ」

「いえ、コーヒーのおかわりをお持ちしがてら、“先日の件”の中間報告をと」

「そう、ありがとう。それじゃ、早速聞かせてくれる?」

「ですが……」

 

ガンマと呼ばれた濡れ羽色の長い髪のエルフの瞳が心配そうに揺れる。

どうやら、物思いに耽って少しぼんやりしていたのを“疲労が溜まっている”と誤解させてしまったようだ。

 

(……七陰第一席ともあろう者が、失態ね)

「アルファ様、僭越ながら……」

「大丈夫、別に疲れているわけではないわ。ただちょっと、昔を思い出しただけよ」

「昔、ですか?」

 

気遣わしげに小首をかしげる様子から、あまり信じてはもらえていないことがうかがえる。客観的に見て、アルファの仕事量は膨大だ。普段から、ガンマ以外にも適度な休息を勧められる程度には。

なので、信じてもらうためには少しその“昔”の話をする必要があるだろう。

 

「ええ」

「それは、その……主様との」

「いえ、残念ながら違うわ。自分でも珍しいと思うのだけど…悪魔憑きになるより前のことをね」

 

特に禁止しているわけではないが、シャドウガーデンでは悪魔憑きを発症するより以前の話はタブー扱いされる傾向がある。誰も彼もが幸福な人生を過ごしていたとは限らないし、誰だって詮索されたくない過去の一つや二つあってもおかしくない。それでなくても、悪魔憑きを発症してからの日々は悲惨なものだ。過去を振り返れば、必然的にそこにも目を向けることになる。同じ苦しみを知るからこそ、触れるべきではないと誰もが思っている。

まぁ、新規加入するメンバーの身辺調査は基本だし、悪魔憑きとして扱われているところを保護する際にある程度の事情は知ることになるので、本当に“配慮”以上の意味合いはないのだが。

 

「ぁ、これは、失礼しました」

「気にしなくていいわ。幸い、私の幼少期はそれなり以上に恵まれていたという自覚もあるしね。特に話す機会もなかったから言わなかっただけで、隠していたわけでもないもの。

 それより、何か用があってきたのでしょう。もしかして例の、“聖骸”とそこから生まれる“影”のこと? 何か分かったかしら」

「残念ながら、今のところ目ぼしい情報はありません。一応、回収できた“聖骸”は現在イータが解析中ですが、現状わかったのは“ミイラ化した成人男性の左人差し指”であるということだけで、これといって目立った結果は出ていないそうです」

「……つまり、とりあえず分かったのは“気持ちのいいものではない”、ということね。魔人ディアボロスとの関係は?」

「そちらも、今のところは何も」

 

成果が上がっていないことに対しガンマは申し訳なさそうにしているが、アルファに彼女や解析を担当しているイータを責める気は毛頭ない。また、ここにいないメンバーに対しても最優先で情報を集めるよう指示を出しているが、そちらの結果も芳しくないのは定例報告で上がってきている。

シャドウガーデンのメンバー、特に幹部級である七陰の能力をアルファは信頼している。彼女たちがこれだけ調べても成果が上がらない以上、他の誰か…それこそシャドウでもなければ何もわからないだろう。だからこそ、シャドウを頼る気持ちが湧いてきてしまうのだが。

 

「ディアボロス教団も、厄介なものを持ち出してきたものね。デルタの様子は?」

「そちらはご安心を。もうすっかり傷も癒えて元気いっぱいです」

「そう、よかった」

 

とはいえ、“あの”デルタが浅からぬ傷を負って帰ってきた時はアルファですらも動揺は隠せなかった。

“暴君”の二つ名を与えられ、シャドウとアルファを除けばこと戦闘能力において彼女と並ぶ者はいない。そんなデルタに傷を負わせられる者など、そういるものではない。

そして、それを為した者こそが聖骸より生じた“影”だった。

 

「デルタの話はいまいち要領を得ないし、その時に使われた聖骸は回収できなかったのよね」

「はい。あとから調査に向かわせましたが、既にそれらしきものは無く」

「まぁ、別件で教団と戦闘になったゼータが回収してくれたのは幸運だったわ。だけど、ゼータの話だと」

「確か、生み出された影の背丈は十歳前後の子どもほどで、戦闘にはならず無抵抗のうちに倒したそうです。聖骸を所持していた教団のメンバーは“ハズレを引いた”と喚いていたということですが」

「デルタが遭遇したのと同じもの、で間違いないのよね」

「回収した聖骸をデルタに見せたところ、“絶対に同じ匂いなのです”と断言していましたから。まぁ、あそこまで警戒心を顕わにするデルタというのも、初めて見ましたが」

 

傷が治りきっておらず、やれ「暇だ」やれ「退屈だ」とジタバタしていたデルタだったが、確認のため部屋に聖骸を持ち込んだ瞬間、爆速で窓枠まで移動し最警戒モードに突入。“それ以上近付けたら同じ群れの仲間でも殺す”と、言葉ではなく態度と表情が何よりも雄弁に物語っていた。人に慣れていない野良猫みたいになったデルタを何とか宥めすかし、時に嚙みつかれたりしながらやっとの思いで確認を取ったのだ。

とはいえ、デルタの反応を非難する気にはなれない。なにしろ、デルタだけではなくゼータまでもが……

 

「そう、デルタが。ゼータはなにか言っていなかった?」

「それが……担当の者に聖骸を押し付けると“仕方なく持ち帰ったけど、持っている間中悪寒と鳥肌が酷かった”“二度と触りたくない、というか近付きたくもない”と、心底嫌そうな顔で。あ、いえ、嫌な匂いがするとかそういうわけではないそうですが、なんでも“圧が怖い”“近くにいるだけで呪われそうなくらいに不吉な気配がする”んだとか」

「あの二人がそこまで……それだけの危険物ということね。イータには、くれぐれも注意して扱う様に言っておいてちょうだい」

「はい、それはもちろん」

 

そのまま、今後のシャドウガーデンの活動についていくつかの確認を済ませ、一礼してから退室しようとするガンマ。それを最後まで見送ることはせず、再度窓の外へと視線を移したアルファは思い出したように呟いた。

 

「そういえば、あの人の魔力の使い方は独特だったわね。私に血を舐めさせたり、私の血を飲んだり。契約とか、魔力パスがどうのとか言っていたけど、どうしてあんなやり方を…いえ、それよりも一体どこで……」

(あの人? もしや、アルファ様の仰っていた“悪魔憑きになる前”に関わる人でしょうか)

「……それにしても、今頃いったいどこで何をしているのやら。まぁ、あの人のことですもの。またぞろ、得にもならない面倒ごとに首を突っ込んでいるんでしょうけど。ねぇ、“兄さん”」

 

聞き耳を立てるのも悪いと思い特に足を止めたりはせずに立ち去ったガンマだったが、扉を閉める直前に零れたその声は不思議とハッキリ耳に届いていた。

 

 

 

(…………むぅ、いけないとわかっていても、やはり気になりますね。アルファ様のお兄様、ですか。でも、詮索するというのもやはり……わきゃっ!?)

 

ついつい考え事をしながら歩いていたら、何もないところで盛大にスッ転ぶガンマ。思いっきり顔面を強打し、鼻血が垂れてきている。絨毯を汚すまいと慌てて抑えるものを取り出そうとしたところで、目の前にミツゴシ製のハンカチが差し出された。

 

「あら?」

「大丈夫、ガンマ」

「ベータ、戻っていたの」

「あなたねぇ、ただでさえ何もないところで転ぶんだから、考えごとしながら歩くのやめなさいよ」

「イプシロンまで」

 

アルファやガンマと同じく、それぞれ七陰の2席と5席に位置する二人の手を借りて立ち上がる。犬猿の仲というわけではないが、なにかとよく対立している二人は、今日も今日とて飽きもせずに何やら問答を繰り広げている。

その距離感は近く、豊満な双丘を圧し潰し合って形を歪めている。

 

(ここまでくると“ケンカするほど仲が良い”という奴かしら)

 

本当に嫌い合っていたら、ここまで近づくことはないだろう。

 

「……ねぇ、イプシロン。少し離れてもらえない? というか、胸を押し付けてくるの止めてもらえないかしら」

「あぁら、ごめんなさい。ほら、私ってちょっと、そうちょっと(・・・・)だけ胸が大きいから。すぐ色々なものにぶつかっちゃうの、不便よねぇ、ちょっと(・・・・)大きいだけなのに」

「(ピキッ!)そう思うなら、あと一歩離れてほしいのだけど」

 

むしろグイグイ胸を押し付けようとするイプシロンに対し、ベータの額に青筋が浮かんでいる気もするが、本人も一歩も引かないあたりたぶん気のせいだろう。本当に近くて迷惑しているのなら、自分から下がればいいだけなのだから。

まさか、“下がった方が負け”みたいな子どもじみたケンカじゃあるまいし。

 

(……そういえば、ベータはアルファ様とは古くからの知り合いでしたっけ)

 

そのことを思い出し、沈静化しかけていた好奇心が再度湧き上がってくる。

詮索するべきではないとわかっているが、アルファ本人が「隠していたわけではない」と言っていたのだし……。

 

(少し…そう、少しくらいなら)

 

自己弁護、自己正当化の末、ガンマは意を決することにした。

 

「ねぇ、ベータ。一つ聞いてもいいかしら」

「はぁ、別に構わないけれど」

「では、アルファ様の事なのだけど……」

 

廊下で話すようなことでもないと思い、近くの部屋に入りかいつまんで先ほどのアルファとのやりとりを説明する。イプシロンも興味があるのか、同席しているが問題はないだろう。

 

「……ああ、なるほど。“兄さん”のこと」

「アルファ様のお兄様、なのよね?」

「いえ、そういうわけじゃないの。なんというか……少し年の離れた幼馴染、というのが正確ね。血縁というわけじゃなくて、よく色々な子たちの面倒を見てくれる人がいて、自然とみんなその人のことを“兄さん”って呼ぶようになっただけで」

「ああ、そういう」

 

ベータまで兄と呼ぶことに一瞬疑問符が浮かんだが、そういうことなら得心もいく。本当の兄というわけではなく、“兄のような存在”ということなのだろう。

ベータも久しぶりにその人物のことを思い出したからか、アルファとよく似た眼差しで窓の外を見上げている。

 

「確かに、今日みたいな空を見ているとあの人を思い出すかもしれないわ。よく、空を見ている人だったから」

「ふ~ん、でもベータだけじゃなくアルファ様にも慕われてたってなると、どんな人だったのか少し気になるわね」

「そうね」

「どんな人……」

 

アルファが言った通り、別に隠すようなことではないのだろう。ベータは二人の疑問の答えを得ようと、古い記憶に手を伸ばす。が、返ってきた答えは少し予想とは違うものだった。

 

「個人的な見解になるけど、そうね……“要領は悪くないのに絶望的に世渡りが下手な人”かしら」

「「は?」」

 

思わず、ガンマとイプシロンの目が点になった。

 

「大抵のことは何でもできる人だったわ。でも、器用貧乏というか、どれも本職には届かないというか。でも、自分の知っていること、できることを惜しまない人だったわ。私も色々教えてもらったし、まぁアルファ様にはすぐに追い越されてたようだけど」

「ゼータの下位互換? というか、それ大丈夫だったの? なんというかこう…普通、そういうことされたら嫌な顔されるものじゃない?」

「それがね、むしろ褒めちぎってどんどん新しいことを教えていたわ」

「お人好し過ぎない?」

「そうね。本当に根っからのお人好しだったから、いつも貧乏くじばっかり引く人だったっけ」

「なるほど、だから世渡り下手、と」

「面倒ごとを背負い込んだり、厄介ごとを押し付けられたり……そんなことばかりしてたから、子ども心にハラハラしてたのをよく覚えてる」

 

しかし、言うほど心配しているようには見えないというか、むしろ楽しい思い出を振り返るようにベータは穏やかな表情を浮かべている。それが少し不思議に思えて、イプシロンはつい尋ねてしまった。

 

「心配じゃないの? そんな調子だといいように利用されて最後はポイッ、よ」

「大丈夫じゃないかしら」

「何を根拠に……」

「人当たりが善くて、面倒見もよくて、おまけに付き合いも良い人だったから。困ってたり苦労してたりすると、不思議と周りの人たちが助けてくれる、そんな人だった。“性懲りもなく”“仕様のない”、色々言われながらね」

「人を惹きつける魅力があった、ということね」

「人たらしではあったと思う。でも、いつも輪の中心にいるとか、周りを引っ張っていくとか、そういうタイプではなかったわ。気付くと集団の中に溶け込んでいて、一緒になって笑ったり泣いたりしている、そんな人だった」

 

きっとベータは…いや、ベータだけではなくアルファもその人のことが好きだったのだろう。それが初恋だったのかどうかはわからない。もしも悪魔憑きになどならず、そのまま共に過ごしていたら、あるいは……。

 

(ま、そこをつっこむのは野暮よね)

 

疑いようもなく、幸せな日々だったはずだ。だが、仮に「あの頃に戻りたいと思うか」あるいは「やり直したいと思うか」と聞けば、ベータもアルファも「否」と答えるだろう。

確かに幸せな時間だったかもしれない、だがあったかもしれない未来は今ほどに充実したものではなかったはずだ。悪魔憑きとなってからの日々は確かに辛く苦しいものだった。しかし、その果てに彼女たちはシャドウに出会い、救われ、大いなる主と果たすべき使命を得た。

決して順風満帆とも、満たされただけの日々でもなかったけれども、あのままでは決して得られなかった多くの宝を得た。ならば、どちらが良かったかなど聞くまでもない。

 

「……もしよければ、会えるように手引きするけれど」

「……いいえ、いいわ。自分の道に悔いも迷いもないけれど、会うべきではないもの。私たちはシャドウガーデン、シャドウ様と共に陰に潜り、陰を狩る者。でも、兄さんは違う。あの人は、光の当たるところでありきたりで、ありふれた幸せを享受すべき人。陰も、闇も、裏も、とてもじゃないけど似合わない。そんなものを、あの人の人生に一滴でも落とすようなことがあってはいけないから」

 

大切な人だった。幸せになって欲しい人だった。だからこそ、自分たちと関わるべきではないと確信する。

例え、悪と罵られようとも為すべきことを為す、それがシャドウガーデンなのだから。なにより……

 

(こんな世界に関わったらあの人、あっという間に死んでしまうだろうし……)

「確かに、悪魔憑きになって死んだと思ってた相手と再会したりすれば」

「聞く限りその人、相当なお人好しのみたいだし尚更ね」

「本当に。何しろ兄さんったら、悪魔憑きになったアルファ様を教会に引き渡すのに最後まで反対してたのよ。治療方法を探すべきだって」

「「え?」」

 

この世界の常識として、悪魔憑きは治療不可能な致死の病だ。教会に引き渡し処分か、あるいは放逐するか。いずれにせよ、行き着く先は同じ。

例外は、ゼータが生まれた金豹族くらいだ。あの一族だけは、悪魔憑きをはじめとした教会によって塗り替えられた欺瞞ではなく、真実を伝えていた。だからこそ、“治療”という選択肢を模索することができた。

しかし、真実を知らないその他の者たちにとって、“悪魔憑きを助ける”というのはあり得ない発想だろう。

それこそ、アルファをはじめとした多くの悪魔憑きを救ってきたシャドウという例外中の例外を除けば。

 

「本当に、治療しようとしたの?」

「ええ」

「でも、アルファ様は……」

「残念ながら、結果は伴わなかったわ。顔の広い人だったから、周りも兄さんの意を汲んで少しだけ待ってくれたけど。シャドウ様と違って凡庸な兄さんに、悪魔憑きの治療なんて無理だったの。正直、見ていられなかった。何をしていたのかは詳しく知らないけど、日を追うごとにやつれていくんだもの。きっと、死に物狂いで頑張っていたのは想像に難くないわ」

「……無謀だとは思うけど、“無駄な努力”って否定する気にはなれないわね」

「ええ。シャドウ様が特別過ぎるだけで、治療しようと考えられるだけでも相当なことよ」

「結果、これ以上は兄さんも危ないと判断してアルファ様は教会に送られたわ。それから間もなく私も悪魔憑きを発症したけど、思えば驚くほど速く移送されたのは……兄さんに無理をさせないためというのもあったと思う」

 

周囲の者たちの思いも理解できる。アルファを救えず、続いてベータまで。そうなれば、その人物はさらに無茶をしたかもしれない。ならば、無茶をする前に…と考えるのは当然の発想だろう。

 

「本当に、今頃どうしているのかなぁ。あまり、無茶なことをしてないと良いんだけど……」

 

 

 

  *  *  *  *  *

 

 

 

某国某所、とある街角を二人組の男女が歩いていた。

片や、それなりに整ってはいるがさほど目立たない顔立ちの黒髪黒目の青年。どこぞの陰の実力者志望に言わせれば「中々のモブっぷり」と評するだろう。そして、もう片方は何とも評しづらい。何しろ、フードを目深にかぶっていて顔立ちどころか体形すらも判然としない。辛うじて、華奢な背格好やフードの下から垣間見える艶のある唇や細いおとがいなどから女性と判別できる程度だ。

そんな目立つような目立たないような二人組だったが、唐突に男の方が背を丸くする。

 

「ふぁっくしょん!?」

「あら、風邪かしら? 大丈夫、“マスター”」

「う~……誰か噂でもしてるのかな」

 

鼻をすすりながら、何とはなしに空を見上げる。気持ちよく晴れた青空は、“世界が違う”ことを忘れさせるほどに美しい。

 

「へぇ、魔術ってそういうこともできるのね。自分の噂をされるとくしゃみが出る術式……有用性、あるのかしら?」

「いや、魔術じゃなくて迷信というか」

「そうよね。だってあなた、自力じゃ基礎魔術も使えないわけだし」

「ワカッテテイウノハヒドイトオモイマス」

 

魔力量は多少増えたはずなのに、やはり才能がないのか相変わらず魔術はさっぱりだ。一応礼装に魔力を通すことで魔術は使えるが、やっていることは家電製品のスイッチを入れるのと大差ない。“魔術を習得した”とは、間違っても口にできない。いや、召喚陣を敷いての召喚術なら使えないこともないのだが、アレもアレで霊脈の上に陣を敷き、必要な魔力を注げば起動するので似た様なものだろう。

 

まぁ、この世界で生を受けた者の純粋な魔力だと起動しないのだが。世界が違うというのもあるだろうが、そちらは彼の身体が元の世界のものとなぜか同一規格なこともあり、あちらとつながる門の役割を果たすので理論上使えないことはない。

問題なのは、燃料に相当する魔力の質。肉体の規格が違うこともあり、魔力の質も異なるためそのままでは魔術基盤と繋がれないのだ。使っているのは同じ電気でも、周波数(ヘルツ)が違うと使えなくなったりするのと同じようなものだろう。また、こちらの世界の魔力はあちらと比べ身体強化の効率がいい。その分、それ以外の使い道にあまり向いていないようで、そもそもこちらの世界では魔術と呼べるようなものは発展していない。いや、アーティファクトをはじめ近い事象を引き起こせるものは無くもないので、絶対に不可能というわけではないのだろうが、“習得可能な技術”というカテゴリにはない。

そのあたり、はるか昔に何かあったのかもしれないが、彼のあずかり知ることではないし、別に掘り下げたり解明したりしようとも思わない。

そもそも彼らの目的は、もっと別のところにあるのだから。

 

「それで、次の教団の拠点は、どこだったかしら……」

「また一から探し直しです」

「……やっぱり、個人レベルで探すのは効率が悪いわね。どこかの機関なり組織なりの力を借りられると良いのだけど」

「どこまでディアボロス教団の息がかかっているかわからないから、下手なことはできないって言ったの“アウロラ”じゃないか」

「マスター、どこに教団の耳があるかわからないのだから、私の真名も教団の名称も控えるように言ったでしょう」

 

ジロリとフードの下から睨みを利かせてくるその迫力は、常人であれば腰を抜かすだろう。されども、今更ちょっとやそっとの威圧や迫力で動じるほど、彼の経験値は浅くない。

 

「っと、ごめんごめん。気を付けるよ、バーサーカー…じゃなくて、アウラ」

「本当にそうして頂戴。あと、確かに私のクラスはそうだけど、物々し過ぎてかえって怪しいからクラス名も禁止よ」

「はーい。あ、でも例の“シャドウガーデン”? ってのと協力できたらどうかな」

「教団と対立しているみたいだから選択肢としてはありだけど、今のところ遭遇したことないし、規模も拠点もわからない以上あてにはできないんじゃない? そもそも、敵の敵が味方とは限らないでしょ」

「それもそっか。なら、とりあえずアサシンを喚んで探してもらうのが無難かなぁ」

「でも、確かいま喚べるのって……」

「はい。ハサンたちはまだだし、みんなあんまりアサシン(暗殺者)してないんだよね。ロビンでもいてくれたらよかったんだけど」

 

なにぶん、いま彼に召喚可能なアサシンは“カーマ(愛の神)”や“カーミラ(血の伯爵夫人)”、あるいは“サンソン(処刑人)”だったりと、諜報活動には死ぬほど向かないメンツばかりなのである。それでもクラススキルとして気配遮断を持っているので、自分たちでやるよりかはまだマシだろう。

 

「この前破棄された聖骸と繋がっていた……」

「“アンデルセン(童話作家)”も“レオニダス(炎門の守護者)”もそういうタイプじゃないから」

 

片や戦闘能力も勤労意欲も皆無の厭世家、片や防衛戦の名手だからこそこっそり探るとか絶望的なスパルタ王。

うん、向いてねぇにもほどがある。もう苦笑いしか浮かんでこないくらいには。

 

「やっぱり、何事も地道に行くしかないってことね。苦労するわね、お互いに」

「ホントに。まさか、一度死んで(・・・・・)から自分の後始末をすることになるとは」

「本当よね。というか、人の死体を勝手に使わないで欲しいわ」

「それな」

「まぁ、私の場合まだ完全には死んでないのだけど」

「九分九厘死んでるなら、それはもう死んだってことでいいんじゃない?」

「完全には死んでないからかえって面倒なのよ」

 

本当に面倒なのか、深々とため息をついている。似た様な立場なので気持ちはわかるのだが、それでも聞くべきことはある。

 

「この時代のこと、なにか分かったりしない? これからどうやって死ぬとか、誰がやったとか」

「…………さっきも言ったけど、もうほぼほぼ死んでるのよね。その間のことは夢の中の出来事というか」

「ああ、覚めた(死んだ)ら忘れちゃう的な?」

「そんな感じ。誰かに会った覚えはあるのだけど、う~ん……」

「ま、そんなもんか」

 

夢には一家言ある身なので、アウロラの言わんとすることがわかるのだろう。

アウロラもそれ以上突っ込むことはせず、とりあえずは目先を変えてみることに。

 

「ところで、アレ大丈夫なの?」

「アレ?」

「“ロミオとジュリエッタ”とか、“スパイダー・マンイーター”とか」

「ああ、一通り読んでみたんだけど」

「読んだの?」

「結構面白いアレンジ入ってるから、ギリセーフじゃない? こっちの著作権の対象外だろうし、そもそも期限切れだろうし。それにキャスターの中には盗作騒動が起こった時に“本物よりも俺のほうが面白ぇだろ?”なんて言っちゃうのもいるんだから」

「……マジ?」

「マジマジ」

「……スゴイのね、異世界」

 

ちょいちょい異世界の話を聞かせてもらうことがあるのだが、魔人ディアボロスやディアボロス教団がかわいく思えるようなトンデモ話が次々に飛び出してくるので、もう驚くのにも疲れてしまったアウロラであった。

とりあえず、自分一人が疲れるのはなんだか釈然としないので、もう一人くらい巻き込まれてもらうことにする。

 

「はぁ、ベアトリクス、早く合流できないかしら」

「あれ、二人って仲よかったっけ?」

「是非とも仲良くなりたいわ。ほら、お友達って色々分かち合うものなのでしょう、苦労とか苦労とか苦労とか、やっぱり苦労とか。良く知らないけど」

(苦労しか分かち合ってない……)

 

でも、基本苦労を掛ける側にいることは自覚しているので、それは否定できないのであった。

 

「ごめん、ベアトリクスさん。大丈夫、一人じゃなければ割と何とかなる、人間は慣れる生き物だから」

 

“武神”とも称されるこの世界随一の女剣士相手に言うことではないのだろうが、どちらかというと昔よく遊んでいた女の子のおばさんという認識が強いので、あんまりそんな気はしないのであった。

まぁ、それでなくてもとんでもなく図太い性質なので、そんなこと関係なくこんなものなのだろうが。

 

(……今のところ、二人の手がかりになるようなものは見つかっていない。生きている可能性は低いけど、死んだという証拠もない。どこかで、生きていてくれたなら……)

 

一縷の可能性でしかないことはわかっていても、願わずにいられない。

 

魔力を制御する心得があったからか、悪魔憑きの症状の本質を察することは難しくなかった。だから何かできることはないかと、最低限の魔術知識を引っ張り出して模索した。

問題だったのは、彼の技量ではそれを解決できなかったこと。

 

自身の血を飲ませることで魔力のパスを作り、暴走する安定化させようとした。

あまりの魔力量の差から到底手に負えず、弾かれてしまった。

 

逆に相手の血を取り込むことで作ったパスを利用し、魔力を吸い上げることで症状の緩和を図った。

荒ぶる魔力が体内を蹂躙し、血反吐を吐いて倒れたのは一度や二度ではない。

 

最終手段として、唯一行使可能な召喚術を試みたりもした。

後輩と離れ離れになった時や古巣との連絡が取れない時でも召喚できるよう叩き込まれた召喚陣を敷き、自身の魔力だけでなくあの子の魔力すら使って術を起こした。

だが、召喚を成功させるどころか、碌に陣に光を灯すことすらできなかった。

 

そうして血塗れになって倒れる彼を見かねた周囲の人々は、意識を失っている間にあの子を教会に送った。同じことが起こらないよう、次に悪魔憑きになった少女は彼が動く前に早々に移送された。

 

彼らの行動を責める気も、恨む気もない。彼らはただ、無謀な挑戦を続ける仲間を案じただけなのだ。立場が違えば、自分も同じことをしたと思うから。

それでも、彼は諦めることができなかった。助けられる手段に心当たりはあった、実現するために何か足りないものがあっただけで。

 

ただそうしたいと思った / ただ助けたかった

 

できることがあるのなら、すべきだと思った / 立ち止まることなど、できなかった

 

結局のところ、人の性根は死んでも変わらないということだろう。

 

彼は必要なものをかき集めると旅に出た。自分の知る術を実現できる場所を、あるいは彼女たちを救える手段を求めて。もし万が一にも生きていたなら、その手を取れるように。そしてその旅先で、聖地の話を耳にした。

英雄オリヴィエが魔人ディアボロスの左腕を切り落し封印したとされている場所。ディアボロス戦争の際、大勢の魔剣士たちが倒され、その記憶と残存魔力が滞留する地。そして年に一回行われる“女神の試練”において、闘士の実力が一定以上の場合にそれに見合った戦士の霊が現れ、その戦士の霊と戦えるこの世界に存在する数少ない現存する神秘。

 

そこで彼は、年に一回の“女神の試練”とタイミングを合わせて、再度召喚を試みた。

そう簡単な試みではなかったが……結果だけを言えば成功だった。ただ一つ予想外だったのは、召喚されたのは彼が未だ出会ったことのない、この世界由来の存在だったことだろう。

とはいえ、これを機になにかの歯車が嚙み合った。

 

召喚に応じた彼女の目的は、魔人ディアボロスの完全消滅。聞けば悪魔憑きも彼女と無関係ではなく、教会の裏にはディアボロス教団なる存在がいるという。

世界の暗部と戦うなどと、またしても身の丈に合わないことだという自覚はあった。それでも、悪魔憑きの少女たちを見捨てることはできなかったし、伸ばした手を取ってくれた彼女の願いをかなえたかった。

そうして一人で始めた旅は二人になり、再会したベアトリクスと情報を共有し、協力関係を築くことになった。

 

その末に、どうやら自身もまた無関係ではなかったと知った。

それは同行者と彼の運命が、完全に重なった瞬間でもあった。

死んだ後の事など知ったことではないと言いたいのが二人の共通見解だが、“魔人ディアボロス”と“聖骸”……個人的には大仰過ぎる名称だと思うが、アレらを放置するのは色々な意味で危険だし、何より悪用されている以上は無責任過ぎるだろう。

 

彼女は魔人ディアボロスを完全に消滅させるために。

彼は教団が所有する聖骸を消し去るために。

それらは同時に、悪魔憑きの少女たちを救うための道でもあった。

 

「さて、とりあえず次の動きが決まるまでは……観光でも楽しみましょ、マイ・ロード」

「えっと、確かこの街の名物は……」

 

彼らとシャドウガーデン、ディアボロス教団と対する両者の運命が交わるまであと少し。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先日、晴れてミドガル王国魔剣士学園に入学を果たしたシド・カゲノーには秘密がある。

 

彼こそは、魔人ディアボロスの復活とそのディアボロスの力の私物化を目的とする“ディアボロス教団”と日夜暗闘を繰り広げる陰の組織“シャドウガーデン”を率いる“シャドウ”その人なのである!!

 

というとなんだかカッコよく聞こえるが、その実“陰の実力者ムーブ”を楽しみたいだけの趣味人。適当に言ってみた設定が尽く的中するというわけのわからん星の下に生まれながら、自分ででっち上げたこと故に“設定”と考えまったく信じていないというとても面倒な男だ。その上、やることなすことすべて変な方に転がって周囲の誤解に拍車をかけ、自己認識とのズレが悪化していく歩く傍迷惑。

せめてもの救いは、俯瞰的に見れば一応事態が好転して言っていることだろう。彼と周囲の認識の齟齬は、それはもう酷いことになっているが。

 

しかし、彼には他にも秘密がある。例えば、異世界からの転生者であるということだ。

転生前、彼は“陰の実力者”というものに憧れた。物語の主人公でもなければラスボスでもなく、陰ながら事件に介入し圧倒的実力を見せつける存在。そんなものに、彼はなりたかった。普通なら憧れは時の流れに押し流されていくものだが、彼はそうではなかった。成長してからもその憧れを持ち続け、影の実力者になるべく研鑽に励んだ。

表向きは平凡で目立たない所謂モブを演じ(ちなみに、演じることにも妥協することなく研鑽を積んだ)、裏では狂的とも言える努力を重ねる。全ては“いかなる力でも打倒できず、総合的な戦闘力はもちろん戦闘技術でも誰にも負けない存在になる”という本人の理想を叶えるため。

だが、現実とは無情なモノ。どれほど鍛えたところで個人が近代兵器に勝ることはない。それを悟った彼は、それでも妥協しなかった。肉体の性能に限界があるのなら、未知なる力にその可能性を求める。“魔力”“気”“チャクラ”“オーラ”呼び方は何でもいいが、そういったものを彼は探し求めた。

 

結局、生前はそれらを手にすることはなかったが、転生したこの世界には魔力が存在した。

それを知った彼は歓喜し、同時に生前と同じくちょっと…いや、本気で正気とは思えない修練と実戦を密かに積み重ねた。時に“スタイリッシュ盗賊スレイヤー”とかいう明らかに頭のオカシイ名乗りを上げながら“命が惜しくば金目のものを出せヒャッハー!”と世紀末もビックリなテンションで盗賊を蹂躙したり、悪魔憑きの少女を見つけた際には“自分の身体ではできない実験ができるぞヤッタネ!”とか倫理観をどこかに置いてきた所業に走ったりもした。

その結果、武術と魔力の技術を極め、世界的に見ても最強クラスの実力を身に着けるに至る……こんな狂人をなんて危ない境地に到達させているんだ、世界。

 

だが、そんなアブナイ男にだって、本心から敬う人間の一人くらいはいるものだ。

 

(まさか、こんな間近でシャドウ様の剣を見る機会に恵まれるなんて!)

 

自分の仕事で動けない七陰に代わってシャドウ直属の隠密及び雑用係という役割を与えられたシャドウガーデン“ナンバーズ”、ニューは自らの幸運に感謝した。

元は“聖骸”と“影”の報告のためにシャドウの下を訪れたのだが、そこには月光を浴びながら剣を振るうシャドウの姿。剣捌きには一切の無駄がなく、脚運びはまるで流れる水のように流麗。あまりに神々しいその光景に自然と膝を折り、首を垂れる自分に気付くがそれを当然のものだと思う。

 

(今私がすべきことはただ一つ、この神聖な一時を決して邪魔してはいけない)

 

そう自らを戒め、そっと息を殺す。

まぁ、当の本人は“人気のない場所で月明りを浴びながら舞うように剣を振るのってカッコよくない?”と思ってやっているだけなのだが。

 

やがて剣舞が終わりを迎えると共に、それまで一言も発さなかったシャドウが口を開く。

 

「ニューか」

「はっ、こちらに! 流石はシャドウ様、素晴らしい剣捌きでございました」

「ふっ、この程度手遊(てすさ)びに過ぎん」

(これほどの剣技を持ちながら、まだ満足していないのですね。この方の目指す境地は、我々には計り知れない高みにあるのでしょう)

 

もちろん、なんとなくフィーリングでかっこよさげなことを言っているだけなことに、ニューが気付くことはない。

 

「我が師がここにいたならば、果たしてなんと言ったかな」

(師? まさか、シャドウ様に師がいたというの!? いえ、でもおかしな話ではない。本来、我流ではどうしても限界がある。若くしてこれほどの境地に至るには、当然優れた指導者の導きが必要。そう、シャドウ様より直々に教えを賜った七陰の方々がそうであるように。いくらシャドウ様の才が隔絶したものだとしても、御一人でたどり着けるものではない。……いえ、それこそ、ディアボロス教団と対するため、長年に渡って積み重ねられてきた研鑽の結晶こそがシャドウ様なのでは)

(一人で高みに至ったっていう設定も孤高の存在っぽさがあっていいけど、やっぱり師匠キャラの存在は大事だよなぁ。なんというかこう、強さとかバックボーンに深みが出る)

 

一応ねらい通りの印象を与えることには成功しているようだが、当の本人に自覚がないのがなんとも。

きっと、全てを知る第三者がいたのなら頭と胃を抑えて蹲るか、シャドウの頭を思いっきり殴っていることだろう。

 

「シャドウ様! シャドウ様の師とは、いったい……」

「最早、二度と相見えることはない。遠い、はるか遠い場所に旅立ってしまったからな(僕が)」

(そうか、シャドウ様の師は彼にすべてを託して……)

「だが、我が師の教えは今もこの胸に」

「……はい。例え亡くなられていようとも、彼の御方の志はシャドウ様と共に生きておられます。今までも、これからも……シャドウ様の一部として戦って、おられるのですね」

(おおっ、ニュー迫真の演技。嗚咽も涙の流し方もすべて自然だ、アカデミー賞ものじゃないかな?)

 

演技ではなくガチで泣いていることに気付いていないこのバカ者を、一体どうしてくれようか。

 

(まぁ実際、師匠のおかげで今の僕があるんだけどね。あの人が教えてくれたことがあったから、魔力があるってわかってすぐに魔力制御の訓練を進められたわけだし)

 

思い出すのは転生前、最初の死(おそらく)より数ヶ月前のこと。

シド・カゲノーは……いや、ここではあえて影野ミノルと呼ぼう。ミノルはあの時も未知なる力、魔力を求めて山に籠っていた。

 

(たしかあの時は…そう、魔力を感じ取ろうと全裸で断崖絶壁から飛び降りようとしていたんだっけ)

 

そうして“いざI can fly!!”しようとしたところで、待ったがかかった。何者かが、突然ミノルの腰に抱き着いてきたのだ。

 

「何があったのか知らないけど、自殺なんてやめなさい! 生きていれば、きっといいことがある! 死んだらそのいいことと巡り合うこともできなくなるんだよ!」

 

どうやら、自殺志願者と思われたらしい。まぁ、格好が極めて不審過ぎるとはいえ、やろうとしていることを見ればそう間違った判断ではないだろう。しかし、この時のミノルは魔力を追い求めるあまり割と本気で迷走していたため、“自殺を思いとどまらせようとした”のではなく“自分の邪魔をされた”と思ってしまった。

 

「離せ! 離せぇ! 僕は、僕は魔力を感じ取らなければならないんだぁ! ジャマヲスルナァ!!」

「は、魔力…ぶげらっ!?」

 

腰に抱き着いた相手に思いっきり膝蹴りをかまし、拘束が緩むと同時に腕を掴んで投げ飛ばした……のだが、彼は妙に打たれ強く、地面に叩きつけられるや否やガバッと起き上がるとひどく冷静な声でこう言った。

 

「いやいや、そんなことしても別に魔力は感じないよ」

「は?」

「やるならこう、集中できる姿勢で自分の内側をね」

「瞑想なら何度もしてきたけど、何も感じなかった」

「漫然とやってもね。いいかい、具体的には……」

 

本来こんなこと教えるべきではなかったのだが、思い切り地面に叩き付けられたことで若干意識が朦朧としていたと言わせて欲しい。仕方なかったとは言わないが、軽い脳震盪を起こしていたのでちょっとだけ大目に見てもらえないだろうか。

ちなみに、意識がハッキリとしてきたところで“ヤッベ!?”と本気で焦ることになるのだが、時既に遅し。持ち前の人たらしっぷりですっかり心を開いていたミノルは自身の夢である“陰の実力者になりたい”ということを熱弁。正直、その夢そのものに対しては全く理解が及ばず宇宙を背負うことになるのだが……

 

(とりあえず、他人様に迷惑をかける類のものじゃなさそうだし)

 

ということで否定はもちろん軌道修正をかけるようなこともせず、その熱意と努力、真剣さは紛れもない本物だったことから“|人間性についてはちょっとどころではないくらいに難があるが《クリストファー》()決して諦めない不屈の精神力の持ち主(コロンブス)”の言葉を贈ることに。

なにしろ、少なくともアレみたいに自分以外の全てを願いを叶えるための道具とみなす…というわけではなさそうだったし。

 

「いいかい。ささやかでも、一歩ずつでもいい。諦めずに前に進んでる、ってことが大事なんだ。そうすれば、必ず目的地に辿り着ける……そういうものなんだよ」

 

これは、同時に彼自身の旅路を表した言葉でもあった。

だからこそ、見果てぬ夢を追いかけるミノルにこの言葉を贈ったのだろう。

……もちろん彼はミノルが夜な夜な“スタイリッシュ暴漢スレイヤー”と名乗ってアレな所業を繰り返していたことは知らないのだが。

 

まぁ、それはともかくとして……

 

「それはそうと魔力の使い方を教えてください、師匠!」

「なんで師匠?」

 

自分の夢を笑わず、呆れず、真剣に聞いて応援してくれたこと、さらに魔力の存在と制御法を知るが故だった。

 

「いや、それは一旦置いておくとして……ごめん、無理」

「なんでですか!? 師匠、魔力を使えるんですよね!」

「確かに俺は魔力を使う方法を知ってるけど…なんというか、自転車に乗れるからって自転車を一から組み立てられるわけじゃないっていうか。いや、ざっくりとした構造はわかるからやればできるかもしれないけど、失敗したら命が危ないし、そんな無責任なことはできない」

 

実際、彼の魔術師としての力量はド底辺、それどころか素人に毛が生えたレベル。とてもではないが、魔術回路の開発なんてできるはずもない。

だが、一つ懸念もあった。それは、ミノルの執念ならいつか自力で魔術回路を開きかねない、ということだ。あり得ないと否定するには、彼の瞳の輝きはあまりにも強すぎた。人類史にその名を刻んだ個性を目の当たりにし、世界を動かしてきた彼らとともにあってからこそ、彼にはその懸念を考え過ぎと切って捨てることができなかった。

 

故に、魔導と関わる上での最低限の知識は与えることにした。

それは魔力の制御法であり、声高に魔力について触れないことであり、そして……

 

「いいかい。もしも本当に魔力を扱えるようになったら、この人に連絡を取りなさい。俺が昔お世話になった人なんだけどね。変に偉ぶるというか一見すると尊大っぽいんだけど、根が善人というかどうやっても外道にはなれない人だから、きっと君のことも悪いようにはしないはずだよ」

 

とある連絡先を残して、二人は別れた。その後彼がどこに行き、何をしていたかはわからない。そもそも、なぜあんな山の中にいたのかさえ。

確かなことは、ミノルにとって彼はただ一人自分の夢に寄り添ってくれた友人であり、進むべき道とそのための手段を示してくれた恩人だったということだ。故に、ミノルは彼を“人生の師”として敬意を払う。転生する前も、した後も。

 

(でも、魔力を扱うのは命懸けと聞いたけど、言っていたほどのリスクがあるようには思えないんだよなぁ)

 

その点だけは常々不思議なのだが……まぁ、異世界だしそう言うこともあるのだろう。

 

とまぁ、昔のことを思い出しつつニューの報告を適当に聞いていたシャドウだったが、中々に心躍るワードが飛び出してくるではないか。

 

(“聖骸”と呼ばれるミイラに、そこから呼び出される“影”か……みんな設定を深めようと頑張ってくれてるんだなぁ。新しい敵、未知の脅威はテコ入れの定番。分かっているじゃないか!)

 

テンション上がって来たので、早速この設定に乗ってみることにする。設定ではなく現実だとは、全く微塵も思わない。

 

「…………」

「シャドウ様?」

「決壊の時は近い。聖骸は鍵だ、奴らはやがて門を開き、一騎当千の(ツワモノ)どもが世界を蹂躙するだろう」

(まさか、この方は既にそこまで予期して!?)

 

適当に言っただけなのだが、割と的中しているから恐ろしい。抑止力の後押しでも受けているのだろうか。

 

「……ならば、聖骸の回収と並行して我々も早急に戦力増強を」

「いや、それだけでは足りない」

「え……」

「ただ強いだけの敵と侮るな。奴らは理不尽と埒外が跋扈する地獄を生き抜いてきた猛者たち、あらゆる手練手管を用いてくるぞ。それこそ、我の予想をも超える超常の一手がないとも限るまい」

(そんな……シャドウ様の想像を超えるような事態だなんて、そんなことが、本当に?)

 

いや本当に、どうしてこの男はこうもポンポン的を射てくるのか。碌に情報もなく、全然何も考えていないのに名探偵も真っ青な勘の冴え。これを意識的にやっているのだとしたら恐ろしくも素晴らしい……が、残念なことに“そういう設定だと面白いよなぁ”というただのノリと勢いである。おお、テリブル。

 

「では! では我々はいったいどうすれば……!」

「鍵を探せ」

「鍵、それは聖骸ということでしょうか」

「ディアボロス教団のねらいが門を開くことであるのなら、こちらの勝利条件は門を閉ざすこと。即ち、門を閉じるための鍵を見つけ出せばいい」

「なるほど! まだ奴らが見つけていない、存在すら把握していない鍵があるということですね。確かに、それがあればまだ状況はひっくり返せます。流石はシャドウ様、既にそこまで把握しておられたとは。急ぎアルファ様に報告し、シャドウガーデンの全力を以て鍵の捜索に当たります!!」

「我は独自に動く。少々、鍵の行方に心当たりがあるのでな」

「っ!! 承知いたしました!!」

 

ニューは感動しているが、もちろん心当たりなんぞない。単に言ってみただけである。

こうして今日も勘違いとすれ違いは加速するのであった。

 

 

 

  *  *  *  *  *

 

 

 

某国某所のとある宿屋の二階にて。

 

「ヘッッックション! ぶぇっくしょん!?」

「ん~…なぁにマスター、またくしゃみして。やっぱり風邪なんじゃない?」

「そうかなぁ……」

 

ちなみに、同時刻に彼にまつわる噂が二度交わされたことがくしゃみを二回したことと関係があるかは、誰にもわからない。

 




元人類最後のマスター
なんやかんや色々あって元居た場所に戻ってきたわけだが、なぜかしっくりこず割としょっちゅういろいろなところをウロウロするように。その末になんか変な少年で出会ったのだが、流石にちょっと心配だったので必要最低限のことを教えたり、昔お世話になった人の連絡先を教えたりしていた。が、それらが活かされることはなかった、今生では。
ちなみに、死んだのは別に魔術協会や聖堂教会などの暗躍の結果ではなく、運命力を使い切っていたが故の純粋な不運。魔術世界とはその功績を以て相互不干渉という契約が結ばれていたので、魔術協会も聖堂教会も手出しできなかった。代わりに、彼も魔術世界とは無関係の一般人になったわけだが。
しかし、それはあくまで存命中の話。死んだあとまでは契約対象外だったので「面白いサンプルゲットだぜ!」とばかりに葬儀場から遺体をちょろまかされた。が、その後いつの間にかサンプルは消失していた。
色々縁がこんがらがっていたからか、地獄や冥界などなど色々なところから引っ張りだこだったせいか、気付くと異世界転生していた。アルファやベータとは少し年の離れた幼馴染、なにかとレパートリー豊富なので色々面倒見たり遊び相手になってたら“兄さん”と呼ばれるように。アルファが悪魔憑きを発症すると「ならば兄として妹を助けねば」「幸い手立てがないわけではない」ということでできる範囲(血反吐吐くくらいは許容範囲)で治療しようと頑張る。でもダメだった、アプローチは悪くなかったが純粋な技量不足、サーヴァントの召喚も試みるもこれまた純粋に場所が悪かった。
結果、教会に移送されてしまい、さらにはベータまで。その後、できることを探すための旅に出る。旅先で“女神の試練”を知り、タイミングを合わせてみてはどうかと思い立ち試してみたらうまくいった、また血反吐吐いたけど。召喚されたのは、これまで縁もゆかりもなかったこの世界由来のバーサーカー。この時点では他のサーヴァントは呼べなかった。とりあえず、バーサーカーの話を聞くと自分の目的と重なる部分もあったため、そのまま契約を続行して行動を共にするようになる。

バーサーカー
真名:魔人ディアボロス
異世界で召喚された最初のサーヴァント。存命中のことは一応覚えているのだが、魔人ディアボロスになってからのことはちょっと怪しく、倒されてからのことは夢を思い返すようなものでほぼ覚えていない。
まだこの時点だと完全には死に切っていないし、ディアボロス教団が自分を使ってまたぞろ碌でもないことをしようとしているみたいだし、そもそも死んでまで体勝手に使ってんじゃねぇよ。というわけで、主目的は自分を完全に殺すこと(型月名物自分殺し?)。ついでに教団も壊滅させたいなぁ……え、マスターってば悪魔憑きを何とかしたいの? オッケーオッケー、そもそも元凶アイツらだから潰しちゃおう。治療法は難易度クソ高だけど一応あるし、悪魔憑き関連の問題は連中潰せば大半の問題解決するか解決の糸口になるから、とりあえず潰そう。というわけで相棒的立ち位置で一緒に行動している。
他のサーヴァントの召喚が可能になると、新顔に会う度に「濃いなぁ」と圧倒され、「こんなのと付き合ってれば、そりゃ私くらい普通に許容範囲か」と納得する。魔人ディアボロスの悪名とはいえ、知名度は折り紙付きなので戦力はトップサーヴァントとも渡り合える。バーサーカーでありながら狂化のランクは低く、意思疎通に問題がない優良サーヴァント。ただし、ヴラド三世の「鮮血の伝承(レジェンド・オブ・ドラキュリア)」に近い宝具を有しており、発動すると魔人ディアボロスに変身し幸運以外の全ステータスが向上する反面、ランクEXの狂化が付加されマスターすら判別できなくなり暴走する。その力は、魔神の柱にすら匹敵するという。

英雄オリヴィエに似ている気がする女剣士
異世界において武神とまで呼ばれた女剣士……なのだが、最近ちょっと自信喪失気味。
それというのも、旅先で姪に良くしてくれていた青年と再会したらなんかすっごくヤヴァイ同行者いるし、よくわからん技術で呼び出された連中はドン引きレベルの個性の塊だし……いや、このあたりまでなら自信を無くすことはなかった。問題なのは対人魔剣……中でも多重次元屈折現象とか言う意味不明現象を剣技のみで引き起こす変態共。自信をへし折られ、いい歳して自分が進むべき道を見失ってしまった。だが、捨てる神あれば拾う神あり。戦い方が似ているということもあり、とある舌切り抜刀斎に弟子入り。剣術の他、家事全般の技量がメキメキ向上中。色々あったが、気持ちに折り合いをつけて剣士たちには敬意をもって接している。
ただしござる侍、テメーはいつか斬る。初めて顔を合わせて以来、煽りに煽られては斬り伏せられるので一方的に怨敵認定している。
とりあえずディアボロス教団のこととか知ったし、絶賛捜索中の姪のこともあるので青年とは協力関係。ただし、関係者に振り回されるのであんまり近づきたくない。でも、相方が積極的に巻き込みにかかっているので逃げられない、かなしみ。

七陰第一席と第二席
特に理由はないのだが、なんとなく煮詰まり気味な時に青空を見ていたら昔のことを思い出した。幼い頃の綺麗な思い出として若干美化されているかもしれないが、それでも大切な宝物。
もしかしたら淡い恋心くらいあったのかもしれないが、今となっては本人たちにもわからない。とりあえず、今好きな人は自分たちのトップ。
なので、兄については「日常の象徴」「裏の世界に身を浸した自分たちと違い、表の世界で平凡かつ穏やかに一生を終えるべき人」「彼がありふれた幸せを享受できるのならそれでいい」と、自分たちとは別世界の存在としつつもその幸せを願っている。だからこそ、もしもディアボロス教団との鉄火場、その渦中で再会するようなことがあればきっと……その表情は大いに曇ることだろう(wktk

頭のオカシイ狂人
ニューを介してなんとも厨二心をくすぐる設定を聞かされて日々の愉しみが増えてご満悦。でもそれが設定ではなく現実であることを、彼が認識する日は来るのだろうか。なにぶん、これから相手をする連中は彼でも手を焼くレベルがウジャウジャいるので、早めに認識を改めた方がいいのだが……どうなることやら。
とりあえず、この先陰の実力者ムーブができるイベントが目白押しなのだが、度々なんかよくわからん連中に邪魔されて思う様に楽しめない。しかも、七陰以上の実力者を引き連れ自分以上に陰の実力者っぽいポジションに居座る輩をライバル視するように……だが、当の本人は全く心当たりがないのでとてもとても困惑する。
にしても、適当に口にしたことが尽く現実になるな。案外、“口にしたことが現実になる呪い”にでもかかっているのではなかろうか。

聖骸
約二十年前、ディアボロス教団が“魔界”に関する実験をした際、偶然引き込んだ木乃伊。一見すると何の変哲もない躯に見えるが、様々な角度からの調査の結果、大量の魔力を流すと黒い人型の影が召喚されることを解明する。その際に呼び出された影の戦闘能力は、ものによってはナイト・オブ・ラウンズすら凌駕する。が、逆にまったく戦闘能力を持たない個体もいたりするので、誰が呼び出されるかは運任せ…つまりガチャ。
現在は木乃伊をバラバラに解体し、一定以上の階級の者たちに配布している。どうやら、細かい部位に解体すると呼び出される影はある程度固定されるらしい。
しかし彼らは知らない、影の召喚は木乃伊が持つ特性の一つに過ぎないことを。
実は聖骸を破壊したり影を倒したりすると、本来の契約者の下に契約が戻る。そちらに呼び出された場合、陰ではなくしっかりとした実体と自我を有して呼び出される。が、魔力消費が激しいので基本長続きしない。


聖骸に魔力を通すことによって呼び出される人型の影…稀に人の形とは思えないものもあらわれる。基本的に優れた戦闘能力を持つ個体が多く、ナイト・オブ・ラウンズや七陰ですら苦戦する個体も少なくない。
だが、実はそれですら彼ら本来の力のごく一部。なにしろ影とのコミュニケーションはほぼ不可能なため、彼らが得意とする戦い方や力の使い方は手探りで試していくしかない。そのため、防衛戦に長けた個体を特攻させたり、そもそも戦闘向きではない個体を矢面に立たせたりするなど、適材適所で運用することは難しい。もし彼らが実力を発揮できる形で運用できたなら、攻略は極めて困難なものとなる。
まぁ、コミュニケーションが取れる…つまり自我を有した状態で呼び出した場合、呼び出された瞬間に殺されている可能性が高いので、これでよかったのかもしれないが。
余談だが、シャドウの力は自我を有したトップサーヴァントと呼ばれる個体にも劣らない。これを知ったとあるマスターは「あの子ホントに人間?」とつぶやいて割と引いた。
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