導入の導入位ですが、カルデアってそのうち影の国的なポジションになったりしかねないなぁと思ったのがきっかけです。
あんなこと続けてたら、そのうち居場所なくしそうでしょ?
「世界座標を観測、極東日本」
「時間軸座標……確定。あら、西暦二千年代初頭だわ。大当たりじゃない」
「こらこら諸君、久しぶりの慣れ親しんだ時代だから浮かれるのもわかるが、それは早とちりってやつだぜ。
ここでしくじれば、またどことも知れない土地、いつだかわからない時代、下手をするとどこぞの剪定事象や
「すみません、ダ・ヴィンチ所長代理」
「至急、確定作業に入ります」
僅かに緩んだ空気を若々しい声が戒める。
威厳とかそういう類のものは感じさせないはずなのに、その声には聴く者の芯に響く何かがあった。
それを示すように決して強くはない声を受けて、即座にそれなりの広さがある室内の空気が引き締まった。
それは声の主への全幅の信頼の賜物であり、彼らが即座に己を戒め切り替えることのできるプロフェッショナルの集団であることの証左だった。
「アンカー固定、存在証明……完了」
「お、今回はずいぶん深くいったな。計測したところ、向こう1・2年ほどは留まれそうですよ」
「へぇ、そいつは有難い。大抵、もって数ヵ月、下手すると数日で流されてしまうっていうのに」
「所長代理」
「いや、皆まで言わずともわかっているさ。せっかく長期的に腰を下ろせるんだ、羽を伸ばさなくちゃ損ってもんだ」
「さっすが天才!」
「わかってますね!」
「なぁに、私は万能の天才だからね。人の心理を読み取るくらい訳ないさ。
とはいえ、それも全ての作業を終えてからだ。さぁ、あとはこまごまとした雑事だけとはいえ、だからこそさっさと済ませてしまおう」
「「「はい」」」
(とはいえ、本当にこれだけ長期で留まれるのは久しぶりだ。
何かあるんじゃないかと疑ってしまうのは……考えすぎだといいんだが。
まぁ、何かあるなら対処するし、何もないなら羽を伸ばす。やることに変わりはないか)
『人理継続保障機関 フィニス・カルデア』それが彼らの所属を示す名称。
かつては国連所属の秘匿機関として活動していたが、それも随分と昔の話だ。
時を超え、世界を超え、虚数の海にすら潜ってきた彼らは、気付くと世界に居場所を失っていた。
どこにでも行ける代わりに、どこにもいられない。
それが今のカルデアだ。
度重なるレイシフトやゼロセイルの結果、存在が不安定になってしまったが故の結果。
人類史を救うために繰り返したそれらの代償は、安くはなかった。
とはいえ、彼らに後悔はない。
やらなければならなかった。そうしなければ彼らに残された道は“終わり”だけ。
終わるのが嫌なら進み続けるしかなく、進んだ代償が現状だとしても仕方がないと思う。
“終わる”ことに比べれば、まだマシだから。
生きるために戦い続けた彼らは居場所を失ったが、まだ生きている。
ならまぁ、なんとかなるさ。
数々の苦難を乗り越えてきた彼らにとっては、これもその一つに過ぎないのだろう。
しかし、それはそれとして折角の長期的な安定滞在だ。
次はいつこれほどの長期にわたって留まっていられるかわからない。
ならば、今だからこそできることをするべきだろう。例えばそう……
「みなさん、お疲れさまでした。作業はどうですか?」
「ああ、キリエライト君。ちょうど今、最後のシークエンスが終わったところだ」
「折角だし、藤丸君と一緒に外を散策してきたらどう? ついでに、周辺情報も集めてくれるとありがたいんだけど」
「はい。では、先輩を探してきます」
「マシュ、ちょっといいかい?」
「? どうかしましたか、ダ・ヴィンチちゃん」
「うん、ちょっと聞きたいんだが……君、学校に行ってみる気はあるかい?」
「………………………………………………………………はい?」
※カルデアはレイシフトやゼロセイルのやり過ぎで武蔵ちゃんみたいな漂流者になっています。カルデアの技術がある分、ある程度一所で安定して過ごすこともできますが、それも基本的には数ヵ月程度という有様。
そんな中「ありふれ」の地球側に出てしまい、我らが魔王様たちと同じ高校に。学生生活を体験したことのないマシュへの、カルデア職員一同からの粋な計らいってやつです。
マシュとしては藤丸と一緒に登校とかしたかったのですが、(たぶん)高卒なので「勘弁して」と辞退。ただ、今風の若者らしくバイトとかしてこの時代を満喫しています。ちなみに、マシュは同級生たちから「大学生の恋人がいる」と思われています。
※以下、セリフのみのダイジェスト版
(天職は…………守護者、ですか。ステータスも耐性と魔耐重視、次に体力が来て、筋力や魔力、そして敏捷。
概ね、サーヴァントとしての私のステータスとバランスは同じですか。ただ、この数値が高いかどうか……高いもので150、低いものは40。果たしてこれは、どの程度のものなのでしょう? それに、技能欄にある『霊装顕現』。これは、人目のない所で検証が必要ですね)
「……やれるんだな?」
「やります」
「待ってください、それは危険なのでは?」
「キリエライトさん?」
「南雲さん、あなたは決して戦闘向きではありません。なのに……」
「危険なのはどこでも同じだよ。それに、他の場所じゃ役に立たないけど、ここでならできることがあるなら、ね?」
「…………………………白崎さんがあなたを好いている理由が、分かった気がします」
「え? あ、いや……」
「あなたは、少し先輩に似ています。それに、私も友達が悲しむのは見たくありません」
「キリエライトさん?」
「次のベヒモスの突進、私が止めます。そのタイミングで行ってください」
「で、でも!」
「私の天職は守護者だそうです」
「それは、聞いてるけど……」
「適材適所、違いますか? 私は私にできることをします。ですから南雲さん、あなたも」
「…………わかった」
「ご武運を。必ず、戻ってきてください」
「ははは、それフラグっぽくてちょっと怖いんだけど」
「フラグ、ですか?」
「くぅっ! 『
(サーヴァント化しても思うように動けない。やはり、先輩とのラインが切れたせい?
ならせめて……)
宝具、偽装登録……
「キリエライトさん?」
「八重垣さん、白崎さんは……」
「眠っているわ。お医者様は精神的ショックから心を守るための防衛措置じゃないかって」
「そう、ですか。あの……」
「キリエライトさんのせいじゃない。あなたは必死にベヒモスの突撃を止めてこれていたのでしょう?
感謝こそすれ、あなたを非難する人なんていないわ。香織も、きっと……」
(先輩に……会いたい。私、どうしたら……)
「やれやれ、ようやく通信が繋がったと思ったら、思っていた以上に大ごとになっているね」
「あの、ダ・ヴィンチちゃんはこの状況をどう思われますか?」
「ん? ふぅむ、エヒト神と言ったかな? まずその神様が胡散臭いね、神様の思考が我々のそれとはかけ離れているのは今更だけど、色々と不審点が多い……が、情報が少なすぎる以上、推測の域を出ない。今はそんなことより、より現実的な話をすべきじゃないかな」
「というと?」
「マシュ、戻ってくる気はあるかい?」
「戻れるんですか!?」
「ああ、マシュだけ……だがね」
「なんでキリエライトだけ!?」
「わ、私たちは!?」
「すまないが、我々の有する技術による移動は、対象にも高い適正が求められる。
マシュに適性があるのはわかっているが、君たちの場合は未知数だ。
当然、検査しなければわからないし、そのためにはそれなりの設備がいる」
「そう、ですね。適性の有無を調べることは、現状不可能でしょう」
「あの、もし適性がない人がその移動をしたらどうなるんですか?」
「まぁ、移動できないならまだマシ。最悪、どこかの隙間に落ちて行方不明、なんてこともあるが、それでもやるかい?」
「それで、マシュ。君はどうする?」
「私は……残ります。皆さんを、クラスメイトを置き去りにしていくことはできません」
「うん、まぁ君ならそういうだろうね。我々としても、君の意思は極力尊重したい。
となれば、次善案で行くか、いや、ホントはこっちになるだろうと思ってたんだけどさ」
「次善案ですか?」
「じゃ、藤丸君後は任せたぜ」
「は? ま、まさか先輩を!?」
「当然だろう。君たちはコンビだ、マシュが戻らないなら藤丸君がいくしかないだろう」
「すみません、先輩。私のために……」
「気にしないで、いつもは俺がマシュに心配かけさせてるんだからさ」
(シュ~ン……)
「あ、あぁそうだ。ダ・ヴィンチちゃんから霊基グラフのコピーを預かってるんだ。これを使って応援を呼べってさ」
「みなさんを……できるんですか?」
「魔力とか通信状況の都合で基本七クラスを一人ずつ、しかもランダムらしいけど……」
「それは……賭けですね」
「うん」
「静謐さんはまだマシとして、頼光さんや清姫さんが来たときは、私が先輩を守ります!!」
「ぁ、うん。静謐も静謐で不安だけど、積極的じゃないだけまぁ確かに。
あとは黒ひげとかも不安だ。ケモミミとかいるらしいし、絶対暴走する……」
「アタランテさんたちなら返り討ちにしてくれますが、この世界の獣人と言う方々はあまり強くないそうですからね。それに不安と言えば、ヒトヅマニアの御二人もです」
「イスカンダルもなぁ……征服だぁとか言いだしそうだし」
「神嫌いのギルガメッシュ王も危険かと……」
「…………」
「…………」
「まぁ、個性の塊みたいな人ばっかりだからなぁ」
「はい。エミヤ先輩ではありませんが、頼りになる方々の反面暴走力も尋常ではありませんから」
「「はぁ~……」」
「アルターエゴ。殺生院キアラ。救いを求める声を聞いて参上いたしま……」
「チェンジで」
「これがハルツィナ樹海……」
「圧巻です」
「ん~、開拓しがいのありそうなところだね」
「「え……」」
「みんないなくなっちゃえば、もう私たちの土地だよね?」
(先輩!? バニヤンさんを連れてきたのは不味かったのでは!?)
(だよね! 俺も今そう思った! 不味い、このままだと樹海が消える!?)
「我こそは冥界のエレシュキガル。死の国を統べ……って、何なのだわこのゴーレム!?」
「へぇ~、これが異世界の神様かぁ」
「あれ、さっきまでのウザさはどうしたんですか?」
「だな。なんだよ、いきなり神妙になっちまって」
「ん……きっと、更なるウザさの前触れ」
「………………………………………………………………………………………………………………同じ神なのに、何なんだろうね、この差。ミレディさんは世の不条理を見たよ」
(((そんなに嫌な奴なのか……)))
「ふ、踏んでもいいんじゃよ?」
「………………」
「……先輩?」
「あ、いや、カーミラとかふーやーちゃんとかと相性良さそうかなぁって」
「どうでしょう? カーミラさんたちは拷問がお好きなのであって、そういう性癖かというと……」
「拷問とな? そこんとこちょいと詳しく教えてたも」
((あ、これもしかしなくてもヤバいやつだ……))
ミレディのウザさ、私には表現できる気がしない。