やみなべのネタ倉庫   作:やみなべ

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今回は「ありふれ」ではなく、インフィニット・ストラトスと作者的不朽の名作皆川亮二先生作品「ARMS」のオリ主クロスものでございます。
互換性高いと思うんですよ、この両作品って。


〈IS×ARMS〉インフィニット・ストラトス ~不思議の国の天使~

閑静な住宅街を進む、一台の高級車。

 

高級住宅地でもない場所であることを考えると、やや浮いてこそいるもののそれ自体は特に問題はない。

車が止まったのが、古式ゆかしい日本家屋なのも別にいい。

その家に「新宮流古武術道場」という看板がかかっているのも良いだろう。

 

では、何が問題なのかと言うと……

 

「いい加減にしやがれ、このクソガキがぁ!!」

「うっせぇ、クソ親父ぃ!!」

 

荒々しい怒声と重厚な打撃音が響いてくることだ。

 

道場なので多少の騒音は仕方がないのかもしれないが……これはない。

明らかに練習とか鍛錬とかではないし、時代遅れな道場破りの線も薄い。

というか、どう聞いたとしても親子喧嘩以外の何物でもないだろう。

 

ただし、怒声や打撃音の質的に「ただの」とは間違っても言えない。

それを示すように、道行く人々は誰もが顔を伏せて足早に通り過ぎていく。

無理もない、誰だって厄介ごとには巻き込まれたくはない。

こんな、あからさまに訳ありそうなことが起こっている家の前など、さっさと通り過ぎるに限る。

逃げるように通り過ぎる人々を、いったい誰が非難できようか……。

 

にもかかわらず、わざわざそんなわけありそうな家の前に留まる車の主とは何者なのか。

 

「まったく、相も変わらずの馬鹿どもが……」

 

運転席から降りてきたのは、不機嫌さを隠しもしない四十代の中年男性……と言うには些か精悍過ぎるか。

欧州風の堀の深い相貌、見事な赤毛の下の眉間には深く皺が刻まれ、どちらかと言えば老けて見えそうな外見をしている。それでも一見すると三十路ほどに見えるのは、老いや衰えと言ったものをまるで感じさせない力強い顔立ちや、一分の隙もない立ち姿故だろう。細身ながら弱々しさはなく、むしろしなやかな筋肉を備えていることがラフな服装の上からでもわかる。

屋敷から響く不穏な騒音とはまた違った意味で、この場には些か不釣り合いな人物だった。

 

だが、彼と言う人間を知る者ならなにも不思議は思うまい。

何しろここは、彼にとって「生家」ではないにしても「実家」と言うべき場所なのだから。

独り立ちした成人男性がたまの帰省をする、なにも不思議なことはない。

 

「こんの石頭が! 頑固親父なんて今どき流行らねぇんだよ!」

「はっ! そういうことは俺に一発でも入れてからにしやがれ!!」

「んだと……やったろうじゃねぇか! 往生しやがれ!」

「顔洗って出直してこい、百年早ぇ!!」

「おお…ぐがっ!?」

「ふん……」

 

近所迷惑を顧みることなく続く騒音に不機嫌そうに鼻を鳴らしながら、久しぶりの木製の門をくぐる。

喧嘩の理由も双方の主張も、彼は承知している。だからこそ、この衝突が仕方がないものであることを知っていた。

馬鹿だとは思っても、否定はしない。どちらの主張にも、それなりの理があるのだから。

 

勝手知ったる実家。彼は迷いのない足取りで、現在進行形で怒声と打撃音の飛び交う道場の前を素通りし、母屋へと向かう。

庭の一角では、一人の黒髪の女性が丁度洗濯物を干しているところだった。

 

「あら、アルじゃない。どうしたのよ、大学は?」

「今日、僕のコマはない。受け持ちの患者も安定している。子どもたちはあいつと高槻のところに遊びに行った。他に聞きたいことは?」

「全く、相も変わらず可愛げのないやつね、あんたは……」

 

女性は洗濯物を干す手を止め、「やれやれ」とばかりに肩を竦めて見せる。

もう彼是三十年以上の付き合いになるが、可愛げのなさは全く変わらない。

まぁ、子どもの頃からこうなのだから、年を食ったからと言って今更可愛げが身につくはずもない。

可愛げがない事は自覚しているとはいえ、いい歳をしてそんなことを言われた男性……アル・ボーエンにもいいたことはある。

 

「四十路を超えた男にそんなものを求めるな、恵。そういうお前は仕事は良いのか?」

「今日は午後からよ。うちの社員は優秀だから」

「ブルーメンカンパニー専務取締役か、偉くなったもんだ」

「そういうアンタは藍空医大の医学部部長でしょ? あの生意気なガキがねぇ……月日が経つのは早いわ」

 

気心の知れた者同士だからこそかわせる、皮肉の応酬にも似た遠慮のない物言い。

彼らの年齢や社会的地位を考えれば、在り得ないやり取りだろう。

 

だが、二人とも問題があるとは全く思っていない。

いい歳なのは自覚しているが、社会的地位なのお互いの間でどれほどの意味があろう。

若かりし頃は生命すら預け合った、ある意味肉親以上の間柄だ。何を遠慮することがあろう。

まぁ、この二人の場合、そもそも肉親と言うもの自体がいなかったりするのだが……。

 

「隼人は……まだ納得していないようだな」

「そうね。気持ちはわかるけど」

「あの馬鹿のことだ、早々納得するはずがない」

「どっちのこと?」

「両方だ。二人揃って頭が悪い」

「クククククク……ま、否定はしないわ」

 

我が子と夫を「馬鹿」と切って捨てられたにもかかわらず、女性……新宮恵は愉快そうに笑うばかり。

本心からそう思っているのか、それともアルの言う「馬鹿」が単なる罵倒ではないと思っているのか……あるいは、その両方かもしれない。

 

「酷い母親だ」

「…………利口だったら、きっと私たちはここにいないわ。アンタは確かに天才だけど、なんとかと紙一重って言うでしょ」

「………………………………僕をお前らと一緒にするな」

「一緒よ。自分のことを運命とかに決められるのが我慢ならない。反発してぶち壊して、自分でレールを引かなきゃ気が済まないひねくれ者。そして、あの子たちもしっかりその血…いいえ、意思を受け継いでくれた。

 それ自体は、喜ぶべき事なんでしょうね」

 

彼らにとって、血の繋がりと言うものにはあまり意味がない。

その出生を知れば、当然だと思うだろう。

彼らが「兄弟」と呼ぶ者たちは、血ではなく理不尽な運命(プログラム)で縛られ、それに抗う意思の繋がりなのだから。

その意思が次代にも受け継がれていることは、嬉しいと素直に思う。

 

きっとあの子たちもまた、人間として力強く生きていけるだろう。

そうあれるよう、「家族」全員でありったけの愛情を注ぎ、何者にも負けず、流されず、自分自身の足で立って歩けるようにと育ててきたのだから。

その思いは正しく実を結んだ、あの子たちはきっと何があろうと人間らしさを失わずに生きていける。

その確信がある……のだが、今はそれが少々厄介なことになっている。

 

「あんたは賛成派なんだっけ?」

「別に。特に賛成したつもりはない。だが、確かに篠ノ之束に近づくにはIS学園に入るのが有効だ。

 特に今年は……」

「篠ノ之箒、あの天災の妹がいるのよね。本人にとっては、良い迷惑でしょうけど……」

 

本人には何の落ち度もないというのに、異端児ともいうべき姉やそれにまつわる周囲に翻弄される15歳の少女。

かつての自分たちを彷彿とさせるその境遇には、同情せずにはいられないのだろう。

 

「だが、その状況が嫌なら自分でなんとかするしかない。誰かがなんとかしてくれる、なんて期待しても意味がないんだからな」

「まぁねぇ……そりゃどこかの王子様が助けてくれたりするかもしれないけど、“かも”を待っててもねぇ」

「あるかどうかもわからない救いを待つなんてナンセンスだ。かつてお前たちがそうしたように、自分で未来を掴むしかない、違うか」

「違わないけど……簡単に言うわね。私たちだって結構大変だったわよ。15歳の女の子にそれを求めるのは酷じゃない?」

「なら、いくつならいいんだ? 二十歳か? 三十路か? いくつだって関係あるものか。

 それとも一人だからか? 動き出さなければ仲間も味方もできるものか」

「厳しいわねぇ」

「そういうお前はずいぶん甘くなったな」

「母親……だからかしら?」

 

空になった洗濯籠を抱えて軒先に恵が腰を下ろせば、アルもその横に座る。

天才の悪い癖だ。自分にできたことだから、他人にも同じことを求めようとする。

誰も彼もが、彼のように……あるいは自分たちのように強くないことを恵は知っている。

 

弱さは罪だ、と言う者がいる。だが、恵にはそんな苛烈なことは言えない。

母となったからか、年を取ったからか、あるいはもっと別の理由か。

 

「母親かどうかは関係ないだろ。それはお前だからだ」

「あら、もしかして口説いてる?」

「バカを言え。お前のような女、願い下げだ」

「…………言うじゃない」

「………………………だが」

「ん?」

「同情くらいはするさ。見ず知らずの誰かの都合で振り回されるのは、たまったもんじゃない」

(…………そうね。アンタも、あの頃のアンタじゃないか)

 

言動こそあまり変わっていないようだが、彼は彼で丸くなった。

年月か、経験か、親となったからか。あるいはその全てか。

改め、時の流れと言うものを噛み締めずにはいられない。だからこそ……

 

「あの子たちに、余計なものを背負わせたくはなかったのだけど……不甲斐ないわね」

「業腹だが、あの女は確かに“天災”だ。ブルーメンのネットワーク、日本やアメリカをはじめとした各国の諜報機関、何をどうやっても足取りが追えない」

「高槻のお父さんが現役だったなら、追えたかしら?」

「さてな。とはいえ、さすがに年だ。だいたい、親の世代に縋るのはみっともない」

「返す言葉もないわね」

 

篠ノ之束の名を世界に轟かせた最大の要因「インフィニット・ストラトス」。

その最大のブラックボックスであるコアは、各国の研究機関が全力を注いでも未だ謎に包まれている……とされている。

 

しかしその実、恵たちは即座に気付いた。

アレが「自分たちと同じもの」であることを。

当然だ。最初の「I・S」である白騎士が起動したあの日、もう二度と感じる筈のなかった「共振」を感じたとなれば、疑う余地がない。

あれ以来、彼女たちはありとあらゆる手段で篠ノ之束を追い続けているが、捕らえることはおろか足取りを掴むことさえできずにいる。

かつては「人類最高の頭脳」を自称し、事実それに相応しいだけの能力を持っていたアルですら認めざるを得ない。篠ノ之束は、アルという「最高の天才」を上回る「天災」なのだと。

 

「……ほんとに、アザゼルがまだ残っていたことも驚きだけど、よくもまぁ一人でコアの精製なんてやってのけたもんよね」

「どうやら篠ノ之神社の御神体と祭られていたらしい。隕石として降ってきたと考えれば、まぁわからんでもない。アレが生物であることに気付き、碌に設備すらなかったにもかかわらず共振という言語を見つけ、さらにはコアの抽出。I・Sを見る限りお前たちのそれとは少々異なるようだが、驚異的であることに変わりはない」

 

エグリゴリが莫大な資金と時間、そして人材を投じてなし得たことを当時十代の少女が独力でやってのけたのだ。

正直、何かの冗談としか思えない。

 

「折角、全部終わったと思ったのに……寝た子を起こすんじゃないっての」

「……」

「まぁ、彼女の考えも頭から否定する気はないけど、こっちはそんな気はないんだけどねぇ」

「……」

「どうかした?」

「いや、静かになったな」

「ああ、そういえば。えっと……一時間か、今日はずいぶん長くもったわね」

「毎日あんな頭の悪いことをやっているのか、あいつらは」

「そう言わないの。あの子なりに根性見せたんだから。普段なら十分かそこらで終わるのよ?」

「まぁ、実力差を考えれば当然だな。…………確かに、一時間は良くもったか」

「あん? なんだ、アルじゃねぇか。何してんだよ」

「何をしているかだと? そんなこともわからないほど脳が退化したの…がっ!?」

 

ナチュラルに偉そうなコメントを返していると、前触れもなくアルの頭頂部に衝撃が走る。

 

「お前はいくつになってもホント変わんねぇな」

「お、お前のゲンコツもな……」

(いい歳して何やってんだか)

 

呆れた様子で何年経っても変わらないやり取りをする二人を一瞥し、すぐに夫である新宮隼人に背負われたボロ雑巾……もとい、息子である新宮勇吾を見やる。

見たところ、清々しいまでにボロボロだが早急な手当てが必要な外傷はない。

怒鳴り合っていた割に、隼人が上手くケガをしないようにやってくれたらしい。

まぁ、両者の実力差を思えば当然だろう。

 

勇吾はこの年頃とは思えないほどの技量の持ち主だが、相手が悪すぎる。

隼人は数多くの実戦、いくつもの地獄を潜り抜ける中で若くして達人的な技量を身に付けていた。

それをさらに長い時間をかけて磨き上げたのだ、あの頃の隼人にすら届いていない勇吾では勝ち目がないのは当たり前だろう。

 

「で、どうするの?」

「…………一本取れたらって約束だった」

「そうね」

「結局、今日まで一本も取れなかった」

「むしろ、ハンデ無しでアンタから一本取れってのが無理難題でしょ」

 

実際、今の隼人から一本取れる人間は世界中探しても数えるほどしかいまい。

なにしろ、世間的には「世界最強」と言われている「初代ブリュンヒルデ」ですら、数年前偶々起こった小競り合いでは軽くあしらわれてしまったのだから。

 

どれほどの才覚を秘めていようと、基本的にはルールのある試合しか経験がなく、実戦と呼べるものは精々一度。窮地や地獄など経験したことのない小娘では相手にならなくて当然だ。

年季も、潜ってきた修羅場も、覚悟も、背負うものも何もかもが違う。

負けないし、負けられない。その重みが違うのだ。

 

「……………」

「わかってるんでしょ。この子はこの子なりに、私たちが勝ち取ったものを引き継いで、守ろうとしてる」

「……………」

「まだまだ子どもだと思ってたけど、いっちょ前に男の子になってたのね」

「まだガキなことには変わりねぇだろ。暑苦しいばっかで、他が何も追いついちゃいねぇ」

「あら、アンタがそれを言う? 昔はすぐに頭に血が上ってたくせに」

「む……」

「むしろ、こいつの方がまだマシだろう。直情傾向なのは同じだが、高槻の影響で冷静な部分もある」

 

一応褒めてはいるものの、そこはアルだ「単細胞なことに変わりはないがな」と付け加えることを忘れない。

 

「…………お前の入れ知恵か?」

「バカを言え。僕ならもっとうまくやる」

「でしょうね。アンタと殴り合いになってる時点で、根本はこの子でしょ。アリスが一枚かんでる可能性もあるけど、あの子も大概頭が回るしね。せいぜい軽く監修した程度でしょ」

「だな」

 

乱暴に頭をかきながら、隼人は背負った息子を居間へと運んでいく。

その顔には、先ほどまでとは違うあきらめにも似た表情が浮かんでいた。

 

「…………ちっ、しょうがねぇ。どうしようもねぇ未熟者だが……根性だけは一端か。

……………………………ったく、誰に似たんだかなぁ」

((いや、どう考えてもアンタ(お前)でしょ(だろ)))

 

とはいえ、これはもう事実上の白旗と見て良いだろう。

 

「それで、あんたが来たってことは勇吾用のI・Sができたってこと?」

「ああ。コアはヴァイオレットに融通してもらった。元国務長官は伊達ではないな。基本装備は三月兎(マーチ・ヘア)を参考にしている。これだけやれば……」

「まぁ、対外的な隠れ蓑には十分ね。篠ノ之束と、あとは多分織斑千冬にも意味がないでしょうけど」

 

篠ノ之束は、間違いなく勇吾の存在を知れば即座に背後関係にも気づくはず。

彼女と繋がりの強かった織斑千冬も、事情を知っている可能性が高い。

 

だが、背後関係がばれるのは問題ない。むしろ、それが狙いだ。

勇吾は、自分自身をエサに篠ノ之束を釣るためにIS学園に入るのだから。

 

恵たちでは厄介過ぎて慎重にもなるだろうが、勇吾なら……そう考える可能性は高い。

少なくとも、闇雲に追いかけるよりは。そんな狙いも看破されるだろうが、あちらも勇吾の存在は無視できまい。

 

I・Sが作られた理由はいくつかあるが、その理由の一つには「ARMS」への対抗手段としての面があるのはまず間違いない。

事実上、誰からの制御も受けていない、使い方によっては世界すら滅ぼせる核をも凌駕する力。

危機感を抱くのは当然だし、警戒するなとは恵たちも言わない。

 

実際、彼らの戦いが終わってからも当分の間は監視やら何やらがついていた。

思うところがなかったわけではないが、相手側の考えもわかるだけに丁重に流した数年間。

わざわざ事を荒立てる気はなかったし、そもそも本人たちからすれば、何が悲しくてようやく勝ち取った平穏を棒に振らなければならないのか、と言うところだったのだ。

 

とはいえ、ヴァイオレットやブルーメンをはじめとした協力者たちのおかげで、そんな煩わしい日々も終わりを告げた。

これでようやく……と思っていたのだが、そのしばらく後に篠ノ之束絡みのアレコレである。

彼女がどうして今更「ARMS」を危険視するか……は、わからないでもない。

 

組織規模なら逆に取引のしようもあるが、個人の感情はその人物次第。

どんな取引をしようと、どれだけ無害をアピールしようと、する気のない相手に譲歩はない。

 

要は、篠ノ之束は未だに「ARMS」を危険視しているのだろう、交渉の余地がないほどに。

なぜそこまで……と言う疑問はあるが、篠ノ之束個人をほとんど知らない恵たちでは察しようがない。

一応のプロファイリングの結果として、「自分以外に自分の命を左右される可能性があることが受け入れられないからではないか」とは言われているし、割と信憑性はあるが……。

 

「この子たちを巻き込むのは不本意だったんだけど、仕方がないか。

 私たちが同じ立場でも、多分同じことを言ったでしょうしね」

「…………………………………だな」

「なら、篠ノ之束がちょっかいかけてくる前に、こっちでなんとかするよう頑張るしかない、ちがう?」

「違わねぇな。幸い、こいつがIS学園に入れば俺らも動きやすくなる」

「ええ。とりあえずは、高槻達と合流かしらね」

「へ、懐かしいな。全然うれしくねぇが」

「ほんと、嫌な同窓会もあったものよ」

 

今までは万が一にも勇吾やアリスと言った子どもたちに何かがあってはならないと思い、大きくは動けなかった。

だが、これからは違う。

アリスはすでに成人し、勇吾もIS学園の寮に入る。新宮家と高槻家には他にも子どもがいないわけではないが、その子たちは巴家の方で見てもらう事になっているし、それ以外の体制もようやく整った。

これでやっと、気兼ねなく動ける。

 

まるで昔に戻ったかのような活力が、二人の体を満たす。

だが、そこでふっと恵は意識のない我が子の前髪を優しく梳きながら語り掛ける。

 

「勇吾、アンタの名前は私たちの親友からもらったものよ。誰よりも優しく、そして強い女性(ひと)だった。

 アンタは自分の名前があの子から貰ったって知ったら、どんな顔するのかしらね。なんで女からって渋い顔をするのか、それとも実はもう気付いているのかしら?」

(まぁ、別に隠してたわけじゃねぇしなぁ。普通に墓参りにも連れて行ってたし)

「だけど、あの子から貰った理由は一つ。アンタも、あの子のように強さと優しさを持った人間になって欲しかったから。そして、あの子が見られなかったものを見てほしかった。

だから、無茶するんじゃないわよ。必ず、またこの日常に返ってきなさい」

「起きてるときに言ってやればいいじゃねぇか」

「…………素面じゃ言えないわよ、こんな恥ずかしいセリフ」

 

だが、それが母から子へのただ一つの願いであることに変わりはない。

無論、意識のない勇吾にはそれを知る術はない。

当然ながら、恵が胸の内で紡いだ祈りもまた。

 

(お願い、ユーゴー。この子のことを、どうか守ってあげて)

 

しかし、それを聞き届けた者がいたことを恵はもちろん、その場にいた誰もが知らない。

 

(ええ、分かっていますよ、恵さん。この子のことは、ずっと見てきました。

 私にとっても、この子は息子のような子。だから絶対に、この子をあるべき日常に返します)

 

なによりも強い絆で繋がった仲間であり、同志であり、親友からの願い。

ましてやそれが、我が子に等しい「宿主」を想ってのものとなればなおのこと。

 

何をおいても守る、それがかつて「天使(エンジェル)」と称された彼女の誓い。

そして、今の彼女にはまた別の名がある。

 

(……私はユーゴー・ギルバート(我が名はワンダー・ランド)。新宮勇吾とその世界を守る泡沫の夢)




ぶっちゃけると、ISのコアとARMSのコアはアザゼルからできた兄弟の様なものです。
ただし、調整の仕方等々、色々違う点があるので割と別物です。
ARMS達からすると、色々と無視できないので束は止めたいが、そこは天災、中々捕まらずに……と言う状況。
別に束が一方的悪とかではなく、束は束なりにそれなりに正当性のある理由があって行動しています。まぁ、それでも色々と癖と言うか問題のある人物でもある、と言う立ち位置ですが。

ちなみに、勇吾がIS学園に行くことを決めた最大の要因は一夏がISを動かしちゃったから。一人いれば二人いても同じだろ、という理屈。
ただ、勇吾がISを動かせるのは彼がARMS適性因子を持っているからなのだが、じゃ一夏は? このあたり、よくわかってない。一夏、お前いったい何者よ?

で、勇吾達子ども世代は潜在的にARMSのコアだけは持っています。持ってるだけで、そのままではただの金属球なのですが……そこは、ね。裏技とかいろいろあるという事で一つ。
で、勇吾のコアには天使様が宿っています。アリスの方は……だれかな?

これもいつかやりたいと数年間思いつつ、結局PCの肥やしになっていた案の一つ。
はぁ、いつになったら着手できるやら……。
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