2400文字です。
全ての戦いを終えて、一ヶ月。アナと呼ばれている黒いローブの少女はぼんやりと空を見上げていた。
あの戦いの後、多くのサーヴァントが帰っていった。今残っているのは、初期からカルデアにいるサーヴァントか、マスターを放っておけないという奇特なサーヴァントだけだ。そしてアナは、その奇特なサーヴァントに入る。
どうして残ったのかは、自分でもよく分かっていない。ただ、なんとなく、放っておけないというか。
いや違う、とアナは首を振る。姉様二人が残るというから、自分も残る。それだけだ。
それだけのはず、だったのに。
まとまらない思考を続けながら、空を、景色を眺め続ける。ゆっくりと太陽が落ちていこうとしている。いつの間にか、空も赤くなっていた。もうすぐ夜になる。何時間ここにいるのか、自分でも分からなくなっていた。
そろそろ戻ろうかと踵を返そうとして、
「あ、アナ。こんなところにいたのか」
その声に、思わず体を震わせた。今度こそ振り返り、建物から歩いてくる人影を見る。黒髪の少年、今のアナのマスターだ。
「マスター。どうしてこちらに?」
「うん。アナを探してたんだよ。昼からずっと」
「そうでしたか。ごめんなさい、ずっとここにいました。用件は何でしょう?」
「ちょっと暇になったから、一緒に散歩でもどうかと思って。マシュは別件で忙しそうだしね」
その言葉に、アナは自分で自分を呪いたくなった。自分の部屋にいれば、今頃マスターと一緒に楽しく散歩できていたかもしれないのに、と。
そしてそこまで考えて、自分は何を考えているんだと意味もなく慌てる。別にマスターと一緒にいたいわけじゃない。ないったらない。
「綺麗な夕日だね」
マスターが夕日を眺めながらそんなことを言う。アナは何も言えずに、小さく頷くだけにとどめておく。
「アナ。せっかくだし、お姉さんたちも誘って、今度遠出してみないか? 休暇を取って、どこか街に行くのもいいかも。まあ、ちょっと目立つかもしれないけどね」
その提案に、心躍るものを感じるのと同時に、少しだけ残念に思ってしまう。
「姉様二人と、ですか」
姉二人は嫌いではない。むしろ大好きだ。かけがえのない姉たちだ。だが、それでも、ちょっとだけ、二人きりがいいと思ったり……。
「二人きりで出かける? 俺はそっちでもいいよ」
「……っ!」
その誘いに、思わず頬を染めて、アナは顔を背けた。見られるわけにはいかないから。
マスターは小さく笑い、続ける。
「言い換えようかな。俺としてはそっちの方が嬉しいけど」
このマスターは分かって言っているのだろうか。少しだけ恨めしく思ってしまうのと同時に、そう思ってくれていることに、嬉しくも思う。
思っては、いけないのに。
「考えておきます」
アナが素っ気なくそう答えると、マスターはそっか、と小さく肩を落とした。胸の奥がちくりと痛むが、きっと気のせいだ。
「マスター。戻りましょう。すぐに寒くなります」
「ああ、うん。そうだね」
マスターと二人、並んで歩く。少しだけ懐かしく思えてくる。
自分には、かつての記憶なんてないのに。
アナは、かつての自分は、マスターたちと一緒に過ごしたことがあるらしい。残念ながらアナにその記憶はない。けれど、とても大切なことを教わったというのは、何となく覚えている。
だから。この感情は、その昔の感情に引っ張られているだけだ。
何度もそう自分に言い聞かせてきた。だって、自分が持ってはいけない感情だから。
「アナ。さっきの話だけど、海はどうかな。泳ぐのが好きだって言ってただろ?」
「…………」
「アナ?」
マスターが心配そうにアナの顔をのぞき込んでくる。アナは逃げるように顔を逸らした。
「大丈夫?」
「平気です。気にしないでください。あと、遠出は遠慮しておきます。マシュでも誘えばいいでしょう」
心にもないことを言ってしまう。本当は、一緒に行きたい。マシュとではなく、自分を連れて行ってほしい。でも、それは、口には出してはいけないことで。望んではいけないことだから。
それなのに。
「俺はアナと一緒に行きたいんだけどね」
その言葉に、顔が赤くなるのが自分でも分かる。
ああ、そうだ。自分の心だ。分かっている。自分は、アナは、マスターのことが好きなのだ。
記憶を失っても。いや、失ったからこそ。それでも温かく接してくれるマスターに、いつの間にか惹かれていて、気が付いたら、好きになっていて。しかしそれは、望んではいけないことだと知っているから。
自分はサーヴァントだ。ましてや英雄でもなく、女神だ。さらに言えば、成長した自分は、あのゴルゴーンだ。深入りすべきではない。
そう分かっているはずなのに。このマスターは、遠慮なくアナの心の中に踏み込んでくる。
「考えておいてね、アナ。無理にとは言わないから」
その言葉に、アナは、小さく頷いておいた。
二人で歩く。雪の中、夕焼けの中、静かな時間を歩いて行く。
マスターはもう口を開いてくれない。ただ、わずかに微笑み、アナの隣を歩いている。
アナはマスターのことが好きだ。では、マスターは、アナのことをどう思っているのだろうか。
嫌われてはいないはずだ。嫌いな相手を遠出に誘ったりなどしないだろう。姉様を連れ出すためにアナも誘っているという可能性もあるかもしれないが、このマスターのことだからそれはないだろう、と信じている。
こうしてよく話しかけてくれるので、それなりに、良く思われてはいると思うのだが……。
しかし、いくら考えても分かるはずもなく。
今日も自身の感情を押し殺し、マスターの隣を歩く。
いずれ必ず来るであろう別れの時まで、彼の隣にいられれば、それで十分だ。
大好きな姉と一緒にいられて、マスターの隣を歩けて、十分すぎるほど幸せなのだから、これ以上は望べきではないことだ。
「マスター」
「ん?」
「私は……、今、とても幸せです」
「そっか」
そう言うだけで、マスターは嬉しそうな笑顔を見せてくれる。
アナもそれを見て、淡く微笑んだ。
FGOを始める。
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メドゥーサ(ランサー)をお迎え。
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かわいいやったー!
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第七部で出ることを知って、ついつい動画を見ちゃう。
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かわいいやったー!のままイラストとか小説とかを探しまくる。
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小説少ない。ならば自分で書こうそうしよう。今ここ。
そのうち増えるかも。マスター視点も書きたいです。
ではでは。