アナといっしょ!   作:龍翠

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ふはははは、誰が前後編だと言ったたわけめ!
ごめんなさい終わりませんでした許してください何でもはしません!

途中の「・・・・・」で視点が切り替わっています、よー。
4400文字


温泉(中編)

 姉二人と別れてから、アナはマスターと共に温泉街を歩いている。賑やかな道を、二人で並んで歩く。会話はないが、険悪というわけではない。ただ、いきなりすぎて、何を話せばいいのか分からないだけだ。

 

「人が多くなってきたな」

 

 マスターの声。言われてみると、行き交う人が増えていることに気づく。まだまだ増えるだろう、とのことだ。

 

「姉さまたちは大丈夫でしょうか」

「大丈夫だと思うよ。あれだけ言っておいて問題を起こしてたら、二人で笑ってやろう」

 

 それはそれで楽しいかもしれないが、間違い無くアナはあとで報復を受ける。姉二人は大切な存在だが、決して優しいというわけではない。怒らせれば、あとが怖い。

 

「冗談だよ」

 

 アナの内心を察したのか、マスターが苦笑する。ひとしきり笑ってから、マスターが手を差し出してきた。

 

「迷子にならないように」

「迷子になんてなりません」

 

 確かに背は低いが、本当に子供というわけではない。そう言うと、マスターは一瞬言葉に詰まり、わずかに目を逸らした。

 

「手を繋ぎたいだけなんだけど……」

「あ……」

 

 そういうことかと納得したのと同時に、急に恥ずかしくなった。仕方ない、とマスターが残念そうにしつつ手を引っ込めようとしたので、慌ててその手を掴む。驚いたように目を丸くするマスターに、アナは顔を背けたまま無言を貫く。少しして、マスターが小さく笑ったのが分かった。

 手を繋いだまま、歩く。特に行きたい場所はないので、のんびりと観光することになった。

 ちらほらと雪が残る街をのんびり歩く。近くに見える山にはまだまだ雪が残っているが、街中は人通りが多いこともあってかほとんど残っていない。マスター曰く、日本は冬の終わり頃らしい。

 

「カルデアにいると、季節の感覚なんてなくなるけどね」

 

 カルデアの内部は人が快適に過ごせる温度に保たれているとはいえ、外部は雪に閉ざされた極寒の土地だ。夏も冬もあったものではない。こうして四季の変化があるというのはやっぱり嬉しい、とマスターが言う。アナにはよく分からないが。

 途中で立ち寄った土産物屋では、親しい相手へのお土産をいくつか購入した。このお土産選びもなかなか楽しかった。相手がどのような反応をするか想像して買うのは、なかなか新鮮だ。

 その間もずっと手を繋いでいたためか、時折視線を感じることもあった。自分たちはどう見られているのだろう。気にはなるが、聞きたいとは思わない。恥ずかしいから。

 

 買い物を終えた後は、早々に宿に戻ってきた。今なら姉たちもまだ戻ってきていないだろうと判断したためだ。果たして部屋の中には誰もおらず、備え付けの露天風呂に入ることにした。

 よくある大浴場とは違い、この部屋専用の露天風呂だ。当然ながら、混浴だった。

 

   ・・・・・

 

 マスターは服を脱ぎながら、聞こえてくる衣擦れの音に毎回心臓を跳ね上げていた。

 混浴というのは、この宿を選んだ時から分かっていたことだ。誓って言うが、一緒に入りたいとかそんなやましい考えはなかった。出歩けば目立つだろうアナたちのことを考えて、部屋に露天風呂がある宿を選び、かつあまり大きくない宿を選んだらここになっただけだ。

 今回も、一緒に入ろうと誘ったわけではない。ただ、アナに聞いただけだ。ステンノたちが帰ってくるまでに入ってきたら、と。

 するとアナから帰ってきた答えは、一緒に入りましょう、というものだった。

 

 そのまま一緒に入ることになってしまったが、多分アナの様子から、混浴だということには気づいていなかったはずだ。脱衣所に入った時に、一瞬とはいえ凍り付いていた。ただ、お互いに一緒に入りたくないなんて言えるはずもなく、このままずるずると流されている。

 マスターは服を脱ぎ終わると、タオルを腰に巻いた。さすがに見られるわけにはいかない。

 

「アナ! その、分かってると思うけど、ちゃんと体にタオルを巻いてね!」

 

 真ん中にある仕切りの向こう側へと言う。

 

「分かっています。……それとも、見たいんですか?」

「え!? いや、その、見たいか見たくないかで言われると見たいけどでもそんなこと言えるはずもなくてでもやっぱり見たい気持ちもあるけどとても恥ずかしいし」

「落ち着いてください。冗談です。……私まで恥ずかしくなるじゃないですか」

 

 なんだ、冗談かと安堵三割、残念七割とため息をつく。だが、最後の声は小さくで聞き取れなかった。

 

「アナ、最後はなんて言ったの?」

「何でもありません」

 

 さっさとアナが奥の浴場に入っていってしまうのが分かった。怒らせたかな、とマスターは少し申し訳なく思いながら、少し時間を置いてマスターも浴場に入った。

 浴場は仕切りで囲まれた露天風呂だ。水道など体を洗う場所ももちろんある。上を見れば、満天の星空が広がっていた。素晴らしい星空だ。

 ただ、マスターの視線は浴槽へと向けられていた。背を向けて入っているアナの後ろ姿。

 顔が熱くなるのが分かる。マスターは頭を振る。先に体を洗おう。

 そうして手早く体を洗ってから、アナから少し距離を取って温泉に入った。

 

「ふう……。気持ちいい……」

 

 乳白色の、少し熱めのお湯だ。寒い季節には丁度良い。ふはあ、と天を仰ぎ息を吐く。横は見ない。絶対に見ない。

 だから、気が付かなかった。

 いつの間にか、アナが真横にまで来ていたことに。

 

「うえ!? アナ!?」

「む……。何ですか、その反応は」

 

 半眼でアナが睨み付けてくる。マスターは慌てて視線を逸らした。怖いとかそんなことよりもまず、アナを見ると、ちょっと見えてしまうから。お湯の色で体全体が見えるわけではないが、そう、例えば、うっすらと、慎ましいが間違い無くある膨らみとか。

 あ、鼻血が。

 

「ふぐう……」

「マスター? どうかしました?」

「な、何でもない。何でもないから」

 

 だからそれ以上近づかないでくれ、と内心で祈ると、アナの寂しげな声が耳に届いた。

 

「マスターは、私のことが嫌いだったりするのですか?」

「そんなわけないだろ! 好きだよ! 大好きだ!」

 

 即座に全力の否定。ただし目は合わせない。

 

「そうですか。安心しました」

 

 そう言いながら、何故か体を寄せてくるアナ。どうしたのだろうか。やけに、ぐいぐいくる。

 お湯越しでも分かるアナの温もり。マスターは必死に顔を背けたまま、言う。

 

「あ、アナ、どうかしたのか? なんというか、普段のアナらしくないというか……」

「…………」

「アナ……?」

 

 返事がない。恐る恐るとアナへと目を向ければ、

 

「きゅう……」

「のぼせてる!? アナ! アナあああ!」

 

 どうやら正気じゃなかったらしい。

 

 

 

 部屋の中。布団に寝かされているアナと、悄然と項垂れるマスター。そのマスターの向かい側には、とても冷たい目で見下ろしてくる、ステンノとエウリュアレ。

 

「念話で緊急事態だと聞いて慌てて戻ってきてみれば……」

「メドゥーサがのぼせてしまったから助けてほしいって……」

「ねえ、私。この落とし前はどうやってつければいいかしら」

「そうね、私。これはカルデアに持ち帰って皆で相談といきましょう」

 

 皆って誰だと思うが、それよりも申し訳なさで何も言えない。マスターが黙り込んでいると、ステンノがため息をついて口を開いた。

 

「まあ、のぼせたのはアナだし、マスターには何も言わないでおいてあげるわ」

「その代わり、明日の食事は期待しているわ」

「了解……」

 

 財布の中を思い出しながら、頷く。手痛い出費だが、背に腹は代えられない。

 

「それじゃあ、私たちは新しく部屋を取ってあるから、そっちに行くわね」

「え? どうしてまた……」

「私たちはお邪魔でしょうから」

 

 いたずらっぽく笑うステンノと、にやにやと笑うエウリュアレ。全てお見通しだと言わんばかりのそれに、マスターは顔を赤くして顔を背けた。ステンノが笑顔のまま言う。

 

「私たちは関知しないけど、メドゥーサが嫌がることはしてはだめよ?」

「分かってる。……なんだかんだと、二人ともアナのことが大好きだよな」

 

 言われた二人はきょとんとした後、

 

「当然でしょう。大切な妹だもの」

 

 何を当たり前のことを、といった様子だった。

 

「その割に愛情表現が歪んでるような……」

「何か、言いまして?」

「いえ何でもありません」

 

 姿勢を正すマスターに、呆れたようにため息をつく二人。それじゃあごゆっくり、とステンノたちは出て行ってしまった。

 残されたマスターはアナを見る。辛そうにしているアナを見ていると、何かできないかとやきもきしてしまう。とりあえず、机に置かれていたうちわであおいでみる。少しだけ、表情が和らいだような気がする。

 アナの頬に触れてみると、まだちょっと熱かった。

 

「ん……」

 

 アナがゆっくりと目を開く。マスターは慌てて手を放そうとして、

 

「気持ちいい……」

 

 そんな声が聞こえたので、恥ずかしく思いながらもそのままでいることにした。

 アナはしばらくぼんやりとしていたが、やがてマスターと目が合い、そして自分の頬に触れているものに気づいたのだろう、一気に顔が赤くなった。

 

「あ、あわわ、あわわわわ……」

 

 普段のアナらしくない狼狽えように思わず笑ってしまう。すると、アナが憮然とした表情で顔を背けつつも、

 

「その……。ごめんなさい。ご迷惑をおかけしました」

「いやいや。こっちこそごめん。気づかなくて。……記憶はある?」

「……………。何をしたかは、一応、覚えています」

「あはは。そっか。まあ正気じゃなかったとして……」

「いっそ殺してください」

「落ち着こうかアナ!」

 

 気にしてないと根気よく宥める。アナは顔を赤くしたまま、黙り込んでいた。

 

「えっと……。そ、そうだ! ちょっと飲み物を取ってくるよ!」

 

 マスターがそう言って、立ち上がろうとして、

 手を掴まれた。

 

「あの……。ここに、いてください」

「え? あ、うん……。分かった……」

 

 浮かしかけた腰を、アナの隣に下ろす。気持ちいいのか、マスターの手を放そうとはしない。もう片方の手で頭を撫でてみると、気持ち良さそうに頬を緩めた。猫みたいだ。

 

「えっと、アナ。落ち着いたら、ご飯を……」

「すう……」

「寝てる……」

 

 ため息をつく。お腹は空いているが、かといって起こそうとも思えない。仕方なく、そのままアナを見守ることにした。

 

   ・・・・・

 

 翌日。アナは窓から差し込む朝日で目を覚ました。目を開けて、最初に見た物は、マスターの寝顔だった。

 

「……っ!」

 

 思わず叫びそうになるのを堪えて、昨日の記憶を掘り起こす。

 

「うああ……」

 

 頭を抱えたくなった。何をやっているのだろう、と。

 

「マスター、ごめんなさい……」

 

 とても迷惑をかけてしまった。しかも手を繋いだままということは、おそらく夕食を食べていない。アナに付き合わせてしまったらしい。申し訳なさでいっぱいになるが、それと同時に、こうしてアナと一緒にいてくれたことがとても嬉しかった。

 起きたら、ちゃんとお礼を言おう。けれど今はもう少し……。

 マスターが起きていないことを確認して、そっと体を寄せる。マスターの心音を聞きながら、アナは目を閉じた。もう少し、眠れそうだ。

 




壁|w・)いつもより長い上に微妙にぶった切った感じが……!
後編は月曜日に投稿します。
その後は申し訳ないですが、週一投稿に切り替えますよー。
アナちゃん同志もたくさん見つかって私は満足しているのです。
お気に入りに入れてくれだ方々はもちろんアナちゃん同志ですよね?
え? 違う? ……今からなればいいんだよ!

Q.サーヴァントってのぼせるの?
A.知らぬ! きっとあれだよ、恋にのぼせたんだよ! 言って恥ずかしくないのかって? うるせえよ。
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