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早朝。まだ朝日が昇る前の時間に、アナはぱちりと目を覚ました。ベッドから出て着替えてから、食堂に向かう。食堂の厨房に入ると、すでにエミヤが朝食を作り始めていた。
「おはようございます、エミヤ」
アナが挨拶をすると、エミヤが振り返って頷く。
「ああ、おはよう、アナ」
「少しだけお借りします」
「ああ。こちらはもう盛りつけだけだ。気にせず使うといい」
エミヤのその発言に、アナは少しだけ驚いた。厨房の一角さえ貸してもらえれば十分だったのだが、どうやらアナのために先に朝食を作っていたらしい。
「すみません、エミヤ」
「なに、気にするな。食堂にいるから、分からないことがあればいつでも聞いてくれ」
「はい。ありがとうございます」
エミヤが片手を上げて厨房から出て行く。アナはその背中に頭を下げて、よし、と腕まくりをした。
「やります……!」
以前から、アナは料理をしてみたいと思っていた。というのも、職員の誰かが取り寄せたらしい日本の雑誌で、ある漫画を読んだためだ。
その漫画は若い夫婦を題材にしたもので、妻が夫のために料理をしているシーンがあった。それを、夫が嬉しそうに食べるというものだ。
アナが何か料理を作れば、マスターは喜んでくれるだろうか。試しに、ちょっと聞いてみた。
「マスター。もし私が何か料理をすれば、食べてくれますか?」
「アナの手料理!? 食べるさもちろん! 何を作るの?」
「え? あ、えっと……。お、お味噌汁、とか……?」
「へえ! 分かった! 楽しみだなあ!」
そこで否定するべきだったのだ。まだ作るつもりはない、と。だがマスターのあの輝くような笑顔を見ると、作れませんと今更言えるはずもなく、結果的に後に引けなくなってしまった。
そこで頼ったのはいつもみんなの食事を作ってくれるエミヤだ。エミヤに相談すると、味噌汁の作り方を教えてもらえることになった。
その後は、マスターに秘密で、二日に一回早朝に、エミヤに作り方を教わっていた。二日に一回の理由は単純に、一日はマスターと一緒に寝ていて抜け出せないためだ。
アナは抱き枕ではないと何度も言っているのだが、落ち着けるからと笑顔で言われてしまうと何も言い返せない。これが惚れた弱みというやつだろうか。下姉さまに言うと、のろけるなと怒られてしまった。
脱線した。ともかく、そうして二日に一回の練習をすること半月。エミヤから、これなら大丈夫だと太鼓判を押された。覚えが早いと褒めてもらえたのだが、こちらも結構必死だった。なにせ、あのマスターの期待のこもった眼差しが……。
そして今日。アナは一人で味噌汁を作っている。エミヤは見ておこうかと言ってくれたのだが、遠慮しておいた。ちゃんと一人で、作りたいから。
煮干しでだしをとり、野菜を切って。特訓を振り返りながら、せっせと作る。
しばらくして。
「できた……」
無事にアナお手製の煮干しの味噌汁が完成した。ちょっとだけ味見。エミヤ作のものには劣るが、美味しい、と思う。でもどこかの本に自分で作った料理は美味しく感じるとあったので、油断はできない。
エミヤに完成したことを告げて、味見をしてもらうと、
「うん。美味しい。十分だ」
よく頑張った、と撫でられた。
「…………。子供ではないのですが」
「…………。すまない」
アナは子供扱いされたことに、エミヤはついつい子供扱いしてしまったことに、二人でちょっとだけ落ち込む。すぐに気を取り直して、二人で朝食の最後の準備を始めた。
もうすぐ、マスターが起きてくる。
がやがやと賑やかな食堂にマスターが入ってくる。マシュと談笑しながら、席についた。きょろきょろと周囲を見回しているのは、アナを探してくれているのだろう。一緒に寝ない日は、合流するのはいつも食堂だから。
ちなみにアナは、厨房からその様子をこっそり覗いている。ちょっとだけ、恥ずかしい。
「マスターが来たぞ」
「あ……。お、お任せします……」
「そうか」
エミヤが小さく苦笑して、どこか気落ちした様子でやってきたマスターに朝食を渡した。朝食は白ご飯に焼き魚、ほうれん草のおひたし、そしてアナが作った味噌汁だ。
ちなみに今日は純和風のメニューだが、日によって違う。エミヤの気分次第だそうだ。最近はアナの練習に合わせてくれていたようではあるが。
マスターが席につき、食べ始める。どきどきしながらそれを見守っていると、マスターの手が味噌汁に伸びた。一口飲み、二口飲み。いつも通りの反応だ。
マスターなら気づいてくれるかな、と思ったが、よくよく考えればアナの味噌汁はエミヤに教わったものだ。そして朝食はいつもエミヤが作っている。エミヤのものより若干劣っているとはいえ、元は同じだ。気づかなくても、仕方ない。……悲しくないと言えば嘘になるが。
料理は愛情だ、と真顔で言ったエミヤに従い、アナなりに頑張ったつもりなのだが、まあこんなものだろう。そう思いながらも、肩を落とす。エミヤがそれを見ていることに、アナは気づかない。
やがて、食べ終わったマスターが戻ってきて、食器を渡そうとして、
「エミヤ。味噌汁ってまだ残ってる?」
そう言ったことに、少しだけ驚いた。
「残っているが、珍しいなマスター。朝食をお代わりとは」
「うん。いつも美味しいけど、今日は俺好みの味かな。作り方、変えた?」
「変えたも何も、作ったのはアナだ」
言っちゃった!?
思わず絶句するアナ。半ば呆然としていると、いつの間にかエミヤが側に立っていた。ほら、と促されて、マスターの前まで行く。
恐る恐ると見たマスターの顔は、驚き半分、そして嬉しさ半分といった顔だった。
「そっか。アナが作ったんだ。へえ!」
「そ、その……。あまり美味しくなかった、ですよね……?」
「ん? いやいや、美味しかった。少なくとも俺は、アナの味噌汁が一番好きだよ」
にっこりと。笑顔で言うマスターに、アナは熱くなった顔を逸らした。エミヤが薄く笑いながら言う。
「ほら、アナ」
「あ……。はい」
マスターからお椀を受け取り、味噌汁を入れて、そしてまた渡す。
「アナも食べてくるといい」
エミヤがそう言って朝食の盆を渡してきたので、言われるがままに厨房を出た。マスターと一緒に席に行き、隣に座る。自分で作った味噌汁を食べながら隣を見れば、マスターも味噌汁に口をつけ、頬を緩めていた。
「うん。美味しい。ありがとう、アナ」
「あう……。あの、はい、えっと……。はい……」
顔を真っ赤にしてフードを目深に被るアナと、笑顔のマスター。マスターに喜んでもらえてとても嬉しいのだが、こう、真っ正面から感想を言われてしまうと、返答に困ってしまう。結果、アナは意味のある言葉を口にできなかったが、それでもマスターはとても嬉しそうだった。
エミヤはその様子を厨房から眺めながら、満足そうに一つ頷いた。
壁|w・)言い訳をさせてほしい。
アナちゃん熱が落ち着きつつあったんだ。
もういいかな、と思ってたんだ。
でもFGOの資料集?が届いたんだ。マテリアル4ね。
読んだんだ。もちろんアナちゃんの項目を。
結果。再燃した。アナちゃんかわいいやったー!
でも次の更新は未定だ!
さて、同志諸君。ここにアナちゃんの味噌汁交換券がある。
これを使えば、アナちゃんがマスターのために愛情こめて味噌汁を作ってくれるそうだ。
さあ、いくら出すかね……?
……すまない。夜勤明けのテンションなんだ。本当にすまない。
あと、もう一つ謝罪?をば。
私はエミヤを持ってません。エミヤを知りません。
ただ料理キャラとだけ記憶しています。
セリフとか性格が崩れていたら教えてくださいな。(時間があれば)修正します。
ではでは!