アナといっしょ!   作:龍翠

14 / 16
好き!!(挨拶)
1日早いですが、バレンタインのお話です。
明日は投稿する時間がなさそうなので。
3900文字


バレンタイン(マスター)

「マスター。朝です。起きてください」

 

 朝。優しく体を揺すられて、マスターは目を覚ました。目を開ければ、こちらをじっと見つめるアナと目が合う。マスターは小さく欠伸をして、笑顔で言った。

 

「おはよう、アナ」

「おはようございます、マスター」

 

 少しだけ恥ずかしそうにアナが返してくれる。それだけのことに、幸せを感じてしまう。

 

「マスター。いつものことですけど、放して下さい」

「いつものことだけど、やだ」

 

 大事な人に逃げられないように少しだけ強く抱きしめる。アナの温もりを堪能していると、アナがため息をついたのが分かった。

 

「じゃあ、朝ご飯はなしですね」

「なっ……」

 

 思わず固まるマスター。アナは小さく微笑みながら体を寄せてくる。

 

「どうしますか? 私はこのままでも構いません。朝ご飯はなくなっちゃいますけど」

「うぐぐ……!」

 

 何もなければ。ただのご飯ならマスターもこのままでいいと言っただろう。だがアナがこの部屋に泊まる日は、いつも朝ご飯を作ってくれる。アナの手料理なのだ。

 ぐぐぐ、と長い葛藤を終えて、マスターは腕の力を緩めた。

 

「ご飯で……」

「分かりました」

 

 楽しげに笑うアナがベッドから出ようとして、しかしやはり放さない。少しずつアナの目が冷たくなってくる。

 

「マスター?」

「えっと……。一回だけ……」

 

 そう言った直後、アナの顔が真っ赤になった。あうあうと慌てるアナはやっぱりかわいい。抵抗しないということか、受け入れたものと判断する。判断したマスターの行動は早い。素早くアナの唇を塞いだ。

 

「……っ!」

 

 固まるアナ。しばらくそうしてアナを味わってから、そっと解放した。

 

「あ、う……」

「うん」

「ご飯を……作ってきます……」

「うん。待ってる」

 

 ふらふらとベッドから抜け出して、アナがキッチンへと向かう。マスターも体を起こして伸びをする。気持ちの良い目覚めだ。

 椅子に座って、備え付けのタブレットを確認する。仕事はいつもこのタブレットを通じて連絡される。今日も一日の流れを確認しようとして、自分の目を疑った。

 昨日までは確かに仕事が入っていたのに、何故か休みになっていた。

 

「なんで?」

 

 首を傾げていると、通信が入った。タブレットを操作すると、その上空に半透明のウィンドウが表示される。そこに写るのはマシュだ。

 

「おはようございます、先輩」

「うん。おはよう。俺の仕事どうなってる? 休みになってるけど」

「はい。先輩は今日は休みです」

「急だね。何かあった?」

 

 よほどの緊急の案件でもない限り、このような事はあり得ない。予定が変わったことは何度かあったが、それらは緊急の案件、つまりは別の仕事が入っただけだ。急に休みになるなど聞いたことがない。

 

「はい……。いろいろありました……」

 

 遠い目をするマシュ。よくよく見れば、彼女の目の下にはくっきりと隈が見て取れる。

 

「何があった?」

 

 気持ちを切り替える。よほどのことがあったのだろう。すぐに出なければならないかもしれない。

 だがそんなマスターを見て、マシュは慌てて言った。

 

「いえ、マスターは本当に気にしないでください! むしろ絶対に部屋から出ないでください! 絶対に! 絶対に出ないでください!」

「え? あ、うん……。え?」

「返事は!」

「はい! 今日一日部屋から出ません!」

「ありがとうございます! それでは!」

 

 ぶつりと通信が切れる。何だったのか。

 不思議に思うが、マシュが意味の無いことをするとは思えない。ここは大人しく従っておくのが吉だろう。

 

「マスター、どうかしました?」

 

 キッチンからひょっこりとアナが顔を出す。ピンク色の可愛らしいエプロンを着けている。ちなみにアナにこれを渡したのはメドゥーサらしい。よくやった。

 

「なんて言えばいいのかな……。急ぎの用事でもないみたいだし、朝食の時に話すよ」

「そうですか。ではもう少し待ってください」

 

 キッチンに戻るアナ。マスターはそれを見送ってから、もう一度タブレットを確認する。

 休みの文字の隣に注釈として外出禁止が増えていた。意味が分からない。

 

 

 

 アナが作ってくれた朝食を食べる。メニューは炊きたての白ご飯にお味噌汁、鮭のホイル焼きだ。エミヤから材料を渡されていたらしい。わさびマヨネーズをつけるとまた違った味わいが楽しめるそうだ。

 

「うん。美味しい」

「はい。ありがとうございます」

 

 アナの料理の腕は着実に上達している。今ではエミヤから教わりつつ、自分なりにアレンジを加えているほどだ。そういったアレンジは全てマスター好みの味になっている。何というか、ちょっとだけ照れくさい。

 ただ、時折、背が低いために上の棚に手が届かず、涙目でマスターに助けを求めて来ることもあるが。それもまたかわいい。

 

「マスター、今何か失礼なことを考えていませんか?」

「うん。アナはかわいいなって」

「…………」

 

 沈黙して顔を逸らすアナ。よく見なくても顔が真っ赤だ。

 

「と、ところで!」

 

 アナが誤魔化すように声を上げる。小さく笑いながら、うん、と頷く。

 

「先ほどの話は何だったんですか?」

「え? ああ。いや、それがね……」

 

 アナにマシュとの通信のことと、急に休みになったことを話す。全て聞き終えたアナは、マスターの予想とは違って納得しているようだった。どういうことかと首を傾げるマスターに、アナが言う。

 

「扉に耳を当ててみてください」

「うん? 分かった」

 

 席を立ち、扉の側へ。ドアはロックされている。耳を当てると、防音でありながらもかすかに音が聞こえてきた。

 

 

 

「貴様らいい加減にせぬか! 我も我慢の限界だ!」

「わあああ! 待ってください英雄王! ここで宝具はだめですエアを抜かないでえええ!」

「乱心だ! 英雄王がご乱心だ!」

「ええい! 放せマシュ! 逃げるな雑種がああ!」

「ここは一時撤退です!」

 

 

 

 とんでもないことになっている。ギルが結構キレている。一体何があったのか。

 頬を引きつらせてアナへと振り返ると、アナは素知らぬ顔で言った。

 

「マスターが出ると余計に混沌とするので、部屋にいてください」

「了解……」

 

 最後に聞こえてきたのは清姫の声だった。何となく想像ができるので、マスターも頷いておく。好意は嬉しいのだが、押しが強すぎて少々困るというものだ。

 

「でも急にどうしたんだ?」

 

 マスターが首を傾げると、食器を片付けながらアナが言う。

 

「マスター。渡したいものがあります」

「ん? なに?」

「取ってくるので、椅子に座って待っていてください」

 

 分かった、と頷いて椅子に座る。アナはキッチンへと走って行き、そしてすぐに戻ってきた。その手には小さな箱がある。

 

「あの、マスター。どうぞ」

 

 どこか緊張しているような面持ちで箱を渡される。受け取って中を見てみると、

 

「チョコレート?」

「はい……」

「どうしてまた急に?」

「マスターの故郷の風習だと……」

 

 首を傾げる。そして思い至るものがあった。カレンダーを見ると、二月十四日とある。

 

「バレンタイン……」

「はい……」

「てことは、外の騒ぎと清姫たちは……」

「多分、マスターの想像通りです」

 

 なるほど、と苦笑する。確かにこれは出ない方が良さそうだ。

 アナからもらったチョコレートは卵の形をしていた。真ん中に切れ目が入っている。アナ曰く、開けることができるらしい。上部分を持ち上げてみると、可愛らしくデフォルメされた蛇のチョコが、ハートを持っていた。

 

「手が込んでるね……。食べるのがもったいないよ」

「その……がんばりました……!」

「うん。ありがとう。……ちょっとごめん」

 

 とりあえずチョコの写真を撮る。固まるアナの前で、丁寧に、何枚も。

 

「あ、あの。マスター。何を?」

「いや、食べないわけにもいかないけど、かといってもったいないし。せめて写真だけでも」

「恥ずかしいです。ひと思いに食べてください」

「満足いく写真がとれたらね」

「うう……」

 

 二十枚ほど写真に残して、満足した。これでいつでもまた見直せる。

 さて、こうしてさっさと写真に残した理由は単純で、食べるためだ。本当ならいっそ一日中見ておきたいが、この後を考えると美味しく食べられるうちに食べておきたい。

 

「この後?」

「うん。みんな気を遣ってくれてるけど、それでも作ってくれた以上は受け取ってあげたいから」

 

 マスターが好きなのはアナだ。そう明言しているが、それでも好意を示してくれる人がいる。そういった人が頑張って作ったチョコを、知っていて受け取らないのは失礼というものだろう。

 ちゃんと受け取って、食べて、お返しをする。それぐらいはする。

 ただそれでも、チョコだ。絶対に飽きる。だから、美味しく食べられるうちに、一番好きな子のチョコを食べておきたい。

 そう言うと、アナは顔を真っ赤にして俯いてしまった。

 

「それじゃあ、いただきます」

「ど、どうぞ……」

 

 ぱくりと食べる。甘すぎず、苦すぎず、マスターが一番好きな味だ。さすがだな、と感心しつつ食べ進め、あっという間に食べ終えた。

 

「うん。美味しかった」

「はい……」

 

 アナはやっぱり恥ずかしそうで。マスターは薄く苦笑して、立ち上がる。アナを抱きしめると、戸惑ったように顔を上げてきた。

 

「マスター?」

「うん。ありがとうの気持ちを込めて」

「意味が分かりません」

 

 そう言いつつも、アナがくすくすと笑う。アナの笑顔を見つつ、優しく頭を撫でると、気持ち良さそうに目を細めた。

 

「あの、マスター」

「うん」

「そのですね。もちろん、義理とかではなく、本命、で……。えっと……」

「あはは。恥ずかしいなら無理して言わなくても。分かってる。ありがとう、アナ」

 

 ぎゅっと抱きしめる。アナは恥ずかしそうにしつつも、幸せそうに微笑んだ。

 

 

 

 余談だが。

 午後からはちゃんとチョコを受け取っておいた。なかなかの量になり、それを見ていたマスターの目が死んでいたというのはアナの証言だ。

 アナの方は、夜は大好きな姉たちにもチョコを渡してきたらしい。嬉しそうに、報告してもらった。




壁|w・)バレンタインイベントは冒頭から腹筋崩壊しました。
これだからきよひーは。これだからきよひーは。
いいぞもっとやれ。
バレンタインのアナちゃんもかわいかったです。

さて、そんなわけでバレンタインのお話でした。
あまり甘くなかったかな、とちょっとだけ反省。ちょっとだけね。

さて、本格的にネタ切れです。
何かこれを題材にして書いてほしい、というものがあればメッセージでもいただければと思います。
時間があれば書くかもしれません。時間があればね!
感想欄だと規約違反だったはずだからメッセージでお願いするよ!



Q.ギルガメッシュの立ち位置は?
A.愉悦を求めて暇つぶしを探してるよ! あまりに暇すぎてマスターとアナちゃんの恋路を見守るぐらいに暇してるよ! 人間とサーヴァントの恋愛がどうなるのかを知りたいらしいよ! 暇か! 暇だった!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。