書けば出ると聞いたのでジャンヌオルタさんに出番が回ってきました。
ちなみに、アナの服装は各自想像、いや妄想してください。
自分がかわいいと思う洋服を着せてあげてね!
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「まあ、こんなもんね」
ジャンヌオルタが満足げに頷く。その視線の先に立つアナは、普段とは違う衣装だ。
黒いフードつきのパーカーにショートパンツ。かわいさと動きやすさを両立させた、とはジャンヌオルタの弁だ。
「ありがとうございます、ジャンヌ。私は今の服装はよく分からないので、助かりました」
「別にいいわよ。まあ、精々楽しんできなさい」
ぽんぽんとジャンヌオルタがアナの頭を撫でるようにたたく。アナはそれを受け入れつつ、疑問に思っていたことを口にした。
「意外でした。ジャンヌはきっと協力してくれないと思っていたので……」
「は? なんでよ?」
「いえ、だって……。ジャンヌはマスターのことを……。あう」
思い切りほっぺたを引っ張られた。何をするんですかと抗議の視線を送れば、ジャンヌオルタは面白くなさそうに鼻を鳴らす。手を放して、ジャンヌオルタが言う。
「別に私はそんなんじゃないし。それに……」
一瞬、ジャンヌオルタが口をつぐむ。言おうか言うまいか迷うかのように。アナが待っていると、やがてため息をついて、
「マスターは私が認めた男よ。そのマスターがあんたを認めたのなら、私も認めるしかないでしょう。マスターがそれで幸せなら、それでいいわ」
普段の彼女からは想像もできない言葉だ。アナが驚いていることを察したのだろう、ジャンヌオルタはわずかに頬を染めると、ふんと鼻を鳴らしてそっぽを向いた。ひらひらと手を振り、アナへと言う。
「さっさと行きなさい。邪魔者は、まあある程度はこっちで相手してあげるから」
「はい。ありがとう、ジャンヌ」
頭を下げて、部屋を出て行く。ドアを閉める直前、部屋の片隅に、縄で縛られた清姫がいたような気がするが、きっと気のせいだろう。そういうことにしておく。
今日からマスターと二泊の旅行に行くことになっている。場所は、マスターの生まれ故郷、日本だ。ただし実家には行かないとのこと。温泉に行くことになっている。その温泉には露天風呂があるそうなので、密かに楽しみにしている。
露天風呂。テレビで一応見たことがある。屋外にあるお風呂で、夜なら星を見ながら入ることもできるそうだ。
カルデアにも風呂はあるが、さすがに露天風呂はない。作ったとしても外気温を考えると人間が入ることは推奨されないだろう。下手をすると凍え死ぬ。
ちなみにだが二人きりではない。アナの姉二人も同行することになっている。
ヘリコプターの発着場には、すでにマスターと姉二人が待っていた。笑顔で手を振るマスターと、落ち着いているように見えてあからさまにそわそわしている姉二人。あまり見ることのないその様子に、アナは頬を緩めてしまう。
見られていることなど分かっているというのに。
「あら。メドゥーサ。機嫌良さそうね」
アナの顔が凍り付いた。頬を引きつらせるアナに、エウリュアレが言う。
「そんなに私たちの様子が珍しいの? ふうん?」
「いえ、そんな……。あう」
「生意気な子ね」
「あうあう」
いつものように下姉さまにほっぺたを引っ張られる。抵抗できずにされるがままでいると、マスターが苦笑しつつ言った。
「そろそろ行かないか?」
「そうね、マスター。そうしましょう」
言うが早いが、さっさとヘリコプターに乗り込むステンノ。それを見たエウリュアレが慌てて走る。
「ずるいわよ、私!」
どうやら姉二人はヘリコプターにも興味があったらしい。彼女たちが生きた時代にはあるはずのないもので、さらに今日初めて乗るのだから当然かもしれない。実はアナも、初めて乗る時は密かに興奮していたものだ。
なにせ空を飛ぶのだ。興奮しないはずがない。
「アナ。俺たちも行こうか」
「はい。マスター」
差し出された手を握る。いつもの、温かい手だ。その温もりにアナが笑顔を見せると、マスターは顔を赤くして目を逸らした。薄く苦笑して、ヘリコプターへと向かう。
「ところで、アナ」
「何でしょう」
「その服、似合ってるよ」
不意打ちだった。思わずアナが立ち止まる。すぐにマスターに手を引かれ、足を動かすが、まだちょっと顔は赤いままだ。
「ありがとう、ございます」
どうにかそれだけ絞り出すと、マスターの笑顔が深くなった。恥ずかしい。
カルデアからヘリコプターで日本へ。さらに車で目的地に向かう。目的地は有名な温泉街だ。いくつもの温泉宿があるらしい。
マスターが選んだ宿は、三階建ての宿だった。この宿の中では一番いい部屋を選んだそうで、部屋に露天風呂があるらしい。わざわざ街へ繰り出して入りに行かなくてもいいそうだ。自分たちは特に目立つので妥当な判断だろう。
宿の人にすら、驚かれたほどだから。
「でも、出かけてはいけないというわけではないのね?」
あてがわれた部屋に到着して荷物を置いてから、上姉さまが言う。
「まあ、そうだけど」
「それじゃあ、私は温泉巡りをしたいのだけれど、構わないかしら」
ステンノがそう言っている間に、エウリュアレが雑誌を取り出した。温泉街の魅力と題された本だ。こんな本があったのかと少しだけ驚く。
「メドゥーサ。読んでもいいわよ」
「ありがとうございます、下姉さま」
下姉さまから渡された本を開いて見てみると、この温泉街についての特集があった。必ず入りたいお湯十選なんてものもある。さらには浴衣でのんびり歩いて回る魅力とか、美味しい食べ物の特集とか、いろいろ。
ごくり、とアナの喉が鳴った。恐る恐るとマスターを見る。
ステンノとエウリュアレ、そしてアナからの、期待の籠もった眼差し。
「…………。分かった。皆で行こう」
折れたのはマスターの方だった。何かを不安に思っているようだったが、何だろうか。
宿で浴衣を借りて、温泉街に繰り出す四人。そして当然ながら、目立つ。これでもかというほど、目立つ。マスターが何を危惧していたのか、すぐに分かった。
アナが耳を澄ませば、耳に届いてくる声は同じようなものばかり。
「きれいな子たちだな」
「おい、声かけてこいよ」
「あの男は何だ、邪魔だな」
老若男女問わず、アナたちを噂している。姉二人も気が付いているはずだが、意に介した様子はない。さすが姉さまだ。でもとりあえず、マスターを邪魔だと言った男には殺気をぶつけておく。腰を抜かしていたが、気にすることではない。カルデアで日々愉悦を求めている王様曰く、ただの雑種だ気にするな、だ。
「こら、メドゥーサ」
「やるならこっそりやりなさい」
姉に怒られてしまった。……怒られたのかな? こっそりやればいいらしい。
四人でいろいろな湯を巡る。巡りながら、食べる。お饅頭だったりアイスだったりと、美味しいものもたくさんある。周囲の視線など気にすることなく、姉二人はとても楽しんでいるようだ。
この旅行は、アナがマスターに誘われたものだ。その時に、できれば姉さまとも一緒に行きたいとお願いしてしまった。二人きりというのは捨てがたいものがあったのだが、姉との旅行というのも、やってみたかったのだ。
姉二人が楽しんでくれていれば、アナとしては満足できる。マスターとは、夜にでもゆっくりお話ししよう。そう思っていたのだが。
「それじゃあ、マスター。メドゥーサ。ここからは私たち二人でいいわ」
上姉さまがそう言って、アナは心底驚いた。
「え? あの、上姉さま? 私、何かしました?」
「別にメドゥーサは関係ないわ。気ままに二人で歩きたいだけよ」
そう、なのだろうか。アナが困惑していると、マスターが言う。
「二人だけだと心配なんだけど……」
「あら。私たちもサーヴァントとして現界しているのよ?」
「昔ならともかく、今ならただの人間に絡まれてもどうとでもできるわよ」
「うん。やりすぎないか心配なんだけど」
「あら、言うようになったわね、マスター」
不敵に笑うステンノとエウリュアレ。心配しなくても大丈夫よ、と二人は軽い調子で言うと、また夜に、と二人で歩いて行ってしまう。
「うまくやりなさい、メドゥーサ」
上姉さまの声が小さく届いて。アナの顔が真っ赤に染まって。
マスターはそんなアナの様子に首を傾げていた。
長くなったので前後編だよごめんね!
続きは多分明日投稿するよ! 多分だよ!
感想もらえたらやる気が起きるかも!(再びの露骨な催促)
……あまりいちゃいちゃしてなかったね! 次こそ必ず……!
こっそり初旅行に興奮している姉二人でした。書いていて楽しかったです。
Q.姉二人の名前と姉さま表記の違いは?
A.実はちょっとした基準があるんだけど、秘密だよ! 感覚に近いからね!