リリカルなのは~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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異伝7 その131

 

side 高町 なのは (ミッドチルダ・機動六課)

 

公開意見陳述会が始まった。私は内部の警備をしているけれど、六課のメンバーで私だけはデバイスを保有している。

これもレジーが気を利かせてくれたんだろうけど、なんだか悪い気がして仕方無い。

まあ、特別扱いの分はしっかり働かせてもらうけど、それでいいよね?

 

……ああ、本当に嫌な予感。さくらさんに六課の方を頼んでおいたけど、それでもこんなに虫が知らせてくるなんて……いったいどんな未来が私を待っているのかな?

最悪を考えると、さくらさんが敵に回ることなんだけど……これは違う気がする。最悪じゃないけどかなり嫌な未来なのかな?

こんな時にさくらさんの言っていた超絶した勘の持ち主が居れば、なんとなくで簡単に言い当ててくれそうなんですが…………無い物ねだりはみっともないですし、やめましょう。

 

となると、私は今ある情報から一つずつ考えていく事しかできませんが……それでも考えは止めない方がいいでしょう。

 

まずは結果の予想から…………地上本部は壊滅……する可能性は多分にあるようですが、回避の可能性もあります。

機動六課は…………あ、壊滅しそう。凄く壊滅しそう。シャマルさんとザフィーラ、それにヴァイス君も頑張ってくれるみたいですが、それでも壊滅しそう。

……となると、さくらさんは出なかったんでしょうか? アンダーグラウンドサーチライトは確かに優秀な防空壕(シェルター)ですけど、入り口に当たれば衝撃とかは普通にあるはずなんですけど……。

 

…………あー。もういいや。考えても仕方無いし、なるようになるって。最終的にはなんだかんだで解決するような予感がするし、大丈夫大丈夫。

終わり良ければ大体OK、それが管理局の方針だしね。

私は私らしく、とりあえず今は地上本部の防護に全力を注ぎましょう。

 

 

 

 

 

side トゥム・ハンクス

 

俺の名前はトゥム・ハンクス。高町臨時教導官に鍛え上げられ、ある意味では人間を越えた一人の地上の守護者だ。

好きな事は地上の平和を守ることと、そのために体と魔法の腕を鍛えること。魔導師ランクはDだが、本局のAランク相手に負けない熱意がある。

 

俺も昔はただの一地上の局員だった。地上の家族や友人を守りたいという思いを胸に入局したが、実力が足りないせいで半年でやさぐれはじめてしまった。

俺みたいな奴はどこにでもいて、それでも本局に移れるような実力はなく、ただひたすら地上で軽犯罪者を相手に魔法を使い、高ランク魔導師に頭を下げる日々。

 

そんな中に現れたのが、我等が高町臨時教導官だった。

その教導には当時の俺みたいな奴が集められ、明らかに弱そうな小娘に習えと言われれば……当時の俺達みたいな奴の反感を買うのは当然の既決。俺達はその小娘を見下し、魔力ランクが自分より低いと聞いて嘲笑った。

 

それが変わったのは30分後。その小娘が俺達全員を叩きのめしてからのことだった。

しかもその戦い方は、俺達が今まで見てきたような大量の魔力に物を言わせるような戦いではなく、限られた魔力をいかに有効に使うかを極めたような戦闘。まるでそれは、戦女神のように、俺達の意識に焼き付いた。

 

近接戦では躊躇いなく急所を狙い、同時に少量だが相当圧縮した魔力の針を打ち込んでから炸裂させる。ただそれだけで俺達は気絶させられたし、者によっては軽々とぶん投げられて地面に叩き付けられたり、明らかに華奢な少女に押さえ込まれたりしてしまうのも見た。

遠距離戦闘でも魔力を集束し、そして扱う方法を教えてもらった。ただひたすらに密度の濃い基礎(本人曰くの、だ。あれは正直拷問だった)をこなしていった。

 

初めの一週間が過ぎた時、俺は自分の魔法の威力が上がっていることに気が付いた。

毎日限界まで走り、後ろから飛んでくる魔力弾を避け、気絶する寸前まで魔力を集束し、圧縮することを叩き込まれていたから気付かなかったが、結果は気付かないうちに出てきていた。

 

二週間が過ぎて、初めのうちは拷問にしか思えなかった教導を余裕をもってこなせるようになって。高町臨時教導官は訓練メニュー(高町臨時教導官曰くの『準備運動』メニュー)を差し替えた。密度が跳ね上がり、俺達はまた訓練と休息を繰り返す。

しかし、この頃になると誰もがこの教導に受け甲斐を感じていたため、誰一人として逃げ出そうとする物はいなかった。

それも当然だ。この教導に、高町臨時教導官についていければ強くなれる。俺達はその事をこの一週間で嫌と言うほど理解しているのだから。

 

三週間が過ぎ、俺達は漸く『訓練メニュー』にも慣れた。

この教導を始める前に比べて実力はついた。コンビネーションやチームワークにも磨きがかかり、高町臨時教導官との模擬戦も勝率があるようになってきた。

ただ、それでも俺達は満足できない。なぜなら、俺達の前に巨大すぎる壁が存在し、そして一対一ではけして勝てない相手にチームワークで勝利を納めている状態だ。

それをできるだけ数を少なく、五人一組のチームから四人一組へ。そして三人一組へと数を減らしていき、最終目標は一対一で渡り合いたい。それが今の俺達に共通する目標の一つだ。

たとえ相手が手加減してくれていても勝ちは勝ち。できることならば、いつか本気で競いあってみたい。

その願いを胸に、俺達は今日も教導に精を出す。

 

四週間目になり、チーム戦で高町臨時教導官に一度も勝ったことがない者がいなくなると、高町臨時教導官はリミッターを一つ外した。

どうやら高町臨時教導官には出力制限がかけられていたらしく、それまでの射撃や合気を基本にした戦いに全体的に威力が出てきた。

その上、誰でも頑張ればできる技として魔力集束を俺達に教えてくれた。

 

結局最後まで高町臨時教導官の底は見えなかったが、それでも俺達は高町臨時教導官に感謝の念を絶やさない。

ドン底から救い上げてくれた、厳しくも優しい臨時教導官に、心から敬礼を送ります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その132

 

side 高町 なのは (ミッドチルダ・機動六課)

 

久し振りに会ったトゥムさんと軽くミーティングをしてから、私は地上本部の中に入る。

外はヴィータちゃんとフォワードメンバーに任せたけれど、やっぱり何かが起きそうな予感は消えない。悪寒も消えない。

 

……ああ、悪寒は消えるはずがないよね、初めから無い物が消えるわけない。

 

そんな冗談は置いといて、開始から四時間少々の時間はあっという間に過ぎていく。

その間は私は本格的に暇だったけれど、いつもの通りに地上本部以外の部署に犯罪発生を通報したりしながら過ごしていたらあんまり退屈することは無かった。

ただ、やっぱり地上本部が動かないという事もあってか普段より犯罪発生率が僅かに高い。忙しそうに働く地上本部の局員さんですが、それでも頑張ってくれています。

地上に暮らす者としては、やっぱりありがたいですね。

 

……さて、そろそろ意識をそらすのは辞めにしましょうか。

遠くの空にいくつもの影がある。幻術師と高機動の人と、新顔が1、2、3……あと融合機が一体と、ホテル・アグスタの時にも居た魔導師が一人。召喚師の女の子も来てるから、やっぱり襲撃戦でしょうね。

それに空中じゃないけれどビルの屋上辺りに狙撃手が居て、地下に新顔が三人。地中に多分モグラの子が居て、そして通信で誰かと話しているからそこに一人。

 

……私の特技は『波』ですから、電波とか念波とかも守備範囲に入っていますよ?

繋がってればそこの距離は無視できますし、通信の向こうに分身を出すことだってできます。

 

さて、相手がこれだけ用意をしているんなら動かないと思う方がどうかしてる。私も動き始めよう。

 

とりあえず周りに警戒を引かせる。トゥムさんを通じればそれなりに話を聞いてくれるから話が早くていい。

それから一階まで降りて、エントランスに出る。ここからなら何かあったらすぐに出られるし、内部のこともわかる。一番いい場所だよね。

 

それから相手の武器を確認。今までに見たことのある相手はそのままだし、魔導師の人も分かりやすく槍型のアームドデバイスを使っています。あとは……新顔の人ですかね。

高速機動の人と一緒にいる人は、ブーメランのようにも見える曲刀を二つ。ズボンの人は何も持っていなくて、その近くにいる人は明らかにライ○セー……光剣のようなものを持っているのがわかります。

地下の人は……スバルのマッハキャリバーに似ているローラーブーツのようなものと、砲撃できそうな銃口付きの盾のようなもの。それに大量の投擲用ナイフを持った眼帯さん。

 

……とりあえず渾名を付けましょう。この場にいる番号の若い順に、羽さん、眼鏡さん、眼帯さん、モグラちゃん、ブーメランさん、ズボン君、ブーツちゃん、狙撃手ちゃん、ボードちゃん、光剣ちゃんでどうでしょう。

それと、画面の向こうにいる二人は秘書さんとスカリ博士でいいですね。答えはあんまり聞いてない。

 

ついでに召喚師の子はルーテシアって言う名前だったはずだからルーちゃんで、魔導師の人はそのままゼストさん。融合機もそのままアギトでいいかな。

 

……二番の人が居ないけど、いったいどこで何をしているのやら……。

 

……っと、もうすぐ作戦開始の時間なのかな? だったら私も手を回さないと。

 

さあ、みんな頑張って。地上の平和は皆の手腕にかかっているよ。

私も頑張るけど、一人じゃ世界は守れない。みんなで世界を守りましょう?

 

 

 

 

 

side out

 

朝焼けの中、紫色の魔法陣と共に突然現れたガジェットの群れに、地上本部の局員は驚愕を露にする。

しかし、それもたった一瞬のこと。ただの地上本部の局員ならばともかく、よく訓練された地上本部の局員は意味も無く逃げるような事は無い。

 

「1、2、5、6隊は後退!3、4、7隊は構え!8隊は内部に緊急連絡を入れろ!」

 

念話が通じないことを即座に看破した現場指揮官によって、肉声で命令が下される。

命じられた小隊は即座にその命令を実行し、ガジェットに近すぎる位置に居た隊は下がり、後方の部隊は内部への経路が遮断される前に本部の中に走り込む。

 

「大きいのは分隊単位で狙え!狙うはコアだ!撃て!」

 

号令と同時に無数の圧縮された魔力弾が飛び、いくつものガジェットがコアを貫かれて爆散する。

 

「続けて安全域まで下がった者から順次攻撃!3、4隊は大型を、1、2、5隊は小型を狙え!6、7隊は飛行型を攻撃!落とせなければ近付けないようにしろ!」

『了解!』

「高町臨時教導官に情けないところを見せるなよ!」

『了解!死力を尽くします!』

 

よく訓練された地上本部の局員は、チームワークと戦術機動によってガジェット達を落としにかかる。

例え空を飛べなくとも、移動には生まれ持った脚がある。前衛は杖を槍のように扱ってガジェットを近付けさせず時に射撃を使って味方を守る。

中衛は主に攻性部隊。小型と大型の二種のガジェットを落とすのに全力を注いでいる。

後衛は飛行型を落としたり、どうしても手が足りなくなってしまっている所への援護を行う。

 

それはまるで、幾つもの隊が一つの生物のように互いの足りないところを補い合っているかのようだった。

現状で落とされてしまった局員数は0であるというところからも、彼等の練度がどれ程高いかも理解できるだろう。

 

そんなこんなで、突如始まった管理局地上本部に対する襲撃戦が幕をあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その133

 

side 高町 なのは (ミッドチルダ・機動六課)

 

とある眼鏡さんの『ミッション・スタート!』という妙にテンションの高い声と同時に、何だか音とは違う系統のどこかの波が規則的に揺らめき始めた。

それと同時に通信用の念波や電波が阻害され、地上本部の管制コンピューターにクラッキングをかけられていることが、その場の騒ぎでわかる。

 

とりあえず私はこの場の全員の位置確認をする。

フェイトちゃんは本部の中、はやてちゃんとシグナムさんは会議室で閉じ込められていて、応援とかはしばらく期待できない。

まあ、ガジェットについては地上本部の武装隊員が頑張ってくれているから大丈夫そうだけど、一部で押し返しても他のところの守りが抜かれてちゃあ意味がない。

外に居る戦力は、私とヴィータちゃん、スバル達フォワード陣と、武装隊員の一部くらい。

 

…………あ、応援が来た。

 

チリン、と鳴らされるハンドベルの音をシュテルちゃんに伝えると、シュテルちゃんはどうやってか魔力を一切使わず瞬間転移でレジーの前に現れた。これで地上本部を外的戦力で落とされることはほとんど心配しないで良くなった。

私の特技は対個人用殲滅魔法。けれどシュテルちゃんの特技は対軍用超々広域殲滅魔法。こういう弱い相手が無数に出てくる場合には最強と言ってもいい。

 

私は木霊法を使って、周囲の防御を行っている人達に呼び掛ける準備をする。

タイミングを見計らって、一番いいタイミングでそれをやらなくちゃいけない。

息を吸って、吐いて、もう一度吸って………

 

「こちら、高町なのは少将相当官です。現在は通信が不良のため、直接声を届けています。これから大きいのが行きますから、総員退避してください!」

《了解ぃっ!》

 

その場に居た部隊のほぼ全てが即座に反応して屋根のある部分まで退避する。それと同時に朝焼け色に染まりかけていた空は桜色に染め変えられた。

そして、空を塗り替えた桜色に燃える星々は。

 

「流れたまえ」

『フォーリングスター』

 

大きくもないのにやけによく響く声の号令と共に、高速でガジェットに降り注いだ。

下からは、この攻撃の主が誰かを理解した隊員達から声が上がる。

 

《ま……まさか……》

《五年前、高町臨時教導官と死闘を繰り広げ、高町臨時教導官の名と共に一躍有名になったが、その後完全に消息を断った……》

《……ように見せかけ、翠屋で普通に仕事を続けていた……》

《【星光の殲滅者】……だと…………!?》

 

ざわ……ざわ……!と小さく騒いでいる地上本部の隊員達だったけれど、すぐに体勢を立て直す。

それにしても、私は結構騒がれたんだけどシュテルちゃんはどうしてかあんまり騒がれなかったよね。どうしてかなぁ?

 

……シュテルちゃんの無表情が怖かったから……とか?

 

……なんだかずるい気がします。私はあんなに苦労したのに……。

まあ、シュテルちゃんもシュテルちゃんで色々やっていたのは知ってますけど。本局局員でしつこい相手を泣いたり笑ったりできなくさせたりとか、公衆の面前で爆殺したりとか、針を超長距離で投げて狙撃したりとか。

 

……まあ、その事はどこかその辺に放り投げておくとして……とりあえず、ここはシュテルちゃんに任せて私は遠くにいる眼鏡さんをなんとかしましょう。それだけで戦況はかなり有利になるはずです。

ここに向かってきている羽さんとブーメランさんは……地上部隊の皆で協力すれば勝てる相手でしょう。ガジェットの群れを相手にするよりはきついだろうけど、頑張ってね?

それに、地上の皆も頑張れば飛べなくもないし、人によっては足の裏に小さなシールドを置いて、それを足場に空中を飛び回ることだってできるはず。

羽さんとブーメランさんの動きを牽制しながらのチームプレーなら、少なくとも全滅することはない筈です。

不意に狙われたら危なかっただろう狙撃手さんはさっきシュテルちゃんに全方向(具体的には360度×360度の上下を含む全周囲)から『星』を撃ち込まれて襤褸布のようにされてましたし(生きてます)、地下のブーツちゃんと眼帯さんとボードちゃんはフォワード達が何とかしてくれている。

 

……あ、六課の方がピンチかも。でも行かなくても大丈夫な予感があるから、私は行かないでおきましょう。行ったら巻き込まれそうな気もしますし。

 

 

 

 

 

side ティアナ・ランスター

 

外になのはさんと【星光の殲滅者】が出ていたので、六課の方で見つけた航空戦力の方にヴィータ隊長とリイン曹長が行き、私達はフェイトさん達にデバイスを届けるために地下から地上本部に入る。

……それにしても、昔ならこんな速度でこんなに走れば息切れは免れなかったと思うけれど、今は息切れする気配すらありません。

やっぱりなのはさんの教導はきつい分効果があることを実感し……スバルに向けて撃たれた弾丸を撃ち落とした。

同時にエリオが射撃の飛んできた方に槍を構え、スバルは正面から仕掛けてきた戦闘機人(多分)の蹴りを左の拳で弾き飛ばした。

 

「へぇ……ひよっこの新人と旧型の癖に、なかなかやるっスねぇ」

「鍛え方が違うのよ」

 

私は銃撃をして来た相手の軽口に付き合う。できることならここで情報を引き出しておきたいところだけど、あんまり話してると時間がなくなる可能性もある。

とりあえずここは一時撤退して、フェイトさんや八神部隊長、シグナム副隊長にデバイスを渡すことを優先しないと。

 

スバルは前でローラーブーツを履いた敵と交戦中。そこそこ激しいような気がする攻防(……なのはさんと前線隊長チームの戦闘を見たことがあると……ねぇ?)が続いているけれど、膠着状態が続いている。

私達三人は十数体のガジェットと、一人の戦闘機人と向き合っている。

この状態を切り抜けるには…………数は向こうが勝っているけれど、ガジェットは物の数に入らないから実質二人。ガジェットは全部纏めてもキャロ一人でなんとかできそうな数しかいないから、先にガジェットから潰しましょう。

 

『スバル!暫く持たせてよ!』

『頑張る!倒せたら倒しちゃうけど、いいよね?』

『無理はしちゃ駄目よ? あんたの突破力が必要になる時が来るんだから!』

『了解っ!』

 

スバルは元気よく返事をして、ローラーブーツの戦闘機人に突っ込んでいった。

……それじゃあ、私達も頑張るしか無いわよね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その134

 

side ティアナ・ランスター

 

作戦は簡単。スバルが片方を押さえている間に、私達がガジェットともう片方を暫く行動不能にする。そしてその後スバルと連携して最低限動けなくして、それから撤退。

わざわざ完全に落とす必要は無いから、危険なことをする必要はそんなに無い。

……何より、こいつらは多分私達より弱い。油断をしたら後でその事をどうやってか知ったなのはさんにバインドで空中に固定→砲撃で撃墜→射撃で浮かせる→投げて地面に叩きつけられる→踏まれる→蹴られる→バインドで空中に固定→以下、自分の体の頑丈さに感謝しながら気絶するまで無限ループという耐久力テストと言う名の地獄が顕現するから、絶対に油断はできないのだけれど。

 

ちなみにその『耐久力テスト』だけれど、私は受けたことは無い。少し前にシグナム副隊長対フォワード四人チームで模擬戦をして、シグナム副隊長の油断につけこんで幻術と罠と策略を駆使してなんとか勝利した時に、シグナム副隊長がにっこり笑ったなのはさんにずるずると引きずられていった先で半殺しにされていたのを見てしまった。

どうもそれが半ばトラウマになってしまったようで、油断しようとすると勝手に見た光景のシグナム副隊長を私に変換された映像が脳裏に走ってしまうため、手抜きはともかく油断はできない体になってしまった。

 

……なお、シグナム副隊長はあれだけの物を食らってもトラウマにはなっていないらしい。いったいどんな神経や心臓をしているのか、ちょっとどころじゃなく興味を持ってしまう。

 

……っと、危ない危ない、今は交戦中。気を抜いたらいろんな意味で死んじゃう……!

 

キャロのブーストを受けた私は、二丁あるクロスミラージュのうち左手のそれだけをダガーモードに変えて交戦中。ケーブルやビームは左のダガーで切り払い、右の銃で圧縮した弾丸を撃ち込む。

十数機しか居なかったガジェットはあっという間に壊滅し、私は左のダガーモードを銃に戻してエリオとスバルが相手をしている二人に同時に牽制射撃を撃ち込む。

キャロのブーストは最低限にしてもらっているので効果はもう切れているけれど、このくらいはブーストが無くても問題ない。

 

クロスミラージュにロックオンさせるんじゃなく、マニュアルで狙いをつけて即座に引金を引く。戦闘機人相手にロックするなんて正気の沙汰とは思えないから……と言っても、スバルと付き合いの長い私だから言えることなんだけど。

そして銃口から即座に発射された弾丸は、私に全く意識を向けていなかった二体の戦闘機人の側頭部に見事に直撃した。

突然のことに目を白黒させる戦闘機人に、スバルの鉄拳とエリオの槍の柄が突き刺さる。

 

スバルのリボルバーキャノンは鳩尾に、エリオの槍の柄は相手の肝臓の位置にそれぞれ強打を与えていて、その上エリオの槍にはお得意の電撃が纏わりついている。……私があれをやられたら、多分吐く。

スバルの拳を受けた方は何度も床に叩きつけられながら吹き飛び、エリオにやられた方はなんだか腰の辺りから嫌な音をさせながら壁に叩きつけられた。

 

「撤退!」

 

私の号令に合わせて、即座に全員が全速力で走り去る。最近は数分なら全員がスバルの全速力に匹敵するくらいの速度で走れるようになっているので、幻術は使わない。

最後の置き土産として、相手二人の脳天に一発ずつ魔力弾を撃ち込んでから走り去る。綺麗に直撃して体が『びくんっ!』と跳ねてたような気もしたけれど、今はそんなことを気にしている場合じゃない。

さっさと私達はその場から走り去り、フェイトさんとの待ち合わせ場所に全速力で向かっていった。

 

 

 

 

 

side 高町 なのは (ミッドチルダ・機動六課)

 

地下のティアナ達の活躍を聞いて、私は今までの教導が無意味じゃなかったと一安心。

ただ、正直あの場合はもうちょっと撃ち込んで相手が事件終了までそこで寝転がっていてくれそうなくらいはやっておくべきだったね。

そこで手加減をしちゃうから、今みたいに復活されちゃうんだよ?

 

……まあ、フォワード達一人でも十分相手ができる程度みたいだし、私は手を出さないでおくけどね。

 

今はそっちよりも地上の撹乱をしてる眼鏡さんの方が優先。狙撃手ちゃんはシュテルちゃんが落としたし、羽さんとブーメランさんは地上部隊員でなんとかなっている。

眼帯さんはギンガと交戦中で、モグラちゃんは狙撃手ちゃんを拾って移動中。やっぱり狙うは眼鏡さんくらいだね。あるいは六課の方のズボン君と光剣ちゃん。

どの子を狙うか迷ってる暇なんて無いから、とりあえず眼鏡さんからどーん!

 

『っ!?』

 

眼鏡さんは突然の砲撃に驚愕したものの、咄嗟に下向きに加速して私の砲撃を避けた。

……ちぇ。流石にこの距離からじゃ当たらないか。

じゃあ当たるように願いを込めてもう一発。

 

……あと、今回のは曲がるよ?

 

前回と同じような方法で、今度は右に避けようとした眼鏡さんを追いかけるように砲撃の軌道が折れ曲がり、直撃。通信が回復したところから見て、ある程度のダメージは与えられたんだろう。

でも、今回は少しびっくり。まさか、こんなのを用意してるなんてね。

 

背後に迫る何かに圧縮した射撃を撃ち込む。するとそれに施されていた光学迷彩が溶けて、見覚えの無い何かが地上に落ちていった。

 

……って、ごめん嘘ついた。見たことあった。

たしか、前にヴィータちゃんが一度不意打ちで片腕切り落とされた時の犯人があれと同型機だったはず。

…………そっかそっか、あれってガジェットの一種だったんだね。なーるほど?

と言うことは、ヴィータちゃんの腕を一度とはいえ切り落としたのはスカリ博士も大いに関係があった……と。

 

………………久し振りに割と本気でキレちゃったかも? 冷静にキレちゃう質だとそう言うのがしっかりわかっちゃって嫌だね?

まあ、とりあえず……八つ当たりの的になって下さいな。返事は聞いてないけどね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その135

 

side スバル・ナカジマ

 

なのはさん以外の隊長達のデバイスを、フェイトさんとフェイトさんの知り合いらしい人に預けたすぐ後。フェイトさんがロングアーチと連絡をとった直後に、私はギン姉に連絡を入れた。

通信妨害はまだ酷かったけどなんとか通じたその念話で、私はギン姉が三体の戦闘機人と交戦中だと言うことを知った。

 

そこですぐさましゃっきりモード(別名お仕事モード)になったフェイトさんが私達に指示を出す。内容は、エリオとキャロ、そしてフェイトさんはここからすぐに機動六課に向かう。そして私とティアはすぐギン姉のところに救援に行く。

ギン姉を助けることが最優先目標で、戦闘機人と戦わなくて済むなら戦わなくていい。

 

……確かに、敵の戦闘機人の実力があのくらいなら、私とティアとギン姉の三人なら楽にどうにかなる。だから私達に行かせるみたいだけど……ティアは私についてこれるかな?

 

「馬鹿ね、無茶言わないで。少し遅れてついて行くわよ」

 

ちらり、と視線を向けた私にティアは言う。その言葉は、ちゃんと追い付いて見せるという、私にとってはこれ以上なく……じゃないね。……こほん。すっごく頼りになる言葉だった。

ちなみに、私にとって一番頼りになる言葉は……なのはさんの『大丈夫』だったりします。

 

そんなわけで私はフェイトさん達と別れてギン姉の所に走る。途中まではティアも走ってついてきていたけれど、やっぱり全速力でずっと走り続けるのは無理があったみたいで、今は後ろの方でゆっくり走ってきています。

 

……ゆっくりって言っても、時速で50kmくらいは普通に出てるんだけど。

私の速度は大体時速で130kmくらい。改造とかは一切してないはずなのに妙に速度が上がっていると、マリーさんもシャーリーさんも不思議そうな顔をしていた。どうしてなのかは私にもマッハキャリバーにもわからない。

だけど、今はそんなことを気にすることなくひたすら走る。

速く、早く、疾く。この胸の嫌な予感を拳で撃ち抜けるくらい、ひたすら早く。

そしてギン姉の反応の場所に辿り着いた私が見た物は。

 

「はぁぁぁああぁぁぁっ!」

「がはっ……!」

 

三人でギン姉を取り囲み、そして今まさにギン姉の鳩尾にデバイス攻撃を打ち込んだ戦闘機人の姿だった。

 

「ったく……あのハチマキといいこいつといい、旧型が手こずらせやがって」

 

…………あれ? おかしいなぁ……私って、キレるときは爆発的にキレるタイプだったはずなんだけど……どうしてこんなに冷静にこの光景を見てるんだろう?

リボルバーナックルのカートリッジを8発ロード。なのはさん式の教導のお陰で、この程度なら全く問題なく運用できる。

その時の音で私に気付かれてしまったけれど、そんなのは一切関係ない。

私の拳は最強でも最速でもないけれど、初見の相手なら例えそれがフェイトさんでも捉えてみせる。

 

私が目指したもの。それは一撃必殺の威力と確実に相手を捉えるための技。今はたった一度きりの技だけど、いつでも何度でも出せるようにするのが理想。

それにはまだまだ遠いけれど、その片鱗くらいは今でも持っている。

 

私は冷静に沸騰している頭のまま、ウイングロードを発動させた。

ウイングロードは狙い通りに相手の周囲を取り囲んで、即席の目隠しと檻になる。

それを確認した直後に私はマッハキャリバーと協力した全速力で突っ込んで行き、側面から戦闘機人としての全力の拳を振るう。

その拳はウイングロードに阻まれることなく突き進み、さっき私の相手をしていた赤毛でブーツの戦闘機人の脇腹に突き刺さった。

 

鈍い呻き声をあげる赤毛ブーツの戦闘機人に接触する瞬間、私は結構最近まであまり好きではなかった自分のISを発動させる。

拳の先にテンプレートが瞬間展開され、接触している相手に暴力的なまでの振動を送り込む。

振動は相手の体内に浸透し、そして弾ける。なのはさんが言うには、これを食らえば大体の場合は一撃で相手を戦闘不能にできるらしい。

その言葉を証明するかのように、ギン姉に止めの一撃を放った相手は吹き飛び、壁に叩きつけられて動かなくなった。

 

「ノーヴェ!」

「他人の心配をしてる暇があるの?」

 

私は吹き飛んで動かなくなった戦闘機人に気をとられたらしいもう一人の赤毛の戦闘機人に、今度は最速の裏拳を放つ。

普段ならばこんな速度しか見ていない軽い打撃に効果なんて殆ど無いんだけれど、今の私ならば話は別。振動によって威力を増幅された拳は、相手の肩を軽くかするだけにとどまった。

しかし、それだけでも効果は抜群。表情を歪ませたもう一人の赤毛の戦闘機人と、私にナイフを投げようとしている銀髪眼帯の戦闘機人の間に滑り込み、赤毛の戦闘機人に蹴りを、銀髪眼帯の戦闘機人には右の拳をそれぞれ打ち込んだ。

 

「がっ!?」

「ぐぅっ!? この威力……あれのISは接触兵器か……っ!」

 

直撃させた赤毛の方とは違って、貫いたとはいえバリアで一応威力を軽減させた銀髪眼帯の戦闘機人はすぐに体勢を立て直して私にナイフを投げつけてきた。

多分、私に近寄らないように戦うことを選んだんだろうけど、私を近寄らせたくないんならティアくらいには弾幕張らないと難しいよ?

 

私は体を沈めてナイフを避ける。しかし、避けた瞬間にナイフに纏わりついているテンプレートを見て、失敗を悟る。

この距離じゃあプロテクションを張ってもかなりの衝撃が来るだろうし、避けるにも時間が足りない。

それでも全速力で離れながらプロテクションを張るけれど、やっぱりその場でナイフが炸裂した瞬間に衝撃が私の体を貫く。

 

「ウェンディ!ノーヴェを連れて逃げろ!こいつは姉が抑える!」

「了解っス!無事に帰ってくるっスよ!」

 

どうやら、ギン姉を連れていくには人手が足りないことを理解して、ボロボロになった仲間だけを連れて逃げるらしい。

多分、地面に潜れる戦闘機人が来て逃げたりするんだろうけど、それに対して私も何も考えなかった訳じゃない。バカなりに考えて対策は作ってある。

 

リボルバーナックルにカートリッジをリロードし、即座にまたロードする。

 

「マッハキャリバー。まだ行ける?」

『問題なく』

 

頼もしい相棒の言葉に笑みを浮かべ、私は目の前の敵に向かって構えをとった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その136

 

side スバル・ナカジマ

 

銀髪眼帯の戦闘機人と向き合ってすぐ、ティアから通信が入った。

どうやら通信妨害がなくなったらしく、凄くスムーズに声が聞こえる。

 

『スバル、聞こえる?』

『聞こえてるよ、ティア』

『今回の目的はギンガさんの救出なんだから、別に倒す必要は無いことを忘れないでね?』

『……交渉も視野に入れていいってこと?』

『そうよ』

 

ティアはそう言うけれど、私は交渉はあんまり得意じゃない。だから交渉といっても凄く簡単なことしかできないんだけど……。

何て考えながら、私は口を開く。

 

「管理局機動六課、スターズ分隊所属、スバル・ナカジマです。私の任務はギンガ・ナカジマ陸曹の救援であり、あなたとの戦闘ではありません。このまま引くのであれば私は追撃しません」

『……思いきったわねぇ……』

 

ティアが呆れたように言うけれど、私の頭じゃこれが限界なんだよ?

記憶力は結構いい方だけど、頭がいいことと記憶力がいいことはイコールじゃないからね。

 

けれど、相手は私の言葉に首を横に振る。

 

「悪いが、私の任務はお前達タイプゼロの捕獲だ。最低でもどちらか捕らえなければならんのだ」

「……それじゃあ」

「うむ。戦うのみだ」

 

私と銀髪眼帯の戦闘機人は、お互いに拳と武器を向け合う。

……私はちゃんと妥協案は出したし、ここで多少やり過ぎても大丈夫なはず。そして今は、時間はどちらの味方にもならない。私にはティアが加勢に来るし、相手には相手で救援が来るだろう。ここはさっさと決めちゃいたいところだけど……。

 

「ウイングロード」

 

私はさっきと同じようにウイングロードで相手を包む。

今回は相手の動きを止めるよりも視界を塞ぐことを優先しているから前より少し広いし、ちょっと脆い。

前後左右に上まで塞いだ直後に、私はギン姉の所に走る。その間にウイングロードの一部が爆発で消し飛ばされるけど、そのほんの数秒の時間が一番欲しいものだった。

 

相手の横を走り抜け、ギン姉の体を抱えてウイングロードで走り抜ける。たまにナイフが飛んできたりするけれど、ウイングロードの目隠しが聞いているみたいで、正確に私の場所に飛んでくるものは少ない。

このままなら多分簡単に逃げ切れると思うけど…………仕返しの一つや二つはしておくべきだよね?

なのはさんなら多分殲滅攻撃と書いて軽い仕返しって読むくらいのことはしそうだし、大丈夫大丈夫。

 

実は私の振動破砕、これは確かに普通に使えば近接戦闘と言うか隣接戦闘専門の技なんだけれど、ちょっとした工夫で遠隔攻撃にも使うことができちゃったりする。

まず、振動を魔力に込める。するとその魔力が私の振動破砕と同じように振動する訳なんだけど、それでシールドを作った場合は振動するシールドができる。

そのシールドをなのはさん式にぶん投げれば、そこそこの威力のある斬撃破砕ができる。

 

そんなわけで実行。なのはさんによる狂気的を通り越して猟奇的の範疇にまで入ってしまった基礎固めの中には当然魔力操作の項目もあったので、シールドを投げて飛ばすくらいはできる。

そもそも私はあの空港でなのはさんのシールドとバリアに救ってもらった。そんな私も誰かを守れるようにと考え、シールドやバリアをよく練習していたんだから、それだけは格闘以外でも結構得意。ヴィータ隊長のハンマーだってしっかり防ぎきれるんだから。

 

そんな硬度のシールドを三角錐の形に変えて銀髪眼帯の戦闘機人にいくつも投げつけ、そして即座に離脱する。ほんとはもうちょっとしっかり打ち込みたかったけど、気絶したギン姉がいるからこれ以上はギン姉にも影響が

 

「スバル!」

「ティア、ナイスタイミング!ギン姉連れて先行ってて!」

「え、ちょ、スバル!?」

最高のタイミングで現れた私の相棒にギン姉を預けて、私は即座に180度進路を変える。ティアはかなり驚いていたけれど、私の目の色と状態を見て察したらしく、すぐさま反転した。

 

「そこにいるから危なくなったら呼びなさい!」

「ありがと!」

 

そう言いながら、私はマッハキャリバーを通じて地面に振動を撃ち込む。それは相手の足を痺れさせ、ほんの一瞬の隙を作る。

がくんと膝を折った銀髪眼帯の戦闘機人に高速で接近し、至近距離から振動するシールドを投げる。

ナイフを弾きながら突き進み、背中の外套を千切り取って抜けていくシールド。

そのすぐ後ろに隠れながら進んでいた私は、シールドを避けきったと思ってか私の姿を探している戦闘機人の眼帯をしている方の側面から拳を叩き付けるように振るう。

殴った拳になのはさんのお腹を貫いた時の嫌な感触と似たような感触があったけれど、貫いた訳ではなくてただ鳩尾に拳がかなりめり込んでいただけだった。

 

右手を引き抜き、即座に右で顔面を掴んで床に叩き付ける。

そしてそのまま、戦闘機人の頭に直接振動破砕を打ち込んだ。

 

「────────!!」

 

聞くに耐えない悲鳴のようなものが、私の手の中から響く。これが絶えるまで振動破砕を打ち込み続ければ、恐らく相手は事件解決までは動けなくなると思う。

 

けれど、私がその悲鳴が絶えるのを聞くより早く、相手の体が地面に沈み込んだ。

 

…………ああ、あの水色の髪の戦闘機人か。

 

……大失敗。周りを見れてなかったや。なのはさんに怒られるかなぁ……。

 

「おわったよー」

「はいはい。それじゃあギンガさんを上に運ぶわよ」

「はーい」

 

私とティアは、ここに来た時と同じように走ってこの場を去った。

勿論、ギン姉は私が背負って走っている。私の方が体力あるしね。

 

――――――――――――――――――――――――――

 

Q.ノーヴェ達、特にチンクは大丈夫?

 

A.アイアンクローから振動破砕食らって大丈夫なら大丈夫。

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その137

 

なのちゃんに頼み事をされ、シュテルで地上本部のガジェットを狩っていた途中のことだ。

突然、アンダーグラウンドサーチライトに衝撃が走り、山になっていたぷちかがころころと転がり落ちてきた。

よく見るとぷちーねえさんやぷちたばねーさん、ぷちののちゃんにぷちりんぷちりあぷちろっと、それにぷちらるちゃんにぷちかんちゃんまで混ざっていたような気もするが、気のせいじゃないだろうな。

 

「ん~……すぴ~…………」

 

そして、のほほんちゃんが居るのはもはや間違いないな。いつごろから居たんだろう?

 

「んにゅんにゅ……あ、起きちゃった……」

 

ぱっ、とのほほんちゃんは姿を消した。何がどうしてこうなったのやら。のほほんちゃん凄いな。

 

とりあえず一応約束したし、何度も何度も入り口を叩かれてると五月蝿いので出ることにする。シルバースキンを着るが、今回使うのはいつものノーマルな方じゃなくとアナザーの方。

何故なら、いつものやつは俺が年に一回出ているDASSのインターミドルチャンピオンシップで五年連続で世界大会で優勝している『キャプテン・ブラボー』の正装のようなものだからだ。俺が使ったら周りがうざい。

なお、今年も参加して優勝した。公式戦でのノーダメージ記録はいままでしっかり続いている。

 

そんなわけでアナザータイプのシルバースキンを着た俺は、なのちゃんが形だけ使っていることになっている部屋から出る。すると目の前には縦長のカプセル的な機械がいくつかふよふよと浮かんでいた。

軽く手を払う感じで叩けば、ガジェットは千切れて破片が宙を舞う。

敵対認定されたのか、俺に攻撃を加えてきたが……この程度じゃあ俺には通らない。

 

適当に目についた奴から破壊していたら……今まで出てきたガジェットとは全然形の違う奴がでてきた。

どのくらい違うかと言えば、今まで出てきたのは縦長のカプセルみたいなやつで、時々コードが触手のように出ていたりしたやつだった。

しかし、今俺の前にいるのは、人のように二本の手があり、人のように二本の足があり、人のように胴体と顔があり、人のように目は二つあって…………と言うか人だ。

 

「……邪魔……」

 

その紫色の髪の娘は突然攻撃をかましてきた。

紫色の閃光が俺の全身を飲み込んで、そしてそのまま抜けていく。

…………まあ、とりあえず言わせてもらうと……。

 

「邪魔なのはお前だ不法侵入者の大鋸屑小娘。帰れ消えろ果てろ溶けろ焼け爛れて焼滅して後ろの羽蟲ごと潰れろクソチビ」

 

自分の攻撃が通らなかったのに驚いたのか、少しばかり固まっていた蟲娘の鳩尾の辺りを踵で蹴り飛ばす。

その後ろで控えていたかなりサイズのあるゴキブリみたいな奴は、吹き飛んだ蟲娘を受け止めようとして受け止めきれず、纏めて隊舎の外まで吹き飛んでいく。

まあ、勝手に入ってきた害虫にはお似合いだよな。

 

そう考えながら、たった今できたばかりの外への直通経路を進む。かなりガタガタで歩きづらかったが、この際文句は言うまい。

外に出たら外に出たで突然緑色の光に飲まれそうになったがとりあえず片手で弾き、真っ赤に光るビームサ○ベル的なのを持った奴に斬りかかられるのを斬られるより早く鳩尾に蹴りをくれてやることで避ける。

 

…………ああ、そう言えばこいつのはそういう能力だったな。正直フローレス・セクレタリーにライアーズマスクとライドインパルス、シルバーカーテン、ランブルデトネイター、ディープダイバーという前半組の能力しか使ってなかったから忘れてた。

……一応振動破砕も使ったことがあったか? 忘れたけど。

 

まあ、今はこいつらをなんとかしよう。できるだけ周囲の被害を抑えてやんなきゃならないから、とりあえずライアーズマスクで姿と声を変えて……声を借りるよ、弾。

 

『いいぞー』

 

OKが出た。これで心置きなく借りれる。

姿を変えた俺は、とりあえず俺のことを睨み付けている…………上半身水色タイツの八番君に手を向ける。向けられた上半身水色タイツの八番君は一瞬で身構える。

 

「【IS】発動……レイ・ストーム」

「!?」

 

そして、次の瞬間撃ち出された『自分の固有能力』の光に呑まれ、驚愕の表情を崩さないままに海まで吹き飛び、あまりに膨大な熱量が一度に叩き込まれたことによって起きた水蒸気爆発に巻き込まれて消えた。

もう一人、さっき蹴り飛ばした全身水色タイツのビームサ○ベル女は、何かを確認したかと思ったらすぐに踵を返して飛び去って行こうとしたので、さっきの上半身水色タイツの八番君の後を追わせるようにレイ・ストームを撃ち込んでおいた。

 

……やれやれ。こんなものかね。

 

「何者だ」

 

……ちょっと気を抜こうとしたところで、青犬ザッフィーに話しかけられた。随分ボロいが、平気か?

 

「あの子達を撃退してくれたのは嬉しいのだけれど……何者か答えてもらってもいいかしら?」

 

おっと緑化現象さんも居た。やっぱり【IS】を使ったのは不味かったかね。

なんでか俺に向けてかなりの警戒心が向けられているのを感じながら、俺はちょいと考える。

一番手っ取り早いのは、この場でさっさとこいつら殴って寝かしつけてからさよならすることなんだけど……わざわざ怪我を少なくしたのに自分で増やすのもどうかと思ったので、別のを考える。

 

……なんてことをしている間に、海の方に見慣れない白いでかいのが現れた。

 

ので、何かされる前に蹴り飛ばした。

 

「ッ……白天皇……!?」

 

……ふーん、そんな名前なんだ? で、あれが呼んだってことはこれは蟲か。

まあ、名前なんかすぐにどうでもよくなる。ここでただの蛋白質の塊になるからな。

 

空に大きな石の杭を出現させる。このサイズならあの蟲(?)もいい感じの標本にできるだろう。

ついでに俺の周りをブンブンと飛び回っているゴキブリ擬きも一緒に昆虫標本にしとくか。

レイ・ストームでゴキブリ擬きにバインドをかけて、ついでに巨大昆虫も押さえ付けて。

 

せーのー

 

「やめてぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!」

 

絶叫の聞こえた方を見てみたら、そこにはさっきまでずっと無表情だった蟲娘が涙を流しながら俺に手を伸ばして叫んでいた。

 

「お願い、やめて」「私はどうなってもいいから、ガリューと白天皇は……」「お願い、お願いだから……」

 

……とか色々言っているが…………こいつは召喚師だからこいつらを閉じ込めても意味がないんだよな。じゃあ蟲娘の方を閉じ込めとくか?

……転送で逃げられれば終わりだな?

 

…………よし、とりあえず捕まえて後のことはなのちゃんに丸投げするか。なのちゃんは多分子狸に丸投げするだろうけど、別にそれはそれでいいだろう。

 

俺は空中の石杭を消して、バインドも消滅させる。

それじゃあしばらくこいつはアンダーグラウンドサーチライトにご招待だな。

 

……はー、疲れた。

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

Q.ザフィーラとシャマルは?

A.多分生きてる。

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その138

 

side トーレ

 

それは簡単な作業のはずだった。今の地上本部の武装隊は、平均魔力がC-。部隊長でも最大でB+と言う貧弱極まりない戦力の集まりだったはず。管理局のデータベースには、たしかにそう記載してあったはずだ。

 

それが、なぜ…………

 

「うるぁ!」

「がはぁっ!?」

「よしきたっ!」

「ごへぁっ!?」

「よいしょぉっ!」

「ぐべはっ!?」

 

……なぜ、全員が魔法無しで私達より速く空中を駆け回り、その上シールドもフィールドもバリアもみんな纏めて拳で撃ち抜くような真似ができ

 

「隙ありゃあッ!」

「ゴゲラッ!?」

「ッ!トーレ姉さ」

「余所見禁物ぅ!」

「ごはっ!?」

 

何度も何度も拳が打ち込まれるが、実際は大して効いていない。

しかしそれでも数が重なればダメージは蓄積し、動きは鈍くなっていく。

そして私とセッテは、相手の力ではなく技術と連携に翻弄されるのを止めることができない。

 

この期に及んで言うのもどうかと思うが、私達は油断していたのだろう。前情報の相手の性能にばかり目をやって、こういった連携などの技術を見誤っていた。浅く見ていた。

しかし、もう油断はしない。腹を殴られ、背を蹴られ、脳天に踵落としを食らって脳震盪を起こしていようと、私とセッテならばまだ逃げ切ることくらいはできる。

一度退避し、そしてクアットロやディエチ達と手を組めば……。

……いや、これも油断だ。私達にできることは、ただ逃げ回って時間を稼ぐこと。今はとにかく全力で、生き延びることだけを考える。

 

セッテも同じように考えたのか、すぐさま私達は反転して地上本部から離れていく。

何人か追いかけてくる者も居るが、一瞬の加速ならばともかく長距離ならば私達の方が速いため、すぐに引き離されていく。

 

「セッテ。どれだけ食らった?」

 

私が聞くと、セッテは苦虫を噛み潰したような表情のまま私に返す。

 

「……頭部に23、それによって若干ですが視界混濁とバランスセンサーに異常が起きています。左腕に17、右腕に22、どちらも甚大な被害はありません。足も同様です。しかし、腹部と胸部に連続して受けた衝撃で、僅かにフレームに歪みが出ています。固有武装も一つ失いました」

 

なるほど。だからセッテはさっきから23.4度ほど傾いたまま飛んでいるわけか。納得だ。

……だが、それにしても被害が酷い。私もかなり食らったため右肩の骨格部が歪み、カウンターの拳を打ち払い続けていた左前腕部のフレームには数ヵ所の亀裂が入っている。

これでも以前の桜色砲撃を連発してきた化物との撤退戦に比べればまだましなのだが…………今回の相手は地上本部の武装隊。数の力が私達に通用するということを教えてしまったのは痛い。

 

……と言うか、あの部隊は明らかに異常だ。私は管理局の常識を網羅している訳ではないが、それでも明らかにあそこの部隊はおかしいと言うことがわかる。

普通の人間は飛行機械も魔法もロストロギアも使わずに空をトントン跳びはねることはできないし、当然戦闘機人である私達よりも筋力が強かったりすることも、反応速度が早かったりすることもありえないはずなのだ。

それなのにあそこの人間は当然のようにそんな私の中の常識を打ち壊していった。理不尽だ。非常識極まりない。

 

……だが、それでも彼等の強さは本物だ。全員の機動と攻撃、防御が完全に噛み合っていて、まるでそうあるのが当然の一つの動物の生体反応のように。

それは例えば、歯車仕掛けの時計に似ている。一つの基点から動き始め、そして一つの結果へと進んでいくそれに。

 

しかし私もドクターに作り出された戦闘機人であり、ナンバーズのナンバーⅢ、トーレだ。あの程度の者達に敗北したまま、引き下がれるわけがない。

だが、今のままでは私もセッテも、奴等にはけして勝てない。ならばどうする?

 

「……修行……でも、するか」

「……突然ですね。以前は『そんなものは無駄だ』と言っておられましたのに。心変わりですか?」

「まあ……な」

 

あんなものはただの無駄だと思っていたが……私が無駄だと切り捨てたそれをひたすら続けてあれだけの力を得たものがあれほどいる。

ならば、私も試してみる価値はあるだろう。

 

……それに、タイプゼロ・セカンドも修行を受ける前と後ではあれほど動きに差が出たのだ。同じ戦闘機人で同じ効果が出たという実績があるならば、私達にも効果はあるはずだ。

確か、タイプゼロ・セカンドを鍛えたのも、地上の異常人を鍛え上げたのも、民間協力者の『高町なのは』だったな。彼女の教導を真似た『高町式訓練マニュアル』が地上本部の極秘資料として保管されていたが…………参考にしてみるとしよう。

 

「機体の修復が完了し次第、ご一緒します」

「ああ」

 

私の隣でいまだに斜めのまま飛んでいるセッテの言葉に短く返す。

……まったく。私はいい妹を持ったものだな。

 

……しかし、今回の作戦は成功しているだろうか? イレギュラーが私達のところだけであれば良いのだが……最悪の場合は地下でタイプゼロを回収に向かったノーヴェとウェンディ、それとチンクの三人と、機動六課に向かったオットーとディード、お嬢の三人が捕まり、ディエチとクアットロも個別に破壊されてしまっている可能性もある。

流石にドゥーエ姉様とセインには被害は無いだろうが、相手にはあの高町なのはが存在している。

魔導師ランクEにして、最高の戦技教導官。『魔力ランク詐欺師』、『「魔力ランクなんて飾りです」を素で体現する存在』、『鬼畜砲撃魔神TAKAMACHI』が。

 

…………油断はできんな。ドゥーエ姉様はともかく、セインには被害が出ているということを前提にして考えておくとしよう。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

Q.地上本部の局員はどのくらい強い?

 

A.原作のフルドライブ使ってないスバルくらいが最低ライン。一番強いのは原作の聖王ヴィヴィオくらい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その139

 

side ジェイル・スカリエッティ

 

作戦は一部を除いて概ね失敗に終わった。

地上本部に向かわせたトーレ、クアットロ、チンク、セイン、セッテ、ノーヴェ、ディエチ、ウェンディの八体のうち、チンクとノーヴェは修復にかなりの時間がかかるだろうことが予想でき、比較的怪我の軽いトーレとセイン、セッテの四体もまた修復が必要。

ノーヴェやチンクほど酷くはないが、クアットロとディエチの損傷も中々のもの。完全修復と動作テストを合わせて……まあ三日はかかるだろう。

 

唯一戦闘行動に問題が無いのはウェンディだけだったが、そのウェンディもタイプゼロをどちらも連れ帰ることはできてはいない。

機動六課に向かわせたオットーとディードは……まあ、生きてはいる。修復にはかなりの時間がかかるが、直すことは可能だ。

一部の部品の完全レストアが必要かもしれないが……それさえ済ませれば峠はこの2~3日で過ぎるだろう。

体に新しい部品が馴染むまでは多少時間がかかるだろうが、三週間もしないうちに歩けるようになるはずだ。

 

「……それにしても、酷い結果に終わりましたね」

「そうだね、ウーノ。……だがまあ、聖王の器の回収だけは上手く行ったんだ。必要最低限度の成果を出してくれただけでも御の字としておこうじゃないか」

 

そう、当初の目的であった聖王の器は、今回救出活動にかなり活躍してくれたセインの働きによって手に入れることができた。これが僅かな成功の一つ。

もう一つは、機動六課の本部の壊滅。……とは言っても、施設の崩壊のみで人員を削ることはほとんどできなかったが……それでも少ない成果の一つだ。前向きに受け止めるとしよう。

 

……だが、その場で異常と言えることがあったのもまた事実。オットーの記憶領域に存在した、あの黒と銀のコートで全身を隠した『なにか』の存在だ。

 

あれは、突然現れたかと思うとすぐさまオットーとディードを撃ち落とした。それも、オットーのISと全く同じISを使って。

戦闘機人の産みの親である私でさえも、全く同じISを使う戦闘機人を作り上げることには成功していない。

だと言うのに、あれは波長も威力も何もかもをオットーのIS……【レイ・ストーム】と同じものを使ってきたのだ。興味を惹かないわけが無い。

もしかしたら、あれには未知の技術が使われているかもしれない。そう考えると、私はもうあれを回収して慎重に見聞してしまいたくなって仕方がないのだが…………今はまだ我慢だ、我慢。

 

今はとにかくナンバーズの修復と、そして聖王の器の完成を優先しなければいけないからね。

 

「既に準備は万端整っています」

「素晴らしい。流石はウーノだ」

「ありがたきお言葉です、ドクター。…………それと、何故かレジアス中将からアナログの手紙が届いています」

「ほう? 見せてくれ」

「こちらです」

 

そう言ってウーノが私に手渡してきたそれは、よくある茶封筒。宛名には…………何故か私の名前が普通に書いてあり、住所と言うか座標まで正しい。

……何故か、本当に何故か…………座標の後に『山の中、聖王のゆりかご内部、ジェイル・スカリエッティ様』と書いてあるが……こんなものでも届くのか。ミッドチルダの郵便局は存外に優秀らしい。

 

「ドクター。突っ込むべき所はそこではなく、どのようにしてこの場所が割れてしまったのかでは……」

「安心したまえ、ウーノ。手紙の内容を読む限りでは、暫くは手を出してこないさ」

 

……だが、最後に『この手紙は読み終わったら爆発四散しますのでご注意ください』と書いてあるのは頂けないな。書いたならちゃんとやりた

 

ボン!と手紙が弾けて周囲が真っ暗になった。だがあまり痛くはない。

痛くはないが……妙な感覚が頭上にある。

 

「ドクター!大丈夫ですかドク……プフッ!?」

「君が突然吹き出すなんて、いったい何があったんだい!? ……けほけほ……けむい…………」

 

けほけほと咳をしながら煙を払うと、ウーノが私に背中を向けて笑っていた。口を押さえているらしく声は出ていないが、全身がぷるぷると震えているのでわかってしまう。

……あと、顔を背けていても真っ赤な耳が見えている。

 

私は自分がどうなっているのかを確かめるために、近場にあったポッドに近付いた。ガラスで反射して見えると思ったのだが……湾曲しているガラスではいささか見辛い。

仕方がないのでウェンディに見て言葉で説明してもらおうと通信を繋げた。

 

『あ、なんスかドクタプフォッ!? なんスかその頭、あははははははは!』

「頭? 頭がどうなっているんだい?」

『ど……ドクターの頭が…………頭が…………っ!!』

 

ウェンディはウーノと違い、大きく笑ったものの僅かな情報を私に残してくれた。

本人はいまだに画面の向こう側で床をだんだんと叩き、腹部を押さえて転げ回り、窒息しても不思議ではないほど笑いながら悶絶していた。抱腹絶倒と言うのはあの事だろうな。

 

……しかし、頭……か。

 

私は、私から私に通信を送る。すると私の前には私の今の姿が画面に

 

「プフォッ!?」

 

私は吹き出した。

確かに、これを目にしたのならばウーノとウェンディがあれだけ笑っていたのも頷ける。

 

私の髪は、端的に言えばアフロになっていた。紫色のアフロに、爆発の煤によって真っ黒になった顔。咳をして僅かに煤が落ちたのが原因か、口元はそこだけ色が灰色になっている。

 

……そんな私の姿を見て、私はウーノやウェンディのように蹲って笑いをこらえるのに必死になった。

 

「……ふぅ……漸く収まりました。先程は失礼しましぶふっ!」

『ひー、ひー、はひー……あー、笑った笑っ……あはははははははっ!やっぱだめだ我慢できないぃぃっ!』

 

こうして、たった一枚の手紙をきっかけに私の研究所は笑いで満たされたのだった。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――

 

Q.レジアスの手紙はどうやって届いた?

 

A.高町特急便です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その140

 

side 高町 なのは (ミッドチルダ・機動六課)

 

わかってはいたけれど、機動六課は壊滅していた。

ザフィーラやシャマルさんも頑張ってくれたみたいだけど……やっぱりさくらさんには敵わないよねぇ……。

 

……まあ、確かに機動六課の隊舎は壊れてしまったけれど、その代わりに得たものもある。

それは、相手の召喚師……ルーテシアの身柄と、敵の戦闘機人二体の大破。あれだけ手酷くやられていれば、完全回復には一月じゃあ追い付かないと思う。

私としてはそれなりに納得のいく内容なんだけど……なんでスカリ博士はわざわざ戦力を割いてまでヴィヴィオを拐ったりしたんだろう?

 

……やっぱり、あの時の勘の通りに聖王関連だったりするのかな?

だとしたら、私は絶対聖王教会には関わり合いになりたくないんだけど……そういうわけにもいかないよね。残念ながら。

 

でも、被害らしい被害がこれだけで済んでよかったかもしれない。ギンガはぼろぼろにされちゃったけどしばらくすればちゃんと治るって言う話だし、後遺症が残りそうな怪我人も死人もいない。危ないのは……ヴィヴィオくらいだね、やっぱり。

まあ、今はお仕事中だから外に出したりはしないけど……ちょっと心配だなぁ。

わざわざ拐ったくらいだし殺されてはいないと思うけど、どんなことをされちゃうのか検討もつかない。

私にできることは、無傷のフォワード達にひたすら基礎を教えることと、その傍らで私も基礎を練り上げること。

一応『太陽』の周囲にいくつも圧縮魔力を作って『惑星』を作ることと、『惑星』からさらに分化して防御専門の『衛星』を作って操ることくらいはできるようになった。今ならあの時のシュテルちゃんにも勝てる!……ような気がする。

 

……まあ、シュテルちゃんは私のこれを見たらそれに見合うだけの隠し技を普通に出してくるだろうから、昔の実力なんてアテにはならないけどね。

 

そうそう、機動六課の隊舎は壊れちゃったみたいだけど、はやてちゃんは色々と繋ぎをとって昔懐かしのアースラを新しい本部に据えることにしたらしい。

確か、長期任務には耐えられないから廃艦処分にするとかなんとか言ってたような気がするけど……使って大丈夫なの? 凄く不安になりました。

 

……大丈夫ってことにしといた方が良さそうだね。今更私が何を言っても変わらないだろうし。

でも、訓練室が脆いと訓練がちゃんとできなくて困るんだけどね。いろんな意味で。

 

……特に私の全力は、こういう風に室内で使うには向いてないしね。壊していいなら話は別だけど、壊しちゃ駄目なんだし。

それに、みんなでやる基礎固めも、そろそろ自分達で無理の無い程度にやらせるくらいでいいでしょう。いつ出動がかかるかわからないと言うこともありますし、私自身も余裕が無くなってきてますし。

 

残念ながら、自分のことで手一杯です。スカリ博士を潰して、ヴィヴィオを奪い返して、地球とミッドの翠屋ではいつも通りに営業して……ああ大変。

まったくもう、なんでこんなにミッドチルダは忙しいんでしょうね。もう管理局にも聖王協会にも関わらないようにしましょうそうしましょう。

運のいいことに地上本部はほぼ無傷ですし、レジーの名前に傷がついたと言うことはほとんどありません。むしろ被害があれだけに収まったと言うことで高まっていますから、お願いすれば暫くは静かに暮らせるでしょう。

 

……そう言えば、ゼストさんのことを伝えたら突然顔を両手で押さえて、暫く固まったと思ったら机の一番上の引き出しの中から古いオープンフィンガーグローブを取り出し、油をつけて磨き始めたんだけど……何か知らない?

まあ、本人が言いたくないなら無理に聞き出そうとは思わないけどね。

向こうにはリシュも居るし、大丈夫だと思うよ? 多分だけど。

 

 

 

 

 

side スバル・ナカジマ

 

私が戦闘機人を追い返してから、一日くらいが過ぎた。

ギン姉はまだ起きないけれど、体の修復は大体終わった。後はギン姉が起きてくれれば体も動かせるようになると思うけど、起きてくれないとなんにもできない。

戦闘機人は確かに傷の治りは早いし、機械部品を取り替えれば簡単に直しちゃうことだってできる。

だけど、それでも痛いものは痛いし、辛いものは辛い。心だってあるし、思いやりだって持っている。

人と違うのは、機械が身体の中に入っていると言うことと、基礎的な身体能力。それと、一人一芸の『IS』くらい。後はみーんなおんなじ。

 

……人と同じように、死んじゃうことだってある。

あいつらは私とギン姉を回収するって言ってたから、多分死んじゃうようなことは無いと思うけど……

 

「……ギン姉…………」

 

私が呼び掛けても答えないギン姉の姿に、涙が溢れる。

 

「……ギン姉…………っ」

 

暖かいけれど力の入っていないギン姉の左手を握って、呼び掛ける。

けれど、やっぱりギン姉は答えてくれない。あの暖かい笑顔を返してくれない。

 

私は涙を拭いて、ギン姉を見つめる。

 

「……ギン姉。私、頑張るよ。必ずギン姉の仇はとってみせるから……見ててね、ギン姉」

 

そう言った直後、ぴくり、とギン姉の指先が動いて、私の手を軽く握り返してきた。

ゆっくりとギン姉の目が開いていって、私の顔を見つめる。

 

「……勝手に、殺さないでよ」

 

……ギン姉の苦笑いを見ていたら、なんだか涙が溢れてきた。

ギン姉の手をぎゅっと握って、私の額に擦り付ける。

 

「……おはよう、ギン姉」

 

この時の私は、きっと上手に笑っていられたと思う。

 

――――――――――――――――――――――――――――――

 

Q.レジアスは何をやってるの?

 

A.戦支度です。

 

 

 

 

 

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