異伝7 その141
side 高町 なのは (ミッドチルダ・機動六課)
機動六課の本拠地がアースラに移って数日。あの日にさくらさんを逮捕しようとして反撃を食らって今の今まで使い物にならなかったフェイトちゃんがようやく復帰したので、フォワード陣をフェイトちゃんとヴィータちゃんに任せて私の修行に集中する。
海鳴に居る私の本体と、翠屋・ミッドチルダ支店の私の分身、そして今も次元世界を放浪している私の分身を除いた総勢10体で、ただひたすらに魔力集束と音響魔法を極めんがために集束を続ける。
自分が狙った量きっかりを集束し、集束の速度を上げ、最大操作量を上げる。こんなに必死に強くなろうとしたのは、ジュエルシードが海鳴に降ってきた時以来かもしれない。
……あの時は本当に必死だったんだよね。魔法のことは知ってても、封印なんて方法すら知らなかったんだから。
魔法を使えるのは私だけ。最悪の場合はさくらさんが何とかしてくれると言っても、それは本当に最後の最後だからさくらさんが動くような事態にはできなかった。
……ああ、うん。思い出したら何だか殺る気が出てきた。今の私なら敵が誰でも叩きのめせるよ。
たとえフェイトちゃんでも、ヴィータちゃんでも、はやてちゃんでも、シグナムさんでも、クロノ君でも……ね。
……さくらさんだけは無理ですけど。絶対的に無理ですけど。なんと言うかもう本当に無理ですけど。
……でも、さくらさんが私と敵対したら、普通に私のことを殺しに来るんだろうなぁ……。なんだか凄く簡単に予想ができちゃうや。
……さあ、もうすぐ何かが起きるよ。多分だけどね。
side ティアナ・ランスター
私は、恐る恐るとなのはさんの方を見た。
突然アースラ全体に通信が開かれ、そこには絶望的な光景が映っていた。
金と紫の巨大な戦艦が、地盤を捲り上げるようにその姿を表す。
びしびしと大地に皹が入り、巨大な土塊がバラバラと砕けながら地上に落ちていく。
それを見ながら、ジェイル・スカリエッティが大笑いしているが…………こちらにとっては笑えるところなんてほとんど無い。精々スカリエッティの顔芸が中々見物だったくらいだろうが…………この場に居ながらその程度の事で笑えるならば、私はその人相手に処女を捧げてもいいと思ってしまうくらいにその人のことを尊敬するだろう。
ヴィヴィオが大きな椅子に繋がれ、涙を流しながらなのはさんとフェイトさんの事を呼んでいる。
そして私のとなりでその映像を見せつけられているなのはさんは…………。
「……? どうしたの? ティアナ」
にっこりと、笑顔を浮かべていた。
ただ、いつものように頭の後ろで適当に纏められただけの髪の留め具が弾け飛び、ざわざわと蠢いている。
さらに、普段は青いなのはさんの瞳はまるで乾いた血液のように赤黒く染まり、白くあるべき部分も明らかに赤茶けていた。
一瞬しか見えなかったが、人間の目ってあんなに色が変わるのね。スバルみたいだ。
……スバルは戦闘機人だけど。
「ティアナ」
「はい」
にっこりとした笑顔に冷たい声。突然それを浴びせかけられた私は、逆らおうという意思が根刮ぎ奪い取られてしまい、ただ返事をする。
それを知ってか知らずか、なのはさんは私にお願いをしてくる。
「ちょっと私は、出てくるから、私はいないものとして作戦をたててね? って、はやてちゃんに伝えてくれるかな?」
「え……あ、はい!わかりました!」
「いい子だね、ティアナは」
ぽん、と手渡されたのは、なのはさんの名前の書かれた辞表。多分、八神部隊長に今言ったそれが認められなかったら提出してくれという意味だろうと思う。
「そうだよ。ティアナは本当に頭がいいね」
「ふぇっ? ……あ、ありがとうございます……」
よしよし、となのはさんに頭を撫でられると、なんだかそれだけでちょっと幸せな気分になってしまう。
理由はわからないけど、なんだか全身から力が抜けて……。
「それじゃあ、よろしくね?」
「はい!お任せください!」
私はびしっと敬礼をして、踵を返して歩き去るなのはさんの後ろ姿を眺めていた。
八神部隊長になのはさんの言葉を伝えると、八神部隊長はどうしてか頭を抱え始めた。
まあ、何となく理由はわかるのだけど、やっぱりこの部隊で最強の名をほしいままにしているなのはさんの不在は痛いのだろう。
けれど、多分大丈夫だと思います。なのはさんは既に出発していて、きっと今頃はスカリエッティのアジトでスカリエッティをぼこぼこにしていたりとか、ゆりかごの周囲に大量に湧いているガジェットを落としたりしているんだろう。
……なのはさんなら何をやってもおかしくない。もうそれは当然の事だよね。
少し前にも、機動六課の隊舎を襲ったあの女の子をどこからか連れてきていたし。黒と銀の人に連れられて姿を消していたはずなのに、どうしてか凄くなのはさんにくっついてるし……。
……もしかして、その黒と銀の人の中身がなのはさんだったりしてね。あり得ない話じゃないと思うんだけど…………言わない方が良さそうだから何も言わない。
きゅ……とスカートを捕まれたのを感じて下を見てみると、あの召喚師の女の子が私の後ろに立っていた。なんだか凄く寂しそうだけど……。
……仕方無い。一緒に居てあげよう。なのはさんがここに戻ってきたら、きっとそっちに行くはずだしね。
―――――――――――――――――――――
Q.なのはさんマジギレモード?
A.絶望的なほどマジギレです。
Q.じゃあスカリ博士は死ぬ?
A.さあ? 死ぬんじゃない?
異伝7 その142
side 高町 なのは (ミッドチルダ・機動六課)
スカリ博士の研究所に分身を出し、そして私の意識をそちらに移して元の分身を消す。こうすることによって、ほんの一瞬で数千キロメートル離れた場所に即座に移動することができる。
……等と言ったけれど、実は久し振りに本気でキレたお陰か耳の感度が上がっていて、次元の壁の一つ二つなら抜いて諜報ができるくらいになってしまった。
頭の方もよく回って、今なら20体くらい普通に分身を出して完全に操れそうだ。
まあ、20も出したら面倒だし、そんなに数が必要な訳でもないから出さないけどね。必要なら出すけど。
……えっと……この場に居るのは……秘書さんと羽さんとモグラちゃんとブーメランさんとスカリ博士だけだね。
他にもカプセルの中に居るみたいだけど、あれじゃあ動けないだろうし。
……と言うか、スバルもやるときはやるね? 頭を掴んで振動破砕だなんて、死んでもおかしくないから私だってやらないよ?
……ほら、振動って波だから、私も真似できるんだよね。流石に実際に人や戦闘機人に使ったことはないけどね。ミンチになるだろうから。
そんなことを考えつつ研究所内をじっくり見て回っていると、ガジェットが何体も何体も出てきたのでレイジングハートに魔力刃をつけた槍で破壊しながら進む。
Ⅰ型Ⅱ型Ⅲ型Ⅳ型等々多くのガジェットに混ざってモグラちゃんがガス爆弾を落としてきたりもしたけど、ガス爆弾は結界で封印してから転移させて適当に結界を解いて散らす。
ついでにモグラちゃんの手に優しく一発撃ち込んだけど、ギリギリ避けられた。
私は進む。罠は踏み越え、障害物は叩き壊しながら、ただひたすらにスカリ博士の所に向かって進む。
すると、途中で私を待ち構えているらしい羽さんとブーメランさんを見付ける。今この場で叩き落とすのは簡単だけど、私はそれを実行せずにただ歩いて行く。
その二人が居たのは、広間と呼べるくらいには広い場所。二人は私に向かって佇んでいて、明らかに闘気を見せている。
……ちょっと前まではそんなものは欠片も無かったはずなのに、いったいこの数日で何があったんだろうね?
私が二人から10メートルほど離れた場所に立ち止まると、羽さんとブーメランさんはなんだか少しだけ残念そうな表情を浮かべた。
しかしそんな気配をすぐさま振り切って、羽さんとブーメランさんは私に見事な敬礼をした。
「高町臨時教導官に、敬礼!」
……うん、とっても綺麗な敬礼だね。私よりずっと上手だと思うよ?
ただ、私は羽さんやブーメランさんに『高町臨時教導官』なんて呼ばれるようなことをした覚えは無いんだけど、何で私はそんな風に呼ばれてるのかな?
「私は貴女達の教導官になった覚えは無いんだけど?」「いいえ。私たちは確かに直接高町臨時教導官の教えを受けたわけではありませんが、確かに高町臨時教導官の教えが私達の中に生きています」
「我々は、地上本部の奥深くに厳重に封印されていたこの本の教えを受け、それに感銘を受けたのです」
そう言ってブーメランさんが私に見せたのは、前に私がいなくなってからも地上の練度を下げたくないからとレジーにお願いされて作った『高町式訓練マニュアル』だった。
……ちなみに全八巻構成で、ブーメランさんが今持っているのは六巻だったりする。
……でも、同じ内容の写本が地上の戦技教導隊に出回ってるはずなんだけどね? だから地上の戦力があれだけ増してるんだし。
……まあ、知らないなら知らないで別にいいけどね。どうして私を高町臨時教導官って呼ぶのかもわかったし、呼ばれたくない訳でもないし。
「それで、羽さんとブーメランさんは」
「失礼。私のことは、トーレとお呼びください。ナンバーズⅢ、トーレです」
「同じく、ナンバーズⅦ、セッテです」
あら、名乗られちゃった。それじゃあそう呼んであげようかな。
「それで、トーレとセッテは私の前に立っているわけだけど……道案内って訳じゃないんでしょ?」
「……はい。できることならば高町臨時教導官とは戦いたくはありませんが、ドクターの目的の邪魔をするならば戦わなければなりません」
「……ふーん、そう」
そう言いながらトーレとセッテは構えるけれど……顔が緩んでるよ? 表情と言動が一致してない。
……本当は、一度戦ってみたかったんだと見るけどね。
私が本当に尊敬に値するような力の持ち主なのか。あの本に書いてある通りの教導を本当にできるかどうか。それを確かめたいんだろうね。
……まったくもう。これだからバトルジャンキーは困るよね。嫌いじゃないけど。
「悪いけど、これは教導じゃないから……割と本気で潰しに行くよ?」
「望むところです」
「高町臨時教導官の全力戦闘の相手など、一生に何度あるかもわからない貴重な機会。逃すわけにはいきません」
……ごめん、全力戦闘とはまた違うんだよ。ただ、堅実に勝つ方法を取るだけで、全力と言うわけではない。
……勿論、私も本気で勝ちに行くけどね。
私はレイジングハートを槍のように左手でしっかりと掴み、右手は軽くレイジングハートの柄に添えるように。まるっきり槍な分かりやすい形だけど…………引っ掛かってくれるかな?
「それじゃあ、かかっておいで。トーレ、セッテ」
「……それでは、」
「……参ります」
さっきまでの若干緩んでいた空気は突如として引き締まり、私とナンバーズ二人の戦闘が始まった。
―――――――――――――――――――――――――――――
Q.二人はどのくらい強くなった?
A.原作のAMF下にないフェイトさんのフルドライブと一対一でタメはれるくらい。
異伝7 その143
side 高町 なのは (ミッドチルダ・機動六課)
私はスカリ博士の研究所を歩く。……あ、なんだか見覚えがあるけど見慣れない人を発見。ルーテシアのお母さんかな?
「はい、あれはルーテシアお嬢様の母君だと聞いています」
「11番のレリックコアがあれば復活するということですが、11番は未だに見つかっていません」
「そうなんだ? 教えてくれてありがとうね」
「いえ。隠す意味の無いことですから」
トーレとセッテの簡単な説明を受けた後、私は止まっていた足を再度動かし始める。
「……ところで、高町臨時教導官」
「? どうしたの? さっき思いっきり殴っちゃったお腹が痛いとか?」
「いやまあ確かに痛いですがそうではなく……我々はいったいなぜこうして高町臨時教導官に引き摺られているのですか?」
「話し相手がほしかったからだよ」
……そう、私はレイジングハートをブーストモードにして、右手にぼこぼこにして動けなくなっているトーレの首根っこを、左手に同じくぼこぼこにして動けなくなっているセッテの首根っこを掴んで引き摺りながら歩いている。
理由は今言った通りに話し相手が欲しかったと言うのが一つと、中の解説役が一人欲しかったと言うのが一つ。その他にはあんまり意味はない。
……あ、私が何か拾った。今は関係無いけど。
「どうしたのですか?」
「ちょっとね。……ああ、ここがスカリ博士の居るところかな?」
「……なぜわかるのかはわかりませんが、その通りです」
正直な子だね。本当にさ。
それじゃあ、そろそろ年貢の納め時だよ? スカリ博士。
私は扉を蹴り開ける。開け放たれた扉は結構な距離を吹き飛んだけれど、被害は扉そのものと壁だけで済んだようだ。
「スカリ博士ー、お仕置きとお説教の押し売りですよー」
「ふむ、まあ、上がっていきたまえ」
なんでか普通に上がらせてくれた。お言葉に甘えて普通に入らせてもらう。土足だけど、ミッドチルダに部屋の中では靴を脱ぐ習慣って言うのがあったか無かったか……。
少なくとも寝るときには脱いでたけど、フェイトちゃんは六課の自室では靴は脱いでなかった気がするなぁ……。
……じゃあ、土足でいいのかな? よかったよかった。
そんなわけであっさりとスカリ博士の研究所に上がり込んだ私だったけれど、どうしてか普通にお茶を出してもらってソファーに座ってスカリ博士と向き合っている。
スカリ博士の座るソファーの後ろには秘書さんとモグラちゃんが立っていて、私のソファーの後ろにはトーレとセッテが寄りかかりながら座り込んでいる。
「さて、よく来てくれたね高町なのは臨時教導官。歓迎するよ」
「それはどうも、ジェイル・スカリエッティ博士。たいした土産物は持ってきていないので砲撃でいいですか?」
にこにこと笑いながら私はそう言ったけれど……どうしてそんなに輝くような笑顔を浮かべているのかな?
普通は『砲撃するよ』って言われて目を輝かせるような事は無いと思うんだけど……どうしてだろうね?
「……ふむ、なぜ私がこうして平然としている……どころか、むしろ嬉々としているのかが理解できないと言った風だね?」
「理解しちゃったら人間として終わりな気がするけどね?」
「ハハハハハ!中々言うね、高町臨時教導官殿?」
「間違いじゃないだろうからね」
お互いに笑い合うけれど……なんだろうねこの空気。普通の空気とは随分違うような気がするけれど……。
……まあ、いいや。とりあえず聞きたいことを聞いておこう。
「それで、スカリ博士? あなたはなんなの? 何が望みでこんなことをしたの?」
私がそう聞いた時のスカリ博士は、どうしてか輝かしい笑顔を浮かべた。
そしてそんな笑顔のまま、スカリ博士は口を開き、
「私はね…………一般的に言われる『マゾヒスト』なのだよ。高町なのは」
そんな爆弾発言をした。
……あ、モグラちゃんが固まった。知らなかったのかな?
と言うか、何でわざわざそんなことをこの場で言う必要が…………って、嘘でしょ?
これだけのことをした理由がそれって言うのはちょっと考えたくないんだけど……。
「だが、知っての通り私は管理局の最高評議会に囚われた者だ。あんな力も技術も無い者達に支配されるなど、私は許容できない。…………そこで思い付いたのが、『納得できない主人しかいないのならば、納得できる主人を探しにいけばいい』と言うことさ!」
「……うん、それで?」
なんだか頭が痛くなってきたけれど、私はスカリ博士に話の先を促す。
ノリノリで話を続け、時折顔芸すら入り交じらせながら、スカリ博士は演説するかのように言葉を続ける。
「私の望みは、『私が何をしても届かない、圧倒的な力を持つ主人に仕え、襤褸雑巾のようにこき使われ、理不尽にお仕置きされたい』と言うものだった。……管理局は巨大で、管理世界は広大だ。滅ぼそうとすればいつか運命の主人に出会えるかもしれない。それでも出会えなければこの世界を滅ぼし、そして待つつもりだった…………」
「……それで、私がここに来て、しかもそんな思いっきり裏話を聞かされているって事は……お眼鏡に叶ったのかな?」
「ああ。後は最後の仕上げだけさ」
そう言ってスカリ博士は、空中にある画面に映ったゆりかごを指し示す。
「聖王のゆりかご……あれを落とせるかが、私が主人に求める最後の試練さ!」
…………とりあえず、この変態はさっさと撃墜しましょう。それからゆりかごも落としに行かないといけないし、その前にヴィヴィオをあそこから出さないと。
……ああ、仕事が多いなぁ……少し分担してもらってるけど。
…………とりあえず、今できることから。
「む? いったい何を」
スカリ博士の足を払って、倒れた所でバインドをかける。
そしてレイジングハートを向けて、チャージ。
「……痛いよ?」
「望むところさ!」
すごくいい笑顔が返ってきたので容赦はしない。加減なんて考えないで……フラッシュバスター108連打。
……最後の最後までいい笑顔だったけどね。
顔を上げてみると、秘書さんが熱っぽい視線を私に向けていた。
「……順番待ち?」
コクコクと何度も頷かれてしまった。
Q.描写すらされてなかったなのはvsトーレとセッテの戦闘はどんな感じ?
A.ライドインパルスを全開で使っているトーレを置き去りにできる速度で接近して、レイジングハートと右の抜き手をトーレとセッテの鳩尾に。
さらにそのままフラッシュバスターを体内に撃ち込むことで魔力ダメージによって落としました。
――――――――――――――――――――――――
Q.いつになったら終わるの?
A.もうちょっとだけ続くんじゃよ
異伝7 その144
side 高町 なのは (ミッドチルダ・機動六課)
スカリ博士と秘書さんにフラッシュバスターを連打(合計216発)して、それから全員をアンダーグラウンドサーチライトに入れて移動する。
スカリ博士は恍惚の表情を浮かべたまま気絶していて、秘書さんも同じく。トーレとセッテはまだ動けなくて、モグラちゃんは固まるを通り越して真っ白になっていたので、アンダーグラウンドサーチライトに入れるのに苦労はしなかった。
あと、出ていく時にカプセルの中に入っていた眼帯さんとかズボン君とかブーツちゃんとか光剣ちゃんとかも一緒に連れ出したけれど、どうしてかみんな真っ白になって固まってたんだよね。例外はルーテシア似の女の人だけ。
そんな状況は軽く流して、さっさとこの陰気な場所を出る。この後はすぐにゆりかごの方に行かなくちゃいけないんだけど、シュテルちゃん達は頑張ってくれてるかなぁ……?
side シュテル・イーストエッジ(の、演技をしている織斑一夏)
空にはゆりかご(悪趣味)とガジェット(飛行型と丸いのと縦長の、やっぱり悪趣味)がいて、地上では縦長のガジェットと丸いガジェットが大量に浮いている。
そんな状態では客の入店などほぼ望めないので、なのちゃんにお願いされて地上のお掃除をやることに。
機動六課に籍がある(名前だけ)ので、一応シュテルとしては暴れられるが……レヴィとディアーチェは無理だ。
……と思っていたら、地上本部の方で一時的に雇うことにしたそうだ。それなら暴れられるな。
そんなわけで行動開始。住民の避難は地上本部の奴等に任せて、俺達はガジェットを落とし、ゆりかごを空に行かせないようにと動き始める。
始めに動いたのはレヴィ。金色の炎に刃を混ぜて、地上のガジェットを一掃する。
たまに逃げ遅れた人が居たら拾って避難場所に送り届けて、それからまたすぐに行動。人命検索のためにヘルメスドライブが大活躍している。
「ほら、早く向こうに行くんだよ。後ろは僕達が居るから、振り向かずに走るんだ」
「あ……ありがとうございます!」
「いいから早く行きなよ。お礼よりも生き延びることを優先しないと死んじゃうからね。ほら行った行った。僕ももう行くよ」
そしてレヴィは飛び立ち、ガジェットを手にした戦斧で叩き斬りながら炎と刃を引き連れて消えていった。
助けられた子供はレヴィの消えた方向を少しの間見上げていたが、はっ!となにかに気付いてすぐにそこから走り去る。どうやらレヴィの言ったことを思い出したらしい。
その子供の姿を見ているものが、上空に一人。黒と赤のIS学園制服を着こなした、シュテル・イーストエッジである。
「……ふむ。それでは私も参りましょう。最近は出番が多いですが、頑張ってくださいね、テオトル?」
『無論』
くすり、と薄く笑ったシュテルは、すぃ……と空に手を伸ばす。
「星々よ。集いて輝き、流れたまえ」
『シューティングスター』
特に意味の無い呪文を唱え、空に桜色に燃える金属塊を出現させる。
即座に撃ち出し、そして地上に被害が出ない距離の内にランブルデトネイターで爆破。後に残るは破壊されたガジェットの破片のみ。
……ああ、いや、正確にはゆりかごも残っているが、それはもう無視していいだろう。あれは俺《シュテル》の仕事じゃないし。
とりあえず俺《シュテル》の仕事は空中のガジェットの殲滅と、ゆりかごから外を狙っている戦闘機人への牽制だからな。
ゆりかごから次々に飛び出してくるガジェットと、戦闘機人の10番の砲撃を纏めて叩き落とし続ける。
だが、暫くしたらなんでか砲撃は止んだ。ガジェットはいまだに出続けているが、10番の方はもう気にしなくていい気がする。
理由はよくわからないが、とりあえずその予感には従っておく事にして……後はゆりかごを上空まで行かせないことと、ガジェットの殲滅。頑張ろう。
ゆりかごにシルバースキンを巻き付ける。流石に量が足りないので、合計で数万着ほど出すことになったが……お陰でゆりかごに鎖をつけることには成功している。
その鎖をゴーレムに繋げて下に引かせる。上からはシュテルが星を降らせているからかなりの圧力が掛かってるし、結構楽な仕事だ。
その他にも人命救助やらガジェットから保護した人を避難所まで連れていく仕事やらと色々忙しいが、ゴーレムが自動制御で本当によかった。これもこっちで操作してたらかなり疲れるからな。
それにしても、いったいどうして10番からの砲撃が止んだんだろうな? なのちゃんが転移して後ろから蹴倒して背中を踏みつけながら後頭部に砲撃して大人しくさせられたとか、何か自分の根幹を揺るがすような事実を知ったとか……かね?
……正直、そっちの方が楽だから構わないけどな。
そう考えながら、シュテルだったりレヴィだったりディアーチェだったりする俺は、流星群を落としたり炎と刃を振るったりゴーレム達を操ってゆりかごの動きを止めたりしている。
それにしても、ゆりかごの装甲板は結構固いな。さっきから重くて軟らかいのを撃ち込み続けているんだが、軋みをあげるだけで皹が入ったりはしていない。
今ではゆりかごの上に大量の熱した鉛が張り付いてるはずなんだが、まだ飛んでいられるようだし。
……いったい何百t乗せれば上昇は止まるんだろうな? まだ暫くは上昇を続けそうだし……。
次はとりあえずもうちょい威力を……いやいや、それだと中のヴィヴィっ子が巻き込まれる可能性があるしなぁ……。
……なのちゃんが来るまで待つか。それが一番楽そうだ。
それで、なのちゃんが中からヴィヴィっ子を取り出してきたら俺の番。とりあえず斬艦剣で……いや、長さが足りないか……斬艦剣のでかいのを作って真っ二つにしてやる。
なのちゃんなのちゃん。早くおいでー。
――――――――――――――――――――――――――――
Q.何で一部のナンバーズは真っ白になってるの?
A.精神的ショックが強すぎたものと思われます。
異伝7 その145
side 八神 はやて
なのはちゃんが独自に動くとティアナから聞かされて二十分。どうやらなのはちゃんは割と本気で潰しにかかったらしく…………なのはちゃん似の翠屋店員のシュテルさんと、フェイトちゃん似の翠屋店員のレヴィさん、私似の翠屋店員ディアーチェさんを呼んでゆりかごの足止めをしてもらっているようや。
……だけど、地上の人の話を聞いて背筋が凍った。
なのはちゃん似のシュテルさんのフルネームは『シュテル・イーストエッジ』。五年くらい前にミッドで行われたDASSの都市決勝で、歴代の選手の中でも確実に最強クラス……と言うか、歴代二強の片割れだそうや。
そしてもう一人の歴代二強が、高町なのは。つまり、なのはちゃん本人や。どうやってミッドに来て、どうやって参加したんかは知らんけどな。
ここで重要なのは、この二人の二つ名や。
シュテルさんの二つ名は『星光の殲滅者』。なのはちゃんの二つ名は『陽光の殲滅者』。
……『星』と、『陽光』。カリムの予言にあった通りや。
そして、レヴィさんの使う魔法は『炎の中に刃だけの剣』を作っての流動的な魔法。
ディアーチェさんの使う魔法は『機械でできた人型を大量に召喚し、使役する』魔法。
……なるほど、確かになのはちゃんがカリムの変わったばっかりの方の予言を即座に意訳できるわけや。関わりそうな全員を知っとったんやからな。
でも、なのはちゃんが教えてくれなかった『盲目の銀』のことも気になるわ…………もしかしたらなのはちゃんは『盲目の銀』のことも知っとるんやないか?
「はやて。忘れてるのか本気で言ってるのかわからないから一応言っておくけど、なのはが私達に何も言わない時って、私達が聞かないからと、なのはが言いたくないときと、聞いても誰も幸せになれないときの三つがあるんだよ?」
「わかっとるよ。どれにしろ聞き出そうとしたら不幸にしかならへんって事もな」
……そうやなかったらさっさと聞いとるっちゅーねん。
私はそう思いながら、私達の出る幕の無さそうなミッドの光景を画面越しに眺めた。
……あ、なのはちゃんが来たわ。ゆりかご終わったな。
side 高町 なのは (ミッドチルダ・機動六課)
ゆりかごに到着したら、なんだか凄いことになっていた。
ゆりかごの上には大量の金属が冷えて固まっていて、上昇を阻害すると同時にガジェットを叩き落としている。
見えづらいけどゆりかごから何本も延びている銀色の鎖のような物の反対側にはディアーチェちゃんの『機兵』が大量に群がっていて、どうやらゆりかごを下に引っ張っているらしい。だから上空には無かったんだね。
レヴィちゃんはガジェット落としを頑張ってくれているみたいで、町の色々なところから金色の炎が上がっている。
……本当に、凄い光景だね。
「ああ、来ましたね、なのは」
「うん。遅れてごめんね」
「構いません。が、できればここから先は多少急いでください。ゴーレムのエネルギーもあまり残ってはいません」
「わかった、頑張ってくる!」
私はシュテルちゃんに背を向けて、ゆりかごに向かって飛ぶ。なんだか初めに見た形とは随分変わっちゃったけど、元の形がどうなっているのかはわかる。
とりあえず、入り口はまだわらわらと出てきているガジェットの放出口。戦いの場に狂気の提琴を持ち出すのは、そう言えばかなり久々の事かもしれない。
そう考えながら、私は召喚に邪魔なガジェットを丸ごと粉砕するべく声を上げる。
息を大きく吸って、そして、
「La…………♪」
増幅された音の衝撃が広がり、ガジェットを文字通りに粉砕しながら空気を伝わっていく。
ある程度のところで増幅をやめて、地球から狂気の提琴を召喚する。これが一番使いやすいからね。
レイジングハートはブーストモードにして、そして狂気の提琴を弾く。次々に湧いてくるガジェットを粉々にしながら進み、私はゆりかごの中に侵入した。
『流石だね、高町なのは。だが、難しいのはここからだよ?』
「五月蝿い黙れ変質者。その薄汚い口で私の名前を呼ぶな。耳から圧縮魔力を流し込んで鼓膜を引き裂き中耳から内耳に渡って引っ掻き回しながら奥へ奥へと侵入させて三半規管を潰して脳まで爛れさせたあげく脳内で魔力を炸裂させるよ?」
『是非!是非とも頼むよ御主……高町なのは!』
『ドクターの次は私にも願います』
ああもう駄目だこの博士と助手。救いようがないし救えない。
それに、なんだかアンダーグラウンドサーチライトの中で今の発言を聞いていた『真っ白組』の眼帯さんとモグラちゃんとズボン君とブーツちゃんと光剣ちゃんがサラサラサラ……って崩れていっちゃってるんだけど……まあ、いいか。私には関係無いもんね。
さて、それじゃあゆりかご制圧と行こうかな……って、あれ?
ちょっと気になるものがあったので、少し寄り道をしてみることに。なんだか見覚えがあるような無いような…………あ、狙撃手ちゃんだ。なんでこんなところで塩の柱みたいになってるんだろう?
まるで眼帯さんやブーツちゃんみたいだけど……もしかしてスカリ博士のカミングアウトを聞いちゃったりしたのかな? 近くにスカリ博士の研究室と繋がってる通信画面が浮いてるし。
……とりあえず、アンダーグラウンドサーチライトの中に放り込んでおこう。近くに真っ白になってるボードちゃんも居るから、その子も一緒にね。
Q.ゴーレムのエネルギー切れって本当?
A.出力高いのでマジですが、別に急いでもらわなくても新しいのに変えれば問題なしです。
異伝7 その146
side 高町 なのは (ミッドチルダ・機動六課)
真っ白になっていた狙撃手ちゃんとボードちゃんを拾って布に作ったアンダーグラウンドサーチライトに放り込み、ゆりかご内を散策する作業に戻る。
えーと……奥の方に居るのがヴィヴィオで、もっと奥の方に居るのが眼鏡さんね。早く連れ出さないとゆりかごを私ごと消滅させられちゃうから、急がないとね。
ヴィヴィオの所まで走る。全速力じゃないけれど、それでも結構速いよ?
そうじゃなかったらスバルを追い立てながらティアナを追い立てながらエリオを追い立てながらキャロを追い立てる事なんてできないし、シュテルちゃんの『星群』を避けることなんてできないしね。
だから私は早く行こうと思い立ってから98秒後に、ヴィヴィオの居る大広間に到着。椅子に拘束されているヴィヴィオの拘束を外して、それからヴィヴィオの頭を撫でる。
そして、直後に後ろに下がった。
ヴォンッ!と風切り音が聞こえて、私の頭があった場所を爪先が通り抜ける。どうやらヴィヴィオがやったみたいだけど…………。
「……ちょっと見ない間に大きくなったねぇ……?」
「ぅぅ……ぁ…………」
「───なんて、冗談言ってる場合でも無いか」
どうもあの虹色の魔力はおかしいし……スカリ博士がなにかしたんだろうね、これ。
説明とかは要らないから、とりあえず襲いかかってくるヴィヴィオをなんとかしないといけないんだけど……。
「ぅあ……ママぁ……どこぉ……?」
……やりづらいなぁ……。
しかも、今話しかけてもまともな反応は帰ってこないと思うし、一回叩き伏せるにしてもどのくらい加減していいのか……。
……ああもう、とりあえずトライ&エラーを繰り返していこう。良さそうな手が見付かったらそれを続けてみればいいし、駄目ならまた新しいのを試そう。
最悪、防御も何もかもまとめて撃ち抜いて気絶させてから後回しにすればいいしね。方針決定!
じゃあ、とりあえず……
「ヴィヴィオ!」
「……ママ?」
あら? 意外にも意識ははっきりしてるんだ?
じゃあ、体を操られてるのかな? あるいは、私の事が嫌いになったとか。
「びっくりした。ほら、帰るよ」
「……私は行けないよ」
「知ったことじゃないね。帰るよ」
私が一歩近付くと、ヴィヴィオは見慣れた構えをとる。どうやら私の教導データでも見たらしく、本当にどこかで見たことのある構えだった。
確か地上本部の……トゥム・ハンクスさんだったね。『当たり判定が見当たらない』の。
「駄目だよ、ママ……怪我するよ?」
「あはははっ♪ ヴィヴィオも中々面白い事を言うようになったね? まあ、とりあえず……
十五年早いよ」
そう言いながら私はヴィヴィオの頭頂を片手で掴み、ズガンッ!と床に叩き付けた。
……まあ、トゥムさんがああいうことができるのは知ってたし、やろうとすれば私もほんの少しだけ真似できるからね。
トゥムさんのアレはトゥムさんのオリジナルだけど、トゥムさんのオリジナルの元になったのは私の柔術の足裁きだからね。元の私でも完全コピーはできないけど。
……それにしても、ヴィヴィオのこれはどうなってるんだろう? ヴィヴィオの頭が叩きつけられたところを中心に5メートルくらいの範囲には皹が入ったんだけど……ヴィヴィオには大して通ってないね?
それでも脳震盪くらいは起こしてないとおかしいんだけど、それも無いみたいだし……。
「んむ……んーっ!」
「……あ、ごめんごめん。痛くなくても苦しいよね」
ヴィヴィオの後頭部を押さえ付けていた手を離すと、ヴィヴィオはすぐに起き上がって後ろに跳んだ。
その目は明らかな驚愕に染まっているけれど……いったい何に驚いてるんだろうね?
「今、なにをしたの?」
「反応される前に頭を掴んで、叩きつけただけだよ?」
私がそう答えたら、ヴィヴィオはなんだか化物を見るような目で私のことを見つめてきた。まあ、いまさらのことだね。慣れちゃったよ。
でも、あの虹色の魔力の鎧みたいなのは邪魔だね。攻撃が殆ど通らない。どうしようかなぁ……。
…………そうだね。あるから攻撃が通らないなら、剥がしてから攻撃すれば通るよね。
私は向かってくるヴィヴィオの拳を素手で受け止め、そして懐に潜り込んで地面に頭から叩き付ける。
虹色の鎧があるから怪我はしないだろうし、衝撃も殆ど無効化されちゃってるから大丈夫だとは思うけど…………今のうちに始めよう。
私は狂気の提琴を構え、同時に大きく息を吸う。ヴィヴィオはまた床に埋め込まれた頭を引っこ抜いたけれど、私の方には向いていない。
ヴィヴィオが振り向く前に準備を終えた私は、狂気の提琴を弾き鳴らすと同時に歌を唄い始める。
声と狂気の提琴の音波に魔力を乗せて、あらゆる魔力系技術を分解していく。そして分解した魔力は私の頭上で集束し、虹色の混じった『太陽』を作り上げた。
これが私の対魔導師戦闘用の切札一枚目、ノイズィソングとノイズィミュージックの合わせ技。ノイズストーム。『ィ』が無くなってるのはご愛嬌。
これによってほとんどの魔導師は空を飛ぶどころか簡単な身体強化の魔法すら使えなくなる。さらに、音量を上げれば直接体やリンカーコアにもダメージが入るけれど、今は相手がヴィヴィオだからね。そんなひどいことはしない。
それでも順調にヴィヴィオの鎧を剥がしているのを見て、私はちょっと笑顔を浮かべる。
まあ、確かにヴィヴィオはあの年(見た目は五歳。実際にはたぶんそれ以下)にしては凄いけど、ラスボスになるにはまだ早いんじゃないかな? ラスボスの間みたいなところに座ってたけどさ。
……さてと。決着にしようか。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
Q.なのはさんの方がラスボスっぽいんですけど?
A.気にしたら敗けです。
Q.そう言えば、なのはさんはどうしてあんなに拷問紛いのこと(耳から魔力を流して云々とか)を思い付くんですか?
A.中の人が汎用拷問処刑道具の仕事をしていた時期があるからじゃないでしょうか?
異伝7 その147
side 高町 なのは (ミッドチルダ・機動六課)
ヴィヴィオの鎧を剥ぎ取り、魔法を封じてバインドで磔にする。なんだかヴィヴィオは色んな物を諦めたような表情を浮かべているけれど、いったいなにがあったんだろうね?
「……ママって……本当に人間? 私、これでもかなり強いんだよ?」
「魔力の出力と扱いだけはね。身体能力はこっちが上だし、体の使い方もこっちが上だし、ヴィヴィオには経験が無いからこんなに簡単に押さえ込めちゃう」
「簡単って……そんなに簡単?」
「目を瞑ったままフェイトちゃんと八神家一同と同時に模擬戦をして勝つよりは簡単」
「それができる時点で人間の範疇を逸脱しちゃってるからね!?」
あ、ツッコミだ。このツッコミは……フェイトちゃんのヒート版かな。クール版とは結構違うんだけど、その時のテンションとフェイトちゃんの余裕の無さによってヒート版とクール版を使い分けるんだよね。
アリサちゃんは基本的にヒートだし、すずかちゃんは基本はクール。使い分けをするフェイトちゃんは貴重な人材だと思います。
「まあ、とりあえず一緒に行くよ」
「……ママって、本当に話を聞かないよね」
「今回は聞けない話だからね。あんまり駄々を捏ねると、体の中のレリック撃ち抜いて気絶させてから連れ出さなきゃいけないんだけど?」
「怖いよ!?」
……そうかな? そこまで怖くもないと思うんだけど……。
「って言うか、ママはバイオリンを弾きながらレリックを撃ち抜けるの?」
「できるよ? なんのために私の頭の上の『太陽』があると思ってるの? いいからさっさと終わらせて、お父さんとお母さんに『子供ができました』って言う報告をしなくちゃいけないんだけど」
「…………私は、ママと血が繋がってないんだよ?」
「知ってるよ。それで?」
ヴィヴィオは悲しそうに顔を俯かせて、ぽつぽつと語り始める。
例えば、私に初めからなついていたのは私の魔力を感じ取り、それを操りきるだけの技量を持っていたがゆえの刷り込みに近いような事だったとか、自分が作られた命で、昔々のゆりかごの聖王のクローンだとか、スカリ博士に身体を改造されちゃったから綺麗な体じゃないとか、よくもまあこんなに自分を卑下する言葉が出てくるなと感心しちゃうくらい。
……とりあえず私はそれを聞いてみたけど、正直に言って『だからどうした』って話なんだよね。
刷り込みの好意だろうか好意は好意で変わり無いし、作られた命だって言うならフェイトちゃんだってそうだし、大昔の人間だって言うならヴィータちゃんやシグナムさんが居る。
綺麗な身体じゃないって言ったら、私なんてこれでも犯罪者だし、ある意味殺人経験もあるようなものだしさ。
その他にも、相手が犯罪者だから見過ごされているだけで、強盗とか窃盗とか暴行とか市街地での危険魔法使用とか色々やってるし、ある意味ではさくらさんに改造されてる身だしね。
だから、ヴィヴィオの主張とか本当に知ったことじゃ無い。ヴィヴィオは少なくともこの事件が終わっていい受け入れ先が見つかるまでは私の娘。私が決めたそう決めた。
「だから、帰るよ。ヴィヴィオ」
「……私は……ママの子供でいいの……?」
「駄目だろうがなんだろうがヴィヴィオは私の娘で、私はヴィヴィオのお母さん。ヴィヴィオが嫌って言うなら頑張って受け入れ先を探すけど……」
「嫌じゃないよ!私は……ヴィヴィオは、なのはママの子供がいい!」
……うん、これなら大丈夫だね。
……それじゃあ、体の中の厄介な石ころをぶち抜こうか。まだ操られてるみたいだしね。
とりあえず、私は狂気の提琴を送還してからレイジングハートをシューティングモードに移行する。ヴィヴィオの体に魔力が戻るけれど、それは即座にノイズィソングで打ち消す。
今回は相手がヴィヴィオだし、歌う曲は教会で聞いた聖歌の一節。解かれた魔力は陽光の一欠片として集束され、『太陽』の養分に変わる。
『かなり痛いけど、ヴィヴィオは我慢できるかな?』
「ぅ……頑張る!だって私は、なのはママの娘だもん!」
よく言えました。偉い偉い。
全部終わったら頭をなでなでしてあげようと思いながら、レイジングハートの先端に魔力を集束させ直す。レイジングハートが貯めていた魔力も乗せるなら、これが一番だからね。
「レイジングハート。久し振りの中規模砲撃だけど、大丈夫?」
『問題ありません』
「なのはママ? 今“中規模”砲撃って言葉が聞こえたような気がするんだけど、それで中規模って冗談だよね?」
……あー、そう言えばジュエルシードを使った改造で最大出力とかがかなり上がってるから……中規模じゃなくて小規模なのかな?
『それは“極大規模”として、これは中規模でよろしいのでは?』
「……そうだね。そうしようか」
それに、この後すぐに最大威力で砲撃する用事があるし。
「じゃあ、いくよ、ヴィヴィオ」
「んっ!」
ヴィヴィオはぎゅうっと目を瞑って、全身に力を入れて身体を硬直させた。
……だけど、私の砲撃はそれを無視するかのように易々とヴィヴィオの全身を飲み込み、階層を越えてこっちを見ていた眼鏡さんも飲み込み、さらに壁も装甲も纏めて撃ち抜いて外へと繋がる大穴を開けた。
「……ちょっとやりすぎたかな?」
『制圧完了……多少やり過ぎの感はありますが、問題ない範囲でしょう。お二人ともバイタルは安定しておられますし』
そっか。それじゃあ、ヴィヴィオと眼鏡さんを連れて早く出ようかな。暫くは浮いてそうだけど、ほっとけば落ちるだろうし。
地上に落ちる前に、消滅レベルで砕いておかないと。
『お供します。どこまでも』
「ありがとね、レイジングハート」
私は、レイジングハートの柄を優しく撫でた。
Q.なのは様が使った砲撃はなんですか?
A.そこそこ気合いを入れたディバインバスターです。
異伝7 その148
なのちゃんがヴィヴィっ子と腹黒眼鏡を連れたまま出てきたのを見付けて行動開始。アナザータイプのシルバースキンを着てから割と本気でジャンプすると同時に、巨大な斬艦剣……斬城刀を作って振りかぶる。
せー、の!
side 八神 はやて
「…………は?」
私の目の前で、ちょっとばかり信じられないことが起きた。
いや、正確には目の前やないんやけど、それが映ってる画面は目の前やから目の前って言ったんやな。うん。なんも間違ってない。
何が起きたかと言うと……画面の中で地上に繋がれ、大量の金属塊に被われてもなお空を目指して浮き続けていたゆりかごが、突然現れたこれまた巨大な剣にずんばらりと真っ二つにされとった。
とりあえず、目を擦ってみる。画面の内容は変わらん。
次はほっぺをつねってみる。画面の内容はやっぱり変わらん。
今度は何度か額を殴ってみる。画面の内容はそれでも変わらん。
…………え~……と。
「うん、夢やな。ほっぺも額も死ぬほど痛いし涙出てきて前見えへんけど」
「はやて。現実逃避したい気持ちはわかるけど、現実を受け入れて報告書を書こう? そうしないと、なのはが言うにはあの力がこっちに向くんでしょ?」
「……あははははははは……おかしいなぁ? アースラって壁の中にネズミがおるんやな?」
「居ないから。さっさと正気に戻ってシグナムやヴィータを元に戻してよ」
「あははははははは……いひひひひひひひ……うふふふふへほほほほほ……」
「……サンダースマッシャー」
「あぷろぱぁっ!?」
し……痺れたぁ…………。
「起きた? ……って、寝ちゃった。加減間違えたかなぁ……?」
フェイトちゃんがそんなことを言うとったらしいけど、私はそれを聞き取るような余裕もなく眠りに落ちた。
side 高町 なのは (ミッドチルダ・機動六課)
私が気絶したヴィヴィオと眼鏡さん(なんでか頬を上気させたまま気絶していた)を拾ってから外に出た直後。大きな剣がどこからともなく現れて、ゆりかごを縦に両断した。
同時にゆりかごの上にくっついていた金属がズドンと炸裂し、両断された場所からゆりかごの中身を砕いていく。
そこまでやったら後は落ちていくだろう、という私の予想は、両断されたはずなのにまだ繋がっていた銀色の鎖を引っ張るゴーレムによって覆される。ゴーレムは、今度はゆりかごが落ちないように上に向かって飛び始めた。
そして金色の炎と刃が両断された傷口からゆりかごに侵入していく。中のガジェットを熱で融かし、刃で貫きながら内部を焼き焦がしていくけれど……残敵処理には最高の魔法ですね。正確には魔法じゃないけど。
「よう、無事みたいだけど無事か?」
「お陰様でなんの問題もなく。強いて言うならさっさとこれを落として眠りたいですね。疲れましたし」
「疲れたはともかく、寝たいってのは同感だ。それじゃあさっさと落とすとしようか」
「そうですね」
どうやってか魔力を使わずに空を飛んでいるさくらさんの言葉に淡々と返す。本当に、この事件はこれで終わりにしてもらいたい。
そしたら私は六課を辞めて、ヴィヴィオを引き取って翠屋業務と趣味の演奏に費やすんだから。
できれば地球に戻りたいんだけど、流石に地球でこの年で養子を取るのは難しいから……やっぱりミッドチルダで過ごすことになるのかな?
でも、ミッドチルダで暮らすとなると地上はともかく本局の方が色々五月蝿そうだよね……。
……潰しちゃおっか?
……いやいや、今はとりあえず、ゆりかごを落とすことに集中しないと。流石に気を抜いたままでゆりかごに消滅レベルの完全破壊を行うことなんてできないからね。さくらさんじゃあるまいし。
……集中、集中…………。
「……レイジングハート。」
『了解。ジュエルシードシステムを起動。最大集束シークエンスを開始します』
ガシュン!と派手な音を立て、レイジングハートが変形を開始する。
音叉のような形状だった先端は、大きな鏃のように変わる。大気中の魔力素を吸引し、集束するための吸気口が側面背面関わらずに口を開き、集束した魔力に方向性を与えるためだけに存在するたった一つの排気口の先には既に集束を始めた白に桜色が混じった魔力の塊が浮いていて、いまだに威力を増し続けている。
私が頭の上に設置していた『太陽』すらも飲み込み、ジュエルシードに溜め込み続けていた魔力もかなりの量を吐き出して、レイジングハートと私は全力で魔力をかき集める。
……私にはわかる。今、この世界に存在するほぼ全ての魔力素が、私とレイジングハートを中心にして集束を始めている。
それにつれてレイジングハートの先端にある魔力塊は輝きを増し、密度を増している。
……でも、正直に言って私はあまり驚いていない。さらに驚くべき事が、私のすぐ近くで起きているから。
「……なのはもやりますね。これは私も負けていられません」
シュテルちゃんはそう言って手を上げると、その天を向いた掌の上に『流星』が集い始める。
それが、ひとつではなく無数と言ってもいいほどの量の『巨星』となってゆりかごに狙いを定めている。
……単発の威力なら負けない自信があるけど、流石にあれ全部と当たるのは難しいかな。どっちも溜めが長すぎて使い物にはならないけど。
「炎刃全壊!」
全く同時にレヴィちゃんの声が響き、金色の炎と無数の剣が一ヶ所に纏まって巨大な槍の穂先を作る。防御を貫く事に特化させているらしいそれは、正直に言ってえげつないにも程があると思う。
……だって、前に『太陽』をまるごと使った防御魔法を紙か何かのように貫かれたんだよ? 酷くない?
いくら斬りたいものだけ斬れて、それ以外は全部無視できるからってさぁ……。
……えっと、ディアーチェちゃんは……?
「……『我が出たら質量兵器の保持で捕まる。今回は裏方に回っておくさ』……だそうだぞ」
「へぇ……それで、さくらさんが使おうとしているそれは?」
「斬城刀だな。氣を乗せてぶん投げてランブルデトネイターで爆破すると同時に炸裂させる」
「……地上に被害は?」
「出ないことを祈れ。ディアーチェで気を回してるけど」
ああ、なら大丈夫……かな?
……っと、チャージも終わったし、吹っ飛ばそうか。
いっせーの!で撃ち込まれた攻撃により、ゆりかごはこの世界から完全に消滅した。チリ一つ残さないつもりでやったけど、結構いけるものなんだね?
Q.“ほぼ全ての魔力”って、どのくらい?
A.半径数百万キロの大気中に存在する魔力は勿論、他人の体の中にある魔力の約八割強と、ガジェットに内蔵されているジュエルシードの貯蔵魔力、スカリ陣営の所有していたレリックなどのロストロギアの貯蔵魔力を根刮ぎと、結界用の魔力やカートリッジに詰め込まれていた魔力まで全部です。
人からそこそこしかとらないのは、全部とると気絶してしまって危ないからです。なお、病院やライフラインなどからは全く取っていません。
異伝7 その149
side 高町 なのは (ミッドチルダ・機動六課)
ヴィヴィオ達(スカリ博士以下ナンバーズ11名)を連れてアースラに戻ってみると、なんだか凄くカオスな光景が広がっていた。
はやてちゃんがあははうふふと笑いながら書類を片付け、フェイトちゃんはトラウマが蘇ったのかピンク怖いピンク怖いと踞って耳を塞ぎながらぶつぶつと繰り返していたし、フォワード達はフォワード達で化物を見る目で見てくるし、他のスタッフ達は怯えた目を向けてくる。
しかもそんな空気の中でもヴィヴィオは私の背中にぴったりくっついてえへへと嬉しそうに笑っていたし、スカリ博士はバインドで全身の関節という関節を逆ぱっかん寸前まで絞り上げられているのに恍惚とした表情を浮かべ、秘書さんが羨ましそうに指をくわえてスカリ博士と私の間で視線を交互に動かしている。
トーレとセッテは色々と興味深そうにアースラの内部をキョロキョロ見回し、人が目に入ると勝手に強さの予想を立てている。ちなみに結果はどちらも大体正解。
眼鏡さんはまだ気絶していて、セッテに首根っこを掴まれて引きずられてるけどまだ起きない。なんだか首が絞まる度に頬を染めているような気がするけど、気のせいってことにしておく。
私が連れてきた中でまともに動けてるのはこれだけで、一緒に居る眼帯さんやモグラちゃん、ズボン君にブーツちゃんに狙撃手ちゃんにボードちゃん、そして光剣ちゃんは真っ白になったまま体育座りをしている。ポッドの中でもできるんだね、体育座り。
後はスカリ博士の研究所にたくさんあった素体の人達なんだけど……流石にこれは私じゃどうにもならないなぁ……。
……さくらさんなら何とかしてくれないかな? 特にさっきからルーテシアがじーっと見つめてるルーテシアのお母さん(多分)のこととか。
さくらさんにだってできないことがあるのはわかってるけど、私よりは少ないと思うしね。
「……高町臨時教導官。我々はここで何をすればよろしいのでしょうか」
「一応形は逮捕ってことになるね。実際は逮捕されても地上本部の敷地内なら割と普通に外出できるだろうから、地上の一番簡単な牢をホテル代わりにすることになるんじゃないかな? 今のトーレとセッテなら、多分三年以内で出てこれると思うけど」
「…………三年……ですか」
……なんだか不満そうだね?
「……あのねトーレ。地上本部に拘留されて外出がある程度自由ってことは、トーレ達と戦ったあの部隊の訓練を間近で見られて上手く行けば参加できて、さらに意思さえあれば緊急事態に出動して訓練成果の確認と刑期の短縮ができるってことだよ?」
「「っ!?」」
トーレとセッテの驚きに満ちた視線が私に突き刺さる。これは地上では割と有名な話なんだけど……どうやら知らなかったみたいだね。別にいいけど。
……なお、これを考案したのはレジーだったりする。
強制ではないけれど訓練してみたいと言うものには訓練を受けさせ、訓練を通してあの部隊の人員との間に仲間意識を持たせることによって、上手くいけば地上に局員が一人増える。
それも、訓練の中で意識がかなり矯正されてしまうために人が変わったように真面目になる人が多いそうだ。
……はい、そんな人間が変わるような教導をやったのは私です。今でも教導メニューを組んであげることが結構あります。
私の言葉を聞いたトーレとセッテは目をキラキラと輝かせる。何と言うか、時々だけど本当に子供のような純粋な目をするね。いつもはそうでもないのにさ。
「とは言っても、流石に主犯であるスカリ博士や全面的に協力してきた秘書さんは本局の重犯罪者用の隔離施設に放り込まれると思うけど……」
「問題ないとも。例えこの身一つであったとしても、その程度の所から抜けるなど朝ウィ○ー前だよ」
「ええ。朝のカ○リーメイト前です」
「ご飯はちゃんと食べようね。胃が縮んで固形物が食べられなくなるよ?」
「む……確かに、それでは鳩尾を爪先で蹴り抜かれた時の胃液が食道を焼く感覚が味わえなくなってしまうな」
それなんだ? 今の言葉を聞いて一番初めに思うのがそれなんだ?
……もう色んな意味で駄目だねこのスカリ博士。ヴィヴィオの教育に悪いから早めになんとかしないと……。
「ああ、その蔑むような視線は実にいいね!さあその唇から溢れる言葉で私を存分に詰ってくれ!罵倒してくれ!さあ、さあ、さあさあさあさあ!!」
「……ママ? あの人は何を言ってるの?」
「見ちゃ駄目だし聞いちゃ駄目だし触れちゃ駄目だよ、ヴィヴィオ。あれは変態だから、移ったら大変だからね」
「うーん……わかった!近付かない!」
「それが一番だよ、ヴィヴィオ」
うん、ヴィヴィオは素直ないい子だね。変態には近付かないのが一番だよ。
「……なんだいなんだい放置プレイかい? 放置プレイにはもう産まれてからの数十年で慣れてしまったよ? ……おや、なぜこんなにも昂るのだろうか? 主人を見つけてからの放置プレイが初めてだからだろうか? なるほど既に御主人様からの調教は始まってい」
「黙れ」
レイジングハートを介さず脳天に射撃を撃ち込む。ティアナのクロスファイヤーだけど、非殺傷設定だし死にはしないでしょ。
……食らったら死ぬ非殺傷設定なんてただの詐欺だしね。
あと、こうやって射撃を撃ち込んだのに、誰一人としてスカリ博士の心配はしないんだね。当然と言えば当然だけど。
―――――――――――――――――――――――
Q.カオス過ぎない?
A.みんななのは様のせい
異伝7 その150
side 高町 なのは (ミッドチルダ・機動六課)
とりあえずティアナから私の辞表を返してもらう。どうやら出さなくて済んだみたいなので、いつまでも持っててもらうわけにはいかないよね。
それからスカリ博士の秘密研究所とゆりかごの中で起きたことの報告書を作成する。はやてちゃんが乾いた笑いを浮かべながらも言ってきたので、結構重要なことなんだろう。
正直に言って、私は組織人じゃないからあんまり気にしないけど、はやてちゃんやフェイトちゃんは大変だね。責任とって辞めようか?
「今なのはちゃんに辞められてたまるかい……私らのことはええから報告書頼むわ……」
「わかったよ、はやてちゃん」
さあ、頑張ろう。ヴィヴィオが膝の上に居たりしてやりづらいけど、大したことじゃないから普通にやっちゃう。魔力で手を作ってキーボードを押させる方が速いしね。
「わぁ……ママは凄いね」
「大したことじゃないんだよ。頑張ればヴィヴィオにだってできるしね」
「ほんとに?」
「練習すればね」
魔力もあるし、そこそこの操作技術があればできるからはやてちゃんでも多分できるし……。
……あれ? はやてちゃんはできるのかな? 大容量を大雑把にやるのは得意だけど、小さいのや細かいのを運用するのは苦手だったような気がするけど……。
……リインならできるよね、うん。細かいことによく気がつく子だし。
私ははやてちゃんの『高威力の固定砲台』という魔導師らしい魔導師の在り方から目を逸らして、目の前に浮いている画面で報告書を作る。その内容を大雑把に言うと、こんな感じ。
まず、転移して(『転移魔法を使って』じゃないことに注意)スカリ博士の研究所に行く。
↓
研究所内にて戦闘機人No.3、トーレとNo.7、セッテと交戦。時折No.6、セインの妨害を受けるも、戦闘機人二体を撃破。
↓
そのまま進んでスカリ博士と遭遇。その演説により、多くのナンバーズが戦意を失う。
とりあえず108発フラッシュバスターを撃ち込んだらNo.1、ウーノも同様の事を望んだため、同じように108発撃ち込んだ。
↓
捕獲した戦闘機人と戦意を完全に失った戦闘機人、そして人造魔導師の素体として保管されていた人を拾ってゆりかごに転移(『転移魔法を使って』じゃないところが重要)する。
↓
聖王として改造されたヴィヴィオと戦闘。一方的にぼこぼこにできた。大したこと無かった。
↓
ヴィヴィオの体内に埋め込まれたレリックを魔力ダメージを与えることによって破壊、消滅。ゆりかごの装甲板が吹き飛んだけれど気にしない。ついでにNo.4、クアットロ、No.10、ディエチ、No.11、ウェンディも捕獲。内二名は真っ白になっていた。
↓
ゆりかごから出て同じく民間協力者と協力してゆりかごを落とした。
↓
現在に至る。
……うん、自分で書いててあれだけど、なんだか凄いことになってるね。
ゆりかごって、はやてちゃんが書類を片付けながらぶつぶつ呟いていた情報によると荒っぽいことで有名だった古代ベルカですらロストロギア扱いされていた最悪最強の質量兵器だったらしいけど、正直あのくらいなら大したこと無い気がするんだよね。
と言うか、ディアーチェちゃん状態のさくらさんなら、ゆりかごを月軌道上に直接二つ召喚して本局の艦隊を一方的に攻撃したり、明らかにアルカンシェルな砲撃を撃てる携行に問題ないレベルのサイズの銃とか用意できそうだしね。
つまり、手段を選ばないさくらさんは確実に全力の私よりも強いということですねわかりました。
正直に言って、さくらさんの逆鱗の上でタップダンスを踊ろうとしている本局のことは馬鹿にしか見えません。はやてちゃんも大変だね?
……手伝わないけど。
side 八神 はやて
『……はやて。またなのはに勧誘が来たぞ……今度は本局の教導隊だ』
「『死ね』って伝えといてくれるかー?」
『流石にそれは不味いだろう。せめてオブラートに包め』
「じゃあ『ハゲ散らかせ』って」
『気にしているようだからやめてやってくれ』
まったくもう、クロノ君はわがままやなぁ……。
それにしても、ほんまに勘弁してもらいたいわぁ……。
なのはちゃんの力を危険視するのはわかるけど、危険視したところでいったいどないするん?
捕まえる? 無理無理、傷ひとつつけられんで本局ごと消滅するのがオチやな。
入局してもらう? 残念ながらそれも無理や。なのはちゃんは喫茶店の店長さんを目指しとるし、今回私との契約で管理局入りを強制できなくなっとるしな。
じゃあ、あの私らに似とった三人だけでも? あかん。なのはちゃんも加減がないけど、あっちの方は加減する理由がないから本気で潰しに来るわ。それも、あの超広域殲滅攻撃で。
後に残ったのはゆりかごをまっぷたつにした銀と黒の人やけど、あの人はどこに行ったかすらわからん。手詰まりや。
……なんにしろ、本局の方があの銀と黒の人……多分あれが『盲目の銀』やろうからな。目が隠れてて銀色やし……を見付けてスカウトを始めたら本気で危ないな。新暦から今の今まで続いた管理局がまるごと崩壊することになってもおかしくない。あの力からすれば、人なんてただのゴミクズにしかならんしな。
軽く見ただけやけど、なのはちゃん似の女の人は超広域対軍殲滅。フェイトちゃん似の女の人は広範囲にわたる遊撃で、私によく似た女の人は無数の兵士を呼んでの軍の統括者。銀の人は強大な力を持った戦士で、多分武器召喚を使える。
……本局を潰すのに何分かけるかなぁ……10分? 15分? そんなもんやと思うけどなぁ……。
―――――――――――――――――――――――
Q.これで終わり?
A.JS事件はね。
Q.……まだ何かあるの?
A.無いかもしれないしあるかもしれない。