side 織斑 なのは(異世界)
時間移動についてはそれを行った犯人がいて、それに巻き込まれただけだからその人に聞いてみるまで帰れるかどうかはわからないということ。私達の他に巻き込まれた人が居ると言うこと。さっきからたまに現れている誰かの偽物は、闇の書の闇を破壊した際に生まれた闇の欠片と言う物が関係者の記憶を再生して形を作っていると言うこと。そして、私のこと。
こちらの世界のヴィヴィオが私に聞いてきたことは、主にそんなことだった。
私は自分がこの世界に来てからの事は大体理解している。今回のことも、理由はわからないが原因が誰なのかと言うのもわかっているし、その犯人が現在どこに居るのか、なにをしているのかもわかっている。
そしてこの世界のシュテルちゃん達を消滅させたU-Dがどこにいてなにをしているのかだってわかっている。むしろそれは邪魔してもいる。
「まあそんなわけだから、このままU-Dを放置していたら多分この世界は消滅するだろうね。魔力を無限に産み出す無限連環機構と、闇の書の闇に匹敵する力を人間大のままに振るうことができる訳だから……まあ、まともな方法じゃ太刀打ちすらできないんじゃないかな?」
さらっと思ったことを口に出してみると、ヴィヴィオとアインハルトちゃんの顔色が悪くなった。まあ、確かに今この世界が滅んだらヴィヴィオもアインハルトちゃんも死んじゃうだろうけど、頑張ればなんとかなると思うよ?(【直感:A+】発動中)
「な……なのはさんはどうしてそんなに落ち着いてるんですか!? 死んじゃうんですよ!?」
「え? なんで?」
「なんでって……なのはさんがこのままほっといたら世界が消滅するって……!」
「『ほっといたら』ね」
……まあ、実際には放置しておいたところで私の本体には何の影響も無いんだけどね。多少疲れるくらいなもので。
でも、このまま放置しておくって言うのもなんと言うか後味が悪いし、多分手を出すことになると思うけど。
「……何か手があるんですね?」
「うん」
「軽いっ!? 世界の行く末を決める問いの回答が非常に軽いっ!?」
「軽くもなるよ。現在進行形で実行してるし」
「もうしてた!?」
ヴィヴィオはどうやらヴィータちゃんやはやてちゃんよりも、フェイトちゃんやアルフと似たツッコミをたしなむらしい。どつき漫才的なアリサちゃんのツッコミよりは柔らかく、はやてちゃんやヴィータちゃんのようにたまにのったりすることもない、古典的でまっすぐな激しめツッコミ。いいよね。
……まあ、そんな話は置いといて。
「そろそろ盗み聞きからは卒業したらどうですか? 盗聴は犯罪ですよ?」
空中から私達の会話を勝手に盗み聞きしているアースラのサーチャーに笑顔を向けて、宇宙空間の衛星軌道上にステルス状態で浮いているアースラの上下左右前後の全周囲に合計14発のスターライトブレイカーを設置した。
直後、相当慌てた雰囲気が伝わってくるけれど、私が口で優しく言っている間に辞めなかったが故の自業自得と言うやつで。
ちなみにスターライトブレイカーには当然結界破壊能力が付いてるから、ディストーションフィールドで防御しようとしてもかなり魔力が喰われてしまう。その上でぶち抜ける。正直自分でやってるのに若干やり過ぎかもと思ってしまったりもするレベルで。
3……2……1……発しy
『ちょ、ちょっと待っ』
……あ。撃っちゃった。ちょっと遅かったねリンディ提督? ざまあみrげふんげふん。
「……なのはさん? いったい何を……?」
ヴィヴィオちゃんが聞いてきたその言葉に、私はにっこりと笑って答える。
「衛星軌道上……大体三十六万キロメートルくらいの上空に居た管理局の次元航行艦が出歯亀してたから集束砲を撃ち込んだだけだよ。SSランクくらいのを14発ほど前後左右上下と斜めから一発ずつ」
「それは『だけ』で済む問題じゃない上にそれができるなのはさんは本当に人間かどうか怪しくなってくるレベルの話なんですけど!?」
「フェイトちゃんにもよく言われてる。と言うかミッドチルダで私の事を人間扱いしてくれる人なんて一人も居ないし」
「何やらかしたらそんな状況に!?」
「ヴィヴィオちゃんならわかると思うけど、ゆりかごを私ともう一人(シュテルちゃんとレヴィちゃんはさくらさんだから)の合計二人で分子の欠片まで消し飛ばしただけなんだけどね」
「……失礼ですが、本当に人間ですか?」
「多分」
「多分って……」
ヴィヴィオちゃんは一時期のヴィヴィオみたいに引きつったような笑顔を浮かべていたけど、その顔はヴィヴィオにもヴィヴィオちゃんにもあんまり似合わないからやめた方がいいと思うよ?
アインハルトちゃんは……なんだか目をキラキラさせて私を見ている。まるでテレビの中のヒーローその物に現実で出会った夢見る子供みたい。強さに憧れてるみたいだったし、私の話を聞いて羨ましいって思ったりしたのかな?
正直なんだっていいけど、私を目指すって言うのはおすすめできないかな。これでも一児の母親だし、他の家のお子さんが私のせいで人として外れちゃいけない道を外れようとしてるんだったら注意くらいはしてあげないと。
……勿論自分の意思で外れようとしてる人は止めないけど、自覚もないままに人間辞めちゃうと苦労するからね。主に周囲との価値観の違いに。
「そうなんですか?」
「そうだよ? 私は自分がおかしいって言う自覚があったし、ついでに自分よりもよほど外れている上にそれを隠そうともしない人と常識の極みとも言えそうなツッコミ役がが側に居たから比較してある程度で抑えられたけど、そういうのがないとどこまでも外れていっちゃうからねぇ……」
……あと、お空の皆はそろそろ学んだ方がいいと思うんだけど……その辺りどう?
『……し、も……し……!』
……ああ、スターライトブレイカーで通信機能が一部イっちゃったのか。だから今の今まで通信が無かったわけだね。
ついでにトランスポーター系もかなりおかしくなってるから、暫くはこっちに来るのは無理だろうね。
時間かければ割と簡単にできるようになるだろうけど、残念ながらこんな状況ですぐさま直せるような人手も時間も無いんだろう。知らないけど。
それに、私としては未来の情報を話さなくて済むから……ん? 待てよ? 私の世界とこの世界は繋がってないんだから……私は別に話してもいいか。ヴィヴィオちゃん達がどうなるかわからないけど。
「それすっごく困るんですけど!?」
「わかってるわかってる、冗談だよ」
……少なくとも、今は。
……面倒だけど、やっぱりちょっとお話ししなくちゃ駄目かなぁ……面倒だけど。