リリカルなのは~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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異伝7 その21

 

side 高町 なのは

 

 ジュエルシードを見付けて、封印。

 ジュエルシードを見付けて、封印。

 ジュエルシードを見付けて、封印。

 

 私に封印なんてことはできないけれど、その点はユーノ君の持ってきていたデバイス【レイジングハート】にお任せする。

 どうやら私はレイジングハートと相性が良かったらしく、たった数度の使用でレイジングハートのことがわかってきた。

 

 レイジングハートは、どちらかと言うとお姉さんタイプ。お姉ちゃんではなく、お姉さんね。ここ重要。

 時に厳しく、時に優しく、いつでも私の意思を尊重してくれるけど、大事な一線ではしっかり怒ってくれたりもする。さくらさんにちょっと似てるかな?

 それと、デバイスとして起動しているときの形は、普通の先に半円形の飾りのついている杖の形が一番よく使うアクセルモード。

 次に、砲撃用の音叉みたいな形のシューティングモード。

 そして最後に、私の演奏の邪魔にならないように手首で演算のお手伝いをしてくれる完全補助型のブーストモード。この形だと、レイジングハートは狂気の提琴にちょっとだけ嫉妬しているみたい。

 

 ……レイジングハートって、可愛いよね♪

 

 あと、私のバリアジャケットはさくらさんの服によく似ている。私にとって魔法使いと言えばさくらさんで、さくらさんの服と言えばこれだっていう気がするから。

 さくらさん本人は、なんだか懐かしそうな目で私のバリアジャケットを見つめていた。なんでも、シャルルって人が着ていた改造制服とそっくりなんだとか。

 

 そんなわけで私は今、魔法少女として頑張っています。

 

 

 

 

 

side ユーノ・スクライア

 

 この世界に来て、始めに出会った人がなのはで本当によかった。心の中で僕はそう呟やいた。

 

 いつの間にか病院らしいところに居て、そこにジュエルシードの暴走体が現れて襲われて、もう駄目だと思った所でどこからか飛んできた魔力によってジュエルシードの暴走体は消し飛んだ。

 僕はジュエルシードを封印して、それから今の状況を話して力を貸してもらおうと思ってレイジングハートに今の魔力の主を探してもらった。

 

 そして見つけたなのはは、最初はなんだかあまり乗り気じゃなかったけれどちゃんと話は聞いてくれたし、力も貸してくれている。

 アンダーグラウンドサーチライトや狂気の提琴と言う、明らかにロストロギアとしか思えない道具については教えてもらえなかったけれど、順調にジュエルシードを封印することができている。

 

 ジュエルシードの総数は21。この町の様々なところに落ちていたそれらを、この世界の魔導師(実際にはちょっと違うらしい)であるなのはが見慣れない魔法を使って見付けて封印していった。

 

 なのはの使う攻撃系の魔法は、なんだかとても少ない。

 

 声に魔力を乗せて撃ち出す【声圧砲】。狂気の提琴を使った衝撃波攻撃。レイジングハートに習い、すぐさま改造した三種の射撃と、一つの砲撃魔法から分化した何種類かの砲撃魔法。それにちょっとしたエグい小技。それだけだ。

 

 丁度、なのはが戦闘中だから見てみよう。

 

 大抵、なのはは暴走体を見付けても真っ正面に出ていったりはしない。砲撃魔法で最初に削れるだけ削る。

 そして気付かれてからは、戦域をあまり広げないようにしながら射撃魔法で削る。これがまたエグい。

 

 超高速の直射弾と、速度はそこそこだけど操作性抜群の誘導弾。その二つを緩急入り乱れて使うので、幻惑に凄まじく効果的。どこで習ったのか聞いてみたけど、さくらさんっていう人に教えてもらったんだって言っていた。

 

 ……ガタガタガタガタ震えながら。何があったのかは聞いてないけど、嫌な予感しかしないから聞きたくない。

 

 そして更に、小さく小さく絞り込んで空中に停止させた地雷のような射撃魔法と、高速で飛んでいった直射型の進む方向を反転させた(あらかじめプログラムを組んで、撃ってからこのくらい離れたら戻ってくるようにしておけば速度はそのまま操れるそうだ。ただ、一度撃ったらなにがなんでもその動きをするようだけど)弾丸と誘導弾で動きを止め、そこにチャージしておいた砲撃を叩き込む。そんな戦法を使う。

 

 勿論、動きを止めるのに設置型のバインドを使ったりすることもあるし、懐まで潜り込まれた時には逃げることが優先とは言えレイジングハートで近接戦闘もできている。

 

 ……本当に、なのはが僕に協力してくれてよかったと思う。

 

 声圧砲と狂気の提琴はあんまり使わないけれど、隠し技がいくつかあった方がいいってなのはの音楽と魔法の先生(なのはにこんな戦法を教えるような人だし、きっととてつもなくえげつない人だと思う)が言っていたみたい。

 その人にも今度お礼を言いに行きたいけど………なんだか怖いなぁ…………。

 

 

 

 

 

side 織斑 一夏

 

 ……なんか、エグいだのえげつないだのと好き勝手言われてるような気がするが………別にそんなことはないと思う。

 正直に言って、本気になった束姉さんのエグさとえげつなさに比べれば、この程度は何でもない。子供のいたずらレベルだろう。

 

 束姉さんは社会的に抹殺してくるし、その他にも人質やら詐欺やら扇動やら、使えるものならなんだって使おうとするから怖い。

 個人が相手だろうが国相手だろうが、殺るときは確実に堅実にオーバーキルしてくるから恐ろしい。

 

 ……あの人、自分で護ると決めたものはなにがなんでも護る人だからね。そんなときはちー姉さんも協力することが多いから、本当に頭脳&謀略&技術チートと戦闘&戦術&扇動チートが合わさるとろくなことにならない。

 

 ……だから、俺のやることは子供の遊びみたいなもので、エグいとかえげつないとか、そんなことは一切無いんだと断言しつつ、眠くなったから寝ることにしよう。

 

 ……おやすみなさい。

 

 

 

 

 一夏よ。安心しろ。お前は普通にえげつない。

 

 

 

 

 

 

異伝7 その22

 

side 高町 なのは

 

 私は今、すずかちゃんの家に遊びに来ています。

 すずかちゃんの家は見事な猫屋敷で、そこら中に猫がたくさんいます。

 私はそんなすずかちゃんの家で、バイオリンを弾いています。

 

「今日は公園の方には行かなくていいわけ?」

 

 アリサちゃんがそんなことをきいてくるけれど、大丈夫だったりします。

 

「大丈夫だよ? 公園にも行ってるから」

「は?」

 

 アリサちゃんの顔には『訳がわからない』って書いてあるけど、本当に私がもう一人そこにいるんだから仕方無い。

 さくらさんに『体が二つ欲しい』って言ってみたら、不思議そうな顔で『え? できないの?』って言われたからなんとなく思いっきり気合いをいれてみたらできちゃった。理由はわからないし、やり方もよくわからないけど、魔力を使って分身でもしてるんじゃないかっていう結論に達した。

実際に魔力が結構減っていたし、今も回復量が少なくなってるから間違いないと思う。

 

 けど、そんなことをわざわざ説明するなんてことはしないで、私はただバイオリンを弾く。狂気の提琴を持ったままの分身は、片方が狂気の提琴じゃない普通のバイオリンになってしまうのが欠点と言えば欠点かもしれない。

 まあ、バイオリンを弾くのには問題無いし、狂気の提琴じゃなくても魔力を乗せて弾くくらいは簡単にできるから全然悪くないどころかいいことばっかりなんだけど。

 

 ……ん? この気配……と言うか、魔力の波は…………。

 

 

 

 最近よく感じる魔力の波の発信地を目指してみたら、そこはすずかちゃんの家の庭だった。

 今回のジュエルシードはどこかなーと思ったけど、そんなことをするまでもなくみつけることができた。

 

「……ねえ、なのはちゃん」

「どうしたの? すずかちゃん」

「…………あの子、にゃーたんって言うんだけどね?」

「うんうん。にゃーたんが?」

「……あんなに大きくなかったはずなんだけど…………何か知らない?」

 

 簡単に見付かった理由は今すずかちゃんが言った通り、にゃーたんって言うらしい子猫がすっごい大きくなっていたからだ。

 私達から見て見上げなければいけないほど大きくなったにゃーたんは、すずかちゃんの庭の木の先っちょにじゃれている。

 

 ……とりあえず、ジュエルシードと分離させてあげなくちゃね。話はそれからでもいいと思うし、狂気の提琴を使えば生物相手なら傷つけることなく抜き取って封印できるから―――

 

 そこまで考えた瞬間、私はすずかちゃんとアリサちゃんの前にバリアとシールドを張った。

 そしてその直後に、にゃーたんに向かって降り注ぐ金色の流星群。にゃーたんも一瞬でそれに気付いて避けようとしたけれど、巨体が災いして何発も流星を当てられてしまう。

 

 次の瞬間。攻撃してきた相手を睨み付けたにゃーたんの瞳から迸る、掟破りのにゃーたんびーむ(仮)。下手人らしい少女は慌てて避けたみたいだけれど、にゃーたんびーむ(仮)はどこまでもその少女を追いかけていく。

 ちなみに、にゃーたんびーむ(仮)の色は蒼。ジュエルシードとおんなじ色で、とっても綺麗だけどちょっと怖い。

 外れた後は分解されて空気中に魔力の残滓として漂っているからいいけど、もしもずっと進んでいたら結界を撃ち抜いて大変なことになっていただろうけど、貫いてないからセーフ。

 

「……何がどうなってこんなことになってるのよ……?」

「まあまあアリサちゃん。その事は後でなのはちゃんからゆっくり聞き出すとして……なのはちゃん? なんとかならない?」

 

 ……すずかちゃんに魔法のことは話したことがないし、私に何ができるっていうのも言ったことは無かったはずなんだけど……どうしてすずかちゃんはピンポイントで核心を突いてくるんだろう?

 

「……にゃーたんを元に戻すのは簡単だけど、あっちの女の子は……」

「なのはちゃんなら大丈夫な気がするんだけどな?」

 

 ………ほんとに、すずかちゃんは鋭いなぁ……。

 

 私はレイジングハートを起動して、バリアジャケットを展開。狙いはあっちの女の子。近くにもう一人居るみたいだし、気絶したらきっと持ち帰ってくれるはず。

 

「レイジングハート。最速直射散弾を、20×12を1セットとして15セット」

『了解』

 

 散弾と言っても、完全制御されたプログラムで動く圧縮魔力の塊がぶつかれば相当痛い。非殺傷設定なんて、死なないようにするためだけの拷問道具みたいになっちゃうくらい痛い。自分にも当ててみたから間違いない。

 そんなものを人に向けるのは心苦しいけれど、護りたいもののためなら私は悪魔にだってなってみせる。

 

 さくらさんにそう言ってみたら、『海鳴の白い悪魔』って言われちゃった。確かに白いですけど、さくらさんには言われたくないです。

 そう返してみたんだけれど、さくらさんが本気で戦う時は白じゃなくって銀色になるらしい。ちょっと悔しいなんて思ってない。

 

 ……まあ、そんな割とどうでもいい思考は頭の隅にでもおいといて、組み上げた魔法を保存しておいて次の魔法に取り掛かる。

 とりあえず、あの子の軌道を予測して、その上に固めのバインドを多数設置。どれかにかかったら他のも起動して動きを抑え込んでからの散弾連射。

 

 ……よし。方向も決まったことだし、いってみよー!

 

 

 

 

異伝7 その23

 

side 高町 なのは

 

 金色の女の子をバインドで捕まえるところまでは上手くいったけれど、そこから先はちょっと予想から外れてしまった。

 たくさん設置したバインドの一つに金色の女の子が引っ掛かり、それに連動して他のバインドが起動して金色の女の子の全身を縛り上げる。

 それから私が散弾を連射したんだけど、その高速直射弾が当たる前ににゃーたんびーむ(仮)が金色の女の子を呑み込んだ。

 

「……えぇ~………」

「なのはちゃん、あの子大丈夫かな?」

「うーん…………多分、死んではいないと思う……けど………」

 

 すずかちゃんに言われて考えてみるけど、私のバインドの壊れ方から見てあのにゃーたんびーむ(仮)は非殺傷設定がちゃんとしてると思う。

 だから、魔力が枯渇して気絶したり、バリアジャケットが全部削りきられて裸になってたりするかもしれないけど………命に別状は無い…………と、思う。そう思う。

 

 流石に人が光に呑まれていく光景を間近で見てしまったら断言はできないけれど、多分大丈夫。

 

 …………そう言えば、非殺傷設定の魔法で魔力を削られ過ぎると気絶するけど、気絶した後も非殺傷設定の魔法で攻撃され続けたらどうなるのかを聞いてなかったや。今度ユーノ君に聞いておこっと。

 

 今はそれよりもジュエルシードの封印と、すずかちゃんとアリサちゃんへの説明の方が大事なんだよね。あの金色の女の子は別のところに居た赤い髪の人(?)に連れていかれて結界を出たみたいだし、今やるべきことはこれかな。

 

 じゃあ、私にできることをやろうかな。

 

 

 

 狂気の提琴による演奏会でジュエルシードをにゃーたんから引き離し、封印してレイジングハートにしまい込む。

 にゃーたんは私の演奏を聞いておねむになったみたいだし、アリサちゃんはやっぱりかなり蕩けた表情でうつらうつらしているけれど、どうやらすずかちゃんにはあんまり効果がなかったみたい。

 

「じゃあ、なのはちゃん。話してくれる?」

「いいけど、ちょっと待ってね」

 

 すずかちゃんにそう断りを入れて、ユーノ君に念話を入れる。

 

『あ、ユーノ君? 悪いんだけど、ちょっと来てくれない?』

『え、う、うんわかった!』

 

 短い念話はすぐに切れて、あとには静寂が残るばかり。感じてみたところ、ユーノ君がここに来るのは結構時間がかかりそうだし………ゆっくりお話をしながら待ってようかな。

 

「じゃあ、簡単なところから話していこうと思うんだけど、いいかな?」

「うん。……ほらアリサちゃん、起きて」

「………ふぇ?」

 

 ぽやっとした表情を浮かべるアリサちゃん。心ここにあらずって顔だけど……大丈夫かな?

 

 私とすずかちゃんは、くしくしと目を擦るアリサちゃんを見ながら苦笑した。

 

 

 

 そんなわけで色々話したんだけれど、結構簡単に信じてもらうことができた。

 いくら私の言うことでも、魔法やらジュエルシードやらロストロギアやらのことをどうして簡単に信じるのかと思ったんだけど……よく考えなくてもついさっき見てたんだもんね。

 くすくすと笑いながら説明を続ける。

 

 私がいつも冗談で言っている音楽家(まほうつかい)じゃなくて、本物の魔法使いだってこと。

 ジュエルシードを集めるに至った経緯。

 ロストロギアとジュエルシードについてのちょっとしたお話。

 ロストロギアとか、そう言うものを扱っているらしい、管理局とか言う存在のこと。

 そして、あの金色の女の子のこと。

 

 私にもわからないことが多かったけれど、そこは途中参戦のユーノ君が説明。今は小動物の格好をしてるけど、本当は人間の男の子なんだよね。

 

 ………ユーノ君の、えっち。年端もいかない女の子にちやほやされて、楽しそうだね? 私の友達じゃなかったらどうでもいいけど、私の友達を自分のハーレムに引きずり込もうとするのは辞めてね? この淫獣。

 

「やんないよ!? って言うか、何か今僕のことを凄く罵倒しなかった!?」

 

 してないよ? ほんとのことしか言ってない。と言うか、口に出してもなければ念話してもいないのに、なんでそれがわかるかの方が重要な気がするなぁ?

 

 ……まあ、さくらさんで慣れてるし、別にいいけど。

 

 ……そう言えば、あの金色の女の子はどうしたんだろう? 赤い犬耳と尻尾つきのお姉さんに連れていってもらってたから平気だとは思うけど、ちゃんと養生してるかな? 無理しすぎると、体を壊しちゃうよ?

 

 

 

side フェイト・テスタロッサ

 

 母さんにお願いされてジュエルシードを集めている私だったけれど、今はベッドの上で荒い息をついていた。

 

 ジュエルシードの力で巨大化した猫。それを見付けてジュエルシードを回収しようとしたところまではよかったけれど、攻撃する寸前に私に気付かれてそのほとんどを避けられてしまった。

 そこからたたみかけようとしたけれど、その一瞬の迷いを付いた相手からの攻撃を高速機動で避ける。

 私が避けてから少し進むと勝手に解けてしまう魔力の砲撃を見る限り、集束率はあんまり高くはなさそうだけど……それでも、量と勢いが問題だ。

 

 まずはあの猫にバインドをかけて、それからフォトンランサーを撃ち込むつもりだったんだけど………それを実行する前に、私の体はピンク色のバインドに縛られていた。

 誰がやったのかを探そうと顔を上げると、そこには私にゆっくりと迫り来る青色の閃光が―――

 

 ぎゅうぅぅぅっ!と体を抱えて震えを抑え込む。もしもあれが殺傷設定だったらと思うと、今でも怖くて仕方がない。

 私の中には、あの蒼い閃光がトラウマとして刻み込まれていた。

 

 私の異常に気付いたのか、アルフが私のことを抱き締めてくれる。

 アルフの暖かさに触れて少しだけ落ち着いた私は、アルフに抱き付いたまま意識を落とした。

 

 …………今の私は知らない。後にこのトラウマが簡単に払拭されることを。

 そして、その代わりに………桜色の壁が高速で迫ってくるのに両手両足胴体首とあらゆる場所に仕掛けられたバインドのせいで動くこともできず、その砲撃を甘受するしかない状態に追い込まれたお陰で新たなトラウマを抱え込むことになるなんて、今の私には想像もできないことだった。

 

 

 

 

 

異伝7 その24

 

side 高町 なのは

 

 にゃーたんからジュエルシードを分離させ、私が魔法使いだと言うことがすずかちゃんとアリサちゃんにバレた日からしばらくして、私はアリサちゃんやすずかちゃんに誘われて温泉に行くことになりました。一応、ユーノ君も一緒です。

 私がいない間は、私の分身がバイオリンを弾いていてくれるはずですが、その分身は私が寝ると消えてしまうのでちょっと不便です。

 出す時も私のすぐそばにしか出せないから移動に時間がかかりますし、私の方に余裕がなくなると消えてしまいます。一度出せば大体私の意思通りにかつ臨機応変に動いてくれるから使い勝手はいいのですが……。

 

『……十分だと思うんだけど………』

『納得したらそこで成長は終わっちゃうから、上を目指すんだ。今の目標は、一人でフォーピースバンドが組めるくらいになることかな?』

 

 まあ、組んだとしてもバイオリンとボーカルしかいないバンドなんて、売れないと思うけど。

 私が言いたいのは、ちゃんと制御できる分身を三体同時に作るということ。結構難しいんだよね、これ。

 

 ……まあ、今はいいや。それより今は温泉を楽しまなくっちゃね。私が温泉に来ることなんて滅多に無いし、楽しむ時はとことん楽しまないと。

 ユーノ君は男湯ね?

 

『もちろんそうするつもりだけど……いいのかなぁ? 僕お金払ってないんだけど……』

『ユーノ君、ユーノ君、ユーノ君。知ってるかな? 罪って言うのは、バレなければ何でもないことなんだよ?』

『なのはが黒いよ!?』

『安心しても大丈夫だよ。九割以上は冗談だから』

『残りの一割が凄く気になるところなんだけど!?』

『残りの一割も冗談だよ? 九割以上だから、嘘は言ってないよね?』

『確かにそうだけどさ!言い方ってものがあるよね!?』

「なのは? さっきからユーノが必死にキュウキュウ言ってるんだけど……どうしたのよ?」

「よくわからないけど、ずいぶん興奮してるみたい。どうしたんだろうね?」

 

 頭の中で響く『なのはのせいだよっ!』って言葉にはフィルターをかけて聞こえなかったことにして、私達を乗せた二台の車が目的地についたことを確認する。

 

 ……海鳴の自然の中での演奏もいいけど、たまには違うところで演奏するのも悪くないかな。新鮮さって言うのも、人生においては一つの大切な要素だよね。

 

「あははは……なのはちゃんって、なんだか老成してるよね?」

「ひどいよすずかちゃん。まだ小学三年生の私に向かって老けてるだなんて……」

「じゃあ、大人っぽいね?」

「すずかちゃんも似たようなものでしょ?」

「ひどいよなのはちゃん。まだ小学三年生の私に向かって老けてるだなんて……」

「…………さっきなのはも同じこと言ってたわよね?」

 

 私とすずかちゃんの他愛もない掛け合いに、アリサちゃんはどうしてか冷や汗を流しながらツッコミを入れる。いったいどうしてなんだろう?

 

「どうしてそんなことを言うんだと思う?」

「うーん……アリサちゃんに直接聞いてみるのが一番早いと思うよ?」

「そう言えばそうだね」

「「それで、どうして?」」

「……あんたたちの掛け合いって、なんだか心臓に悪いのよ。なんと言うか………温厚な核ミサイル保有国同士が笑顔で嫌みを言い合ってるような…………」

「あははははっ!その例えは小学生の例えじゃないと思うよ?」

「ふふふふ……そうだよねぇ? なのはちゃん」

 

 あはははは、ふふふふふ……とすずかちゃんと仲良く笑いあっていると、どうしてか冷や汗を流しているお父さんと忍さんが話しかけてきた。

 どうしてそんな反応が返ってくるのかはよくわからないけど、なんだかちょっと悲しいです。

 

 ……外には出しませんけど。

 

「な……なのは?」

「? どうしたの? お父さん。車の運転のし過ぎで腰痛が酷いとか?」

「いやいや、そうじゃなくて………なんだ、すずかちゃんとはいつもこうなのかい?」

 

 私の隣に視線を向けると、お姉さんの忍さんに同じようなことを聞かれていたらしいすずかちゃんと視線が合った。

 

「大体こんな感じだよね?」

「みんなで旅行って初めてだから、いつもよりちょっと興奮してたかもしれないけど……そうだよね?」

 

 うんうん、とすずかちゃんと二人で頷きあっていると、どうしてかお父さんも忍さんもひきつったような顔をしていた。

 

「……すずかちゃんのことは好きかい?」

 

 そんなお父さんの質問に、私はこう答えます。

 

「「大好きだよ」」

 

 ……どうやら、すずかちゃんとハモったみたいです。

 

 

 

 

 

side アリサ・バニングス

 

 大抵にこにこ笑っているなのはと、大概にこにこ笑っているすずか。この二人は、実は二人揃うと結構怖い。

 実際にこちらに害が来るとか、そういったことは無いのだけれど、……ただ話しているだけでどうしてか心臓に悪い。

 見た目だけならどう見ても仲のいい友達同士の会話なのに、雰囲気だっておかしいところは無い。

 そのはずなのに、どうしてか心臓に悪すぎる。

 

 原因はわからない。わからないから改善のしようがない。けれど私達は仲良しで、友達だ。親友って言ってもいい。

 

 ……恥ずかしいから、なのはにもすずかにも言わないけど………ごまかしても、なのはにもすずかにも『アリサちゃんは可愛いね』って……。

 

 ……私に言わせれば、可愛いのはあんたたちの方よ。まったくもう……。

 

 

 

 

 

異伝7 その25

 

 

side 高町 なのは

 

 お風呂に入って、風と景色を楽しんで、それから額に宝石をつけているオレンジ色の髪をした女の人によくわからない忠告をされて、それからまた少しして…………ジュエルシードの発動を感知した。

 

 とりあえずその場所に向かうと、そこにはつい最近見たばかりの金色の女の子とオレンジ色の髪の女の人が居た。

 オレンジ色の髪の人は私のことを憎々しげに睨み付けてくるけれど、どうしてか全然怖くない。うつらうつらしていた時に偶然バイオリンを弾くのに失敗して鋸で薄い木の板を引いたみたいな音を出してしまった時のさくらさんに比べれば、ぜんっぜん怖くない。

 

 ……あの時は『あ、死んだ』って思った。誇張とかそんなのは一切無く、ただ死んだって思った。

 …………怖かったなぁ……あの時のさくらさんは。なんとか許してもらえたけど、本当に怖かった。

 

『なのは。僕があっちの女の人を引き付けるから、なのははあっちの女の子の方をお願い』

『うん、わかった。死なないように頑張ってね』

『生々しいってば!なのはこそ、怪我とかしないでね?』

『やだなぁ、そんなの私に言われても困るよ。あの金色の女の子が殺傷設定の魔法を使わないでくれるのを祈るしかないね。殺傷設定で来たら反撃するけど』

『殺しちゃダメだよ!?』

『あははははっ』

『……ねえ、返事は? 肯定の返事は無いの!?』

『…………見てよユーノ君、星が綺麗だよ。あと女の人が来たからよろしくね?』

『わ、わかったけど……殺傷設定はダメだからね!』

 

 ユーノ君は念話で念押しをしながら、オレンジ色の女の人をつれてどこかに転移していった。

 ……ユーノ君ってば、心配性だなぁ。私だって無理をする気はないのにさ。

 勿論、殺傷設定もね。

 

 発動したジュエルシードによって凄いことになっている(元々は多分)カラスと、金色の女の子と空中で相対する。

 

「……君も、ジュエルシードを集めてるんだね」

「うん。二回目だけど……こうして話すのは初めまして、かな?」

 

 私と金色の女の子が言葉を交わす。空気を読んでいるのか、邪魔をしたらどうされるかわからないと思っているのか、私達のもっと致命的な隙を伺っているのかはわからないけれど、巨大化して狂暴になっていたカラスは今は大人しくなっている。

 

 ……地形はどちらかと言えば私が有利だし、あんまり負ける気はしないけど………結構苦戦しそう。なんとなくだけど、そう思う。

 とりあえずは、あの巨大なカラスからジュエルシードを取り除いて封印しないと。またにゃーたんみたいなビームでも撃たれたら困るし、私でも耐えられるかどうかわからない。

 

「提案があるんだけど、いいかな?」

「……なに?」

 

 金色の女の子は、意外にもちゃんと話を聞いてくれるみたい。よかったよかった。

 

「まずはジュエルシードの方からなんとかしておかない? 戦って奪い合うのは……まあいいとしても、封印してそれからじゃないと余波で暴走しちゃったら大変だしね」

「…………」

 

 金色の女の子は、少し考え始める。念話をしてるのかどこかに魔力の波が飛んでいくのを感じるけど、妨害はしないでおく。

 ユーノ君の足止めもずっとは続かないんだし、早めにしてほしいんだけど……。

 

 そこで、金色の女の子は口を開いた。

 

「ジュエルシードは持ってる?」

「え? ……一応は」

「じゃあ、それも賭けて」

 

 ……つまり、乗るから金色の女の子が勝ったら今回のジュエルシードと私の持ってるジュエルシードの合計二つを持っていくのを認めろ、ってことね。

 

「とりあえずそれでいいけど、あなたはジュエルシードを持ってるの?」

 

 そう聞いてみると、金色の女の子は自分の持っているデバイスからジュエルシードを一つ提示した。私も同じように一つ出して、同時に頷き合う。

 

 それじゃあ、ジュエルシードの方を先に片付けちゃおっか。

 

 

 

 

 

side フェイト・テスタロッサ

 

 白い魔導師の子が後衛、私が前衛の即席コンビだけれど……どうしてか随分うまく噛み合う。

 私がバルディッシュの刃で大きな鳥の翼を切りつければ、それに気をとられた大きな鳥の顔に操作性の高い射撃を撃ち込んで目眩ましをする。

 そしてその直後に高速展開した射撃魔法で大きな鳥を囲み、その隙間をすり抜けて私が第二撃。それを数度繰り返せばあっという間にジュエルシードの暴走体は止まった。

 

 ジュエルシードはあの子が封印し、そして私と正面から向き合うようにして止まった。

 

「……封印も終わったし、戦おう」

「その前に、ルールの確認ね」

 

 まず初めに、非殺傷設定の使用。これについては初めから私もするつもりだったし、問題ない。

 勝者には今回のジュエルシードと、相手から一つジュエルシードを奪うことができる。これもいい。

 そして、負けた方は勝った方に攻撃してはならない。同時に、勝った方も負けた方に攻撃してはならない。当然だよね。

 最後に、勝負が終わったら恨みっこなし。勝ったら喜んで、負けたら悔しがって、そして次の時のために頑張ること。

 

 そこまで確認した私達は、杖を構える。

 

「……そうそう。忘れてたよ。私は高町なのは。この子はレイジングハート。あなたは……言いたくなかったら言わなくてもいいけど、私が勝ったら教えてね」

 

 それっきり、彼女は口を開かなくなった。

 

 じりじりとする空気の中、私と彼女は向き合っている。

 

 そして、集中力が最大限に高まった瞬間。私達は同時に動き始めていた。

 

 

 

 

 

異伝7 その26

 

side フェイト・テスタロッサ

 

 パン!

 

 瞬間、私の目の前に桃色の火花が散った。

 視界が急激に上向きに弾け飛ぶ。何をされたかわからない。私は零から急加速して彼女に接近するつもりだったのに……。

 

 パニックに陥りそうな頭でなんとか体勢を整えようとすると、それを邪魔するように体の各所に衝撃が走り、魔力がごっそりと削られる。

 全力で移動しながら彼女の方を見てみると、彼女は正確に私に杖の先端を突き付けているのが見えた。

 

 そして、彼女が私に向けている杖の先端から小さな光が高速で飛来する。私はなんとかその射撃を避けるけれど、うまく狙いを散らされているせいか結構な数が私に当たる。

 唯一の救いはどれもこれも軽いことだけれど、それは速度と数と密度で覆されている。

 

「く……バルディッシュ!」

 

 バルディッシュに呼び掛け、サイズフォームに変形。全速力で飛び回りながら、私に向かって飛んできた超高速の射撃魔法を叩き落としながら考える。

 多分彼女が撃っているのは、操作性を完全に破棄した代わりに速度に特化させた直射系射撃魔法。それを私の動きに合わせて撃ち込んでいるんだろう。

 それをするにはかなりの先読みと思考加速が必要になると思うけど、実際にできているんだし彼女は強い魔導師だ。

 私も時々単発のプラズマランサーを撃ち込んでいるけど、彼女の撃った弾幕に撃ち落とされて届いていない。

 

 彼女の戦闘スタイルは、きっと中距離射撃型。直射弾を多用するタイプで、足を止めて相手を近づけないようにして一方的に削り落とすような戦い方だと思う。

 そうだとすれば、近接戦闘の距離まで接近すれば彼女を押さえることができると思うけど、それをするのはきっととても難しいだろう。

 

 ……それでも、母さんのためにも負けられない。そうしなくっちゃ勝てないんなら、やるしかない。

 

 私は、覚悟を決めた。

 

 

 

 

 

side 高町 なのは

 

 アクセルシューターから操作性を抜いて単発直射型速度特化に組み直した術式、ソニックシューターを放つ。

 それは金色の女の子の額に直撃し、数瞬の時間を得ることに成功した。

 その隙に単発のソニックシューターを組み上げ、金色の女の子に向かって連射する。

 七発くらいは当たったけれど、パニックから持ち直したのかそこから先は高速機動とデバイスによって使われているらしい防御魔法のお陰であまり当たらなくなってしまった。

 

 単発の魔法をこうして連射することのメリットは、一度に行う演算の容量を減らすことができるという点にある。つまりそれは、普通なら戦闘に使うには拙いレベルにまで落ち込んだマルチタスクの思考力でも組み上げることができるということで、弾体を何発も同時に作り上げる魔法に比べて制御が容易くなるってこと。

 

 そのお陰で多分近接距離の戦闘能力は落ちていると思うけど、それを補うために一瞬だけの隣接距離用の砲撃魔法、フラッシュバスターをいつでも撃てるように待機してある。

 この魔法を作るのに協力してくれたさくらさん曰く、私の作った魔法は不意打ちに優秀すぎてえげつないって。

 

 ……えげつないっていうのはいくらなんでもひどいと思います。確かに私の作ったこれらの魔法は初見殺しですが……種が割れてもちゃんと戦えるように考えて作ったんですよ? 種が割れてない方が遥かに使い勝手がいいことは認めますけど………。

 

 そんな考え事をしながら金色の女の子に直射弾を連続して撃ち込む。何度も接近してこようとしているみたいだけど、このまま封殺されてくれると嬉しい。

 けれどやっぱり早々思い通りには行かず、金色の女の子はボロボロになりながらも私に近付いてくる。上手くシールドとバリアを使い分けているみたいで、直射弾を逸らしている。

 

 金色の女の子のデバイスから声が聞こえる。ソニックムーブ、ってことは高速機動用の魔法だよね。

 私の目の前から突然消えた金色の女の子の魔力を追うと、私の背後に突き当たる。

 場所さえわかればあとは簡単。ちょうどそっちを向いていたレイジングハートの柄の部分からソニックシューターを単発で撃ち込みながら身体強化の魔法を使う。

 

 フラッシュムーブメント、とレイジングハートのマシンボイスが呟く。それと同時に足首の小さな翼に魔力が送り込まれ、瞬間的に動作そのものが加速する。

 私の体が高速で動き、魔力刃の鎌を振り上げている金色の女の子にレイジングハートを突きつける。

 そして、私と金色の女の子はまったく同時にお互いを攻撃した。

 

 私の撃ったフラッシュバスターは金色の女の子の半身を飲み込み、金色の女の子の振った大鎌は私の腰を貫いた。

 

 

 

「……けほ、けほ。……まだ、やれる?」

「……ちょっと、難しいかな」

 

 金色の女の子に聞いてみると、意外と素直に言葉が返ってきた。

 私も戦えないことはないけど、ちょっと動くのが億劫になってるし……お互いにあんまり戦いたくないみたいだし、このあたりで終わりにしとくのが一番かな? なんだか腰が内側からじくじく痛むし。

 

 私はレイジングハートからジュエルシードを取り出し、金色の女の子に飛ばして渡す。金色の女の子は驚いたような顔をしたけど、ちゃんとジュエルシードを受け取った。

 

「今回は引き分けってことで終わりにしとこう? 引き分けだけど、あなたの方が先に来てたから、譲ってあげる」

「…………ありがと」

「どういたしまして」

 

 ジュエルシードを受け取った金色の女の子は、ゆっくりと立ち上がるとどこかに念話を飛ばし始めた。きっと、あのオレンジ色の髪の人とお話をしてるんだと思う。

 

「……私は、フェイト。フェイト・テスタロッサ」

「……ふふ♪ ありがと。フェイトちゃん」

 

 フェイトちゃんは私に背中を向けると、すぐに転送魔法でどこかに消えていった。どこに行ったのかはわからないけど……。

 

 私は、ぱたりと後ろに倒れ込む。そして、真っ黒の中に星がちりばめられた空に手を伸ばす。

 

 ……また、会えるよね? フェイトちゃん。

 

 

 

 

 なのはの実際のスタイルは、誘導直射を問わない射撃魔法と強力な砲撃を扱う中距離型で、狂気の提琴使用で超々広域殲滅型(純粋物理攻撃だから管理局的には犯罪)です。

 

 

 

 

 

異伝7 その27

 

「……さくらさん。私、もっと強くなりたいです。具体的にはフェイトちゃんを完膚無きまでに叩き潰せるくらいに」

「それおもいっきり悪役の台詞だぞ? 別にいいけど」

 

 ある日の魔法特訓(なのちゃんからの頼み事。それなりにスパルタ方式で叩き込んでいるが、必死についてきている)の日のこと。急になのちゃんがそんなことを言い出してきたので、とりあえず『重度の怪我をしない程度』だった密度を『後遺症が残らない程度』まで上げることにした。

 まあ、あんまり変わらないっちゃ変わらないんだが密度を上げたわけだし、少しはきつくなっているはずだ。

 なお、俺がジュエルシードをいくつか持っていると言うことはなのちゃんには伝えていない。面倒だからわざわざ伝えることをしていないだけなんだが、どうでもいいよな。

 

 ……それにしても、なのちゃんの自作の魔法は怖いな。発動から発射までに1/10秒もかからない上、弾速自体もかなり速い直射魔法に、それを応用した連射の弾幕と散弾。直射だけと思わせた所で出てくるプログラム済みの高速弾に、そこそこの速さの誘導弾。そして高威力の集束砲。

 近付けば機雷のように仕掛けられた魔弾に、瞬間的に撃ち放つ砲撃魔法。当然、ここでも射撃は猛威を振るう。

 そしてバインドからの集束砲撃。これ心臓が弱いやつだったらショック死してもなにも不思議じゃないんだが……人に向かって撃つつもりは無いよな?

 

 ……たっちゃんにトラウマ植え付けた経験のある俺が言っていいことじゃないような気がしなくもないが、そのあたりは面倒だからスルー。

 

 とりあえず、攻撃面は十分すぎるほど充実してるから、次は防御面だな。

 なのちゃんは回避するタイプじゃないから防御に力を入れるべきだが……一応防御は真っ正面から受け止めるばかりが防御じゃないってことを教えておこう。

 

 簡単に言うと、シールドは大概攻撃を受け止めて弾くために使われ、その角度は攻撃に対して垂直に張られる。

 だが、誘導弾ならともかくとして、直線的にしか進まない砲撃まで受け止める必要は無い。だからそんなときはシールドを斜めに張って受け流す。

 

 ……俺は気弾をある程度自由に操れるんだが、魔導師は砲撃を曲げることはできないっぽいし、結構有効な技だと思うんだよな。なのちゃんだったらいつか誘導弾だけじゃなく、砲撃まで曲げそうな気がするけど。

 だってなのちゃんだからな。

 

「さくらさん? 今私のことを人外扱いしませんでした?」

「なのちゃん扱いしてるけど?」

「その言い方だとまるで私が人間以外の種族の一つだって言われてるような気がするんですけど」

「大丈夫だ。俺の周りには化物か公式チート持ちかバグキャラくらいしかいないから」

「なんにも大丈夫じゃないですよね? つまり私は化物扱いってことですよね?」

「俺とお揃いだな」

「じゃあ化物でいいです」

 

 いいんだ。冗談のつもりだったからちょっとびっくり。

 実際のところ、なのちゃんはなのちゃんでどう頑張ってもなのちゃんなんだからなのちゃんをなのちゃん扱いするってのは正しいことだと思うが、なのちゃんはなのちゃんをなのちゃん扱いすることのどこに違和感あるいは拒否感を感じたのだろうか? 正直に言って、理解できない。

 まあ、なのちゃんはなのちゃんの考えがあるんだろうから、なのちゃんなりに考えて出した答えを俺が否定する気は無いが、できればなのちゃんなりの答えをなのちゃん自身の口からなのちゃん自身の言葉で説明してくれると嬉しいね。

 

 ……話を戻すが、防御の他にも鍛えるべき所はまだまだあるが、とりあえずは防御。それからバインドやら強化やらの補助系だな。狂気の提琴をどこでも取り出せるように召喚系もアリだが、そのあたりはなのちゃんと話し合ってから決めるとしよう。

 そして、常に油断は大敵だと言うことも教えておこう。心構えは重要なことだし、引き締める意思がないと勝手に弛んでいくものだからな。

 

 ……それじゃあ、特訓を始めてみようか。なのちゃんはついでに最終手段も使いながら。

 

 

 

 

 

side 高町 なのは

 

 さくらさんにフラッシュバスターを撃ち込み、即座にソニックシューターを連発する。

 魔法を使うのには慣れてきたし、使う度に速度がじりじり増していくけれど……それでもさくらさんには届かない。届いても効かない。

 

 フラッシュバスターを片手で受け流し、ソニックシューターとアクセルシューターの弾幕を指弾で撃ち落としていく。なんでそんなのがソニックシューターより速いのか理解できないけれど、前に聞いてみたら真顔で鍛えているからって答えられたから諦めている。

 

 空中に設置したバインドにはまずかからないし、追い込んでバインドしたとしてもすぐに引き千切られる。

 ……さくらさんはさっき私を化物扱いしたけれど、正直に言ってさくらさんの方が化物らしいと思ってしまう。

 

 さくらさんの手から光が走り、ライフルのようなものが現れている。

 私は即座に停止し、シールドを張る。

 

 銃口から光る弾丸が飛び出し、私を襲う。それに会わせてシールドを斜めにすると、その弾丸は簡単に受け流すことができた。

 連続して放たれるその弾丸は、エネルギー系の弾丸と実体のある弾丸の二つ。エネルギー系の弾丸が砲撃で、実体弾が射撃魔法と考えるだけでずいぶん違う。

 ……時々実体弾は曲がってくるし、凄くリアルだと思う。魔法だからファンタジーなはずなんだけど、さくらさんのは凄く科学的だからね。

 …………物理法則には真正面から喧嘩を売ってるとしか思えないけど。

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その28

 

 円形のシールドを高速回転させて投げると何になる?

 ……そうだね。サイキックソーサーだね。

 

 そんなわけで、なのちゃんに新しい必殺技ができた。誘導弾をシールドで防いでいる所に後ろから回り込んで攻撃してきた相手に、シールドで受け止めていた誘導弾をシールドを斜めにすることで方向をずらしてぶち当てて、相手が怯んだところにシールドそのもので攻撃するという悪辣極まりない攻撃方法まで編み出した。

 しかもシールドはめちゃくちゃ薄いから良く切れるのなんのって。

 

 ……まあ、俺がやられたときは斬魔掌・弐の太刀一閃で撃ち落としてやったが。

 ちなみにそれをやった時、なのちゃんの視線が凄いことになっていた。見ていて凄く楽しかった。後悔はしていない。

 それに、なのちゃんの防御はちゃんと堅くなったから良いことにする。初めから目的はそれだったし。

 

 まあ、がんばれなのちゃん。一応応援しているぞ?

 寝たりフルート吹いたりアコーディオン演奏したりしながらだけど。

 

 

 

 

 

side 高町 なのは

 

 三度目にフェイトちゃんと出会ったのは、いつも演奏会に使っている公園でのこと。今回は私が結界を張って、なんだか普段より強いジュエルシードの暴走体と戦っていた途中に、フェイトちゃんは現れた。

 ……前に見たときより疲れてるような気がするけど、いったい何があったんだろう?

 

「フェイトちゃん、大丈夫? なんだか疲れてるみたいだけど……」

「……大丈夫」

 

 大丈夫って言うほど大丈夫には見えないから聞いてるんだけど………まあ、フェイトちゃんが大丈夫って言うんだから大丈夫ってことにしておこうかな。

 今回は演奏会の途中だったからできるだけさっさと終わらせておきたいし……でもフェイトちゃんも放っておくには仲良くなりすぎちゃったからなぁ……。

 

 そう考えている間にも樹の根っこや枝が槍みたいに私に襲いかかってくる。私は得意の魔力集束で作った魔力刃をレイジングハートの尖端にくっつけて、槍のように扱いながらソニックシューターを撃ち込む。

 けれど、どうやら障壁か何かが張られているみたいで密度が薄めのソニックシューターは全く効果が無い。

 魔力はジュエルシードからの供給を考えると殆ど無尽蔵なことを考えると、フラッシュバスターやラピッドシューターみたいな小技は効かないだろうから……大きいので攻めてみようかな。

 

「フェイトちゃん。バリアかなにかで弱い攻撃は防がれちゃうから、一発大きいのをやるよ!」

「……わかった」

 

 そう言って私はレイジングハートをシューティングモードに、フェイトちゃんはデバイスはそのまま砲撃魔法を組み上げ始めた。

 私もそれに追い付こうと魔力を必要な分だけ集束させていく。こうしている間は、私はユーノ君に、フェイトちゃんはあの大きな犬さんに守ってもらっている。

 

「ディバイン……」

「プラズマ……」

 

 砲撃準備が整ったのはほぼ同時。私とフェイトちゃんはジュエルシードの暴走体に砲撃を向ける。

 

「バスター!」

「スマッシャー!」

 

 技の名前を言ったのは、これが最大威力だと思わせるため。油断していてくれるならその油断を最大限利用させてもらうし、ちょっとくらい頭を回したりもする。

 ……今は覗き魔も居ることだしね。

 

 今回はフェイトちゃんがジュエルシードを封印し、私と向き合う。今回は私とユーノ君の二人と、フェイトちゃんと犬さんの二人……一人と一匹? の勝負。ジュエルシードはこの場には無いから余波で暴走なんてことは無いだろうけど……勝てるかな?

 

「……ルールは前回と同じでいい?」

「……いいよ」

 

 とりあえず私が見せるのは、ジュエルシード一つ。それに対してフェイトちゃんが見せるのは、今封印したジュエルシードが一つともう一つ。

 私とフェイトちゃんは、お互いに掛け金を見せ合ってから、戦闘体勢をとる。

 

「……そうそう。今回私が勝ったら、そこの子の名前を教えて?」

「……いいよ」

 

 じゃあ、始めよっか。

 

 

 

 アクセルモードのレイジングハートの先端から魔力刃を伸ばし、槍のようにする。攻撃力の割り増しと同時にコアの防御までできるからいいよねこの魔法。

 フェイトちゃんも同じようにデバイスから金色の魔力刃を伸ばす。するとフェイトちゃんのデバイスがどう見ても鎌にしか見えなくなる。

 

「……行くよ、レイジングハート」

『了解。準備は万全です』

 

 私の手の中でマシンボイスが言う。

 

「行くよ、バルディッシュ」

『了解』

 

 フェイトちゃんの手の中で、デバイス……バルディッシュが答える。

 ……って言うか、デバイスの名前は勝った時のご褒美みたいなものだったのに、どうしてこうなっちゃうかなぁ………?

 

 ……まあ、いいや。私の心のメモ帳に『フェイトちゃんは天然さん』ってメモしとこ。きっと間違いじゃないと思うんだ。

 

 私は魔法陣を出現させ、フラッシュムーブメントを使った高機動状態で接近する。

 同時に、フェイトちゃんも何らかの魔法で加速して、鎌を振るう。

 

 砲撃の準備を整えながらの重装高火力型の私と、純粋に斬り伏せることを狙っている軽装高機動型のフェイトちゃんでは速度が違いすぎるけれど、それでも私は負けたくない!

 

 フェイトちゃんと杖を打ち合えるほどに接近し、魔力刃同士がぶつかる寸前に私はフラッシュバスターを放つ。

 

 ズドン!

 

「ストップだ!これいゴバッ!?」

「あ」

 

 ザシュッ!

 

「ぐはっ!?」

「あ」

 

 突然現れた見知らぬ人が、私のフラッシュバスターとフェイトちゃんの魔力刃の二連撃を叩き込まれて落ちていった。

 

 ……あーあ。痛そう。非殺傷設定でも痛いものは痛いんだよね。

 

「……フェイトちゃんの知り合い?」

「……知らない。君の知り合いじゃないの……?」

「知らないよ?」

 

 私とフェイトちゃんは、少しの間呆然としてしまった。

 

 

 

 

 

 

異伝7 その29

 

 あっという間に現れて、あっという間に落ちてった、私の見知らぬ黒い人。なんだか厄介事の臭いがするので、今回の勝負はじゃんけんと言うことに。

 

「じゃんけんぽん」

「……負けちゃった」

「真面目な戦いじゃないし、賭けてる分はいいよ。今回のだけちょうだい」

「……はい」

 

 フェイトちゃんのデバイスからジュエルシードが飛び出てきて、レイジングハートの中に収まる。これで今回の勝負はおしまい。

 

「ちょ、ちょっとフェイト!? いいのかい!?」

「……私は、今回負けちゃったからね。前には引き分けだったのに貰ってるし……」

 

 ……フェイトちゃんは律儀な子だなぁ………。

 

「……この子の名前は、アルフだよ」

 

 フェイトちゃんは最後にそれだけ言って、転移魔法で消えていった。

 ……つまり、私の言った『その子』って言うのをアルフさんと間違えてたんだね。私はバルディッシュのことを聞いてたつもりだったんだけど。

 

 ……まあ、フェイトちゃんはやっぱり天然さんだったってことかな。あはははっ♪

 

「なのは……なんでそんなに楽しそうなの?」

 

 ユーノ君がひきつった顔(多分)で聞いてくるけれど、そんなの決まってると思うんだけどなぁ?

 

「フェイトちゃん友達化計画の第二段階、どんどん外堀を埋めていこう!が順調に進んでるからだよ?」

「なにそれこわい」

 

 怖いだなんて、酷いなぁ。お婿さんやお嫁さんを見つけるときにも使える便利な技術なのに。

 

 ……そうだ。忘れてたけど、さっき撃ち落としちゃった黒い男の子を見に行かなくちゃ。厄介事の臭いがすごいし、いきなり攻撃の前に飛び出してきたのは黒い男の子だけど、それでも私は撃ち落としちゃった方だしね。

 まあ、私が悪いって言うのは出さないけど。そこにつけこまれないとも限らないし。

 

 

 

 そんなこんなで現在、私は時空管理局って言うらしい私と同じくらいの年齢の子供を当然のようにあんな所に放り込むうえに子供の方もその事を当然のこととして受け入れているところから考えて多分洗脳教育を徹底されていると思われるどう考えてもブラック通り越してダークな企業としか思えない組織の保有する機動戦艦の阿修羅(アスラ)って言うのの艦長を臨時でやっているらしい緑色の髪をした人と画面越しに話をしています。どうしてか睨み付けられているような気がするけれど、私は悪くないよ?

 

「それで、阿修羅の臨時艦長さんがなんの用でしょうか? 私としてはさっさと結界を解いて演奏会の続きをしたいのですけど?」

『阿修羅じゃなくてアースラ。臨時じゃなくて、リンディよ』

「申し訳ありません、噛みました」

『明らかにわざとだったわよね?』

「では、勘違いしておりました」

『『では』って……』

「昔懐かしの7の名を持つ光の巨人の変身時の効果音ですよね」

『わからないけど絶対に違うと思うわ』

「わからないくせに否定するんですか。そうして自分に理解できないことをみんな否定して生きていくんですね。おかわいそうに。主に頭が」

 

 ここまで刺々しい言葉を言うことができるのは、さくらさんがなにか関係してると思うんだけど……実際はどうなんだろう?

 さくらさんだったら、こんな風にスイッチが切り替わるように性格を激変させることくらい簡単だと思うんですが……。

 

「それと、私は話すことはありませんがこちらのユーノ君はあるようなので、連れていくのならどうぞご自由に」

「え、ちょ、なのはっ!? 空気を悪くするだけ悪くしてそれは酷くない!?」

 

 ユーノ君がなんだか騒いでいるけれど、実際私には話すことはなんにも無いし、向こうに全部任せろって言うんだったら任せちゃっていいしね。

 ただ、上から目線で任せろって自分から言っておきながら私達に被害が来たらちゃんと責任はとってもらうけどね。首で。

 

 ……けど、放っておいたらそんなことは知ったことじゃないってさっさと帰っちゃいそうだし………ブラック企業は本当にお腹の中まで真っ黒で嫌だなぁ。

 

「なのはの方が黒いって」

 

 何か変なことを言ったユーノ君に、ラピッドシューターを突きつける。

 

「……ユーノ君? ……なにか、言った……?」

 

 ユーノ君はブンブンと首を横に振る。言ってない、か。

 嘘だって言うのはわかりきってるけど、いいや。別に怒ってる訳じゃないし。

 

『……悪いのだけれど、あなたにも話を聞かなければならないの。同行してくれないかしら?』

「行かなかったらどうなりますか?」

『うーん……来てもらわないと困っちゃうわね』

 

 ………綺麗な顔をしてるけれど、やってることはヤのつく自由業の人みたい、と思ったりしたけど、思うだけで口には出さないでおこう。

 

「……わかりました。つれていって下さい」

『ご協力に感謝します』

 

 鼻で笑い飛ばしてしまいたくなった。

 

 ……それじゃあ、早く交渉を終わらせよう。こっちからは最低限の要求だけ通せばいいから、さっさと任せて日常に戻ろう。

 レイジングハートはユーノ君に返さなきゃならないかもだけれど……それくらいは仕方ないよね。

 

 転送用の魔法陣の光に包まれながら、私はのんびり考え事を続ける。

 ………本当に、平穏って無くなるとその大切さがよくわかるようになるよね。

 とりあえず、私は将来管理局に勤めることはまず無いだろう。今決めた。私の将来は翠屋の店長さん。歌って踊れて演奏できて、その上お菓子も作れるようになろう。

 昔から興味のあることを覚えるのは速かったし、きっとできるようになるよ。

 

 ……演奏の頻度は下がっちゃうだろうし、公園での演奏会はほとんどできなくなっちゃうと思うけど………頑張ろう。うん。

 

 

 

 

 

 

異伝7 その30

 

side 高町 なのは

 

「それじゃあ、第九十七管理外世界のあらゆる場所に、ジュエルシードの被害を出さないこと。被害を出した場合、管理局がその全ての責を負うこと。私への協力要請や命令などに対する拒否権の保証。過度に私とその周囲に干渉しないこと。自己防衛の許可。私の将来の決定権の保持。これらが保証されている間は管理局の民間協力者と言うことで私は管理局に力を貸す。……これでいいですか?」

「…………ええ」

 

 にっこり笑顔の私に対して、リンディさんは若干疲れた顔をしている。まあ、大体私の望んだことは認めてもらったし、私は満足だ。

 私の隣ではフェレットじゃなくなったユーノ君が

 

「な……なのはが怖い……黒い………」

 

 ってカタカタ震えながら言っていたけど、私が言ったことってみんな正当だよね?

 

 

 ~なのは回想中~

 

 

 アースラにお呼ばれした私は、とりあえずレイジングハートを待機状態に戻す。ユーノ君も人間型に戻ったけれど……やっぱり人間だったんだとしか思わなかった。

 

 それからさっきまで画面越しに話をしていた緑色の髪をしたリンディさんの部屋に案内され、そこで説明をすることに。

 そこには艦長のリンディさんと、私とフェイトちゃんのコンビネーションアタック(完全に偶然の産物)に沈められたばかりの黒い男の子が居た。

 

 説明は主にユーノ君が行い、私は正座をしながらなんだか歪んでいる日本風味の部屋の中をきょろきょろと見回していた。

 ……あと、甘い物好きだからって緑茶に白砂糖を入れるのはちょっと…………。

 黒砂糖だったらともかく白砂糖はちょっと………………。

 千歩譲って砂糖はともかくミルクはちょっと……………………。

 

 ……まあ、人の好みに口を出すほどいい趣味をしている訳じゃないし、別にいいけどね。

 

 そんなこんなでユーノ君の話が終わり、リンディさんは見るからに甘ったるそうな液体(お茶とは認めない)を飲んでから言った。

 

「責任感が強いのね……」

「強すぎて無様さらして関係無い周りの人達を危険に曝してちゃ意味がないと思いますけどね」

「グハッ!?」

 

 ユーノ君は血を吐いて倒れた。言葉の槍はしっかりとユーノ君に届いていたみたいだ。

 

「ちゃ……ちゃんと管理局にも連絡してたよ………その間に、できるだけ被害を少なくしようと……」

「相手が高位のロストロギアな上、結局民間人に助けを求めなくっちゃいけない状態にまでなったのに?」

「がはっ!?」

 

 ユーノ君はまた血を吐いて身悶えた。これはクリティカルかな?

 

「……容赦がないな。君は」

「思ったことを隠せない性格で……そう言えば、体の方は大丈夫ですか?」

「……まあ、問題ない。魔法も使えるし、出力や制御も想定内だ」

「そうですか。それはよかったです」

 

 私はにっこりと笑顔を向ける。この年で言うのもどうかとは思うけれど、昔とった杵柄。お父さんもお母さんもお兄ちゃんもお姉ちゃんもごまかし続けた演技力は伊達じゃない。

 お父さん達はみんな物凄く鋭いから、これって実は結構すごいことだったり。

 

 ……あ、照れてるのかほっぺが少し赤くなってる。なんだかこの黒い男の子、アリサちゃんとおんなじような雰囲気(ツッコミ属性+からかわれやすいタイプ)を持っているような気がする。

 

 そこで、なんだか妙になってしまった空気を変えるためか、リンディさんから声が上がる。

 

「この件は私たち管理局が全て預かります。あなた達はそれぞれの日常に戻っていただいて構いません」

「私はそれでも構いませんけど、そう言ったからにはもし現地に被害が出た場合には当然責任はとってくれるんですよね? 自分から全て預かるって言ってきたのに、被害を出しておいてそのままなんてことはしませんよね?」

 

 その瞬間、リンディさんの笑顔が一瞬ひきつった。こんなことを私みたいな子供に言われるとは思っていなかった、って言う表情だ。

 まあ、それでもこんな戦艦の艦長って言う現場で一番権限のある仕事に着いているんだから、責任の取り方や最悪の想定とそれに対する懸案くらいはあるんだと思うけど。

 

 ……あるよね? きっと。

 

 

 

 そこからとりあえず質問を繰り返して、策の穴を塞ぐ作業から私がちょっと策の補正案を出したりフェイトちゃんに対しての相手の仕方や協力をする場合の私の扱いを決定した結果、冒頭のあれになったわけだ。

 予想以上に穴が多くてびっくりしたけれど、被害を出した場合のことはちゃんと考えてくれていてよかった。

 

 ただ、ユーノ君は私が黒い黒いって言ってくるし、クロノ君はクロノ君でえげつないとか君は悪魔かとか言ってくるし、リンディさんは何も言わなかったけれど目は口ほどに物を言っていたし………みんな酷くないかな? 私はただの超一流を目指す音楽家見習い兼魔法使いの女の子(9歳)だって言うのに……。

 

「……なのは。流石にそれは無理があるってば」

「ああ。少なくともただの女の子ではないな」

「二人とも酷いなぁ」

 

 まあ、確かに普通じゃないかもしれないけど、鬼畜腹黒大悪魔みたいな扱いをするのは酷いよ。

 

 …………あ、もう時間だ。早く帰ろっと。

 

 

 

 

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