リリカルなのは~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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side 織斑 なのは(異世界)

 

ヴィヴィオちゃんはシュテルちゃんの『星群』から全速力で五分くらい逃げ回っていたものの、少しずつ密度と速度を上げていく『星』に追い詰められ、最終的にぷしゅうと煙をあげて倒れてしまった。怪我は無いけど立つ気力も無さそうだ。

 

「……それじゃあ次はアインハルトちゃんとレヴィちゃんね。シュテルちゃんはヴィヴィオちゃんをここまで連れてきてくれる? ……できれば引きずらないで」

『わかりました』

 

クレーターだらけの演習場で、シュテルちゃんはヴィヴィオちゃんをお姫様だっこして扉を出ていく。背中に核金を当てていたから、きっとすぐに歩けるようになるだろう。

 

「アインハルトちゃん、準備はいい?」

『はい、万端整っています』

 

うんうん、元気でいいね。

でもレヴィちゃんは純格闘系にとってかなり相性が悪いから……まあ、勝てないだろうね。

斬撃系統の武器と超広範囲の灼熱の炎の合わせ技。避けようとしても避けられず、受け止めようとすれば灼熱と刃が傷付ける。あれを素手でどうにかするにはディアーチェちゃんか私くらいの魔力操作能力はないと厳しいよ?

覇王流には弾丸を投げ返す『旋衝破』があるけど、あれは形のあるものじゃないと受け止めて投げ返せないからね。

ディアーチェちゃんの場合は炎と剣を柔術で一ヵ所に纏めて受け流したり投げ返したりを平然とやるし、私の場合は手刀にバリアを纏わせたりアギトに頼んで爆圧を圧縮して炎に撃ち込んで炸裂させて散らせたりとかすれば素手でもなんとかなる。

 

……真正面から砲撃を撃ち返すのが一番早くて確実なんだけどね。

 

「あの……ヴィヴィオは大丈夫なんですか? 煙上がってますけど……」

「ギリギリの手加減は上手いし、大丈夫だと思うよ? あの煙は多分撃ち込まれた砲撃の魔力がヴィヴィオちゃんにこびりついたやつだろうし、私も時々シュテルちゃんと撃ち合いやってあんな感じになるし」

「……そ、そうですか……」

 

そうなんだよね。

 

 

 

 

 

side アインハルト・ストラトス

 

「さて、まずは自己紹介といこうか。僕の名前はレヴィ・サブラク。壞刃の襲撃者の名を持っている。君は確か覇王流のイングヴァルトだったな。準備万端整っていると言ったのは君だったし、それではすぐに始めるとしようか」

 

青い髪をして表情の薄いフェイトさんによく似たレヴィさんが、私に向けて剣を構えた。

私もレヴィさんに向けて構え……直後、足下から吹き上がるようにして現れた炎と剣群に襲われた。

 

一応加減はされているようで、それらの剣は体の表面に薄く傷をつけるだけで手足を切り落とされると言うことはありませんでしたが、それでも灼熱の炎が肌を舐め、刃が傷を作る度に激痛が私の身体を走る。

ギリッ、と歯を食い縛り、周囲を取り巻く炎と刃を魔力を鎧のように纏わせた全身を回転させて弾き飛ばす。

そして即座に相手に接近するため走りだし、レヴィさんの操る炎と刃の奔流を避ける。しかし全てが避けられるわけではなく、何度も何度も私の身体を炎と刃が傷付ける。

 

「……って、これ非殺傷設定は!?」

「レアスキルで魔力を物質化している。つまりそんなものは無い」

「犯罪ですよ!?」

「アームドデバイスや拳で直接殴っているのとそう変わりは無い。それに、管理局の大元帥殿の許可があるから実際に殺さなければ平気だ。そしてお前程度なら殺さずに無力化する程度造作もない」

 

……事実なのでしょうが、ここまで言われてしまっては少し癪です。

私個人は確かに未だ弱いでしょうが、それは彼の作った覇王流が弱いと言うことではなく、あくまで私自身が弱いだけ。覇王流を馬鹿にされるのは我慢できません。

 

「安心してくれていいぞ。武術自体に優劣が無いことはよく知っているし、君の覇王流を馬鹿にした覚えもない。ただ単に君が未熟に過ぎるからあしらうのは簡単だと言うだけのこと」

「……考えを読まないで下さい」

「何を言う。手合わせの時には自分と相手だけを見るのが礼儀で、相手の事をしっかりと見ていれば思考の欠片を拾い上げる事くらいは容易いだろう?」

 

……あまりにも平然と非常識なことを言うその姿に、私は言葉を失った。

しかし、事実としてレヴィさんは私の考えていることを一部拾い上げ、それに正確に返答することさえして見せた。

それはつまりレヴィさんの言っている言葉が正しく、私は未熟に過ぎるがゆえにレヴィさんに相当の加減をしてもらってこの場に立っていると言うことなのだろう。

 

「考え事は後にしろ。勝負の中では僕を見ろ。お前の前に居るのは僕で、この場に居るのは僕と君だけ。二人しかいない、二人きりの戦場なんだ。未来に帰るのに必死なのはわかるけど、せめてこの時くらいは僕だけを見ろ」

 

何も映していないような表情と共に、力ある言葉が紡がれる。

その声はけして大きいものではなかったが、しっかりと私の耳に届く不思議な声で……私はその声に魂を奪われたような気がした。

 

ただ、あの人だけを見る。自分の全力で、遥か彼方のあの人に向けて走り出す。

 

この拳が。この脚が。ほんの僅かでもあの人に届くように───全力で。

 

「いい表情になったじゃないか。これでようやく始められるね。……名前はなんだったかな? ハイディ・E・Sイングヴァルトでよかったかな?」

「いいえ。私は……ベルカ古流、覇王流(カイザーアーツ)のアインハルト・ストラトスです」

 

私はそう言いながら、振るわれる炎と刃を避け、避けきれない時には防御を固めて攻撃に耐える構えを取る。

 

……参ります。

 

 

 

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