side 織斑 なのは(異世界)
「あの……アインハルトがボッコボコにされちゃってるんですけど……」
「あのくらいなら私のところのヴィヴィオがいつもやってる訓練でもよくあることだよ。普通普通」
「いやあの……黒い煙出てるんですけど……明らかに焦げちゃってるんですけど!?」
「変身魔法を解けば元通りだよ。……それより次はトーマ達だけど……ディアーチェちゃんは強さの面では私達と拮抗してるけど、一度捕まったら敗けを覚悟しなくちゃいけないくらいえげつない上に厄介だから気を付けてね」
「……あれ、さっきの二人の時にはそんなこと言ってなかったですよね? まさかあの二人より厄介だと?」
「視界を埋め尽くす量の砲撃もあらゆる攻撃を飲み込みながら進んでくる炎と刃も心が折れそうになるけど、ある意味じゃあディアーチェちゃんの方が酷いからね」
「そ、そんなに!?」
そんなに。
「まあ、かわりに一発当てちゃえばそこで終わっちゃうと思うけどね。魔力強化無しだとエリオに腕相撲で負けちゃうくらいだし」
「……望みが出てきたっ……やるぞリリィ!」
「うん、トーマ!」
うん、一応元気になったね。元気になったところでどうなるわけでもないけど、頑張ってもらった方が私にも得があるし。
……対EC兵器使用者用の技なんて、そんなにすぐにはできないからね。殺していいなら全方向から物理的な衝撃波を撃ち込んで体内の一点で威力を増幅させて粉々に砕いてやればそれで終わるんだけどね。
今のままじゃあこっちもEC兵器を使わないと有効な攻撃を与えられないし、殺さないように手加減するのは面倒なんだよね。本当に。
……お客さんとしてなら大歓迎なのに、どうしてあちらさんはあんなに私の事ばっかり狙ってくるのかなぁ……?
……まあ、いいか。撃退できるうちは自力で撃退して、どうにもならなくなったらさくらさんにお願いすればなんとか……なんとか…………なるよね?
頑丈で物理攻撃が効きづらいって言っても頭を潰せば死ぬし、さくらさんなら相手の身体を原子崩壊させて復活なんて夢のまた夢みたいな状況に追いやることくらいできるよ。
できなくってもアイアンクロー(格闘タイプ)でぐちゃっと頭を握り潰せるだろうし、大丈夫大丈夫。
「それじゃあトーマ、頑張ってね? ディアーチェちゃんに勝てたらいいこいいこしてあげる」
「……すみませんが、それはお気持ちだけで……」
そう? まあ、頑張って。
side トーマ・アヴェニール
リリィとリアクトしてから向かったアースラの模擬戦用施設で、ディアーチェと呼ばれていた八神司令似の女の人が俺を待っていた。
……でも、なんでか八神司令みたいに怖いと思う気持ちは無くて、なのはさんが言ったような怖い印象は受けなかった。
「ああ、漸く来たか。それではさっさとかかってくるがいい」
コイコイと指で俺達に『かかってこい』と言っているのだが……なんだかちょっと本気でやるのは気が引ける。
でも、さっきまでのあの二人の戦いを見ていたら油断はできない。どう考えても俺には予想のつかない方法で戦うことができるんだろう。きっとあの二人と同じくらいには強いはず。
「……ほれ」
「ぁいったぁ!?」
『トーマ!?』
ビシッ!と俺の額になにかがぶつかり、体が強制的に仰け反らされる。何をしたのかはわからないけど、すっげえ痛い。
「早く来いと言っておろうが。そのままなにもしないでいるなら三秒に一発撃ち込むぞ?」
「な……何を……」
「指弾よ。非力な我でも少々の工夫で中々の威力が出る。その上暗器としても仕込める故な。重宝しておる。……三秒過ぎたな」ビシィッ!
「いってぇ!?」
くぅぅっ……このままじゃダメか。それじゃあ……行くぞリリィ!
『うん!トーマ!』
よぉしっ!全力で
「三秒」ズビシッ!
「あたっ!」
くっそ……見えねえ……。だけど、行くぜっ!
「銀十字っ!」
「甘いわ小僧」
銀十字のページの弾丸は、発射直後……それこそ30センチも進まないうちに撃ち落とされた。速すぎだろ。ってか酷いだろこれ!?
量を増やしながら飛び回り、時々砲撃を撃ち込みながら少しずつ近付いて行く。結構な量のページが落とされるけど、それでもこれだけ撃てばいくつかは
「よっ……は!」
「は? ってうぉあっ!?」
いくつかの弾丸が届くと思った瞬間、アインハルトの旋衝破みたいに俺が撃った砲撃と射撃を纏めて投げ返された。
その速度は俺が撃った時とは段違いに早く、しかも狙いも正確。一瞬で全身に砲撃と射撃を浴びせられた。さっきまでの指弾の方が十倍ましだった……。
『だ、大丈夫?』
「ああ……なんとか」
「そうか。ならば続けるとしよう」
リリィの言葉にそう返したら、目の前から声がした。
『警告、脅威判定接近』
「遅いわ古本」
すぐに視線を向けたが、次の瞬間心臓の辺りに衝撃が走る。まるで直接心臓を殴られたような……。
『トーマ!銀十字!』
銀十字が開き、ページが無数の弾丸になってあの人を襲う。
しかしどうやっているのかはわからないけど、あの人が軽く触れる度に弾の進路がねじ曲がり、いくつもいくつも弾同士が正面からぶつかり合って消えていく。
「くっ……シルバーハンマー!」
「甘いと言っておろうが」
シルバーハンマーが、突如進路を180度変えて俺に向かってくる。なんだか周りがゆっくりになって、そしてシルバーハンマーに飲まれた。
「捉えたぞ」
直後、手首になにかが触れたような感触と共にそんな言葉が聞こえ、突然全身にかかったGによって強制的に意識を失うことになった。