リリカルなのは~ほんとはただ寝たいだけ~   作:真暇 日間

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異伝7 その31

 

side 高町 なのは

 

 家に帰った私は、とりあえずお父さん達に魔法のことを話してみることにした。

 管理局法では違反らしいんだけれど、生憎ここは管理外世界で私は管理局法とは一切関係なく育った現地の住民。それに、明らかにミッド式の魔法とは別体系の魔法使いだから知ったことじゃない。言葉遊びの延長みたいだけれど、それを決める法律も言葉で決められているんだから大丈夫。

 

 ……ユーノ君は詐欺師みたいって言っていたけど、ただの言葉遊びだってば。嘘なんて一つも言ってないし、言葉の取り方を変えただけでできる範囲に収めてるしね。

 

 じゃあ、難しそうだけど頑張って説得しないとね。お父さん達は心配性だから……。

 まあ、何をしても心配されないよりはずっといい家族だと思うけど。

 

 

 

 そんなわけで、今はちょうどいいことに全員揃っている晩御飯の時間。今日は寝るのが遅くなっちゃうかもしれないけど、それは今の今まで魔法のことを黙っていた私が悪いんだし、仕方無い。

 

 そうと決まれば早速。

 

「お父さん」

「ん? なんだいなのは」

「好きな人が―――じゃない」

「ちょっと待ってくれなのは。今お父さんは聞き捨てならないことを聞いたような気がするんだけど、目を反らさないで聞いてくれないかな?」

「私の好きな人の話はどこかに置いておいて……」

「いやいやいや」

「いやいやいや」

「いやいやいやいやいや」

「あらあら、なのはにもついに好きな人がねぇ……」

 

 ……ちなみに、好きな人と言えばお父さんとお母さん、それにお兄ちゃんとお姉ちゃんが入ったりするんだけれど………まあ、その話は置いておくとして。

 

「なのは。なのはが好きな子って言うのはあの公園でフルートを吹いていた子かい?」

「ほう? ならば今度会いに行ってみる必要が……」

「お父さんもお兄ちゃんも、言い損なったのは私だけど一応真面目な話だからちゃんと聞いて?」

 

 にっこりと笑いながら言ってみたら、どうしてかお父さん達は怯んだ。小声でお母さんの怒った時の笑顔にそっくりだって話し合われてもちょっと困るんだけど…………。

 お母さんだけはまだにこにこ笑っていたけれど、ちゃんと真面目に聞いてくれるみたい。

 

 仕切り直しと言うことで、私はみんなの顔を見渡す。ちゃんとみんな聞く姿勢に回ってくれた。

 

「えーっと……回りくどく話をするのは得意じゃないので、単刀直入に言います。異世界の魔法使い達の厄介事のお陰で地球が危ないそうなので、現在安全を確保しつつ原因を取り払う作業の真っ最中です。多少の怪我の危険がありますが、放っておいたら地球ごとみんな死んじゃうので助かる確率の高そうな方を選んだ結果、魔法少女とは名ばかりの魔砲少女兼魔奏少女をやっています。質問をどうぞ」

「いつからだい?」

 

 流石と言うべきか、お父さんはすぐに真面目な顔で詳細を質問してきた。

 

「一月くらい前から。初めは遠距離からの軽い演奏でなんとかできていたから無駄な心配をさせないように黙ってたの」

「それじゃあ、今日になって伝えた理由は?」

 

 お兄ちゃんからも質問。できるだけ簡潔に、分かりやすく答える。

 

「厄介事に尾鰭と背鰭と胸鰭と翼と手足が生えた上、巨大化の後に凶暴化までして暴れ始めたから」

「……大体のニュアンスは十分すぎるくらいに伝わったけど、凄い比喩だね」

「そうだな。なのは、もう少し具体的に頼む」

「ジュエルシードって言う願いを『こんな願いは叶わないだろう』って言う思いまで正確に読み取って忠実に叶える基本的に危険な物を、多分相当不味い方法で応用して願いを叶えようとして多数集めている人達と、世界の管理者気取りの武力を保有している上に立法権まで持ってる警察的な管理局っていう名前の三権分立に真っ正面から喧嘩を売っているような高慢ちきな組織の人が次元を越えられる巨大空中戦艦という武力を持ったまま現れて、放置しておいたら『私達に任せてください』って言ってたのに戦力不足で被害を出す可能性が高そうなその明らかに日本の法律的に考えてアウトな方々の持ち出してきたよくわからない上に地球ではどこでも採用されていない管理局法とか言う法律を適用されて色々不味いことになりそうだったので作戦の穴を突いてそこから言いくるめて無理矢理こっちにとっては当然で向こうにとってはちょっと痛い条件を飲ませて協力関係になったから流石に報告しなくっちゃなって思って」

「ちょっ」

 

 お父さん達はいきなり饒舌にかつ毒舌を交えて話し始めた私にあっけにとられていたみたいだったけれど、ちゃんと全部聞き取れてたみたいだし理由もわかったみたいだ。凄いね、結構早口で言ったのに。

 

『えっと……なのは? いま何て言ったの?』

『ユーノ君ってば、また心に槍を撃ち込んで欲しいなんて変わった趣味だね? 変態さん?』

『違うよっ!』

 

 ほら、ユーノ君なんて全然聞き取れてないよ? 魔導師なのに。

 まあ、ある意味不意打ちみたいに速度を上げたから仕方無いのかな。それだけ私の家族が凄いってことだね。

 

「そんなわけで、早めに片付けて早く日常に戻りたいから少しだけ学校を休みたいんだけど……」

「………………危険はあるんだな?」

「……まあ、かなり…………」

「…………だが、やらなかったら地球ごと危険なんだな?」

「……実は地球だけじゃなくて、他の世界も消滅の危機だったり………」

「………………信憑性は?」

「………体感したところ、25割くらい? 一回消滅してからもう一度消滅して、さらに五割の確率で消滅するくらい?」

「……………………そうか」

 

 ……ジュエルシード1つだけだったらともかく、最大数の21個すべて揃えたらそんな感じだと思う。怖い怖い。

 

「お父さん。お願いします。私に、私の大切なものを守らせてください」

 

 私は、お父さんに頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その32

 

 昨日の夕食中に始めた大暴露からの説得により、私はジュエルシードを集め終わるまで民間協力者としてアースラに泊まり込むことに成功した。

 昨日のうちにアリサちゃんやすずかちゃん、公園のみんなには伝えておいたんだけれど………やっぱりいつもみたいに演奏できないのは辛いなぁ……。

 狂気の提琴は持ってきているけれど、ユーノ君曰くこれって多分ロストロギア扱いになるらしいし……。

 

 ……まあ、使うときは使うけど。非殺傷設定って言う便利な機能がついてない代わりに、威力と連射速度と弾速と効果範囲と使い勝手と燃費と応用の幅では遥かに勝ってるからね。強制で殺傷設定になっちゃうから人にはあんまり使いたくないけど……必要になったら躊躇わずに使うよ?

 

 ……まあ、それは置いておくとして、暇な時間は対人用の搦め手の魔法を作ることに精を出しています。

 攻撃魔法は不足していないし、防御魔法も問題ない。だから、色々考えて相手の魔法を妨害する魔法を作っている。自分を強化することも考えたけれど、私が強化した能力に慣れるよりも、相手の能力を落とした方が効率がいいと思ったから。

 欠点は、あんまり効率が良くないことと、仲間が効果範囲内にいると一緒に弱体化してしまうこと。さくらさんとのコンビなら関係無いかもしれないけれど、それ以外の魔導師の人との共闘の時に使うのは難しいかも。

 何て言ったって、完全に対魔導師専用の技だしね。地球じゃなんの役にも立たない魔法だから。

 

 ちなみに、効果は正確には相手の弱体化ではなく、私の魔力を音の波に乗せて相手の魔法の構成自体に攻撃、構成を弛ませて魔法の効果を下げたり、魔法自体を破壊すると言う、ユーノ君曰くの荒業。結界なんかは暫く効果範囲内にあると、どんどん弛んであっという間に破壊されちゃうようになるって言っていた。

 媒体は声圧砲と同じように私の声。言ってしまえば、声圧砲のバリエーションの一つとも言えるような魔法だ。

 

 それを発動している間に私が普通に魔法を使える理由は、声に乗せている魔力が私の魔力だからと言う点が大きい。魔力の波長が同じだから、構成を乱されるようなことは無いって言うこと。

 名前は………音響魔法(命名・ユーノ君)らしく、音に関連する名前にしたいから……ノイズィソングでいいかな。大体あってると思うんだよね。

 

 現在の完成度は大体八割ちょっとくらい。はっきりした公式とか体系とかが無いから完全に手探りでやってるんだけど………結構いい出来に仕上がりそう。

 ……本当は、戦闘用の魔法なんて欲しくないんだけど…………仕方無いって割り切っている。使わなかったら私達は住んでいる場所ごと消滅しちゃうかもしれないし……困っちゃうよねぇ。

 

 残りのジュエルシードは八つ。地上にはもうどこにもジュエルシードの反応が無かったから、残りはきっと海の中。

 

 …………か、あるいはさくらさんが見つけてアンダーグラウンドサーチライトに封印してるかのどちらか。海の中にも無かったら、きっとさくらさんだと思っている。

 ただ、さくらさんがお昼寝している途中でジュエルシードが暴走を始めてたら、私達が感知する前に一瞬で跡形もなく消滅してる可能性もあるんだよね。冗談抜きで。

 

 ……じゃあ、頑張らないとね。流石にこんなに離れてると分身もうまく動かせないから使ってないし、ちょっと演奏しなさすぎて禁断症状が…………。

 ……次にジュエルシードが出たら、問答無用で出撃して演奏しよう。もしくはちょっとアースラから抜け出して演奏してよう。アンダーグラウンドサーチライトの中ならバレないから大丈夫だと思うけど………流石にアンダーグラウンドサーチライトをアースラの中で使ったらまずいしねぇ………。

 

 ………早く事件終わらないかなぁ……。

 

 

 

 

 

side 織斑 一夏

 

 最近、ここら一帯が騒がしい。適当に昼寝をしていると、見慣れない制服を着た奴等が辺りを徘徊している。ローラー作戦でもやってるのか、数だけはかなり多い。

 だがしかし、ジュエルシードは見付からないわけだが。

 

 ………まったく、めんどくせえなぁ……さっさと終わらせて帰れよ。こっちはお前たちになんら用は無いんだよ。

 

 そう思いながら公園で昼寝をしていたら、海の方で急に作られた結界の端の方に取り込まれた上、なんかワケがわからないことに急に海にでかい竜巻が六つほど現れた。凄く五月蝿い。

 だが、この世界の出来事と時期、そして場所を考えればかなり簡単に原因と犯人の予想ができる。

 つまり、あの天然系金髪電気がジュエルシードを探すために何かしているんだろう。

 

 ……まったく、面倒臭い。本当に面倒臭い。ああ面倒臭い。そして五月蝿い。うざい、鬱陶しい。

 

 ………………潰すか。

 

 俺は久し振りにシルバースキンを散らさずに着て、バギブソンゴウラムに跨がってエアライナーの道の上を走り出す。

 さて、なのちゃんには悪いが、殺さない程度にお仕置きに行こうかね。

 

 俺はシルバースキンを30ほど重ね着して帽子を深く被り、バイクを発進させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その33

 

side 高町 なのは

 

 フェイトちゃんが現れてすぐ、現場に行かせてもらおうとしたけれど……リンディさんからもクロノ君からも許可がでなかったので、レイジングハートとユーノ君の協力の元、転移魔法でこっそり現場に出てきてしまいました。

 風が吹き荒れ、魔力の竜巻が荒れ狂う中で魔法を使うのは中々大変そうですが、慣れれば結構いけそうです。

 

 そう考えていたら、ものすごい速度で何かが近づいてくるのを感知した。そっちの方向に視線を向けてみると……空中にできた道を見たことのないバイクが走っていた。

 そのバイクは竜巻に突っ込んでいくと、なんでもないかのように竜巻に大穴を開けて突き進む。その先に居るのは……さっき大きな魔法を使ったばかりで動きのよくないフェイトちゃんがいる。

 このままだと、フェイトちゃんがかつてフェイトちゃんと呼ばれていた蛋白質の塊になっちゃう!

 

 私は即座にフラッシュムーブ(フラッシュムーブメントとは別。ムーブは機動力、ムーブメントは動作の速度を底上げする)を使い、動きの悪いフェイトちゃんをかっさらう。衝突の時に体にかかる負担は結構酷かったけど、フェイトちゃんを助けることはできた。

 フェイトちゃんにもちょっと衝撃が行ったかもしれないけど、そこは謝るくらいしかできない。

 

 竜巻を貫いて現れたバイクは、その速度を急激に落として私とフェイトちゃんに向き直る。

 

「あ……」

「? どうしたの?」

「あの……ありがとう」

 

 ……フェイトちゃんは素直で優しい子だなぁ……。

 私は笑顔を浮かべ、こう返す。

 

「どういたしまして」

 

 …………どうしてフェイトちゃんは頬を染めて目を逸らしたの? お姫様だっこが恥ずかしいから?

 

 ……まあ、いいや。今はそれより、あっちのバイクの人の方が重要だから。

 

 私がフェイトちゃんを下ろし(その際、ちょっと魔力を受け渡ししていたのは秘密にしなくていい)、そのバイクの人に向き直る。するとそのバイクの人は空気を読んで黙っていたらしく、少し暇そうにしながら私達のことを見つめていた。

 

「……あ、終わったか?」

「ええまあ。待っていてくれてありがとうございます」

「構わん構わん、時間は有限とはいえたっぷりあるからな」

 

 にっこりと笑いながら言うと、銀色コートのバイクの人はひらひらと手を振りながら言った。

 ……なんと言うか、さくらさんに雰囲気が似ています。

 

「……それで、あなたは誰で、なんの用でここに?」

「俺の名前はキャプテン・ブラボー。五月蝿くて昼寝の一つもできないから原因を潰しにやって来た。原因はそこの金黒破廉恥鎌少女だろ?」

「………ある意味そうですけど、ちょっと違います。原因は海の中です」

 

 ……どうやら、戦うことにはならなさそうだ。ブラボーさんは寝るのを邪魔されたから原因を叩きに来ただけみたいだし……ジュエルシードを集めてるわけじゃなさそう。

 

 ………一瞬、さくらさんかと思った。と言うか、あの中身は絶対さくらさんだと思っている。

 身長も声も違うけれど、さくらさんならそのくらい簡単に誤魔化せるだろうし………。

 まあ、流石にあの中にいるのが女の人ならこの考えを改めなくっちゃいけないんだけど、俺って言っていたし男の人だと思う。

 

 ……あと、金黒破廉恥云々……って、多分フェイトちゃんのことだよね? 金だし黒だし鎌だし少女だし……。

 

 ……その事は置いといて、早くジュエルシードをなんとかしないと。

 

「フェイトちゃん」

「は、はい!」

 

 フェイトちゃんはどうしたのか直立不動になったけれど、今は気にしている時間がない。

 

「とにかく、今はジュエルシードの封印を急ぐよ?」

「はい!」

 

 バイクに貫かれて一つ減った竜巻の荒れ狂う中で、私は狂気の提琴を召喚して弾き始める。初めて意識して使う魔力の乗った大威力衝撃が、竜巻を合体させて数を減らしていく。

 その間にフェイトちゃんは一ヶ所に集まったジュエルシードを封印すべく、砲撃魔法をチャージし始めた。

 

「レイジングハート」

『了解しました』

 

 私の声に合わせてレイジングハートはブーストモードからシューティングモードへと形を変える。

 

「ディバインバスター、チャージ。最大でね」

 

 レイジングハートは私の体から魔力を引きずり出して魔法を組み上げていく。

 その威力は、魔法的な破壊力に限定すれば間違いなく私の使える魔法の中では最強クラス。勿論、まだ切っていない切り札数枚のうちの一つよりは落ちるけれど、あれは文字通りの『決め技』だからしょうがない。

 アリサちゃんたちがやっていた格闘ゲームで言えば、通常技で一番威力の高い技がディバインバスターで、切り札の一つはカットインが入る必殺技みたいな感じかな? ……ちょっと大袈裟かもしれないけど、間違ってはいないと思う。あれはほんとに必殺技でいいと思うし。

 それでも非殺傷設定を入れておけば傷一つないっていうんだから驚きです。

 

 ……あれ? 怪我はしたっけ? 確か前にフェイトちゃんの魔力刃で攻撃されたとき、しばらく痣ができてたような気が………。

 ……気のせい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その34

 

side 高町 なのは

 

 ジュエルシード封印完了。三つを私が、三つをフェイトちゃんがデバイスに納めて向き合う。

 

「……バトるんならもう少し結界縮めるか沖合いでやってくれ。公園の一部が効果範囲内に入ってる」

「あ、はい。わかりました」

 

 なるほど、だからさくらさん(多分)はここに来たんだ。寝るのに邪魔になるから……。

 そうじゃなかったら放置してるだろうし、よっぽどのことがないと救援にも来ないだろうさくらさん(多分)が来る理由にならない。

 

 そんなわけでもう少し沖合いに移動して始めようとしたところで、急にクロノ君が現れた。

 

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。ロストロギアの不法所持、及び殺人未遂により逮捕する」

 

 クロノ君がそう言いながら杖を向けた相手は………さくらさん(多分)だった。

 

 …………って、

 

「く、クロノ君!? 何やってるの死にたいの!?」

 

 自分がいったいどれ程危険な橋を渡っているのかの自覚のないクロノ君を必死で止める。多分あのバイクの人はさくらさんで、さくらさんだったとしたら手加減のレベルは……見ず知らずの相手でかつ態度が悪いことを考えると……………手加減してるから粉々になってないだろ? って言っちゃうレベル……? もしかしたらもっと酷いかも………!?

 

「クロノ君!クロノ君は魔力乱流がロストロギア級の破壊力を持っているからって犯罪だって言わないでしょ?」

「それがどうして今この場で出てくるんだ? 相手は人間だろう!」

「違います!あれは人の形をした災厄とか理不尽が人の皮を被った何かって言うの!」

「……え、酷くね? 確かにディストーションシールドを片手間で破れるしアルカンシェルを時間差で複数発食らっても生き延びる自信はあるけど、その程度だぞ?」

「理不尽そのものじゃないか!? それがそのロストロギアの能力か!?」

「いや、生身」

「さ……ブラボーさん。アルカンシェルってなんですか? 炭化水素基の一種?」

「何でその年で炭化水素基を知っているのかは置いといて、アルカンシェルって言うのは当てたところを中心にそこそこ広い範囲を対消滅させてしまう砲撃だよ。無限再生機能を待っている闇の書の闇だって消し飛ばせる威力と、権力さえあれば馬鹿でも屑でも使える汎用性が魅力の一つかな。時々脅迫にも使われることがあったりなかったり」

「無いに決まっているだろう!」

「はっはっはっは。子供は純粋で可愛いなぁ……黒いところを知らないくせに大人になりたいと背伸びして…………」

 

 ……うん、さくらさんが凄く怖い。魔力をあんまり感じないのはいつも通りだけど、何でかいつもより怖い。何で?

 

 ……ああ、クロノ君のせいか。

 

「クロノ君。一ついい?」

「? なんだ?」

「……空気の読めない人は、将来的に何かと割を食うよ?」

 

 私の言葉に、クロノ君以外のその場にいる全員が頷いた。

 

 

 

 

 

side ユーノ・スクライア

 

 ……えっと…………どうしてこんなことになっちゃったんだっけ?

 僕はそんなことを考えながら、隣に座っているブラボーさんにちらりと視線を向ける。

 僕とは反対側のブラボーさんの隣には、ブラボーさんが着ているコートと色違いの黒いコートを着せられているクロノが歯軋りをしながらブラボーさんのことを睨み付けている。

 

 あの後、さっさと帰ろうとするブラボーさんの行く手を阻み続けたクロノはブラボーさんによって無力化されてしまった。

 どうやらブラボーさんのコートはロストロギアだったらしく、銀色のコートは相手からの攻撃を弾き、黒いコートは着せた相手の行動を阻害する能力を持っていたらしい。黒いコートを着せられたクロノは、攻撃も移動も殆ど封じられてしまっていた。

 

 そこで、ブラボーさんはにわかに信じられないようなことを言った。それはすなわち、

 

「ああ、攻撃してこないならこっちも争う理由は無いし、見物でもするか?」

 

 ……と、言うものだった。

 

 ………断ったらもう一枚あるらしい黒いコートで魔法を封じられ、そして一人で勝手に見物するだろうと思った僕は、素直にその提案を受けることにした。

 

「なのは!頑張って!」

「がんばれー」

「……何で君たちはそんなにのほほんと応援なんかしてるんだ……!」

 

 ……諦めたからかな? 具体的にはなのはを止めるとかそんなことを。

 それに、アルフとの約束でフェイトを助けてあげなくっちゃいけないっていう大義名分もあるから、止めにくいんだよね。

 

「僕が言っているのはそういうことじゃなく、なんで見ず知らずの犯罪者と並んで平然としていられるかって言うことだ!」

「は? なんの話? 俺が着てるこれもチビクロが着せられてるそれも、俺が少し前に作った物だからロストロギアじゃないぞ? どこかの誰かさんは反論すらさせてくれなかったし、ムカついたし、エロノとか言う名前が気に入らなかったし、態度が悪かったし、管理外世界なのに当然のように権力振るうし、年の割に小さいし、いつか孕ませ魔導師とかいう浮き名を流されそうな顔をしてるし、からかうと面白そうだったから言わなかったんだが」

「色々と大きなお世話だ!あと僕の名前はクロノだし、孕ませ魔導師でもない!」

「今はな」

「未来もだ!」

 

 ……なんだか苦労しそうだなぁ………苦労のクロノ?

 

「今何か変なことを考えなかったか?」

「何も?」

 

 ……執務官って読心術とかも使えるのか……今度から気を付けなくちゃね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その35

 

 なのちゃんと金黒ビリビリ少女のガチバトルだが……どっちが勝つのやら。

 なのちゃんは強く……と言うか、上手くかつ強かになってるが、金黒ビリビリ少女は疲労が溜まっているように見える。

 少し前に戦った時には不意打ちが成功したなのちゃんが優勢で引き分けたそうだから、順当に行くとなのちゃんが勝つだろうと思うんだが……手の内が割れているからどう転ぶかわからない。

 今のところ、なのちゃんの手札は高速直射と中速誘導射撃。そして速射砲撃と高威力砲撃に簡易な魔力刃。一時的な高速機動と高速動作、さらにバインドと機雷モドキと召喚魔法。そしてなのちゃん曰くの音響魔法が数種。ついでに隠し技がいくつか。

 対する金黒ビリビリ少女はよく知らないが、なのちゃん情報ではとにかく速度が速いらしい。そして単発の威力は低いが連射と鋭さによってそれを補っているとか。

 中距離射撃型のなのちゃんとの相性は、悪くはないが良くもないって所だろう。距離を制した方が有利だな。

 

「なのは!頑張って!」

 

 隣では緑の少年がなのちゃんのことを応援しているが、若いっていいな。元気元気。

 俺は………昔からこうだな。じゃあ人柄か。

 

 とりあえず、ずっと睨み合ってても埒が空かないし、合図替わりに中心に火のついた爆竹でも放り込むか。

 

 ……ほれ。

 俺の手から千の顔を持つ英雄で作られた爆竹が放られ、丁度なのちゃんと金黒ビリビリ少女の中心辺りで弾けた。

 

 パンッ!

 

 

 

 

 

side 高町 なのは

 

 軽い爆発音が響いた直後、私はノイズィソングを歌い始める。

 同時にフェイトちゃんも動き始めたけれど、効果範囲内に入った瞬間から速度がガクッと落ちた。フェイトちゃんのすばやさは下がったけど、私は別に怖い顔はしてないよ?

 

 そして素早さの下がったフェイトちゃんに向けて、中速誘導弾で牽制する。近付かれたらまた痛い目を見るかもしれないしね。

 けど、実際は素早さだけじゃなくて攻撃と防御も下がってるから前ほど痛くはないと思うけど………やっぱり痛いのは嫌だもんね。

 

 牽制だからそんなに魔力は込めていないけれど、防御の下がったフェイトちゃんには結構な威力に感じるみたい。機動力が下がって誘導弾に追い付かれそうな所にバリアやシールドを張って凌いでいるけれど、僅かに表情が歪んでいるのが見える。

 私はさらに弾幕の密度を上げて、ちょこちょこ弱めのバインドを仕掛ける。けど、やっぱりちょっと難しい。

 流石に歌いながら、そして声に魔力を上手く乗せながらの戦闘は………うん、やっぱり難しい。

 こうしていて思うのは歌うのもいいけど、やっぱり私はバイオリンを演奏してる方が楽しいや、ってこと。

 

 ………けど、どうしてか嫌な予感が止まらない。なんだか結局誰もが納得できるようなちゃんとした決着はつかないような、決着がついたと思ったら横から色々浚われていっちゃうような、そんな気がする。どうしてだろうね?(【直感:B+】発動中)

 

 それは考えないようにして、今はこっちの方に集中する。

 私は足を止め、その場でゆっくりと回転してフェイトちゃんを常に視界に入れながら戦闘を行う。

 フェイトちゃんはよく加減速を繰り返すし、方向転換や上昇下降と空中を自由自在に駆け回る。フェイトちゃんみたいなタイプは、ボクシングなんかでは相手を中心に円を描くことが多いけれど、私とフェイトちゃんが今居るのは空。その機動は円ではなく、表面が歪んだ球体を描くことが多い。

 流石に初めて上や下に回られた時は驚いたけど、今では普通に相手をすることができる。

 

 ……ちなみに、私の射撃魔法の中で最も威力のあるものは、実は空中機雷だったりする。

 圧縮率や相手の速度を計算に入れると、これがかなりの威力になる。相手が私みたいなあんまり動かないタイプだったらわからないけれど、フェイトちゃんのような軽装高機動タイプを相手にすると、(フェイトちゃんには悪いけど)中々美味しい。

 

 ……とりあえず、防御を固めとこっと。嫌な予感が強くなって来てるからね。

 

 

 

 

 

side ユーノ・スクライア

 

 それは突然のことだった。

 なのはとフェイトの戦いが終わり、フェイトからなのはにジュエルシードが送られる時になって……空から雷が落ちてきたのだった。

 なのははすぐに頭上にシールドを張ってフェイトと一緒に体は守ったけれど、その場にあったジュエルシードは全て奪われてしまった。

 

 それはたったの四つ……ではなく、フェイトのデバイスから出された全てのジュエルシード。それでもあまり多くはないが、物が一つでも次元震を起こすことのできる危険物だと考えると十分危険すぎる。

 

 ……ちなみに僕たちの方に落ちてきた雷は、ブラボーと名乗る怪しい人が受け止めてくれた。生身で受け止めた筈なのに、傷ひとつない。これがその銀色のコートのようなロストロギアの能力なのかな?

 

 そう考えている間に雷は止んで……後にはなんだか呆然としているフェイトと多層シールドを張って雷をやり過ごしたなのは。そして僕達の五人しかこの場にいなくなっていた。

 

「見世物も終わったみたいだし、帰るわ。じゃ」

「あ、ま、待て!せめてこのコートだけでも持っていけ!凄まじく飛びづらいんだぞ!?」

「はいはい。気が向いたらポケットに入ってる爆弾で遠隔爆破してあげることも考えとくから」

「なっ!? 待て!待ってくれ!」

 

 ……空気がぶっ壊れちゃった。あーあ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その36

 

side 高町 なのは

 

 呆然としたままのフェイトちゃんを連れてアースラまで戻る。その時には恐らくさくらさんだと思われるブラボーさんはいなくなっていて、クロノ君の服は元に戻っていた。

 ……元々黒かったから一瞬だけわからなかったけど、さくらさんじゃあるまいし言わなきゃわからないよね?

 

 …………そう言えば、ジュエルシードの数が足りないような……でも、落ちていそうなところはみんな探したし、後はどこにあるかわからない。どこに行ったのかなぁ?

 ……もしかして、さくらさんが持ってたりするのかな? とりあえず後で聞いてみよう。

 あと、どうしてかちょっと進みが早いような気がする。早い分には構わないけど、ジュエルシードが全部集まってない…………もういいや。気にしない気にしない。

 

 でも、フェイトちゃんの持っていたジュエルシードはみんなどこかに行っちゃったんだよね。困ったなぁ……。

 

「なのははほんとに困ってるの!? 全然困ってないように見えるんだけど!?」

「困ってるよ? ところで、さっきの雷はどこから来たのかわかった?」

「うん、わかったよ」

 

 そう言いながら現れたのは、クロノ君と仲のいいエイミィさん。執務官補佐をやっているって聞いたけど………なんと言うか、クロノ君とリンディさんと並べて家族って感じに見える。

 クロノ君に直接言ったら否定すると思うけど……女の子の勘を嘗めちゃあダメだよ? 大抵他人の恋愛系統に対して直感スキルを無駄遣いするのが女の子っていう生き物なんだから。

 

 ……その事は置いといて、今はフェイトちゃんのお母さん、プレシアさんのことが重要。ジュエルシードをいったいどうするつもりなのか……コレクションとかだったら平和的なんだけど……やり方以外は。

 実際はジュエルシードをただ観賞用にするためにあんなに強引な手は使わないと思うし、きっとなにか危ないことに使うんだと思う。

 フェイトちゃんを切り捨ててまでやりたいことって……なんだろう? 私には想像もつかないや。

 

 

 

 

 

side 織斑 一夏

 

 ヘルメスドライブで雷を落としてきた相手のところに飛んでみたんだが……なんと言うか勿体無い美人さんが狂ったように髪をかきむしりながら金黒ビリビリ少女を罵っていた。大変そうだな、色々と。

 ジュエルシードを前にしてぶつぶつと呟き続け、娘の名前だと思われる単語を繰り返し口にしているその姿は………可哀想だな。色々と。

 

 そう考えていたら、突然俺のいるこの場所のすぐ近くに多数の気配を感知した。多分アースラとか言う戦艦の戦闘員が転移してきたんだろう。みんな揃って『イーッ!』とか言ってくれたら面白そうなんだが……。

 とりあえずシルバーカーテンを使ってこそこそ隠れる。電子的にも魔法的にも自動でステルスをかけてくれるから便利でいいよなこれはさ。

 勿論シルバースキンも同時に使い、これで防御は大丈夫……だと思う。

 もしバレそうになったら、ライアーズマスクで適当に面白そうな姿に化ける。一応バレないように頑張ってみることにしよう。

 

 

 

 アースラの戦闘員がボコボコにされて逃げ帰り、イカれ系残念美人さんがテンション上げまくって自慢げにアースラに通信で説明している間に、俺は色々と面倒事を振り掛けてくれやがりましたイカれ系残念美人に報復しようと思って行動開始。

 まずサテライト30で二人に分身して、ライアーズマスクで変装。そのままシルバーカーテンで姿を隠し、ディープダイバーを使って見つからないように壁抜け移動で片方はカプセルの近くで、もう片方はイカれ系残念美人の後ろで待機。

 手に持つのは核金。シリアルナンバーは俺の持つジュエルシードと同じにする。理由は後で説明する機会があったら説明するかもしれない。

 

 まあ、一言で言うと『面白そうだから』で終わるんだけどさ。何事も楽しめる時に楽しんでおかないとつまらない。人生は楽しむべきものだよ。俺の場合は寝れれば幸せだけど。

 

 ……さてと。それじゃあ始めるか。

 

 

 

 

 

side 高町 なのは

 

 アースラの管制室。その大画面に、フェイトちゃんのお母さんの姿が映っている。

 けれど、フェイトちゃんに向けられるその声に、表情に、フェイトちゃんに対する思いやりとか愛情と言ったものは欠片も見当たらない。

 

 そこにあったのは、憎悪。私も昔、それに囚われかけたことがあるからわかるけれど、その憎悪はプレシアさんの深い深いところに繋がっている。

 

 プレシアさんはフェイトちゃんに話し続ける。フェイトちゃんの生まれた理由。そうなるに至った理由。アリシアという少女の話の、全てを。

 

『私はね、フェイト』

「……やめて」

 

 全てを話し終えたプレシアさんは、真っ青を通り越して土気色になっているフェイトちゃんに向けて、悪意にまみれた笑顔を浮かべて口を開く。

 何を言うのか予想のついた私は、よく動かない口を必死に動かす。

 

『あなたのことが、』

「……やめてよ、ねえ」

 

 しかし、私の言葉が届くはずもなく、その言葉は

 

『大っ嫌『ちぇりおー!』ぶべらっ!?』

「は?」

「へっ?」

「え?」

 

 ……私とは一切関係ない、誰かの手(拳)によって叩き切られた。

 

 ……って言うか、今の掛け声って……何?

 

 そしてその人は、脇腹に正拳を打ち込まれて床に倒れて悶絶しているプレシアさんの腰に後ろから抱き着き、持ち上げた。

 

『ぅう……なにが……『てりゃーっ!』ごべらっ!?』

 

 そしてバックドロップ。プレシアさんは今度は後頭部を抱えて悶絶することになった。

 

 ゴロゴロと悶絶しているプレシアさんの影から現れたその顔は―――

 

「……え?」

「嘘っ!?」

「何だと!?」

 

「……わた……し………?」

 

 私、高町なのはの顔だった。

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その37

 

side プレシア・テスタロッサ

 

 あの人形に話していたら、突然、「ちぇりおー!」等と言うふざけた掛け声と共に脇腹に激痛が走った。

 あまりの激痛に倒れ臥し、悶えていたら今度は腰を持ち上げられ、後頭部に激痛が走る。

 文字通り頭を抱えて悶えていると、通信が強制的に切られるのを感知した。恐らく、さっきのふざけた奴がやったのだろう。

 そう思って顔をあげてみると、そこにいたのは意外にも女。しかしその顔はどこかで見た覚えがある。

 

「お初にお目にかかります、イカれ系残念美人さん」

「誰がイカれ系「ちぇりおー!」ごぼっ!?」

 

 反論しようとした瞬間、鳩尾に拳がめり込んだ。しかしこの威力、どう考えても女子供が出していい威力じゃない。

 

「お初にお目にかかります、イカれ系残念美人さん」

「ッ……!ッ………!!」

 

 この娘は知らないのだろうか。鳩尾に拳を叩き込まれると大抵の人間は息が詰まって呼吸ができなくなり、悶絶するしかなくなると言うことを。

 だからこうして私が悶えている間になにか言われたとしても、私が返答できるわけが無い。

 特に私は病に冒されている。人一倍体は弱いのだ。

 

「面倒なので詳細は省きますが、軽く自己紹介から。私はシュテル・イーストエッジ。デストラクターの名は棄てました」

「……げほ!がふっ!……ひゅ………は……はぁ…………」

「……私が名乗ったのですから、名乗り返すはしないまでもなにか反応の一つくらいは返すのが礼儀と言うものではありませんか?」

 

 その娘は悶える私に一瞥をくれると、私の髪を掴んで無理矢理視線を合わせた。

 その目には感情らしい感情など浮かんでおらず、ただ私と視線を合わせるためだけにこのような真似をしたのだと理解させられる。

 

「……まあ、構いません。私はさっさとあなたがこの場から消え、二度と私達に関わらなければこちらから関わろうとは思いません…………が」

 

 その娘がデバイスを振るう。私の体を通り抜けた光刃が、組み上げていた魔法と魔力をごっそりと持っていった。一度に魔力が減りすぎて、気が遠くなりかける。

 

「起きなさい」

 

 パァンッ!

 

 頬を張られ、強制的に覚醒させられる。その目はやはり、道端の石を見るような目だ。

 

「反抗は慎むべきだと進言しましょう。貴女の大切なものに危害を加えられたくなければ……の話ですが」

「ッ!? アリシアに何をしたのっ!」

「まだ、何も」

 

 まだ、と区切られたことによって、私の行動次第でアリシアの未来が決まってしまうと言うことを言外に叩きつけられ、私は少女を睨み付けながら歯を食い縛る。

 しかしそこで、少女の意識の一部が別のところに向いた。

 

「……来ましたか。管理局もなかなか有能な人材がいるのですね……レヴィ」

「なんだいしゅてるん? この娘のことならやることはもう終わらせてるよ?」

「そうですか。では、管理局が来ますので撤退しますよ。……あと、私はしゅてるんではありません。シュテルです」

「ッ!? アリシアっ!」

「なにー?」

 

 ………………。

 

 …………………………………?

 

 ………………………………………………………え?

 

 私の疑問を完全にスルーしながら、私を脅迫していた少女と新しく現れた人形によく似た少女が話を進めていく。

 二人は六角形の板のようなものを操作し、その合間に話を続けている。

 

「とりあえず、管理外世界のどこかに飛びましょう」

「地球でいいよね!僕ニホンのアニメを見てみたいんだよね!いいよね!いいよね!!」

「……そうですね。ではそうしましょう」

「?」

 

 ……ああ、アリシアは可愛いわね。なんだかわかっていないみたいに首をかしげて……ふふふふふふふふ…………。←現実逃避

 

 

 

 

 

side 織斑 一夏

 

 現在、ライアーズマスクでゲームに出てきた星光の殲滅者(この世界風に男性用IS学園制服を黒と赤に染めた感じ)と雷刃の襲撃者に化けて、幼女と熟女を誘拐してみた。場所は地球のアンダーグラウンドサーチライトの一つ、大迷宮版の居住区に居る。

 

 死んでた幼女を甦らせた方法は、心臓に核金埋め込んだだけの簡単仕様。もしもまた厄介事を持ってきたらランブルデトネイターで爆破すればよし。ついでに母親らしいイカれ系残念美人も殺して核金を埋め込んどけば暴れたときに爆破して終わりになる。

 うん、楽だね。

 

 ただ、こういう話をしていると弾とか鈴に地味に外道だと言われるんだよね。

 そしてそれを聞いたシャルが『地味じゃないよ!? 派手だよ!? そして文句言っちゃいけないくらいに外道だよ!?』ってノリノリでツッコミを入れてくるんだ。半泣きだけど。

 

「うふふふふふふ……」

 

 そうそうこんな感じで。そっくりそっくり。教えてないのによくできるな。

 

 ちなみに、ジュエルシードは放置してきた。書き置きとかは面倒だったから残してない。足がつくのは嫌だったし、手がかりを残すのも嫌だったという理由もあるが、面倒だったからが主な理由だ。

 

 ……さて、それじゃあお話し合いといこうかね。脅迫ではなく、話し合いに。

 まあ、ある程度弱味は握ってるし、少しばかり意地悪なことを言う可能性もあるが、そのくらいは構わないだろう。俺はネゴシエーションは得意じゃないんだ。

 

 

 

 

「さて、それでは参りましょう…………おや、随分と軽いのですね。ちゃんと食事をしていたのですか?」

「……うふふふふ………アリシアは可愛いわねぇ……」

「……やれやれ。使い物になりそうもありませんね。これでは後の交渉にも支障が出そうです」

 

「……おかーさんはどうしたの?」

「それはね? 君に会えたことが嬉しくて、でもどうして会えたのかわからなくて、それであんな風になっちゃったんだよ?」

「ふーん……普通に喜べばいいのに」

「そうだよねぇ……」

 

 

 

 

 そんな一幕があったりなかったり。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その38

 

 交渉の結果。イカれ系残念美人ことプラナリアは、二度と地球に近寄らないこと。俺に面倒事を持ってこないこと。死んだら核金を返しに来ること(このときだけは例外で近付いてよし)を約束することになった。

 その代わりに俺はアリキアに二つのうちの一つの核金を貸し出し、もう一つをプラナリアに貸して病を打ち消させることにした。

 

 核金についての説明は、ジュエルシードを弄ってたら変質してこうなったと言うことにした。本当はそんなことは無いんだが、わざわざ作ったなんて言ってやる必要は無い。

 ちなみにこの核金。中身に黒いのが隠してあるなんてことはない。安心してご利用になれます。

 

 まあ、俺は何でもいいけどね。さっさと放り出して寝よう。

 

 

 

 

 

side プレシア・テスタロッサ

 

 ………色々なことがあったけれど、私は今、とても幸せだ。

 私の前にはアリシアがいる。カプセル越しにではなく、触れることのできる場所に、生きているアリシアが。

 彼女達には色々世話になった。私の病気を治してもらい、アリシアを甦らせてもらい、新しい住居を紹介してもらい、家まで建ててもらった。それも、わざわざ管理局にみつからないような辺境の管理外世界に。

 

 彼女達には何度お礼を言っても足りないけれど、彼女達は受け取ろうとしなかった。ただ、面倒事は嫌いだからもうするな、とだけ言っていた。

 

 そんな私は今、傀儡兵の改造を行っている。

 戦闘用だった傀儡兵達は農耕用になり、私達の食料を作ってくれている。

 魔力を勝手に集めて貯蔵し、その魔力で動くようになった傀儡兵達は、いつかの未来、私が死んでしまった後にアリシア一人になっていても変わらず食料を作り続けることだろう。

 

 あまり多くはないご近所さんは、初めは傀儡兵に驚いていたが、既に慣れてしまったらしく誰も驚かない(引っ越しして一週間程度)。

 

 アリシアと私は、この平穏な世界で一生を終えることになるだろう。それはある意味ではとても幸せなことだ。

 

 ………ただ、アリシアに言われて思い出したことがある。

 アリシアは、誕生日プレゼントに欲しいものを聞いた時に、妹が欲しいと言っていた。そして今は、アリシアのクローンではあるが、私の血を引いている娘……フェイトが居る。

 

 …………けれど、こんな私が今さらフェイトの母親面してフェイトの前に出ていくなんて………………。

 

 ………………(フェイトにやったことを回想中)。

 

 …………鬱ね。死にたいけれど……アリシアが一人立ちできるようになるまでは生きていないとね。死にたいけれど。

 

 ……ああ、フェイト、元気にしているかしら? 風邪を引いてないかしら? 私のことを……恨んでるでしょうね。死にたい。

 ……自分の魔法を自分に当てたら、どうなるのかしら? 相当痛いだろうけど…………。

 

「お母さん!? 駄目だよお母さん!?」

「……はっ!?」

 

 危ない危ない。勢いで死んでしまうところだったわ。私はまだ死ねないのよ。

 

 

 

 

 

side 高町 なのは

 

 通信越しに私の顔をした誰かがプレシアさんの脇腹を「ちぇりおー!」という掛け声と共に殴り、直後にバックドロップ(スープレックスかもしれないけど、私にはプロレスの知識はないからよくわからない)をして驚愕しすぎて固まってから数分後。通信が切れていることにいち早く気付いた私は、とりあえずリンディさん達、つまりアースラのみんなのことを正気に戻した。

 ちなみに、レイジングハートも止まっていた。凄いね。

 

 それからアースラは慌ただしく動き始め、私はフェイトとユーノ君、アルフさん、クロノ君と一緒に時の庭園に移動した。

 

 時の庭園はがらんとしていて、誰の気配も感じない。索敵に声をあげてみたけれど、私たち以外には誰もいないことがわかった。

 

「なんだか殺風景な所だね? 誰もいないみたいだし」

「気を抜くんじゃない。まだ全部回ってないんだから」

「あ、さっき私が何で声をあげたかわかってないの? 地形の把握のためだよ? はい地図」

「持っているならもっと早く出したらどうだ!?」

「面倒だから、やだ」

「そこはせめて誤魔化そう!?」

「じゃあ、今わかったばっかりだったから」

「遅いよ!」

「と言うか『じゃあ』ってなんだ『じゃあ』って!」

「ご飯を炊くあれでしょ?」

「「ジャー!?」」

 

 あ、異世界人なのに知ってるんだ。ジャーのこと。

 まあ、なんだっていいけど。

 

 

 

 それから私達は奪われていたジュエルシードを封印し、ついでに違法研究の証拠品や関係データもこっそり貰ってからアースラに帰還した。プレシアさんとフェイトちゃんそっくりのあの娘の姿はどこにもなかったし、私そっくりの娘の姿もなかった。

 

 それからしばらくして、私はいつも通りの日常を送ることにした。

 レイジングハートはユーノ君に返そうとしたんだけど、ユーノ君は私に持っていて欲しいみたいで結局私が持つことに。フェイトちゃんとアルフさんはリンディさん達と一緒に管理局へ。裁判を受けるって言っていたけど、多分ほとんど無罪になるそうだ。よかったね?

 ユーノ君もアースラで帰るみたい。暫くは会えないみたいだけど……まあ、いいかな。平穏は大事だよ。

 

「……これで、お別れかな」

「ユーノ君ってば。別に絶対に会っちゃいけないって訳じゃないんだからさ。そんなに暗い顔なんてしないでよ。ね?」

 

 ユーノ君の頭を撫でて、ユーノ君が笑顔を浮かべたのを確認してからクロノ君に向き直る。

 

「……クロノ君に、言いたかったことがあるんだ」

「………ふざけたことじゃないだろうな?」

「今回は真面目だよ。真面目にからかってるとかそういうのじゃなくて、真剣な話」

 

 私は、クロノ君に頭を下げた。

 

「ごめんなさい。今まで色々言い過ぎてた。急に平穏を崩されて、過剰反応してました。ごめんなさい」

「あ……え?」

 

 ……クロノ君の呆けたような声なんて、初めて聞いたかも。

 

 ………こうしているのには、もちろん意味がある。

 今までの私の印象は、多分『えげつない上に生意気で可愛くない九歳児』だと思うけど、こうしておくことで印象が一気に変わることだろう。悪人がちょっといいことをすると、なんだかすごくいい人に見えると言う状態と同じようなものだと思う。

 

 ……証拠と言っていいのかわからないけど、直接謝罪を受けだクロノ君だけじゃなく、通信機越しのリンディさんやエイミィさん達も雰囲気が変わった。

 なんと言うか、油断のできない相手を見るような顔から、ちょっと癖のある子供を見るような……そんな感じに。

 

 …………計画通り……かな。

 

 ……ただ、フェイトちゃんは私のことをちょっと怖がっている。やっぱり最後にやった模擬戦で、全身にバインドをかけてからの極大集束砲撃はまずかったかな?

 

 

 

 

 

side フェイト・テスタロッサ

 

「ピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖いピンク怖い………………」(ガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタガタ………………)

 

 

 

 

なのは「計画通り(ニヤリ)」

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その39

 

side 高町 なのは

 

 帰ってきた私は、お父さん達にただいまを言ってすぐ、公園に行って狂気の提琴を弾き始めた。すると子供達が私の方に寄ってきて、わくわくとした表情で私を見つめ始める。

 私はそんな子供達に笑顔を向けてから、狂気の提琴でいつものように【ハジメテノオト】を弾く。

 それを聞き付けたのか、どんどん子供達(一部同年代、一部私より上)が集まってきて、私の音に耳を傾ける。

 

 ……途中から私のバイオリンの音にフルートが混ざり、ゆっくりと共鳴する。

 響きはうねり、広く広く伝わり、そして散っていく。

 ちゃんとした魔法を覚えたお陰か、狂気の提琴から響く音が少し前よりも断然よく響く。レイジングハートのブーストがあればもっとよく響くんだろうけど、かけなくても海鳴市全部に響かせることくらいはできるようになっている。

 

 まあ、ブーストは戦闘の時にはいいかもしれないけど、こういう時には邪道だよね。

 ……邪道でもなんでも、使うときは使うけど。

 

 ……それにしても、やっぱり平和っていいなぁ……。

 

 

 

 

 

side 八神 はやて

 

 久し振りに、聞きなれた音楽が私に届く。誰がどこで弾いてるのかも知らないこの曲に、私はいつも元気をもらっていた。

 最近はバイオリンの他にもフルートが出てきたけど、そのかわりにバイオリンが無くなっていた。二週間にも満たないくらいやったけど……寂しかったんやで?

 

 ……けど、今はこうしてバイオリンとフルートの奏でる曲を聞けるだけで十分や。

 ……やっぱり音楽はええなぁ………ちょっと奮発してみようかな?

 

 私はそんなことを考えながら、鼻唄混じりに料理を作っていた。

 

 ……あっつ!指にお味噌汁がかかったわ!

 

 

 

 

 

side 織斑 一夏

 

「さくらさん」

「どうした? リンカーコアが痛むとか?」

「そうじゃなくてですね……最近起きた事件に関与してましたよね? プレシアさんはどうしたんですか?」

 

 なのちゃんははっきり聞いてきた。俺は基本的に隠し事はしない。隠さなきゃならないことはある程度隠すが、隠し事があると公言するし、言えない時には言えないとはっきり言う。それが俺だ。

 

「内緒だ」

 

 だから俺は、今回もこうして返す。

 

「そうですか」

 

 なのちゃんもそれを理解していたらしく、当然のように返す。

 しばらくして、なのちゃんはもう一度聞いてくる。

 

「それじゃあ、私そっくりのあの娘のことは知りませんか?」

「知ってる。が、名前しか教えてやらん」

「十分です」

 

 なのちゃんはにこにこと笑いながら俺を見つめる。どうやら名前を教えて欲しがっているらしい。

 まあ、実際はあれも俺だから名前は『織斑一夏』なんだが、バレると面白くなさそうなので偽名の方を教えておく。

 

「シュテル・イーストエッジだ」

「……本名ですか?」

「いや? だけどそう名乗っていることは確かだぞ?」

 

 実際名乗ったしな。嘘は言ってない。本当のことも言ってないけど。

 

 そんな話をしている間に、なのちゃんの家に到着。今日も不審者はいなかった。

 ……例え居たとしても、アンダーグラウンドサーチライトに放り込んで中身ごと消滅させるけど。

 

 なのちゃんは笑顔で家の玄関に向かっていき、ドアに手をかける寸前に俺に振り向いた。

 

「今度、よかったらシュテルちゃんを紹介してくださいね」

「いいよ」

「……予想以上に軽いお返事をありがとうございます」

「どういたしまして」

 

 なのちゃんは僅かに呆れたような、俺は束姉さんのような満面の、それぞれの笑みを浮かべて別れた。

 

 ……さてと。それじゃあ今度はシュテルとレヴィとディアーチェ(闇統べる王、別名統べ子)の状態で使う楽器を考えないとな。

 シュテルはなのちゃんに合わせて弦楽器で……チェロにしてみるか。

 レヴィは………なんとなくクラリネットで。

 それで統べ子は…………感覚で言うとなんでかパイプオルガンが第一候補に出てくるんだが、そんなでかい物を持って行けるわけ無いし……アコーディオンでいいか。パイプオルガンはまたいつか。

 

 ……いつか、闇の書から生まれたマテリアルを集めて聖歌隊の真似事でもやってみようかね。それはそれで面白そうだ。

 その時にはもちろんなのちゃんも参加してもらおう。

 当然、本人が嫌がらなければという前提条件の元に、だけど。

 

 ………聖歌なんて歌ったことは無いけど、何度か聞けば真似できる。心を込めて歌えるかは別だが、演奏するだけなら十分すぎる。

 ただ、そういうのはあんまり好きじゃないからやるときはちゃんと本気で真剣に歌えるようになってからだけど。

 

 ……まあ、実際に神には会ったことがあるわけだし、歌えないことはないだろう。

 殺された分の恨みはIS世界で十分寝れて取り返せたし、感謝もしてない事は無い。

 ……生まれ変わらなかったらありえなかったいい出会いもあったことだし。

 

 それじゃあ、なんか曲を改造するか。シュテルの分くらいは考えとかないと。楽器からすると合うのを考えるのは少し難しいけど……曲を改造して低音増し増しにすればできるだろ。

 ……多分。

 

 ……それじゃあ、そろそろ寝るか。お休みなさい。

 

 ……すか~…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異伝7 その40

 

 毎日よく寝て、毎日演奏して、時々なのちゃんと俺とシュテルの三人(?)で演奏して……と、日々を悠々自適に過ごし続ける。

 なのちゃんはあの獣からデバイスを手に入れてから、ずっと魔力負荷をかけながら、そのうえ戦闘の勘を鈍らせないように仮想訓練やら俺との実践訓練やらを繰り返しながら生活している。

 またあんなことがあったら困るから、と言うことだが………大正解だ。多分ある。

 できればズレていて、闇の書が来てなければいいと思ったりもしてたんだが………嫌な予感がマッハすぎて怖い。俺は直感EX-の勘を甘く見れるほど楽観的じゃないからな。

 ここで鈴の直感が『そんなことはない』って言ってくれていれば俺のが間違ってると思えるんだが、そんなことはないしなぁ……。

 

 ………闇の書については実際にこっちになにか来るまでは置いておくとして、短い平穏を満喫するとしようかね。

 闇の書は多分なんとかなるだろうし、ならなかったら無理矢理なんとかするし、なんとかできるだろうからな。

 

 ……さて、そろそろ時間だな。いつものところに行くとしようか。

 

 

 

 

 

side 高町 なのは

 

 シュテルちゃんにちゃんと出会ったのは、さくらさんにシュテルちゃんのことを聞いた数日後のこと。いつものように公園に行ってみたら、さくらさんの隣に当然のように座っていた。

 

 シュテルちゃんの得意な楽器はチェロ。純粋なバイオリン系統の楽器の最大の物。狂気の提琴シリーズの三つ目らしいけど、聞く限りでは私以上に使いこなしているような気がしてちょっと悔しい。

 

 まあ、頑張って追い付いて見せるけどね。

 

 あと、シュテルちゃんは戦闘もすごい。なんと言うか、えげつないことはないけど理不尽な戦い方をする。

 ……さくらさん程じゃないことを明記しておくけど。

 

 初めての模擬戦闘で、シュテルちゃんは私の弾幕を捌き切ってから、レアスキル(と、炎熱変換)を使った得意な魔法を見せてもらったけど……凄かった。

 

 シュテルちゃんの得意は、弾幕による広域殲滅。その密度と持続性は私でも真似をするのが困難で、威力に至っては一発一発が私の弱めのバスターくらいの威力があった。

 攻撃は基本頭上からしか来ないし、一度発射した後は誘導性なんて皆無って言っていいくらいに無いけど、それを補って余りあるほどの速度と密度と連射速度と精度と速射性を誇る。

 どちらかと言うと、強い相手との一対一の戦いよりも、そこそこ以下の力の多数の相手との戦闘の方が向いてるかもね。

 

 ……一対一でも十分すぎるくらい強いけど。

 

 ……ところで、シュテルちゃんとさくらさんって、戦ったらどっちが強いのかな?

 二人に聞いてみたところ、シュテルちゃんは惚けて、さくらさんは興味無さそうに首をかしげることで答えを返した。

 ……まあ、実際どっちが強いかなんてどうでもいいことだよね。戦うより寝たり演奏したりの方がずっとずっと重要だし。

 

 そんなわけで、私とさくらさんの小さな楽団は、新メンバーを加えて平常運行中です。

 

 

 

 

 

side 月村 すずか

 

 今日もまた、なのはちゃんの弾くバイオリンの音が響く。この曲を聞きながらのお茶会は、やっぱり気持ちがいい。

 蕩けたような表情のアリサちゃんを見るのも楽しいし、そんな状態から目覚めたアリサちゃんをからかうのも結構面白い。

 ……趣味が悪いって言うのも理解はしているけど、直す気はあんまり無かったりする。

 だって、アリサちゃんってとっても可愛いんだよ?

 

 ……まあ、その事は置いといて。私もちょっと頑張ってみようかな。

 最近はなのはちゃんのバイオリン以外に、フルートとチェロの音が混じってきてるから……他の楽器を選んでみようかな。

 バイオリン系統の楽器の中間の大きさのヴィオラが無いから、それにしてみよう。

 アリサちゃんがどの楽器にしようとしてるのかは知らないけど、多分ヴィオラは選ばないと思うしね。

 

 ……なのはちゃんの域に到達するまでに何年かかるかはわからないけど………頑張ってみようかな。

 だって私は、なのはちゃんの友達なんだから。並び立てるようになりたいんだ。

 その点はアリサちゃんも同意してたし、それをやるのも楽しそうだしね。

 

 勿論私もアリサちゃんも自分の夢に進むことも忘れないし、そのための努力だってちゃんとする。趣味とやらなくっちゃいけないことの区別くらいはつけられる。一応これでも小さい頃から色々な勉強はしてるからね。そのくらいの判断はできる。

 ……と、言うことでお勉強タイム。なのはちゃんの音楽ってなんだか行動力にブーストがかかるような気がするんだよね。なのはちゃんが魔法使いだってことを考えると、もしかしたら本当にかかってるのかもしれないけど。

 

「……アリサちゃん。ほら、起きて」

「……はっ!」

 

 とろーん、と蕩けていたアリサちゃんも元に戻ったし、頑張らなくっちゃね。

 

 私は、なのはちゃんがいるだろう公園の方に視線を向けて、そんなことを考えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

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