鯖総入れ替え四次(おっさんホイホイ)   作:ケット

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遠坂家

 避難させていた妻子、妻の葵と娘の凛が遠坂家に、サーヴァントと見知らぬ少年を連れてきた。

 凛が避難先で遊んでいたら、主殺しをしたサーヴァントに声をかけられた、という。一緒に遊んでいた少年とともに。

 確かにその赤毛の少年も、一般人とは思えぬ魔力を持っている。

 それから時臣も綺礼も忙しかった。

 士郎の家族に暗示をかける。

 サーヴァントから話を聞き、匿名で殺人を通報する……それならば神秘の漏洩にはならない、と確認したうえで。

 

 マスター殺しをするサーヴァント、

(令呪で自害させる……)

 ことも考えたが、状況を見れば理解はできる。

 凛と、新しい弟子となった士郎も遠坂家に住まわせることにした。そうなると家事の手が回らないので、葵もそのまま残ることになる。

 

 士郎の家族には旅行に行かせ、職場や学校の人には長期の忌引きと思わせた。

 そして凛にも士郎にも、少しでも魔力量を増やすために時臣は魔術を教え始めた。

 驚かされるのは、キャスターが指摘した士郎の特異な資質だ。

 

 

 言峰綺礼は、アーチャーが要求する近代兵器の調達という仕事があった。狙撃銃、対戦車兵器、爆薬、雷管、その他。前歴があるし、教会の父も協力してくれるから可能ではあるが、忙しくはある。

 それでアーチャーは、そこらのキャスターより固い要塞を作り上げている。

 キャスターに陣地構築能力がなく、アーチャーにあるのは頭を抱えたくなる。が、綺礼でも、SASでも突破不可能と断言できるものができた。

 並行して、時臣の説得を続けていた。

(自分とサーヴァントに任せて寝ていれば、一晩で終わる……)

 このことだ。

 魔術師の工房を高貫通力の大呪文や、物理的な壁を爆砕する対戦車兵器で打ち抜いて挑発。出てきたマスターを狙撃するか、サーヴァントをキャスターとアーチャーの十字砲火で束縛している間にアサシンがマスター殺し……

 確実にすぐ終わる。

 だが時臣は、

「聖杯戦争は、魔術師の栄誉ある決闘であり、何をしてもいい戦争ではない」

 と魔術師の、

(たてまえ……)

 にこだわり続ける。

 倉庫街の戦いには何人も狙撃手がおり、前線に出ていたサーヴァントも優れた狙撃手になりえることも説明したが……あまり通じていない。

 それよりも、士郎少年の奇妙な素質を解析することに夢中になっている。

 その反面、異界の強力な魔術を体現するリナから魔術を学ぼうとはしないのだ……

 時臣は知らない。世界を滅ぼしてもいいなら、リナに完全版のとある呪文を唱えさせれば別の世界ではあるが根源に直通で飛びこめることを。知ろうともしない。

 

 また、リナがとんでもない量のおいしい食事を常に要求する。無論大富豪である時臣にとってはなんでもなかったが、煩わしくはある。

 しばしば仕出し屋が出入りし、大パーティでもあるのかという食事を運びこむ。

 あるいは、現代の普通の服に着替えたリナと葵が大食いチャレンジ店に入り、リナだけがとんでもない量を食べてしまう。

 あっというまに、冬木市のチャレンジ店は制覇されてしまった。

 ケーキバイキングで、凛と葵とキャスターがアインツベルン陣営の協力者と会って互いにそれと知らず意気投合したりもしたが、それは大したことではない。

 

 

 遠坂家の混乱はそれだけではない。倉庫街の戦いが終わってしばらくして、匿名の手紙が来た……髪の色も瞳の色も変わり、人形のように無表情になった桜の写真と、魔術的に見て属性すらねじ曲げられた桜の毛髪。

 さらに、間桐家の魔術に関する古文書も。

 それ自体とんでもない価値があるものだが、それよりも内容に戦慄した。蟲を用いる『修行』……それは地獄絵図に他ならない。強姦と拷問……人類はもともとその二つについては桁外れの才能を投入する。だがその人間の限界を、オランウータンの葉屋根と巨大教会の大伽藍ぐらい突き抜けた代物だ。

 おまけもあった。鶴野・雁夜兄弟の母、鶴野の妻、以前の代の女子の若すぎる死が記された戸籍謄本や住民票。それを見て考え総合すれば、何があったかは自明と言える。調査しなかった怠慢を自分でも責め、責められることになるが、それよりも今は……

 魔術師としての義務にはうるさいものの、愛情深い父親には違いない遠坂時臣は、激怒した。

 必ず、かの邪智暴虐な老人を除かねばならぬと決意した。

 

「行くぞみんな。桜を取り戻すんだ!!!!!」

 もちろん凛も葵も大喜び。綺礼とともに留守番だが。

 キャスターもアーチャーも、そしてアサシンも手紙を読み、表情はそれほど変わらないが内心怒り狂っているようだ。

「悪人に人権はない」リナ。

 戦争は終わったと言っていながら、知り合っただけの相手が虐殺に巻きこまれたときに突貫したランボー。

 そして兵器である自分を呪い平和に暮らしつつ、何人も悪を葬ったかずい。

 

 サーヴァント三騎の大軍に宝石も全部持ち出して間桐邸に突撃したが、そこはほぼもぬけの殻だった。

 ボロボロで頭を抱えた長男の鶴野しかいない。蟲も全滅しているようだ。

 もっとも貴重な書物や宝物の多く、さらに財産の根本である実印や権利書まで持ち出され、桜も雁夜も、あの唯一サーヴァントらしいサーヴァントも行方不明だった。

 

 ただし、桜の虐待の証拠は……下手人の証言も含めて山ほどあり、時臣の心労と罪悪感はひどくなった。召喚前の雁夜が望んだどんな復讐よりもひどいものがあるほど。

 遠坂陣営の目的は、桜を探して確保することが最大になる。

 

 ただし、それも長いことではなかった。まもなく癒着している聖堂教会から知らせが来た。

 別の陣営から、

(柳洞寺の大聖杯についてしらべてみたが、なんだあれは……)

 という手紙が届いた、と。

 

 また、遠坂時臣はとても幸せと言えた。間桐家に突撃するきっかけとなった匿名の手紙は、自陣営のアサシンの知恵だと知らないのだから……




これは迷うところです。
時臣を救いようのない外道にして殺すか、それとも少しずれてるけどまともにするか…

一本道ハッピーエンドを優先します。
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