鯖総入れ替え四次(おっさんホイホイ)   作:ケット

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冬木ハイアットホテル

 冬木市最大最高級のホテル『冬木ハイアットホテル』で、大規模な爆弾テロが起きた。

 屋上の一番上のヘリポートにばらまかれた多数の爆薬が、大爆発を起こしたのだ。

 

 とんでもない金で最上階全部を借り切っているケイネスは、轟音と衝撃に圧倒され、怒りに身を震わせた。魔術師として軽蔑しきっていた、近代兵器の威力を目の当たりにしたのだ。それを認められないことが怒りの源泉だった。

 死ぬほどではなかったが、衝撃は最上階に強く伝わり、窓ガラスもガラスでできた魔術器具もいくつか割れた。

 とっさに、『ターミネーター2』のT-1000のように自在に動く水銀、月霊髄液で自分と婚約者のソラウをかばってしまうほど。

 同居人であるサーヴァントの孔雀は、

(大したことはない……)

 とばかりに、いぎたなくせんべいをかじっていた。

 ケイネスは認めたくなかった。このサーヴァントが爆薬を受け取り、屋上に運んでおいていなければ、このホテル全体が崩壊していた。

 そうなれば、自分とソラウは……月霊髄液で助かったかもしれないが、このホテルを三つほど買える金額の魔術用具の数々がすべて破壊されていただろう。

 魔術戦の、戦闘継続能力が大いに低下する。

「許せん、卑怯な……誰がやったのだ!アインツベルンめ、衛宮切嗣とかいう魔術を道具扱いする汚らわしい傭兵を雇いおって!」

「彼とは限らない。できるサーヴァントが最低3人いる。倉庫街のナイフ使い、全体を見てた機関銃手、それにあの着ぐるみ」

「使い魔風情が、許可も得ずに余計なことをいうな!」

 ケイネスは激しくサーヴァントにに怒りをぶちまけた。

 爆薬を取り除いたのは孔雀ではない。さすがにそんな技術はない。

 取り除いたのは、ウェイバー陣営のライダー、相良宗介だった。

 

 もちろんホテルは閉鎖されることになり、ケイネスを含む客はみな金をもらって宿を移すことになる。それがまた煩わしい。

 そして、同じ手を食らわないように、地面を選んでしまう自分自身にも怒りを感じる。近代の産物などに、自分の行動を左右されること自体が許せないのだ。

 

 

 花火になってしまった爆発を見て、衛宮切嗣は失望しつつ紫煙をくゆらせていた。

 だが、ある程度予想できていた。あの僧形のサーヴァントも、銃の存在を前提にした動きをしていた。ある時からは銃からマスターを守り、撤退させていた。爆発物処理技術があることも、ありえないわけではない。

 もし彼ではないとすれば、誰だろう。自分のセイバーかもしれないが、アリバイはある。アイリスフィールを、つきっきりで護衛させ、別のところで買い物をさせていた。荷物持ちに憔悴した彼に、少し留飲は下がった。

 ケイネスとは別の陣営だろうか。だとしたら……

(秘密裏に同盟を組んだ、またはその陣営はケイネスに脱落してもらっては困る……)

 それも考えられる。

 まだ、どのサーヴァントがどの陣営かの情報は不足している。せいぜい、あの僧形がケイネスのサーヴァントと思われること、あとはアイリスフィールが遠坂邸の方角でものすごい大魔術の詠唱を感知したぐらいだ。

 二人、まだ姿が見えていないサーヴァントもいる。ついでに着ぐるみは顔や背格好を見せていない。

(いや、ケイネス陣営が二体のサーヴァントを持っている可能性もある……)

 そのことも考えた。

 常に最悪を考える切嗣も、今起きていることはさすがに想像もつかなかった。

 自分のサーヴァントが、別の監視システムで自分たちを監視し、別陣営のサーヴァントと連絡していたなどとは……

 隠されていた機材で『ボン太くん』の通信波長を分析し、通信を送っていたのだ。

(冬木ハイアットホテルの爆破解体が準備されている。爆薬を解除できれば、多数の武器弾薬の隠し場所も知らせる)

 と知らされた宗介は、慎重に確かめた末に実行した。優やランボーには劣るが、解体するに適した爆薬の設置場所を推定して解除するぐらいならやすやすとこなせる。

 

 セイバー……御神苗優としては、自分の目的のためにもバランの目的のためにも、簡単にマスターに減ってもらっては困るのだ。

 特に、聖杯が封印すべき危険物だった場合。無論優は切嗣が集めた各陣営の情報はのぞいている。今の切嗣が、つまり優がわかる範囲では、知識豊富な魔術師はこの聖杯戦争の関係者には三人……遠坂時臣、間桐臓硯、そしてロードの名を持つケイネス・エルメロイ・アーチボルト。

 聖杯戦争『始まりの御三家』である遠坂・間桐は、世界より聖杯を選ぶ可能性がある。だから、簡単にはケイネスを失えないのだ。

 

 

「そうそう、この爆弾を処理してくれたサーヴァントから、マスターに伝言だ。

『聖杯の術式と、ここの霊地をよく調べてみてくれ、そう爆弾を警告した人が言っていた』

 とな。爆弾を処理できるなら、そいつは同じように仕掛けることもできるのはわかるだろ?」

「ケイネス」

 ソラウが声をかけるのに、さすがにケイネスは耳を傾けた。

「学者として、冬木の聖杯について少しでも知っておいて損はないでしょ?」

 そう言われれば、惚れた弱みである。

「そ、その前にこのように卑怯なことをした、衛宮切嗣に誅を与えてからだ!」




 やばい、ケイネスと孔雀のコンビが柳洞寺に行ってたらそれで終わってた……まあ優と孔雀にとってはそれがベストですが。
『サーヴァントがマスターそっちのけで癒着している』
望みがある英霊も、ヒャッハーメンタリティも騎士バカもいない、というか世界破局防止に生涯を尽くした人が多いのがこの聖杯戦争。
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