鯖総入れ替え四次(おっさんホイホイ)   作:ケット

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 ウェイバーが時臣たちを説得している中、時臣に言峰璃正神父より別の、綺礼経由で魔術を用いた連絡も入った。

 

 教会が、ケイネスの手紙を受け取った。しかも聖堂教会上層部も、魔術協会上層部も同文の手紙を受け取っているという。

 これではとても聖杯戦争は継続できない。

 一時停戦に応じ、聖杯を浄化し、浄化されたことを教会・協会両上層部に納得させて再開する以外にない。

 そう伝えられた時臣は、他に思いつけなかった。

(委託令呪を受け取った言峰綺礼も柳堂寺に急行し、同時に寺の住人を避難させる……)

 そこまで動いてくれるという。

 

 

 先頭を行く孔雀がケイネスをおんぶし、多数の魔術用具を持つソラウが後から山の横道を歩く。

「あ……」

 ソラウはすぐに気がついた。孔雀はとっくにわかっており、足を速める。

 

 多数の車が寺から走り出る。

 それから、バンと高級車が走ってきた。洞窟の入口から見える。

 また、ウェイバーから、遠坂陣営も一時停戦に応じたと知らせが入る。

 

 洞窟の奥にたどり着こうとしたとき、孔雀が素早く印を組んだ。

「臨兵闘者皆陣列在前!破ァアァ……」

 すさまじい光を帯びた気流のようなものがほとばしり、泥の尖兵を吹き飛ばす。

 ソラウは孔雀の力に瞠目していた。

 そしてケイネスは、汚染された聖杯に眉をひそめつつ、残されたわずかな力で超絶な魔術を解析し、汚れを分析していった。

「く、小聖杯がここにあれば」

 ともつぶやく。

 

 無人となった大寺、山の地下にある洞窟に、三々五々魔術師とサーヴァントが集まっていく。

 

 

 衛宮切嗣は、あちこちに仕掛けた監視装置で当然それを見た。

 最大の機会。実力は及ばなくとも、乱戦で勝利を拾うことはできるかもしれない。

 また、ライダーの巨大宝具は、洞窟などでは使えまい。令呪もあるので残り一度の札を切るのもきついだろう。爆発物も危険だ。

 銃は魔術より、瞬間火力は劣る。だがそれなら、口径を上げればいい。30-06スプリングフィールド弾が、起源弾でなくてもケイネスの礼装を貫いたように。

 大口径火器は、セイバーが多数調達している。

 それ以外に勝てる可能性は感じられなかった。

 自分と、傷を癒した舞弥だけで攻めるつもりだった。

 

 だが、円蔵山のふもとに着いた時。

 大型トラックの運転席にセイバーと、その隣にアイリスフィールもいた。

「アイリ」

「私も戦えるわ。あなただけ死なせるなんてできない」

 平然と、セイバーは重火器をいくつも背負う。

 切嗣は歯を食いしばる。

「……状況を確認しよう」

 舞弥が監視機器を再生してモニターを見、確認する。

「洞窟に、まずランサー陣営の三人。それから、車と巨大人型機械で……山のふもとまで移動し、ウェイバー・ベルベットとライダー、間桐雁夜・間桐桜と男サーヴァント、遠坂時臣・凛・素性不明の男児と女サーヴァントも洞窟に入りました。あとから教会の言峰綺礼も入っています」

「全員がそろっている、しかも洞窟。実力差を無視できる機会だ」

 セイバーはうなずくだけだった。

「舞弥、先頭で突っこめ」

 蜂の巣になって機会を作れ。

「はい」

 舞弥は、機械は当然のようにうなずいた。

「僕が敵の、銃使いのアーチャーを引き出す。できればライダーも。足止めをしてくれ、アイリ」

 主にセイバーが。

 アイリとセイバーがうなずく。

「時計を合わせろ。いくぞ」

 切嗣は、起源弾を30-06に合わせて銃砲店で手に入れ銃身を切り詰めたブローニング自動小銃に装填し、H&K-MP5と、セミオート超大口径のシモノフPTRS1941対戦車ライフルを持っている。どちらもセイバーが調達してきたもので、弾薬は宝具化されている。

 

 確かな技術。気配を消し、草や木の間の地雷やワイヤートラップを警戒しながら洞窟に迫る。

 罠は最大限に警戒している。罠地獄と化した遠坂邸のことは忘れていない。また、マッケンジー家を狙えるポジションを、前の失敗を省みて警戒しながら探ったらしっかり、竹と糸だけで作った凶悪な罠が仕掛けてあった……ライダーも同等の腕だ。

 山に登る前に、舞弥にも言っている。何度も重傷を負っている彼女は身にしみてわかっているが。

「ここはゲリラ戦の戦場だ」

 不用意な一歩が、首筋に毒矢、削いで鋭くした竹を埋めた丸太、足に糞尿を塗った削ぎ竹や銃弾一発の罠、地雷を解除したと思って動かせばその下の地雷にワイヤー……

(死ねれば幸運というもの……)

 である。

 それどころか、想定には宝具による毒ガス攻撃などすら入れた。

 サーヴァントであるセイバーは道を通ってしか歩けないので、アイリとともに小走りに先行している。アインツベルン城で体力を調整したアイリは、セイバーの足についていっている。

 そして洞窟。

 驚くほど、何の罠も待ち伏せもない。

 だからこそ、先は地獄だと覚悟できる。

 舞弥一人の犠牲で状況を動かせるか、自信がないほど。

 そして舞弥が宝具化された弾を装填したH&K-HK21を乱射しながら突入し、切嗣も一人でもマスターを殺し、敵を引きずり出すことを前提に援護……

 音を出しても走り出す。

(五秒後に突撃開始)

 と舞弥のハンドサイン。

(了解、グッドラック)

 確実に死ぬとしても。

 4、3、2……じりじりと動きながら。切嗣は三倍速呪文を唱え始める。

 突然だった。

 切嗣の全身に電撃が走る。

(スタンガン……)

 背後から。考える余裕もなく意識が薄れる。

 薄れていく目に映る。舞弥の隣に高校生ぐらいの青年、ライダーが霊体化から出現し、正確な関節技で彼女を制圧していた。

 舞弥も、切嗣もくずおれる。

 

 

 目が覚めた衛宮切嗣の目に、恐ろしい汚染の黒い泥沼が見えた。

 目の前では、苦しむアイリスフィール。

 わからざるを得ない。

 聖杯は汚染されていた。そして自分のセイバーは、敵のサーヴァントと通牒して、自分たちを制圧した……

 目を向けると、舞弥も縛られてはいるが生きている。完璧な待ち伏せ、しかも敵を裏切らせている……それができて当然の手腕の敵だとは、わかっていた。

 

 衛宮切嗣は、

(自分のサーヴァントが、何を考えているのか……)

 考えることからは必死で逃げていた。

(理解してしまったら、すべてが終わる……)

 そう、確信していた。

 思考停止がどれほど、特に戦場では致命的かはわかっている。戦術はできても、戦略には盲目になるのだ。

 まさに致命的だった。最後の最後で裏切られた……いや、裏切りではない。

(これを止めるためだ)

 わからざるを得ない。

 

 洞窟に広がる、穢れのきわみ、呪いのかたまり……切嗣は悟った。

 自分が妻を犠牲にし、娘も人質にし、部下も道具として使い捨て、どんなことでもする覚悟を固めて追及してきた……その結末はこれだと。

 決してあってはならない破滅。

 最悪を超えた最悪。

 その絶望は、無理に暗示をかけて封印してきた、ある晩の夢をよみがえらせた。

 

 自らのサーヴァント、御神苗優が生前戦った敵。

 優は、全人類の心を思い通りにできる力を持つ古代遺跡を巡り、恐ろしい黒魔術師ヘウンリー・バレスと戦った。その遺跡の鍵を持つ少女を守って。

 殴り合いでも優をしのぐ黒魔術師やその使い魔、遺跡そのものの罠と激しく戦い、敗れ、また戦い……ついに勝利した。

 死を前にした黒魔術師は言った。

 自分はアウシュビッツの生存者、あれこそ人間の真の姿そのもの。おまえが守りたいという友人たちも、一皮むけばああなる。

 だから全人類の心そのものを作り変える。争いのない世界を作る……

(同じだ)

 ヘウンリー・バレスと、衛宮切嗣。

 多数の、罪のない女子供を含む犠牲を出してもいい。

 世界の全人類を作り変えてやる。

 争いのない世界を作るために。もう誰も、泣き叫びながら死んでいくことがないように。誰も、悪鬼と化して殺し犯し奪うことがないように。

 今生きている、この現実の人類が許せないから。人類が今後よくなっていく、という希望も持てないから。

(同じだ)

 殺戮に狂奔する男の姿が、死を前にした悲痛すぎるうめきが心の鏡に映る。

『人間がどんなものか』

 切嗣も知っている。嫌というほど。優も知っている。舞弥も知っている。アイリにも教えた。まだ知らないのはイリヤだけ……

『私が、なんとかしなければ……』

 同じだ。

 だが、優は別の道を選んだ。前回は、『スプリガン』としてバレスを殺し遺跡を破壊させた。今回は、自分を殺そうとはしない。自分の手からすべての人を……無辜の人も、敵すらも守っている。

 優は、切嗣たちが人殺しをするのを邪魔してきた。聖杯が大惨事を起こすのを防ごうとしてきた。

 

 また、ふとかなり遠いことを思い浮かべ、悟った。言峰綺礼は、自分は別人だと言った。

 戦ったからこそ、それが真実だとわかった。ではどうやって?……サーヴァント。

 その力で、自らの人格を変えたのか。よほどのことがあったと思えるが、

(ばかな……)

 そう、愚かなことだ。

 犬が言うことを聞かず悪さをする。だから皮をはいで中身を捨て、処理した毛皮を犬ロボットにかぶせてかわいがる。

 人の性格が気に入らない。だから皮をはいで体温を保つロボットにかぶせる。

 犬を殺したことには違いない。その人を殺すにほかならない。

(ただの自殺だ、ばか……)

 ……衛宮切嗣は、ヘウンリー・バレスは、全人類にそれをしようとしたのだ。

(ばかは、バレスだ。僕だ。同じだ)

 そして優は。

「この、僕も救おうとしている、今回は」

(前は力がなかった、殺すしかなかった。だが今回は……)

 優の、生前何度も、

(甘い……)

 と言われたこころが流れこむ。

「あ、ああああああ、あああああああああああああああああああああ、あああああああああああああ」

 切嗣の心がついに崩れた。頭を抱え、泣き叫んだ。

 その事件で優が守った、一人の少女の夢幻にも打ちひしがれた。鍵として拉致され、黒魔術師の絶望を聞き……それでも信仰を……希望を、愛を失わなかった。遺跡を破壊した。

 それから戦い続ける将兵の前に身を投げ出し、戦いをやめることを願った、聖職者。

 彼女の祈りは、彼女を殺そうとした黒魔術師……別世界の衛宮切嗣を含むすべての人に向けられていることがわかったから。

(あなたはひとりではありません。わたしがあなたを愛しています)

 と。

 

 転げまわる切嗣の手を、そっとサーヴァントと妻の手がとった。

「あんたの間違いは……ひとりになってしまったことだ。仲間がいなかった。仲間になれる舞弥も、道具扱いした。

 世界から戦火をなくそう、でも、仲間はいるはずだ。同じことを考えている人はたくさんいるんだから。まあ間違ったやつかもしれないが、それを見ればそれはそれで自分がどれほど偏ってるかわかるきっかけになる。

 オレには、仲間がいたんだ。今回も、もう仲間がいる」

 孔雀が。バランが。相良宗介が。

 ランボーが。奥森かずいが。リナ・インバースが。

 間桐雁夜が。ウェイバー・ベルベットが。

 遠坂時臣が。遠坂凛が、赤い髪の少年が、二人と手をつないだ間桐桜が。ケイネスとソラウが。言峰綺礼が。

 優のかたわらに並び、聖杯に対峙した。

 

 そのときだった。

 聖杯から泥が吹き上がる。

 それが七つの魔法陣を形作り、瞬時にすさまじい魔力が七つ光の炎柱となる。

 気がついた時には、七人がいた。

 

 サーヴァントの、追加召喚。すべてのサーヴァントが一つの陣営に統一されたとき、聖杯そのものが聖杯戦争を続けさせるためにおこなう非常措置。

 清冽な青い衣に白銀の鎧をまとう、金髪の美少女。

 長い髪、全身を青い身体にぴっちり張りついた服に包み、赤い槍をかついだ美青年。

 黄金の鎧に身を包んだ、恐ろしいほど美しく残忍な雰囲気の金髪の青年。

 鉛の肌、人間の身長記録以上の巨体。ボディビルダーを相似拡大したような筋骨に巨大な石剣を握った男。

 堂々と王気をまとう、男臭さあふれる壮漢。

 和服に身の丈より長そうな刀を背にした、柔らかな感じのする青年。

 魚のような目を突き出させ、狂ったような印象を示す長身の男。

 すべて黒い雰囲気を漂わせている。




追加召喚についてはにわかというか話に都合よく。
この正規鯖じゃろくに争わないので聖杯戦争になりませんが、こうすれば全力で戦わせることができます。
全力で戦ったら西日本がクレーターになりますが都合のよい人もいますし。
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