鯖総入れ替え四次(おっさんホイホイ)   作:ケット

23 / 29
面倒なので地の文では以後、全員、基本的に真名にします


激闘

 まず誰もが目を奪われたのが、バランとヘラクレスの激しい戦いだった。

 両方が桁外れのパワーとスピード、そして技量。小細工も何もない全体重を乗せた正剣が激しくぶつかり合う。

 

 アルトリアが、魔力放出で背にジェットをつけたように加速し、見えぬ剣が袈裟に優の身体を両断しようとする……ふ、と優の姿がぶれた。異様なまでの速さと、絶妙なタイミング。呼吸を読み切っている。

 彼女には、実際の何倍の速さにも感じられた。優の姿が消えたかと思うと、優がいたところから矢が飛んでくる。完全にタイミングとしてはとらえていたが、直感で読み魔力放出だけでかわす。

「貴様!騎士道はないのか!」

「そんなもんねーよ、ボーじゃあるまいし。よかったら聖杯に聞いてみろ、『第一次世界大戦、機関銃、鉄条網、塹壕、無差別爆撃』」

 と言いながら優が鋭く斬りかかる。

 ランボーが次々と矢を射放ち、正確に味方の剣士たちを援護する。タイミングは完全だ。

 同時に聖杯から膨大な知識を得たアルトリアは、戦士ではなく兵士、すなわち蛮族以下の怪物としか言いようがないものに人間をなり下がらせた、近代戦のおぞましさに心を揺るがされた。

 

 小次郎の背の長い刀が抜き放たれ、孔雀の独鈷杵が二度、三度と受け流す。

 そこに突然、羽織の腰がひねられ、三つの斬撃が同時に首を狙う。

「ランサー!」

 誰もが首が飛ぶのを確信したが、長い槍が三つとも防ぎ、刀が三本折れて飛んでいた。

「槍じゃなかったら死んでたな……」

「ランサーを、さげよ。彼は死んではならない」

 ケイネスの言葉を聞き取ったランボーが弓を置き、宝具となったナイフを両手に出した。柄に物入れがない、柄頭が板状のボウイナイフと、実用性の高い鉈。(3,4)

「かわる、後方支援を」

 そう言ったランボーに、孔雀は素直に引き下がる。

 折れた刀で戦い続けようとする小次郎の前に、ひとふりの長刀が突き立った。

「これで終わっては興がないのでな」

 と、ギルガメッシュが玉座で嗤う。

 

 クー・フリンが槍を投げようとした、そこにすさまじい速度で飛びこんだ綺礼の掌から光がほとばしる。対霊体用の精神波装置、霊的存在にも通用する。

「ほう、人間だが……悪くねえな」

 構えを変え、瞬時。一息に五発、鉄骨すら貫く威力の突きが放たれた。

 綺礼はそのすべてを、螺旋を大きく描く剛腕で受け流す。

「八極拳は、槍の操法を素手で行う武術。槍の使い方は知り尽くしている」

「そうかよっ!楽しませてくれよ!」

 楽し気に放たれる槍、圧倒的なステイタスと技を誇る最速の槍兵相手に、鍛えぬいた八極拳と、宝具や何重もの魔術による強化、さらに強化の魔術を委託令呪で底上げした拳士が立ち向かう。

 人間として、相手の感情に共感し、恐怖をセンサーに考えるより早くよける……それだけでは、ケルトの大英雄が放つ圧倒的な気迫に対抗できない。だが、空虚だった自分が修練した八極拳は、別の力も与えてくれた。天地の力、肉体の奥底からの力を。

(以前の自分は、この幸福も感じられなかったのか……)

 考えを押し殺し、綺礼は戦いに集中する。

 

 背後から孔雀の雷電呪文、また銃弾の援護が届く。銃弾は優が宝具化し、貫通力も増しているし、さらにリナが魔力付与でランクを上げている。

 それにより、不利になれば出直すこともできるし、横にかわせば背後から弾が飛んできてくれるのでとてもやりやすい。綺礼が大英雄相手に持ちこたえているのは、それも大きい。

 切嗣を中心にマスターたちがきっちりと海魔を処理しているのは、実に助かる。

 

 

 アルトリアは攻めあぐねていた。魔力放出がある、力ははるかに上。それでも攻めきれない。

(まるで、ランスロット卿と稽古しているような……)

 技を超えた技。

 殺気を読み切り、無拍子で正確に合わせている。ナイフだけでなく、拳や蹴りも強力に放たれる。

 ナイフ使いの組み立てが巧妙で、

(もらった!)

 と思ったら受け流され、関節を壊されそうになる……そこに銃弾が飛んでくる。

〈直感〉で回避するが、それにも限度がある。

 

 ヘラクレスの圧倒的なパワー、それもしっかりと受け流され、確実な攻撃を受けている。

「バーサーカー……」

 大量の魔力を消耗する桜がうめき、心配している。

「だいじょうぶだ。あの人は強い、とんでもなく強い竜を倒したことがある……」

 雁夜が、自分の無力を呪いながら励ます。

「竜の騎士は最強生物。また戦いの遺伝子と経験がある。そして、己より強い相手と戦うことなど慣れている!」

 バランは叫んで竜闘気を倍増させ、激しく切り結びながら呪文を詠唱し、剣にまとわせて叩きこむ。

「ぬ……ある程度より弱い攻撃は無効化か。ならば……」

 バランはつばぜり合いから激しく押した。

 

 小次郎の皮をかぶった剣士……彼は、剣技だけならばあらゆる英霊でも最上級だろう。

 だからこそ、ランボーは天敵そのものだった。

 剣の間合いを見切ったら逃げ回り、M60歩兵機関銃を取り出そうとする。また隙を作って、マスターたちが放つ銃の射線に入れようとする。

「ほう、これもまた実戦というものか。生前戦ったことがなかったが……」

 小次郎は怒りを見せず、平然と受け入れている。

 

 そして、正規に召喚されたサーヴァントで、一人姿も見えない者もいた。

「ぬ!」

 アルトリアが一瞬、ナイフに右腕を深く斬られながらも身をひるがえして虚空を斬ろうとした、だが優はその彼女を突き飛ばした。

「〈直感〉か、それも最上級」

 優が舌打ちをする。

「アサシンが、霊体化して迫っていたのか……いや、そちらの飛び道具は」騎士王の戦い慣れた目が、瞬時に地形と敵陣を把握する。「あちらの馬頭岩と枯れ木の間は、絶対に撃たないようにしていたのか!そして私をそこに押し詰めていた」

「よくわかったな!アサシン、指揮して敵のバーサーカーを仕留めろ!」

 叫んだ優が、一転して激しい攻撃に移り、アルトリアを拘束する。

「させるかあっ!」

 アルトリアも魔力を激しく放出して加速する。だが密着して攻め続ける優を斬ることも離れることもできず、宝具も使えない。

 

 

 見えない伝令にして指揮官。銃を使うマスターたちは遮蔽物に身を隠している、その遮蔽物に隠れて実体化して話すので、敵には影もとらえられない。

 ふ、ふ、と戦うサーヴァントたちのそばにほんのわずかだけ出現し、一言ささやいて消える。

 押し飛ばされた鉛の巨人を、横から銃弾が襲う。小次郎は切嗣が制圧射撃、その一瞬の間だ。さらに機関銃の弾幕を海魔に回す。

 ランクは低いが、それでも一瞬の隙は作れた。

 リナ・インバースの首・腰・両手首に輝きが出現する。

 生前、ある思惑で上位魔族が与えた至宝、「魔血玉(デモン・ブラッド・タリスマン)」。魔王のかけらの一つとの戦いで失われたが、今は宝具化されている。

「あの宝具は……魔力の器自体を増しているのか!それで生身の人間には使えぬ術を」

 遠坂時臣が驚愕する。まさにあらゆる魔術師の夢のまた夢だ。

「100V電源では使えない器具を、200V電源にするようなものか」

 マッケンジー家で、電気関係の修理も少しし、電気の基礎もライダーに教わったウェイバーがうめいた。

 四つの世界の魔王から力を得る宝玉が輝き、リナの力が爆発的に増す。

「うううっ」

「ぐうううっ!ボクのこの手が真っ赤に燃える、女の子を守れと轟き叫ぶ!」

「ちゃんとやってくれるならいいわよっ!桜、がんばって」

 凛と士郎は、ひたすら頑張っていた。桜も膨大な魔力要求に耐え続ける。

「『凍れる森の奥深く、荒ぶるものを統べるもの

 滅びをいざなうなんじの牙で 我らが前をふさぎしものに……

獣王牙操弾(ゼラス・ブリッド)!!』」

 力ある言葉がつむがれ、生身の人間では決して使えぬ呪文が発動する。

 ほぼ同時に、遠坂時臣の傍らに長身の男が出現した。

 その指示で時臣は宝石を投じ、杖を舞わす。

「娘たちが頑張っているのに……」

 リナの手から放たれた光弾が、鉛の巨体を貫き、そのまま大きく曲がって海魔たちを切り刻み、さらにランサーとセイバーを襲う……だが矢除けの加護でかわされ、さらにセイバーに直撃したが耐魔力で相殺された。

「ちっ、キャスターを狙ってればよかった」

 リナが舌打ちをする。

 その一瞬。戦闘経験豊富な竜の騎士は、どう見ても致命の一撃を受けた敵にも油断しない。

「ギガブレイク!」

 極大の雷光を帯びた剣が、最大限の竜闘気とともに超巨体を袈裟切りにする。

「見ておけ凛」

 時臣の大魔術が発動し、バーサーカーを炎の槍が貫く。

「遠坂の宝石魔術か」

 ケイネスが目を見張った。

「おそらくはヘラクレス、12の試練が宝具となっているなら、高い攻撃でなければ通じない上に12回蘇生するぞ」

 魔術はほとんど使えないが、ケイネスには知識がある。

(なんだそりゃ)

 が、実際に次々と回復し続ける巨体を見る者の正直な感想だろう。

「敵を足止めして、でかいのいくわ!」

 リナが叫び、ふたたびデモン・ブラッド・タリスマンを輝かせる。

 一瞬、凛と士郎を見て呪文を切り替えた。

「『そらの戒めとき離れたし、凍れる黒き虚ろの刃、我が力我が身となりてともに滅びの道を歩まん。神々の魂すらも打ち砕き……

 神威斬(ラグナ・ブレード)!!』」

 リナの手に出現した、恐ろしいほど黒い不定形の棒。

「あ、あああ」

 ケイネスや時臣が失神しそうになる。

「こ、根源?」

 とすら声が漏れる。

 超高密度の、異界……さらにその深い深い何かからくみ出された力。それがそのまま刃となる。不完全版ではあるが……

 バーサーカーは先の打撃から回復し、巨大な石の斧剣をふるって撃退しようとする。

 が、切嗣が投げた閃光手榴弾がほんの一瞬を稼ぐ。

 立ち直りリナと斬り結ぶ斧剣も、鉛の巨体も、手ごたえがないように黒い剣は断ち切っていく。

「戦士たちよ……頼む……子どもたちを、守ってくれ」

 最後に正気に戻ったバーサーカーの声が、虚空に消えた。




伏字解放

リナ・インバース

宝具
「魔血玉(デモン・ブラッド・タリスマン)」ランクA+
魔力の器を増強し、普通なら絶対不可能な魔術を成功させる。生前ある戦いで失われたが、宝具となったことで持てるようになった。

*ギガブレイクで3、獣王牙操弾で2、時臣が1、神滅斬で6、ぐらいでしょうか。完全版が当たれば一発で12持って行けると思いますが。
*AUOがそんなに協力的なはずがないのはわかってます
*ショタ士郎の元の人格がひどすぎるというのもわかってます
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。