鯖総入れ替え四次(おっさんホイホイ)   作:ケット

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黄金

 ランサーが倒れるのを見て、自分で出した玉座に座し観戦していた黄金の王が、ついに立ち上がった。

「我(オレ)を楽しませる栄光を与えるにふさわしきものどものようだな」

 遠くに退避していたアレクサンダーも、愛馬に乗る。

「悔しいが、このままでは我が愛する全軍が闇に奪われる……その前に敵を滅ぼし、それから部下を助ける方法を探すぞ!」

 

 孔雀はそれと遠坂時臣の死を見て、ひとつ決断した。

 浮き彫りの刻まれた穂先の長い槍を掲げ、かつての主ケイネス・エルメロイ・アーチボルドのところに向かったのだ。

「なにを……そうか」

 ケイネスは即座に受け入れた。

 槍の先端から垂れる血液。

 一滴の血を垂らされたケイネスの傷つき崩れかけた体を、すさまじい光が覆う。

 それを見たアイリスフィール・フォン・アインツベルンは、背負った鞘をケイネスに向けた。

 遠く暴れ続ける、半ば魔物と化した闇のアルトリアが訳の分からない絶叫を上げ、槍を掲げて打ちかかる……それをバランが食い止め、優のライフルとランボーの矢が膝を貫く。

 鞘からもすさまじい光があふれ、ケイネスを包む。

「お……おおおお!」

 完全に、『起源弾』にずたずたにされた魔術刻印すら癒されたケイネスが立つ。桁外れの喜びに満ちている。

 ロンギヌスの槍には絶対治癒の伝承がある。またアーサー王の鞘も、本人が現界しているときには無制限の癒しとなる。

「ふ、癒すがよい。最大の力で挑むがよい。喜べ、我が自ら誅してやろうというのだ!」

 立ったギルガメシュの背から、何十も波紋が浮かぶ。

 

 その間に、二重の絶対治癒は間桐雁夜も癒しきっていた。

 

 黄金の青年が放った無数の強力な宝具。

 かなりの数が黒い泥に呑まれ怪物と化したとはいえ、まだまだ数のいるアレキサンダー軍。

 その怪物たち。

 暗黒に囚われた騎士王。

 それぞれにサーヴァントたちと魔術師たちは立ち上がる。

 

 士郎がガワを、桜が中身を入れたレーバテインは敵が一度放った聖剣を複製し、握って宝具の嵐に立ち向かう。

 宝具の弾幕を切り払ったバランは、わが身に雷を落とさせた。全身から流れる血が青く変わる。

 優とリナは一瞬の猶予をもらい、優がトレーラーで持ちこんだ膨大な弾薬に宝具の力を付与する。

 宗介のレーバテインは魔力を付与された弾薬を手に、軍勢に立ち向かう。

 ランボーと切嗣は20ミリ機関砲を手早く組み上げ、弾薬を装填した。

 孔雀が一体の、旧神の姿を与えられた泥魔を独鈷杵で貫き滅ぼした。

 強化の魔術とアーマードマッスルスーツで疑似サーヴァントとなった言峰綺礼も拳で敵に立ち向かう。

 完全復活したケイネスが長文の呪文を唱え始め、凛・ソラウ・ウェイバーも未熟ながらも協力させられる。

 アイリは人が扱うには強大すぎるヴァジュラを連打し始めた。アインツベルン家の魔術は戦闘には向かないが、魔術師としての技術や魔力量は低くはない。それをヴァジュラの制御だけにつぎこんだ……独裁者の人格になった、魔術師ではなかったヒトラーは暴走させたが、彼女なら制御できる。使いこなせば世界を破壊できるほどの力を。

 

「よせ!理性を失うな」

 優が、姿を変えていくバランに叫んだ。優の前世では仲間に、獣人であるジャン・ジャックモンドがいた。傷つき獣化すると桁外れの身体能力向上がある、だが判断力を失うため、朧に助かったのが奇跡以上である敗北を喫した。それ以来彼は二度と獣人化せず、十分に卓越した身体能力と技術と知性で戦い抜き、獣人よりよほど強大な存在となった。

「心配はない……この力、戦うに必要な理性までは奪われぬ。敵をすべて滅ぼすまで戻れぬが……竜魔人」

 バランの姿が人ならぬものに変じていく。竜の力、魔族の魔力、人の心……人の心を捨てたマックスバトルフォーム。

 咆哮とともに多数の宝具を叩き落とし、綺礼を貫こうとしていたアルトリアを蹴り飛ばし、さらに海魔と古代の英雄を呑んだ泥魔を数体粉砕した。

 

 ギルガメッシュが放った宝具の嵐は、敵味方お構いなしだ。ついに集中攻撃がアルトリアの背を貫いた。裏切られたような表情で霧散した彼女、直後綺礼に集中する攻撃を宗介のレーバテインがかばう。

 アイリスフィールのヴァジュラと、ケイネスたちの長文呪文で威力を増されたランボーの矢がギルガメッシュを襲い、牽制する。

 膨大な軍勢が襲いかかる、そこにバランが立ちはだかる。

『マスター、令呪三角とも』

 戦闘に狂った心から、戦いのために言葉が絞り出され、念話として伝わる。

 桜は即座にサーヴァントの指示に従った。令呪が三角とも消し飛び、すさまじい魔力がバランに供給される。

 竜魔人と化したバランの両手が組まれ、指が竜の牙をかたどる。

 すさまじい魔力が凝集し、巨砲が姿をあらわす。

「核兵器か……」

 切嗣が震えあがった。

 桜が怯えすくむ。

「どうした?」

 士郎が背後の少女に問いかけた。

「あの、光……夢で、ひとつの国を滅ぼしたの。死んだ女の人を抱きしめて」

 士郎が、通信がつながっている宗介が息を呑む。

 そして宗介の素早い操作と命令、二機のレーバテインが弱い人々をかばう。

 最大出力、二重のラムダ・ドライバ。

 すさまじい閃光がほとばしり、核実験映像を思わせる爆発が王の軍勢を呑みこんだ。

 竜闘気砲呪文(ドルオーラ)……一国を滅ぼした、核兵器に匹敵する最大呪文。

 

 

「ははははははは!」

 呵々大笑したギルガメッシュの背後から、何かが出る。

 解析しようとした士郎が気絶し、宝具であるASが霧散する。高いところから落ちようとする士郎と桜を、凛が魔術で受け止めた。

 誰もがそれどころではない。とてつもない魔力が、黄金の青年を中心に渦巻いている。

「エアよ」

「う、うあ……」

 ケイネスが、孔雀が青くなる。

「天地乖離す(エヌマ)……」

 ギルガメシュの手に握られた、剣というには異形のもの。すさまじい回転とともに開闢に比すべき力を集めている。

 

 リナが叫んだ。

「ふたりとも、ありったけの令呪!」

 綺礼が凛のところに重傷を押して駆け戻り、預託令呪をどっと与える。アイリが慌てて治癒魔術を唱える。

 残り二角すべて、さらに多数の令呪が一気にはじける。リナがすさまじい魔力を受け止め、両手を伸ばす。

「四界の闇を統べる王、なんじの欠片の縁に従い、なんじらすべての力もて、我に更なる魔力を与えよ」

 四つの赤い宝玉が激しく輝き、膨大な魔力を放ってリナの存在自体を塗り替える。

「夜よりもなお深きもの、闇よりもなお暗きもの」

 リナの周囲に桁外れの魔力が凝縮する。ケイネスが目を見張った。

「たゆたいしもの、混沌の海」

 リナの呪文は、完全版だ。リナの故郷を含む幾多の世界、すべて『それ』……金色の魔王(ロード・オブ・ナイトメア)、たゆたう海に浮かぶ泡に過ぎない。

 この世界の根源とどの程度関わるのか、それを人が知ることはないだろう。いや、知ることができてしまえば、その人の心は大きすぎる智に、

(張り裂けるに違いない……)

 のだ。

「我ここに汝に願う、我ここに汝に誓う、我らが前に立ちふさがりしすべての愚かなるものに、我と汝が力もて、等しく滅びを与えんことを」

 リナの口から恐ろしい呪文が紡がれる。

 回転と、何か。開闢と、すべての闇。

 言葉にできぬ膨大な魔力が、ふたつたちのぼる。

「ああああああっ!」

 別の者も悲鳴を上げている。

 宗介が最後の令呪を受け取り、アルに怒鳴ってラムダ・ドライバを最大以上に上げている。

 ケイネスが、ソラウが、かなう限りの魔力で防壁を張る。

 

「重破斬(ギガ・スレイブ)」

「開闢の星(エリシュ)」

 ギルガメシュの真名解放とともに放たれる、天地を作り変える力。

 数多の異界の根源そのもの。

 もはや何が起きたかわからぬほどの力の嵐。

 リナの身体が黄金に染まる。召喚された異界の、根源そのものにも等しい大魔王が自らに対する攻撃に容赦なく反撃を加えた。

 

 桜たちが気がついた時。何かを振りぬいた形のギルガメッシュと、金色に染まったリナがにらみあう。

 そして言葉もなく、二人とも消えていった。




伏字公開

バラン
「竜魔神」ランクA
極端な身体強化、ただし狂化Bで、会話はある程度可能だが戦闘を止められない。
「竜闘気砲呪文(ドルオーラ)」ランクA++
一国を消滅させた逸話を持つ。竜魔神状態でなければ使用不能。

リナ
「完全版重破斬(ギガ・スレイブ)」EX級 対界・対神宝具に匹敵する超大呪文。魔血玉なしでは発動できず、制御できたこともない。別の、多数の世界の、さらに根源を超える存在を召喚降臨させる。
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