魔術師の学園、時計塔の若き教授。ロードの名。降霊科の神童。名門に生まれた、二重属性を持つ天才。
空前の栄光をあまたもつ、ケイネス・エルメロイ・アーチボルドにとって、この儀式はとても簡単だった。
アレンジをいれることすらしてのけた。
かたわらの素晴らしい美女、政略結婚とはいえ婚約者でもあるソラウと、サーヴァントの魔力供給を分け合う契約さえ。
時計塔の無能な職員が貴重な聖遺物を誤配し、さらに逆恨みで学生がそれを持ち逃げするというつまづきにもめげなかった。完全であたりまえ、この世のすべてが自分の思い通りになって当然、という彼にとってはとても腹立たしいことだ。
簡単な儀式のはずだった。だが、負担はすさまじかった。ケイネスもソラウも、干からびて命を落とす寸前だった。
降霊科の教授として、どんな怪物を呼び出してしまったのかぞっとするほどだった。
聖杯戦争についての理解から想定した、何百倍も……本気で、
(間違えて、神霊を召喚してしまったのか、まさかこの私が……)
と思ったほどすさまじい魔力だった。
なんとか召喚を終えたとき。
そこにいたのは、日本人の有髪僧侶だった。若い男性であり、黒髪の柔和な男だった。精悍な武人、という雰囲気ではなく、特に地位ある者は本能的に軽侮してしまう印象だった。
「どういうことだ、東洋人は召喚できないはずだが」
ケイネスの額に怒りがこもる。
「あんたが拙僧のマスターですか?」
「誰だお前は!」
「ランサーのサーヴァント、か。裏高野、第九階中僧都、孔雀」
敵意をぶつけられたサーヴァントの青年は、最低限の礼儀だけは残しているが、
(めんどくさい……)
(だめだこいつ)
という気配を濃厚に漂わせている。
ケイネスは講師としての経験で、それを敏感にとらえた。一見殊勝だが軽蔑混じりの反抗、それを見抜くのは慣れている。
「使い魔風情が、何だその態度は!で、貴様の望みはなんだ?何の望みがあって召喚に応えた?なぜ触媒に合うディルムッド・オディナではない?」
矢継ぎ早に攻め立てる声。
「望みは、ひどいことにならないこと。今回の聖杯戦争では、触媒と英霊の関係が完全に断たれている。あんた運がよかったよ。ディルムッドなんて召喚したら、そこの美人はそっちにいかれてただろ」
もう孔雀は、言葉の品も投げ捨ててソラウにあごをしゃくった。
「ば、ばかな」
ケイネスはもう怒りに爆発しそうだ。
「それで、ランサーという話だけど……槍は使えるの?」
ソラウが冷静に聞く。
「ああ。あれが宝具になっているようだな。恥ずかしいから嫌なんだが……」
孔雀は苦慮の表情をする。
「あれ?」
「*****」
孔雀が低い声で漏らした言葉に、ケイネスの表情が一変する。
「な……」
「とにかく、聖杯の奪い合いなんて大抵ろくなことにならない。生前もえらいことになった。魔王を復活させて世界が滅びたりしないように、慎重に」
「おまえはただの使い魔だ!命令に従い、私を勝利させればよいのだ!」
ケイネスが怒鳴るのに、孔雀はあきれかえった表情で、
「はいはい」
と首を振った。
孔雀は生前、バカな雇い主に対応するのは慣れている。そして彼らが、自滅していくのにも……
「孔雀王」本体のみ。「退魔聖伝」など続編の設定は無視します。
ランサーとしては『ドラゴンボール』の孫悟空や『うしおととら』の蒼月潮も考えましたが…ケイネスと会話させるのが無理すぎて。
あと潮の長い生涯を終えてからの人格と、原作中のキャラが違いすぎて誰だお前状態になるのもファンから石を投げられそうですし。