鯖総入れ替え四次(おっさんホイホイ)   作:ケット

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ライダー

 ウェイバー・ベルベットは高揚しきっていた。

 渾身の論文を破かれ、怒り狂っていた時に聖遺物の誤配。

 ケイネスを、時計塔を見返してやる……

 ほとんど衝動で、遠い日本まで飛んできた。

 経済的な基盤だけでも聖杯戦争は無謀だったが、それは現地在住の外国人一家に暗示をかけて解決した。

 そしてニワトリの血で作った魔法陣の前で、呪文を唱えていた……

 最高の触媒。勝利と栄光。師のほえ面。

 だが、触媒は魔法陣から弾かれ、そして信じられないことが起きた。まあ普通に召喚が成功していても、驚くことには変わりないだろうが。

 そこにいたのは、どう見てもアレクサンドロス三世ではない。高校生ぐらいの日本人男子。

 鋭い目つきと剣呑な雰囲気。

 それが、ぴしりと敬礼した。

「相良宗介。死亡時軍籍はありませんが、最終階級は軍曹。着任いたしました。ご命令を」

「……え?」

 

「ご命令を」

「……あ、ああおまえはライダーなんだな?」

 ウェイバーは、軍隊そのままの宗介の態度に混乱していた。

「肯定(アファーマティブ)。現在自分はサーヴァントであり、霊的な体を持っております。

 聖杯と称する脳直結型AIより知識が送られております。それを情報源として信頼するならば、現在の自分はライダーという階級を持っており、魔力によっていくつかの装備を調達することができます」

「ど、どんな宝具だ?」

「宝具、という言葉が意味不明であります。装備と呼称していただきたい」

「い、いや宝具は魔術の言葉で」

 ろくに会話にならなかった。

 

 それからは悲惨だった。

 聖杯戦争についての説明を聞いた宗介は、ウェイバーにとんでもない生活習慣を押しつけた。

 冬木に近い、かなり深い山まで一時間近く走る。

 それで疲労困憊している状態で、エアガンと、宝具として出された『ボン太くん』、その付属の散弾銃の操作を訓練される。

 単調な動きを、何千回も。

 さらに疲れている足を引きずり、歩いて冬木市に帰ったら、コンビニによって公園でヨーグルトと砂糖を500グラムずつというとんでもない量食わされ、マルチビタミンミネラル剤を飲まされる。

 そして帰って休んでまた食事、それから倒れるようにぐっすり眠ることになる。

「魔力は体力です。ならば今、上官殿……マスターは、少しでも体力を。少しでも運動し、タンパク質と脂肪と糖分を摂取し、睡眠を」

 勝利のために。宗介は実に合理的に、ウェイバーにできることをさせていた。

(でも聖杯戦争は、こんなもんじゃないだろ……)

 ウェイバーは全力で心の中で絶叫し続けていた。

「僕がマスターだぞ」

 と叫んだ時も、こう諭されるだけだった。

「戦争では、士官学校を出たばかりで戦争を知らない少尉を、軍曹が指導するのは常であります。それを素直に聞き、責任を取り、決断するのも新任少尉の重要な仕事です。

 自分は、聖杯がつこうと戦争ならば、専門家(プロフェッショナル)であります!」

 

 

 倉庫街にまきちらされている破壊を察知した宗介は、まず適当な場所にいくつか罠を設営した。

 ウェイバーを、『ボン太くん』を着たままそこにいさせて、霊体化して消えて……しばらくあちこちで何か作業をしてから戦場に出現した。

 自分も『ボン太くん』を着て、戦場に出た。

「ふ、ふんも、ふんもふも、ふもっふ(な、なんでぼくがこんな姿で戦場に)」

「ふ、ふも、ふもふもふも、ふもふも、ふもっふ(自分には陣地作成スキルがなく、上官殿には自衛できるだけの魔術技術および軍事技術がなく、予備兵力もありません。自分が護衛するのが、もっとも安全であります)」

 ……『ボン太くん』はボイスチェンジャーが故障しており、まともな言葉が出ない。だが相互であれば、ボイスチェンジャーからの翻訳AIで会話はできる。

 ちょうどいい暗号にもなっている。

 そう考えれば、とても優れた装備なのだが。だが、なぜか売れなかった。とことん売れなかった。

 

 

 孔雀がバランに立ち向かう。巨大な直刀を抜いたバランが、一刀で独鈷ごと孔雀を吹き飛ばす。

「さすがだ」

 そう、セイバーは孔雀とバラン両方に言う。

 自分がそうしているように、この二人も遠くの狙撃手にしっかり警戒し、瞬時に反撃できるように注意しつつ戦っているのがわかる。

「やりにくいな、こんなところでは」

 バランはくだらなそうに言い捨てた。

「この時代には、いくつもの勢力が銃を持って介入したがるのは常だな」

 孔雀は生前を思い出していた。彼自身が銃を使うことはないが、裏高野には銃を使う近代戦部隊もある。戦闘中近代軍と戦うシチュエーションも想定して訓練されているし、近代兵器を使う組織や特殊部隊と戦った経験もある。

 一瞬離れた孔雀とバラン。

「インドラヤ・ソバカ」

「ライデイン!」

 短文呪文がほぼ同時に完成する。

 すさまじい轟音と衝撃波……雷が二条、闇空にほとばしった。

 

「な……」

 ケイネスは呆然としていた。降霊科の神童だからこそわかる。

 二人の英霊が、どれほど恐ろしい存在か。

 自分のランサーが使った術の方が理解可能だ。ただし、次元が違いすぎるが。

「か、インド神話の神霊を降ろし、一体化し、力を行使しただと……密教の法、心意口を用いて……」

 帝釈天、仏教では天部で、その実はインド神話の最高神の一つインドラ。それを自分の体に降臨させ、使役し、しかも生きている。ありえない。むちゃくちゃだ。

「なぜキャスタークラスではなかったのだ」

 とも思う。

 その解析と自分の感情に夢中で、自分のサーヴァントの、

『今すぐ全力で逃げろ!ここはスナイパーだらけの地獄だ!』

 という心話など聞いていなかった。

 ……自分のサーヴァントが雷撃をかわしざま雷を放ったのが、遠くの橋であることの意味には気づいていなかった。

 孔雀がマスターを、狙撃手の銃から守っていることなど。最強の礼装、自動防御機能がある『月霊髄液』を信じ切って。

 学者としての思考、貴族の誇りを傷つけられた怒りに閉じこもって。

 雷と同時に狙撃されるのを防ぐ、それは当然の事だ。

 

 

「あんた、何のつもりで戦ってるんだ?」

 どこかに飛び出して銃弾を防いでいる孔雀を見送ったセイバーがバランに言った。

「え?」

 アイリスフィールが惑う。

「殺す気ねーだろ」

「……敵を、そのマスターを知るには、剣を合わせるほかないからな。一人の幼児をゆだねられる魔術師を探している」

 バランはそう言った。

 二体の『ボン太くん』が出てきたのは、ちょうどその時だった。




ライダー候補としては孫悟空(ドラゴンボール)やエルリックも考えました。
でも悟空の食欲を考えると経済的に無理。エルリックはまったく制御できずに大惨事でしょう。

核融合炉ロボで白兵戦も強い、だとアスラン・ザラも候補でしたが…
宇宙世紀やマクロスで白兵戦が極端に強く高い功績があるキャラは思い浮かびませんでした。
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