如月千早はドッキリがお好き?   作:ゲソP

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1.5 発射

「私本当は、みんなともっと仲良くなりたかったんです」

 

 食事を一通り終えると、二人は食後のお茶を楽しんだ。お茶といっても、喉のことを考えてか、千早は氷の入っていない水を頼んでいたが。

 

「あずささんって、凄いんです。ラジオでもよく共演するんですけど、あの人は本当にお茶目で、だけど気が利く人で。あの人の前では、私も自然と笑顔になったりして。そういう接し方って、もちろんあずささんの人なりもあると思うんですけど。……やっぱり大人の余裕があるからなんだろうなと思ったんです」

 

 小鳥は千早の真面目な相談に、内心で反省しっぱなしであった。

 

「……そうなの」

 

 大人としてのささやかなプライドが、何とか小鳥の体面を保っているような状態である。

 

 間違っても、美少女の『あーん』と『ふーふー』に浮かれている場合ではなかった。

 

「だから形からでも、あずささんみたいな、お姉さんぶった真似をしてみたりして。亜美と真美には悪いことしたかなと、思ってます」

 

 ……いや、少なくとも真美ちゃんは満更でもない感じだったような。

 

 そんなツッコミを紅茶と共に飲み込んで、小鳥は何とか言葉を返す。

 

「でもわかるなぁ。私も、千早ちゃんくらいの時はテレビに映る大人っぽいアイドルに憧れたりしたもの」

 

「音無さんもですか?」

 

「そうよ? あの時は色んな凄い人に憧れて。少しでもそうあろうとして、空回りしちゃったり。……結局、こんな落ち着きのない大人になっちゃったけどね」

 

「そんなこと、ないと思います」

 

 千早の気遣いが小鳥にはとにかく痛かった。彼女は彼女なりの想いを持って、次のステージに進もうとしている。アイドルとしても、一人の女性としても。

 

 

 ……だというのに、そんなアイドルに邪まな思いを抱きつつあった自分は何なのか。

 

 若干へこんでいる小鳥。彼女は本当に考えていることが表情に出る。それは千早にはない魅力だ。千早には小鳥の魅力こそが眩しく見えた。

 

「それに私、音無さんにもちょっと憧れてるんです」

 

「そんな、気を使わなくてもいいのに」

 

「気を使ったわけじゃないですよ。音無さんがいてくれるからこそ私たちは安心してアイドルができるんです。……そもそも今の765プロは人手が足りなさすぎると思うんです。社長もプロデューサーも、もっと音無さんに感謝した方がいいと思います」

 

 確かに人手は足りていない、小鳥は唸った。

 765プロは今では売れっ子アイドルが十三人も所属する事務所であるが、本来は規模の小さい、寂れた弱小事務所であった。有名になったのは本当にここ最近のことだ。

 

 従業員は社長を含めて四名。千早たちのプロデューサーと、同じくプロデュース業を手掛ける元アイドルの秋月律子。そして、事務員の音無小鳥。

 アイドルに対して、従業員が圧倒的に少ないのが現状である。それでも業務を破綻させずに何とか成立させているのは、社長を含めたプロデューサー人の頑張りもあるが、何より小鳥の事務処理能力の高さのお陰であった。

 

 765プロの大人たちに、アイドルたちは何よりも感謝しているのだ。

 

「今日も、もちろん相談したかったのもあるんですけど、それ以上に音無さんを労わってあげたかったんです。本当に、いつもありがとうございます」

 

「ち、千早ちゃぁん……」

 

 瞳を潤ませる小鳥。アイドルたちに感謝してもらえることが小鳥には何よりのご褒美に思えた。

 

 

 

 だが、本題はこれからだった。

 

「そ、それでその。相談、なんですけど……」

 

「えっ?」

 

 ……相談って、大人っぽくなりたいんだけどどうすればいいですかってことじゃなかったの?

 

 小鳥は一瞬、虚を突かれるもすぐに納得する。千早は大人っぽくなりたいという思いに自分なりの答えを持って確かに実行していた。ならば、相談というのは別にあったのだろうと。

 

「いいわ。千早ちゃん。何でも話してね」

 

「ありがとうございます」

 

 もうどんな相談事であっても、小鳥は揺るがない。しょうもない下心など、千早の素直な思いの前に跡形もなく霧散している。どんとこいである。

 

「それじゃあ、その。ちょっと恥ずかしいんですけど」

 

 恥じらう千早に乙女心がぴくりと高鳴るも問題はない。今の小鳥は『小鳥』ではない。親鳥を超えた菩薩のような心持ち。小鳥なりのセンスで表現するならばそう、ゴッドバードである。にらみつけるが特技の火の鳥も裸足で逃げ出す圧倒的包容力、そんな心意気である。どんとこい超常現象。

 

「私、あずささんに憧れているって話したじゃないですか」

 

「ええ。私もあずささんは素敵だと思うわ」

 

 あずさの魅力は性格だけではない。男なら骨抜き、女でもため息が出るほどの抜群のプロポーション。それもまた魅力の一つだ。外見と内面。二重の意味での圧倒的な包容力に、小鳥はその乙女心を何度揺り動かされたことだろう。

 

「私、形から入ろうと思うんです」

 

「? ……ええ」

 

 小鳥は千早の意図を図りかねた。それは実際に行動して見せていたと思うのだが。

 

「…………い」

 

「え??」

 

 あまりにも小さな囁き。

 数秒の間。紅潮する千早の頬。トゥンクと高鳴っていく小鳥の乙女心。

 

 何やら妖しい空気の中、少し落ち着こうと小鳥が紅茶を口に付けたその瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっぱいを大きくするには、どうすればいいですかっ!!」

 

「ぶふぉおっ」

 

 

 

 

 小鳥の口から紅茶が盛大に噴き出す。それが一つの合図であった。

 

 

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