Fate/GrandOrder 鋼鉄の心臓   作:SS装甲軍司令部

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続けて二話目
取り敢えず特異点F終わったから(震え声)

邪ンヌピックアップと神宿オルタ組の衣装はよ…はよ(瞳孔ガン開き)


第2話 矛盾

 焼けた風が煙草の先の灰を砕き、立ち昇る紫煙と共に何処かへと散らしていくのをボンヤリとした目で追っていく。休憩拠点とした学校の屋上からは、まだあちこちで火がくすぶっている街並みを一望することが出来た。

 マスターたちが階下の空き教室で休憩をとっている間、自分は周囲の警戒をかって出た。マシュと言う少女が自分も行くと息巻いていたが、二人のマスターに休むべきと苦言を呈され、希望が叶う事は無かった。クー・フーリンは別の場所で周囲の警戒に当たっている。彼はむしろ警戒は自分だけでいいと言っていたが、即応戦力は増やすべきと屁理屈をこねて警戒の任を勝ち取っていた。

 

 ――はぁ、美味い

 

 口から洩れた紫煙が火災によって仄かに赤く染まった夜空へと消えていく。ここまで周囲に遠慮して我慢していたが、彼は十分に愛煙家と呼べる人種だった。零基の影響か決して高価ではない官給品の煙草しか取り出せないのは悲しい所だが、無いよりはましだった。

 

「此処にいたんだ、探したよ」

 

 ふいに賭けられた声に振り返ると、自分のマスターとなった少年が苦笑をこぼしながら近づいてくる。

 

「休んでいろと言っただろうに」

「女子3人に男子1人なんだ、察してくれよ」

「孤立無援だな」

 

 この年頃の少年にとって、同年代の少女二人と年上の女性と同じ空間に一人で居続けるのはそれなりの労力が必要なのだろうとありきたりな予想で勝手に納得しておく。まだ半分以上のこっている紙巻きたばこを消そうとした時、そのままで良いと言われたが無視して踏みつぶした。

 

「別に気にしないのに」

「君はそうでも私は気にする。友人の一人に酷い嫌煙家が居てね、何度も禁煙を迫られたモノさ。まあ私が折れなかったので、せめて煙草を吸わない人間の隣では吸うなと約束させられたんだ」

「律儀だね」

「夢半ばで倒れた戦友の言葉だ、律儀にもなるさ」

 

 冗談めかして言ったはずなのに、マスターは顔をゆがめ謝罪する。図太い人間ではあるようだが、それと同じほど純粋な性質なのだろう。

 

「それで、何か用かい?幸いなことに、MG08/15(ヌルアハト・フュンフツェーン)の出番は今のところないが」

 

 アヴェンジャーの足元に置かれた液冷式機関銃は、静かに射撃の時を待ち続けていた。

 

「いや、ちょっとした相談だ。カルデアの観測が不安定な今なら、内緒話が出来る」

「へぇ、反逆でも企てる気か?」

「この先の、相手の話だ」

 

 相手、と聞いて頭に浮かんだのは先ほどのキャスターの説明。この特異点の核となる大聖杯はかの有名なアーサー王が守護しており、自分たちはその騎士王を倒さなくてはならない。

 

「神造兵器、最強の幻想(ラスト・ファンタズム)、聖剣の中で最強と言っていい聖剣。約束された勝利の剣(エクスカリバー)、いや、正確には約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)と言った方がいいかな」

「モルガン?アーサー王の異母姉だったか?」

「相手は只のアーサー王じゃない。アーサー王が圧制を良しとした別側面(オルタナティブ)。真名をアルトリア・ペンドラゴン」

「アルトリアってことは、女性か。現実は小説より奇なりと良く言ったものだ。そもそも、なぜ君がそれを知っている?」

「まだ俺も完全に把握したわけじゃないし、かといって気が狂ったわけでもない事は信じてほしい。細かい違いこそあれ、この状況は二度目なんだよ」

「タイムスリップ、という奴か?」

「記憶と経験だけ過去の世界の自分に乗り移ったという方が正しい、と思う」

 

 ふむ、と腕を組んで考え込む英霊に、今回のカミングアウトは愚策だったかと内心冷や汗が噴き出す。常識的に言っていきなり逆行者ですなんて言っても信じてもらえるはずもない。一応、はぐれサーヴァントとの付き合いはこの特異点だけで、カルデアで召喚した際に記憶が引き継がれたとしてもおぼろげなものになるため、後々にまで響かないだろうが。

 しかし意外な事に、目の前の英霊の興味は既に別の場所へ移ったようだった。

 

「なるほど、事情は分かった。だが、対城宝具級の火力を防御できる宝具なんてないぞ?」

「信じてくれるのか?」

「過去の死人が幽霊になって甦る理不尽があるんだ、今更逆行者の一人や二人で疑ってかかれるか。そんな事より戦争の話だ、個人的には撃たせる前に超長距離砲撃して黙らせたいところだが、どうだ?」

 

 自分の不安を一瞬で消し飛ばした英霊は、さっそく作戦案を練り始めていた。本気でそう思っているのか、使えそうな情報は全て使うのが信条なのかはハッキリしないが、自分を信用してくれるのは有難い。

 

「それじゃダメだ。相手は洞窟の中で聖杯もそこだ。君には、別のサーヴァントの撃破を頼みたい」

「別のサーヴァント?」

「アーチャーだ。錬鉄の英雄、真名をエミヤシロウ」

 

 

 

 

「ねぇマシュ」

「ふぁい?」

 

 藤丸が休憩場所として選んだ空き教室から出て行ったあと、もきゅもきゅと何処か小動物を思わせるしぐさでドライフルーツを咀嚼する後輩に声をかける。

 

「もしかして、藤丸君の事好きだったりする?」

「ぶふっ!?なななななな、にゃにをいきなり!?」

「うーん、本気なのか単に初心なだけなのか判断に困るなぁ。でも、ここへ来るまでにチラチラ見てたでしょ?」

「うっ、あの、き、気のせいですよ」

「嘘だ、絶対見てた」

「う、うぅ」

 

 胡散臭げな口調だが、赤毛の少女の口はにたりと弓状に反り返っていた。マシュはこう言って狼狽えているが、ここまで来る途中にチラチラ藤丸の事を見ていたのは確実だった。他人の不幸と恋話は蜜の味。少女の脳裏には渋い声の神父が薄い笑みを浮かべ、赤目の金ぴかがワイン片手にフハハと笑う光景が広がる。

 

 ――ああ、これが愉悦!ドライフルーツが進む、ニヨニヨが止まらない!

 

 本来の愉悦とは若干離れているような気がしないでもないが、脳内麻薬フルスロットルの彼女には些細な問題だった。

 

「マシュが恋?いや、そんなバカなはずはって食べ過ぎよ立花!」

「あいたぁ!?」

 

 彼女の暴走はキレた所長の攻撃によって強制終了させられた。スパァン!と空のペットボトルが赤毛の頭でバウンドし明後日の方向へスッとんでいく。

 

「ったく。そんな事より、不可解なのはあの英霊よ」

「アヴェンジャー、フリッツさんの事ですか?」

「そう、貴方達違和感は感じないの?」

「確かに、どっからどーみても剣と魔法の時代出身というより三千世界のカラスを殺す一心不乱の大戦争な時代から来た感じですけど」

「其処まで言えとは言ってないわよ」

 

 無駄な修飾語で飾られた立花の評に思わず額に手を置いてしまう。

 

「時代的には西暦1900年以降、神秘が薄れ個人の英霊なんてそうそう生まれない時代よ。英霊として昇華される難易度は古代の比じゃないわ、それこそ別の星へ渡った最初の人間とかじゃないと」

「アームストロング船長とか?」

「確かに、アームストロング船長なら初めて月に降り立った人類として英霊になっていてもおかしくありませんね」

「一番不可解なのが、誰一人彼の名前に聞き覚えがない事。英霊として世界に召し上げられるなら元になった逸話が必要だけれど、英霊に祭り上げられるほどの功績を上げた軍人の名前が後世に伝わってないなんてありえないでしょう?」

「偽名、とか?」

「それが妥当な考えよね」

 

 名前すら怪しいエクストラクラスの英霊に、オルガマリーは不快感を隠そうともしない。

 

「ん~、でも悪い人には見えなかったけどなぁ」

「本当の悪人なら、本心を隠すなんてお手の物でしょう。いい?二人ともあの英霊には注意する事、それとそのマスターもね」

「え?先輩もですか?」

「当り前よ。貴女、平和ボケが過ぎるのではなくて?素性を明かさない英霊をそのままにしておくとか、危機管理能力が欠如しているにもほどがある。そのうち、後ろから刺されるのがオチでしょうね」

 

 ピシャリと言い放つオルガマリーに、二人は何も言い返せなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっと、信奉者の登場か」

「信奉者になったつもりはないがね、つまらん来客を追い返す程度の仕事はするさ」

 

 巨大な盆地状の空間の一角に空いた巨大な洞窟、その中へ歩を進めようとした一行へ射かけられた矢をキャスターの魔術が焼き尽くした。藤丸たちから見て洞窟の入り口とは逆側の崖の上に陣取ったアーチャーは既に次の矢を黒い洋弓につがえている。

 

「マスター、あれが?」

「ああ」

 

 アーチャーとキャスターが何事か言い合っているうちにアヴェンジャーは自らのマスターに確認を取った。アーチャーの位置は100mほど離れた崖の上、40m程度の位置。この距離ならいきなり近接戦闘にはならない。

 

「皆、先に行ってくれ。此処は俺とアヴェンジャーで抑える」

「何か策があるってのか?」

「神秘はより強い神秘に打ち消される。アヴェンジャーの火器がセイバーに通じるかは未知数だ。それに、キャスターは一度戦っているだろう?初見の俺達が行くよりはいい」

「3対1でボコった方が手っ取り早くない?

 

 立花の最もな問いに首を振る。

 

「ボコってる最中に後ろから聖剣が飛んで来たら全員死ぬ。誰かが此処で足止めをしないと」

「でも…」

「よぉし、解った。先に行くぞ嬢ちゃん達。おい!アーチャー!てめぇとの決着は預けた!」

 

 尻込みするマシュを無視してキャスターはそう声を張り上げ、踵を返す。

 

「許すとでも?ッ!」

 

 アーチャーが弓矢を放とうとした瞬間、直観のままに身体をひねる。一瞬前まで身体があった空間をライフル弾が唸りを上げて通過していった。体制を立て直し、阻止の一撃を放とうとするがそれも敵わない。彼らにアヴェンジャーと呼ばれていたサーヴァントの両側に2門の野戦砲がこちらに砲口を向けていた。

 

「行け!行ってくれ!」

 

 咆哮する7.7cm FK96nAに負けない様に藤丸が叫ぶ。

 

「行こう!マシュ!」

「は、はい!」

 

 マシュの手を取って立花たちが洞窟へと消えていく。残されたのは復讐者とそのマスターのみ。

 

「やってくれたな」

 

 苦々しげな表情を隠そうともせずに、榴弾の直撃で大きくえぐられた崖からこちらを見下ろす弓兵。思わず足がすくみそうになるが、これは自分が選択した状況だ。そして、絶対に彼を通さないようもうひと手間。

 

「やれ!」

了解(ヤヴォール)!」

 

 パチンとアヴェンジャーが指を鳴らすと、それまで弓兵に向けられていた2門とはまた別の2門が洞窟の方へと方向を向けた状態で出現し、咆哮する。遅延設定にされていた榴弾が、めり込んだ壁の中で炸裂。2発の7,7㎝榴弾の破壊に耐え切れず崩落した土砂が洞窟の入り口をふさいだ。

 

「味方を生き埋めにするとは思わなかった」

「この洞窟は魔術工房と言っていい、神秘の薄い砲撃で崩れる所なんてほんの入り口ぐらいさ」

「言ってくれるね、我がマスターは」

 

 遠回しに神秘的な意味で言えばショボい、と言われたアヴェンジャーの顔が引きつる。

 

「そうか、では。貴様らを殺した後、ゆっくり瓦礫を掃除するとしよう」

 

 赤い弓兵と対峙する。おおよそ100m向こう側の、榴弾の直撃で半ば崩落した崖の上にその男は立っている。対してこちらは盆地状に抉られた地形の底部分、崩落した洞窟入り口を背にする位置。遠距離攻撃を得意とする弓兵相手には最悪の条件と言って良い。もっとも、こちらの攻撃手段も飛び道具が主だが狙撃や早打ちで、復讐者と弓兵では話にならないだろう。火力自体は負けていないが、先ほどのような不意打ちでもない限り鈍重な野砲を叩き込めない。

 とは言え、この英霊にはマスターからの事前情報で勝ちへの大まかなラインは見えていた。

 後は、

 

 

「一つ聞きたい、アーチャー」

「何かね、復讐者」

「君は、正義の味方になれたのか?」

「っ!」

 

 宣戦布告だけだ。

 まずは小手調べとばかりに弓矢の斉射三連。2つは自分に、もう一つは背後のマスターに。剣士や槍兵ならば苦も無く弾き、弓兵なら片手間に撃墜できるだろうがそんな芸当は勿論不可能。出来るのはマスターを抱えて無様に回避機動をするだけ。横っ飛びに回避した瞬間3本の矢が着弾し、手りゅう弾規模の爆発を引き起こす。

 

「弓矢と言うより1.59インチビッカース Q.F. ガン, Mk II(ロケットガン)だな」

「来るぞ!アヴェンジャー!」

 

 軽口をたたく暇もなく回避した地点に呼んでいたかのような弓矢、その数5発。無理やり横っ飛びに飛んだため、着地からの跳躍を行う時間的猶予はない。ついでに言えば、アレを出してもロケットガンじみた弓矢の爆撃には無力。良くて貫通、悪くて誘爆だろう。

 

「限定展開!」

 

 短く詠唱しシャベルを振るって本来の宝具を部分的に展開、倒れ込む先に存在するはずの地面は消え失せ、泥と汚水にまみれた塹壕が出現し2人はそのまま壕の中に落着する。同時に頭上を飛び過ぎた5発の弓矢は地面に着弾し炸裂。本来ならば二人を襲うはずだった爆風と破片は深く掘られた塹壕によって届かない。泥が口に入り思わずむせた藤丸が振り向いた先には、愉し気に口を歪ませる自らの従者が存在した。

 

「む、これは?」

 

 眼前に突如として現れた光景に、弓兵は思わず眉を上げた。いつの間にか目の前の盆地の底には網の目の様な塹壕が張り巡らされている。一切合財吹き飛ばそうと反射的に螺旋状の剣を投影しようとするが、考え直して投影を止めた。一見無秩序に曲がりくねって走り抜けていると思われる溝は、よくよく見れば全てが合理的な算段の上に成り立つ即席要塞だった。

 深く掘られた壕が自分の立つ位置を中心として概ね同心円状に広がり、それらの壕を縦につなぐ連絡壕は電のように走り見通しが悪い。螺旋剣を打ちこんで炸裂させたとしても壕全体に攻撃力が行きわたることはない、せいぜい塹壕の一角を崩落させるのが関の山だろう。

 ならばとフルンディングを取り出そうとするが、それも効果は薄いと悟る。確かに、フルンディングは放ちさえすれば射手が狙った獲物を何処までも追い詰めるため、曲がりくねった壕の中を移動中の目標にも直撃はする。

 しかし、それは射手が目標を捉えられればの話だ。

 自分の鷹の目をもってしても、塹壕に落ちたはずの敵の姿は掴めない。塹壕を見下ろす格好になっているから隠れられる場所はそう多くないはずだがそれでも見つけられない。

 恐らく、この塹壕には認識疎外の結界に近い効力があるのだろう。もともと、塹壕とは弾丸や弾片から歩兵を守る構造物だが言い換えれば、塹壕にこもる以上外からの観測、攻撃に大きな補正が掛かる事を意味する。

 砲撃を行う側にとって、塹壕にこもる敵兵に攻撃は届かず、見えないと言っていい。

 

「厄介だな」

 

 一つ悪態をついてカラドボルグほどではないがそれなりの名剣を投影し続けざまに放つ。

 

壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)!」

 

 壕の壁や床に着弾した24の剣弾が同時に炸裂し、最初に彼らが落ち込んだ場所から20m以内の塹壕は、退避壕に至るまで完全に破砕され崩落する。この程度で敵が滅ぶとも考えにくいが、これはある種の恣意行動だった。

 こちらは君達の砦を完全に破壊することが可能である。

 いくら認識疎外の効果がある塹壕とは言え、その塹壕自体が爆撃によって崩壊すれば中の歩兵になすすべはない。真面な指揮者、兵隊であるならばアドバンテージ(塹壕)がまだ残っている段階で仕掛けてくる。塹壕の範囲は精々この盆地底辺であり、外への脱出路は無い。

 塹壕の外へ出れば、自分の鷹の目はその姿を捉えるだろう。もしも相撃ちだったとしても、先ほどのランサー戦を見る限り彼の放つ弾頭の中で最も強力なのは7.63㎜モーゼル弾。干将莫邪ならば弾ける。血迷って野戦砲を出せばしめたもの、回避するなり防御するなりしてやり過ごした後に料理してやればいい。

 何のことはない、彼らは自分から袋の鼠となりに行ったのだ。彼らをここに拘束し続けることで彼女の戦いに邪魔が入ることもない。

 後は、フルンディングを投影して彼らが飛び出してくるのを待つだけ。飛び出してこないならば、お望み通りその塹壕を墓穴に換えてやるまで。

 

 

 

 

「ふぅ、これで何発目だ?マスター?」

 

 強烈な振動によって頭上からパラパラと土の破片が降り注ぎ、薄汚れた白い魔術礼装に降り積もる。如何やらこの退避壕から近い位置に着弾したようで先ほどの揺れとは段違いだった。

 

「さっきのと合わせて53発。本当に大丈夫なのか?ここ」

「流石に直撃すれば生き埋めだ。退避部屋は地下10mだが出口がふさがれればアウト。もちろん退避部屋の中まで貫通してドカンでもアウト」

「ダメじゃないか」

 

 落胆するマスターに誤魔化すように軽く笑う。

 

「ハハッ、一応はこれでも分がいい掛け何だがなぁ。まあ、マスターの幸運を信じてみようじゃないか。さて、私が奴ならそろそろ勝負を決める」

「どうやって?」

「そんな物決まっている、この退避壕を我らの墓穴とするべく情け容赦一切なしの絨毯爆撃だ。何時までも遊んでいれば、彼が信奉するアーサー王の政権が飛んできかねない」

 

 爆撃が止み、一瞬の静寂。こんな最悪の状況下でも諦めを拒絶する蒼い瞳に、今度は地獄を楽しむ魔界の軍団長のように笑って見せた。

 

「準備は良いな?マスター。反撃と行こうじゃないか」

 

 どこか遠くで、無数の剣が空を切る音が聞こえた様な気がした。

 

 

 最後の爆撃は勝負を決める物だった、上空に打ち出された無数の剣弾は地上200mでその切っ先を地面へと向け、寸分たがわず塹壕の床や退避壕に続く横穴の前に着弾し一斉に起爆した。無数に張り巡らされた塹壕が活火山のように噴火し、大量の土砂と土埃を上空へと打ち上げる。それに伴い弓兵の視界も土砂によって覆われるがその手には油断なくフルンディングが構えられている。これで生き埋めにならなかったとしても、外へと飛び出せば問題なく屠れる。

 そのはずだった。

 打ち上げられた土砂が地面へとその移動のベクトルを変え大音響とともに着弾していくその最中、土煙の向こうに何かを感じ。それと同時に寒気が背筋を走り抜ける。

 

熾天覆う七つの円環(ローアイアス)

 

 直観に従い自らが知りうる中で最硬の強度を誇る盾を投影。直後、アイアスが大きな軋みを立てた衝撃が腕へと伝わる。

 

「ばか、な」

 

 赤みを帯びた透明な盾が7枚重なったその向こう側、敵に向けられている方に冗談かと思うほど巨大な砲弾があった。直径は大凡ではあるが40㎝は下らないだろう。そして、その先。土砂のカーテンが崩れ落ちた先に存在した光景に、弓兵は極一瞬ではあるが乾いた笑いを漏らしてしまう。

 アイアスに直撃した砲弾がぐらりと揺れ、その衝撃力を失って大地へと落ちていった。開けた視界に見えたのは、こちらを狙う12基の巨大砲台だった。

 

拡大解釈、限定展開。クルップ製42㎝重榴弾砲(ディッケ・ベルタ)

 

 爆撃によりほとんどの塹壕が崩れ落ちた盆地にずらりと並んでいたのは、極端に短い砲身、薄い防盾、人の背丈ほどもある車輪を持つ正真正銘の巨砲。その砲列を従えた復讐者は、新しいおもちゃを手に入れた無邪気な子供の様に笑みを浮かべた。

 

「アイアスの盾は一枚一枚が古代の城壁レベルと言ったが、リェージュやヴェルダンとどちらが上かな?」

 

 クルップ社製42㎝榴弾砲、通称ふとっちょベルタ(ディッケ・ベルタ)は第1次世界大戦中にドイツ軍によって使用された攻城砲だった。元々は旅順要塞攻防戦に投入された帝国陸軍の28㎝榴弾砲に触発されて製造された移動式の榴弾砲であり820㎏の榴弾を仰角80度で15㎞飛ばすことが出来た。その威力はドイツの通り道にされたベルギーの中で激烈な抵抗を見せていたリェージュ要塞の堡塁を次々と破壊し、フランスのヴェルダン要塞にすら大打撃を与える。正しく、要塞を初めとする防御施設にとって天敵と言える代物だった。

 土煙の向こうに突如出現した超巨大攻城砲の砲列に僅かとは言えあっけにとられてしまったアーチャーは回避を選択する唯一の機会を逃してしまう。眼前にほとばしる閃光、先ほどの1射は調停射撃。次に飛んでくるのは残りの砲台による全力全開の効力射、遠慮なしの斉射だろう。

 とは言え、この状況でも弓兵は冷静だった。アイアスの盾は飛び道具に対して無敵の概念を持つ、確かにあの攻城砲は巨大ではあるが所詮は飛び道具、恐れる必要はない。あのような巨大砲であるならば連射は出来ない。効力射を耐えきり、返す刀で仕留めればいいだけの事。

 そう結論付けて止めの投影に意識を向けた瞬間、彼の認識、もとい慢心はべトン弾の直撃を受けた堡塁のように砕け散った。

 

「なにっ?!」

 

 着弾した第1発目、その炸裂によってアイアスの7枚ある盾の内1枚が砕け散った。飛び道具に対して無敵なはずのアイアスの盾が1枚とは言え破壊される事実に思わず焦りを感じる。

 

 ――まさか――アイアスは1枚1枚が古代の”城壁”に匹敵する、ならばその城壁を破砕する”攻城砲”ならば無敵の概念も通じないというのか?ヴェルダンはともかく、リェージュはこの要塞砲によって陥落したと言っていい。城壁崩しの逸話は十分という事か!

 

 しかし、無敵の概念が通じなくなったとはいえ、英霊の宝具である以上格と言ったものは存在する。近代の兵器である攻城砲と古代の城壁。古いものほど神秘が濃いことを加味すれば、万全のアイアスを貫通できる要塞砲などは存在しない。

 投影に回そうとしていた魔力を纏め、アイアスの盾へと注ぎ込む。続いて5発、6発、7発、8発、9発、10発と着弾し更に一枚アイアスが破られるが、先ほど確認した砲台の数は12基。1発は調停射撃、不意打ちの4発でアイアスを一枚、続く6発でさらに一枚破られたが残りは1発。更に砲台を増やしたならばわからないが、アイアスを破壊するほどの砲撃を行う攻城砲を、一英霊がそうポンポンと出現させられはしない。

 そもそも、そのスペースがない。ならば、次の12発目が最後の砲撃。

 

 無敵の盾は破られない。

 

「そう、そいつが問題だった」

 

 フルンディング投影中止、干将莫邪を投影し振り向きざまに切りはらう。

 

 ■■■■■■!

 

 甲高くも重さを感じさせる銃声と、金属が砕け散る高音。黒と白の刃が宙を舞い、胸の霊核が文字通り砕け散る感覚。12発目の榴弾がアイアスの向こうで炸裂する音をどこか遠くに効きながら、自分の身体から力が抜けて、崩落して急な斜面になった崖を滑落していく。

 自分が今まで立っていた場所には長大なライフルを肩に担ぐサーヴァントが立ち、崖の淵から滑落したこちらを見下ろしている。

 

「マスターから聞いていたんだ、英霊エミヤは飛び道具に対し無敵の防御を持つアイアスの盾を展開できる、と」

 

 金属質の音と共にハンドルを引いて巨大な薬莢を排出しつつ、サーヴァントはゆっくりと急な斜面を下り始める。

 

「私は喧嘩にはめっぽう弱くてね、精々が銃で撃ち合う程度なのにそんなものを展開されればひとたまりもない。一つ可能性があるとしたら攻城砲による砲撃ぐらいだった」

 

 何処からか取り出した巨大な弾丸を薬室へとねじ込み、ボルトハンドルを戻す。

 

「私は楽天家ではあるが臆病だ、ディッケ・ベルタでアイアスの盾を貫通できるかに賭けられはしなかった。となって、結局は我々の戦闘教義(ドクトリン)に乗っ取ることにした。すなわち、”面倒な防御拠点は無視して本部へ突撃”。攻略出来ない防御拠点は迂回してしまえばないのと変わらない。ディッケ・ベルタの砲撃を陽動に、礼呪の補助も利用して君の後ろへ回り込んだ」

 

 此方まであと数mと言うところで立ち止まり、ライフルが構えられる。もう最後の反撃を行う魔力すらないが、何時もの癖でその手に持ったライフルを解析した。

 Mauser Tankgewehr M1918。イギリスの戦車と対峙したドイツ帝国が急遽製造した対物ライフルの始祖とも言える存在。口径13㎜の徹甲弾は250m先の25㎜の鉄板を貫通する。ただ、製造を急いで既存のライフルをそのまま拡大する手法を取ったため反動が大きく、”まず一発目を右肩で構えて撃つと右肩を壊し、続いて二発目で左肩で構えて撃つので左肩も壊し、射手はその後は病院行きになるので、二発しか撃てない”と言う逸話が残っているほどだった。

 13㎜対戦車徹甲弾の至近距離射撃に7,92㎜弾を弾ければいいと工程を出来るだけ省いて投影した干将莫邪では役者不足も良い所だろう。一般的な野砲以外にディッケ・ベルタまで用意した時点で警戒しておくべきだった、と心の中で自嘲する。

 

「誇れよ、弓兵。アイアスの盾()攻城砲()に勝った」

「皮肉にしか、聞こえんね」

 

 返答は13㎜対戦車徹甲弾だった。

 

 

「お疲れさま、アヴェンジャー」

 

 エミヤが消滅したことを確認し、塹壕に隠れていたマスターに合流する。

 

「ああ、上手く行ったが…」

「無理させてゴメン」

「作戦を立てたのは私だ、マスターが気に病む事じゃない」

 

 今の霊基レベルでの攻城兵器の連続召喚は彼の霊基に大きな傷をもたらしていた。ロマンが観測していれば、霊基の組成骨子がめちゃくちゃになり消滅寸前という事を捲し立てて来ただろう。ふと、視線を下に向けてしまった藤丸はアヴェンジャーの足元が金色の粒子となり分解され始めているのを見た。

 

「セイバーが倒れ、特異点が修復され始めたのか。っと、忘れる所だった」

 

 手にシャベルを出現させ、崩落した洞窟の入り口に突き立てると人一人が通れるほどの穴が開いた。

 

「これで中まで行けるはずだ、丸腰のまま待機するより合流した方がいい」

「解った」

「それと、こいつも持って行ってくれ」

 

 手渡されたのはアイアンクロス。二級鉄十字章と呼ばれている勲章だった。

 

「何かの間違いで私が召喚できるかもしれないからな。確率は上げておくべきだろう」

「戦ってくれるのか?」

「勿論、こんな楽しそうな戦争に参加しなくてどうするんだ」

 

 冗談とも本気とも取れない笑みを浮かべた英霊は、挙手の敬礼を仮初のマスターへと送った。

 

「では、さらばだ!我がマスター藤丸立香!君の行く手に名誉と栄光があらんことを!」

 

 ■■■■■■!

 

 最後に何を叫んだのかは聞き取れなかった。自分の命を掬い、企てに賛同してくれた英霊はもういない。礼呪のパスも完全に途切れた。

 

「名誉と栄光、か。人一人も救えない俺には遠い物じゃないかな」

 

 短く息を吐いてから、洞窟へと続く穴へ走り出す。

 ここで自分が行った所で所長の運命が変わることはない。彼女の終着点は死だけだ。

 それでも、足を止める気にはならない。例え自己満足でも、彼女の死をより安らかなものにすり替えること位は出来るはずだ。

 出来ることをやる。それすら止めてしまったら、自分は本当に敗者となってしまう。

 それだけは、嫌だった。

 

 

 

 

 

 

 

「よーし君はずいぶんよい子でちゅねー。何か食べる?ヒマワリの種?それとも肉?」

 

 ――ああ、聞きなれた声がする。

 

「んー、猫なのかリスなのかイマイチわからないケド…可愛いからいいや」

「フォーウ」

 

 パチリと眼を開けると、見慣れた天井と目の覚めるような美人(天災)が目に飛び込んで来る。

 

「おっと、おはよう。何やら失礼な視線が含まれていた様な気がするが、特異点での活躍に免じて許そうじゃないか。気分はどうだい?」

「まあ、何とか。マシュと立花は?」

「二人とも無事だ、とっくに目が覚めてる。それよりも、オルガマリーの事はよくやってくれた。礼を言うよ」

「…いえ、俺は」

 

 ――結局、何もできなかった

 

 あの後、レフの魔力力場にとらわれかけた所長に瞬間回避をかけてカルデアスに飲み込まれるという最悪の事態は回避できた。しかし、それまでだった。所長の身体は前回と同じように消滅し、彼女が静観することは能わない。高々数分時間を稼いだに過ぎなかった。

 

「それでも、だ。彼女は少なくとも君に感謝していただろう?」

 

 正しく聖母の様な慈愛に満ちた笑みが投げかけられた。

 

「”必ず、何としても、人理を守り通せ、未来を取り戻せ”最期の瞬間、消滅の恐怖に耐えつつも彼女はそう言って笑ったんだ。なら、君がしなければならない事は解るはずだ」

「人理定礎を復元し。未来を取り戻す」

 

 そういう事。と機嫌よく頷き、絶世の美女――レオナルド・ダ・ヴィンチはウィンクして見せる。

 

「二人は今どこに?」

「召喚ルームさ。立花がガチャだー、ガチャをやらせろーってうるさくてね。全く、英霊召喚をくじ引きか何かと勘違いしていないかね?」

「ははっ…」

 

 あの礼装ばかり出てくる聖晶石召還を思い出して乾いた笑いが漏れる。ガチャと言うのも言いえて妙だった。

 

「俺も行ってきます。修復を手伝ってくれる味方を呼ばないと」

「おっと、それならこれを持っていきな」

 

 手渡されたのはあの時受け取った鈍色の十字架だった。

 

「残念ながら、カルデアの霊基一覧に彼のサーヴァントは存在しなかった。けれど、もしかしたらという事もある。持っていきなさい」

「ありがとう、ダヴィンチちゃん」

 

 上着を引っ掴んで出ていく藤丸を見送った後、彼女()は静かに呟きをこぼした。

 

「藤丸君、一体全体君とあの復讐者は何者なのかねぇ」

 

 それを聞くものは、杖の上に陣取った機械仕掛けの鳥だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、先輩!おはようございます!」

「おはよう、マシュ」

「よう、寝坊か?坊主」

「ゴメン」

 

 召喚ルームで彼を出迎えたのは、藤色の少女と朱槍の騎士だった。

 

「今回はランサーだったんだね」

「応、やっぱりコッチの方がしっくりくらぁ」

 

 そう言って誇らしげに赤い槍を肩に担ぐ。ランサーのクー・フーリンもキャスターのクー・フーリンも以前のカルデアに居たが、やはりこの英霊には赤い槍が似合う。

 

「今度は当たるんだろうな?その槍は」

「んだと?」

 

 皮肉気な声を投げ込んできたのは壁に背を預けて腕を組んでいる浅黒い肌のアーチャー。彼も見知った顔だった。

 

「よろしく、エミヤ」

「こちらこそ。君の事はなんと呼べばいい?」

「藤丸でいい。立花だと被るだろう?」

「承知した」

「それよりもだ弓兵、召喚が終わったらシミュレータールームまでちっと顔かせ。準備運動だ」

「やれやれ、血の気が多いのも考え物だぞ。ランサー」

「ぬがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 一触即発の空気をきれいさっぱり破壊したのは召喚陣前で蹲る立花だった。

 

「どうした?マスター」

「なぁんで黒鍵バッカなのぉぉぉぉぉぉォぉ!?テーブルぶっ壊れてるでしょぉぉぉぉぉぉォぉ?!」

「ま、マスター。落ち着いて、お、落ち着いてください!」

「あぁぁぁぁぁんまぁぁぁぁぁぁぁありだぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 デミサーヴァントであるマシュに羽交い絞めにされながらも暴れる立花。正直、十連召喚で強力な英霊が2騎も来ているので贅沢極まりない願いだろうが、召喚陣周辺に散らばる多種多様な黒鍵を見ていると同情したくなってくるのも人の性だった。

 7本目の黒鍵が音を立てて床に落ち、召喚陣が金色に光り輝く。

 

「確定演出来た!これで勝つる!」

「かくていえんしゅつ?ですか?」

「おい、弓兵。俺らのマスターは何言ってんだ?」

「………」

「曖昧な顔で沈黙してんじゃねぇよ!」

 

 エーテルが弾け多かと思うと、7本目の黒鍵が漆黒のヒールに踏みつけられてあえなく砕け散る。召喚陣から進み出たのは、黒と形容できるサーヴァントだった。

 黒い装束に身を包み、その上を覆う防具もそれが武器かと思われるほど刺々しく禍々しい。目元はバイザーによって隠されているが、小柄な体格に似合わないほどの膨大な魔力をその身に秘めていた。

 

「召還に従い参上した。貴様が私のマスター、という奴か?」

「な、君は」

「セイバーオルタキタ―――ふぎゃ!」

「辞めんか、愚か者」

 

 エミヤが狼狽えるのを尻目に、召喚されたセイバーに飛びついた立花はアイアンクローの餌食になっていた。バイザーで隠れて見えないが、間違いなく可哀そうな物か養豚場の豚でも見るような目になっているのだろう。

 

「フン、先が思いやられる」

 

 ぞんざいに開放し、つかつかと召喚陣から離れ藤丸へと向かう。

 

「よろしく、アルトリア」

「フム。貴様の方が、幾分マシかもしれんな」

「ちょっ?!ひどくない?!」

「初対面でいきなり飛びついてくるマスターよりはマシだと思うが」

「うぐふぅ!」

 

 人の悪い笑みをさも楽しそうに浮かべる騎士王を見て、やはり彼女は何処でも変わらないと苦笑する。しかし、同時に彼女に対して言いようのない違和感が沸き上がったのだった。根拠があるわけではない、しかし、どうにも感覚的に何かが決定的に異なる様な気がしてならなかった。

 

「え、ええと。先輩。先輩の分の聖晶石30個です」

「え?30個?」

「はい、召喚では1回につき3つの石を消費するので10回分で30個です」

「ああうん。ありがとう」

 

 虹色の鉱石が詰め込まれた木箱を受け取り、マシュの盾が置かれた召喚陣へと進んで木箱をひっくり返す。地面に落ちた石は液化し、召喚陣に沿って流れ始めた。

 

「っと、忘れるとこだった」

「先輩、それは?」

「触媒。彼からもらったんだ」

 

 懐から取り出したアイアンクロスを触媒として設置する。後は、詠唱するだけ。

 

 素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。

 

 降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ

 

 召喚陣から噴き出したエーテルが暴風となって召喚ルームに吹き荒れる。

 

 閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 

 繰り返すつどに五度。

 

 ただ、満たされる刻を破却する

 

 藤丸立花は、Fate主人公の生召喚シーンを固唾を飲んで見守っている。

 

 ――――告げる。

 

 マシュ・キリエライトは未だ慣れないエーテルの暴風の前にただ圧倒されている。

 

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 

 クー・フーリンは自分と武を競える勇者が来ることを望み、赤い双眸を光らせる。

 

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ

 

 エミヤシロウは何処か知り合いの面影を残す彼が、うっかりをやらかさないか静かに見守る。

 

 誓いを此処に。

 

 我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。

 

 アルトリア・ペンドラゴンはただ無感情に召喚陣を見つめる。

 

 汝三大の言霊を纏う七天

 

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!

 

 限界まで圧縮されたエーテルが弾け、3つの円環を形作り一人のサーヴァントがカルデアへと降り立った。

 暗い色の軍服、ヨーロッパの人間としては若干低い部類に入る身長、官帽の廂の下からこちらを見やる凶相。使い古したシャベルを手にし、型にはスリングで短機関銃がつられている。黒い軍靴を慣らし召喚陣の前に立つ藤丸へと敬礼を送った。

 

「サーヴァント、アヴェンジャー。招集に従い出頭した。さて、まずは如何へ侵攻する?それとも、軍拡かな?」

「よろしく、アヴェンジャー。いや、フリードリヒ・フォン・シュミット」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………もしかして、忘れられてる?」

 

一人きりの管制室に、悲し気なロマンの声が溶けて消えた。

 

 

 

 




マテリアルが更新されました

サーヴァントプロフィール
身長/体重:169㎝・65㎏
出典:■■■■■■■
地域:■■■■
属性:中庸・悪
性別:男性

アヴェンジャーの他にキャスターの適正も持つ。射撃の腕は並。

ステータス

筋力E  耐久E
敏捷D  魔力E
幸運A  宝具B
  


次話は未定~
そもそも続くかどうかすらも未定

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